近年スタートアップ企業やベンチャー企業など、IT業界では創業から日の浅い企業が多く参入している状況です。新規参入の新しい企業では、いかに自社製品を売り込むかが重要なポイントです。そのため、試行錯誤しながら効率的な営業フローを確立しなくてはりません。このように自分のアイディアで仕組み作りができるスタートアップ企業にやりがいを感じ、強い魅力を感じる人も多いでしょう。
一方で、独自の営業フローが確立している大企業の営業とこれから仕組み作りをするスタートアップの営業では、業務内容が異なります。
今回は、スタートアップ企業の営業について詳しく解説します。これからスタートアップ企業の営業を目指す人は、詳しい業務内容や求められるスキルなどをきちんと理解しましょう。
目次
スタートアップ企業とは
スタートアップ企業と聞いても、いまいちピンときませんよね。ここでは、スタートアップ企業と大企業の違いについて解説します。
まずは、スタートアップ企業について解説しましょう。
スタートアップ企業とは、創業から2~3年ぐらいで、新しい商品やサービスを開発する企業のことです。もともとスタートアップ企業という言葉は、IT関連企業が集まるアメリカのシリコンバレーで生まれました。
現在の日本の代表的なスタートアップ企業は、freee(クラウド会計ソフトウェア)やスマートニュース(情報アプリ)などがあります。
創業したばかりの企業、と聞くとベンチャー企業と混同してしまう人も多いでしょう。しかし、スタートアップ企業とはビジネスモデルが異なります。
スタートアップ企業は、新しい商品やサービスなどのビジネスモデルを開発しますが、ベンチャー企業は、既存のビジネスモデルをさらに展開し収益化することが目的です。つまり、スタートアップ企業はビジネスを新規で開発するのに対し、ベンチャー企業は既存ビジネスを発展させる違いがあります。
スタートアップ企業と大企業の違い
スタートアップ企業と大企業の大きな違いは、会社の規模や業務フローが確立しているかどうかです。
大企業は、創業何年も続く規模の大きな企業であり、自社独自のビジネスモデルが確立しています。従業員数も多いため、それぞれの担当業務がはっきりしており、自分の業務に集中して取り組めるのが特徴です。
しかし、スタートアップ企業は、小規模な企業が多く、新しいビジネスモデルを作り出す段階です。そのため業務フローが確立しておらず、自分たちで作らなければなりません。また従業員数が少ないため、幅広い業務を一人の担当者が兼任することも多いでしょう。
スタートアップ営業のメリット
規模が小さく、業務フローが確立していないスタートアップ企業ですが、大企業にはないメリットも。ここでは、スタートアップ企業で営業をする際のメリットについて解説します。
フローを自分で生み出せる
スタートアップ企業では、業務フローが確立していないため、自分のアイディアを盛り込んだ仕組み作りが可能です。たとえば、想定ユーザーの選定から営業手法まで基礎となる営業フローを作るため、やりがいを感じやすいでしょう。このように、自分で考え工夫しながら課題に取り組むため、問題解決能力が身に付きます。
スタートアップ企業は、誰かの作ったやり方に従うより、自分で新しい仕組みを作りたい人におすすめです。
ある程度裁量権がある
スタートアップ企業は、従業員が少なく一人で幅広い業務を担当することが多いです。そのため、業務に対してある程度裁量権が与えられており、自分の意見を反映させやすいのも大きなメリット。また、従業員が少ないため経営陣と接する機会も多く、上層部に自分の意見を直接伝えやすい環境です。
頑張りが待遇に反映されやすい
企業の規模が小さいため、大企業に比べて年功序列や組織体制の壁を感じにくいのもスタートアップ企業の魅力です。年齢や勤続年数など関係なく、実績がそのまま待遇向上やキャリアアップにつながるでしょう。
どうすれば会社が成長できるのかを常に考え、貢献することで自分自身も成長できます。
スタートアップ企業にも通用する、営業の特徴
スタートアップ企業の営業では、予算が限られているため、少ない予算で最大限の成果を得ることが重要です。ここでは、スタートアップ企業の営業の特徴について解説します。
市場調査
大企業の場合、市場調査は営業職以外の担当者がおこないます。しかしスタートアップ企業では、営業担当者が自ら市場調査をしなくてはなりません。
市場調査の方法は主に「市場・顧客分析」「競合調査」「自社分析」の3つです。「市場・顧客分析」では、市場の規模やニーズ、業界の制度や法律などを調査します。自社のサービスや商品が求められている市場やニーズを把握し、的確にアプローチすることが売り上げアップには重要です。
市場や顧客について把握したら「競合調査」をおこないましょう。ライバルとなる他社商品やサービスを分析し、自社との差別化を明確にします。そうすることで、訴求ポイントがはっきりし顧客にアピールしやすくなります。
目標設定
市場調査の次は、目標となる数値とKPI値を設定しましょう。KPIとは、Key Performance Indicatorの略で日本語では「重要業績評価指数」と訳されます。KPI値とは、最終目標のための中間指標です。代表的なKPI値は、営業の制約数、受注単価、解約数があります。
まずは目標である売り上げの数値と期間を設定しましょう。たとえば、具体的に〇月までに月〇万円売り上げると目標を決めます。次にこの目標を達成するために、途中経過を確認するKPI値を設定しましょう。
たとえば、毎月の成約数やアポイント取得数などを管理することで、目標達成までに何が必要なのか可視化できるでしょう。
KPIを設定する際には、実現可能な数値を掲げることが重要です。目標達成を目指すあまり、非現実的な数値を設定してしまうと従業員のモチベーションが下がる原因にもなります。現実的なKPI数値の設定が難しい場合、そもそもの目標が現実離れしている可能性もあるため、見直しが必要です。
KPI数は、数が多すぎると管理が難しくなるため、3つ程度が良いでしょう。重要な項目だけに絞って数値を決めることがKPI値設定のコツです。
予算決定
売り上げ目標を決定したら、目標を達成するまでにかかる予算の設定をおこないます。予算決定には、CVR(受注率)とROI(投資利益率)が重要。CVRとは実際に受注した割合のことを指し、ROIとは投資したコストに対してどれほどの利益を生み出せたのかを表しています。
予算決定の際は、まず過去の売り上げデータからCVR(受注率)を割り出し、投資利益率(ROI)が合っているかを確認しましょう。スタートアップ企業のため過去のデータがなく、CVR(受注率)が算出できない場合は、概算でも良いので、必ずROI(投資利益率)を確認します。
ざっくり予算を設定してはいけない理由としては、予算をかけて売り上げが上がっても、コストが高ければ利益が残らず赤字になることもあるためです。どれほどの予算をかければ、いくらの利益が得られるのかという概算をおこない、予算を決めることがポイント。
スタートアップ企業の営業に向いている人
スタートアップ企業の営業職は、営業の基盤を作らなければならないため、営業職としての経験やノウハウが必要です。また資金が充分にあるスタートアップ企業は少ないため、人材教育に費用をかけられないことも多いです。そのため、即戦力で会社に貢献できる人材だけでなく、マルチタスクのスキルや行動力・体力がある人材を求めています。
このような点から、スタートアップ営業の募集では、営業の経験があり一から仕組み作りができることをアピールポイントしましょう。
スタートアップ企業でも通用する、営