日系企業に比べて、外資系企業は平均年収が高いというイメージがあります。実際に、一部の公表されている情報やネット上の口コミでも、外資系企業の年収はやはり高いです。
外資系企業は、なぜ平均年収が高くなるのでしょうか。この記事ではその理由と外資系独自の給与体系について紹介します。外資系への転職を視野に入れている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
外資系企業の平均年収とは?
国税庁が2020年9月に発表した「民間給与実態統計調査」によれば、国内の給与所得者の平均年収は436万円です。一方、外資系企業に限定した公式な平均年収のデータは存在しませんが、一説によれば800万円であるとか、同じ業界なら日系企業の2割り増しであるなどの通説がささやかれています。
ちなみに以下の記事で発表した外資系企業の想定平均年収ランキングでは、第1位の約1,300万円(ゴールドマンサックス)から第17位の約1,000万円(BofA 証券 株式会社:旧・メリルリンチ日本証券)までが想定平均年収で1,000万円以上です。
日本に進出している外資系企業は、「年収が高い」「成果主義」などが代表的なイメージでしょう。実際に外資系企業の平均年収は約800万円程度ともいわれ、日本企業のそれと比較して2倍に迫る額面のようです(国税庁令和4年分 民間給与実態統計調査によると日本の給与所得者の平均給与は458万円)。あくまでも平均として800万円ということであり、その中には1,000万円を超える場合も多ければ、2,000〜5,000万円に上る場合も往々にしてあります。ではどうして外資系企業は、そのように年収が高いのでしょうか。この記事ではその背景や理... 【2023年版】外資系企業の年収ランキングTOP20!外資系が高額な理由も解説 - 35ish |
外資系企業の総数は3,400社程度なので、平均年収1,000万円超えの17社は上位0.5%です。一方、企業年収の検証分析サイトによる国内企業の平均年収ランキングでは第71位までが1,000万円以上となっています。国内の企業総数は約420万社とされているので、平均年収1,000万円超えの71社は上位0.0017%です。単純に比率で比較すれば、外資系の中の1,000万超え企業の比率は国内企業の中の1,000万超え企業の比率の実に295倍という圧倒的な多さです。
このようにあくまで参考ではありますが、高額年収企業の比較から考えても、世間で言われているとおりに外資系企業の平均年収は日系企業のそれより相当高くなることが予想されます。では、なぜ外資系は報酬が高額になるのかに目を向けてみましょう。
なぜ外資系は年収が高いのか
日系企業と比較して一般的に外資系企業の年収が高い理由には、主に以下の5つがあります。
●グローバルな企業規模であるから
●成果主義を反映しているから
●福利厚生や退職金の代わりに個人で完結してもらうため
●限られた優秀な人材確保のためのモチベーションを上げるため
●リスクプレミアムとして、人材への投資を行いたいから
個別に詳しく見ていきましょう。
グローバルな企業規模である
そもそも外資系企業は海外から膨大な資本を投下し、綿密にリサーチして進出し、なおかつ収益構造を維持しています。
たとえば国内の企業をイメージしましょう。日本から海外に進出して継続している企業は、一部の実力がある企業のみですよね。企業が海外に進出するには、資本力や人財力、戦略構築力や企画力、ネットワークなどあらゆる条件を兼ね揃える必要があります。
その点、外資系企業はそもそもグローバルな事業展開ができている優れた企業です。実際に日本ではあまり有名でない外資系企業でも事業規模はグローバルであることもあり、日本の企業よりも収益力があることも珍しくありません。それだけでも、社員の年収が全体的に高水準になるでしょう。
成果主義を反映しているから
外資系企業の人事評価の基準は基本的に成果です。年齢や社歴は全く関係なく、担当する業務ごとに(セールスのような実績数字が出ない事務系なども含めてすべての業務で)評価のポイントが明確といえるでしょう。
例えばセールスの人材なら、給与体系の中に実績に連動するインセンティブの部分があることも多いです。このため、高額報酬を狙って懸命に売上を取りにいくでしょう。
そしてこれは研究開発や企画、生産管理、商品管理、経理事務、営業を後方支援する業務であっても同じです。決して漫然と業務をこなしていて評価が上がらず、あくまで業務での生み出された価値に対して評価されます。
外資系企業には、そういった成果主義の評価制度に対して価値観が合う人材が集まります。自分自身の担当業務のスペシャリストとして、より良好なパフォーマンスを目指して取り組む人材が大半なので、給与水準が必然的に高くなります。
福利厚生や退職金の代わりに個人で完結してもらうため
日系企業では長い間終身雇用の文化があり、退職金制度、福利厚生も企業差はあっても、全体的に充実していました。徐々に変化しつつあるとはいえ、いまだにその名残は残っています。
一方、外資系企業にはそのような文化はありません。一部の日本的価値観が反映している外資系もあるのですべてではなくとも、大半の外資系企業は終身雇用も退職金制度も福利厚生も基本的にはないのです。
また、外資系企業の労働市場は非常に流動的であり、より良い条件を求めて別の外資系に転職することが日常茶飯事といえるでしょう。
つまり外資系の給与は、日本でいう福利厚生や退職金などの社員および家族の生活に必要な資金を包括的に反映させた報酬として提供されています。充分に給与を出すので、あとは個人でやりくりしてもらおうという考え方が含まれているのです。
限られた優秀な人材確保のためのモチベーションを上げるため
外資系企業には当然本国からの人材も参加しますが、規模が大きければ大きいほど、メンバーは現地の人間で構成されます。その場合に、専門的なスキルがあってなおかつ英語力の高い人材が求められます。ところが専門的なスキルと語学スキルの両方が優れている人材は、限られるのが現状です。つまり人材確保が容易ではないという前提があります。
そのような状況で限られた優秀な人材を集めるためには圧倒的に高い水準の年俸を提示して、それをモチベーションとして人材を集めるというやり方をあえてするのです。
リスクプレミアムとして、人材への投資を行いたいから
モチベーションのために高額収入を設定することと、一見似ていて異なる「リスクプレミアム」という考え方があります。これは、馴染みのない外国の企業に属するリスクを金銭で埋めるために、先行投資的に通常の求人よりも高額の報酬をもって人材を確保する手法です。
外資系企業は、世界的に有名な企業でないかぎり、日本に進出してきた時点で本国では有名でも日本ではほとんど知られていないことが多いでしょう。日本人からすれば、未知なる外国籍企業に入るのは先行きの不安を感じて当然であり、なかなか人が集まらないことがあります。そのため認知度が低い外資系企業が人材確保として、用いられることが多いです。
一般募集の場合だけでなく、ヘッドハントやリファラルのような企業側から人材に働きかける場合にもリスクプレミアムが色濃く反映して好条件になることが多いです。
外資系ならではの給与体系とは
外資系企業と日系企業では、給与体系が大きく違います。どのように違うかに目を向けてみましょう。
外資系には年俸制が多い
外資系企業に多く見られるのは年俸制です。あらかじめ年間のトータルでいくらという契約をし、その年の業績によって翌年の年俸が交渉を踏まえて決定します。支払い方法として典型的なものは、年俸額を12分割して月給の形で支給されるパターンです。
日本には夏と冬に一時金としてボーナスが出るのが一般的なので、それに寄せて16分割や14分割した上で、年2回は3ヶ月分や2ヶ月分を支給するというパターンなどもあります。交渉で年俸を上げたいときは、合理性がある材料をきちんと提示すれば基本的には認めてもらます。
ベースサラリー以外のインセンティブが高額な場合もある
企業やポストによっては、給与体系がベースサラリーとインセンティブの二段構えになっている場合もあります。ベースサラリーは感覚的には日系企業でいう基本給に近いものです。実績とスキルに応じた等級で決められます。実際には日系企業ではさまざまな手当てが上乗せされるのに対して外資系にはそれはないので、そういった手当ても包含した給与と考えてよいでしょう。
一方、インセンティブは実績に応じて支給される出来高払いの報酬です。実績に応じて、ベースサラリーの5〜30%程度が上乗せされます。企業にとっては最高100%という設定もあって、これは実績次第でベースサラリーの2倍になるということです。
インセンティブは実績と職種によって変動するので、求人情報では「インセンティブあり」とだけ記載し、額面の目安には触れていない場合が多いです。また、ベースサラリーのみを公開している外資系企業もあります。よって、インセンティブがあるかどうかが不明な場合は、企業に問い合わせしておきましょう。
役職と年収は必ずしも比例しない
日系企業と違って、外資系では役職と年収は必ずしも比例するものではありません。日系企業の場合、いわゆる平社員から主任や係長、課長や次長、部長などと昇進するほど基本的には昇給していきます。ところが成果主義が基本である外資系企業の場合、年俸交渉は役職がどうというよりも実績・成果です。つまり役職がどうであったかにかかわらず、大きく年俸がアップダウンすることがあります。仮に中途採用で入った外資系企業の最初の年俸が700万円だったとして、良好な成果を出せば、100万円単位でアップすることも珍しくありません。
もちろん、外資系企業に役職が関係ないというわけではなく、ベース部分はアップします。しかしながら、役職がない人であってもパフォーマンスが良好であった場合にそれに応じて報酬に反映するのが、外資系企業ならではの価値観といえるでしょう。
また、外資系企業の年俸交渉に関する材料はあくまで実績や成果です。企業側に適正に評価してもらうためには、どのような成果を上げたのかを明確に伝える必要があります。そのためには相手を納得させうる合理性がある数値や背景の材料をもってプレゼンしなければなりません。
上司との関係性もあなどってはいけない
そして、多くの場合その評価をするのは直属の上司です。外資系企業は合理的な考え方の人たちの集まりではありますが、それでも人間です。相性というものが評価に反映しないとは言い切れません。
イメージ的に外資系は実力主義だから上下の関係は気にしなくてもよいのだろうと考える方もいるかもしれませんが、それは少し違います。
たしかに古い体質の日系企業に比べれば、上司と部下の関係が「フランク」ではあっても「フラット」ということではありません。それを履き違えると、上司からの評価にネガティブなバイアスがかかるおそれもあります。実績を適正に評価してもらうためにも、直属上司とは常日頃から良好なコミュニケーションを取っておき、お互いに理解し合える関係を構築することが賢明でしょう。
やはり英語力があると有利!
最後に付け加えたいのは、やはり外資系企業においては英語力がある人材は年俸が高くなる傾向があるということです。入社すると部署によっては、日々の業務に関わるドキュメントにせよ連絡報告、打ち合わせや会議にせよ、ほぼ英語で行われることがデフォルトになります。つまり、英語をブラッシュアップする目標を持つ人にとっては、磨き上げやすい環境となるのです。だからこそ、転職活動と並行して英語スキルを磨く努力には意味があります。
ぜひ、TOEIC800超えというビジネスレベルを目指しましょう。
業務をこなしながら英語スキルに対する向上心を持って、いい意味で貪欲に英語力を身につけていくことで人材価値が上がり、報酬アップの後押しになります。しかもそれだけではなく、磨き抜いた英語スキルは業務のパフォーマンスレベルを間違いなく上げ、結果的に成果にも好影響をもたらすでしょう。英語力を身につけるメリットとしては、その成果によってさらに報酬がアップするという、好循環を生み出すポテンシャルがあります。
まとめ
外資系企業が日系企業よりも高額年収になる理由を紐解き、外資系ならではの給与体系を解説しました。もともとグローバルに展開できる優良企業である上、専門分野と英語の両方のスキルが高い人を呼ぼうとするので条件が良くなるのです。また、福利厚生や退職金がない分、個人で完結してもらおうという意味合いや、日系企業の信頼度に対抗したリスクプレミアムを乗せするなどの要因が絡み合って、高額年収になるのは至極当然の成り行きでしょう。
外資系への転職を考えているみなさんは、これらの背景をよく理解して転職活動に向き合いましょう。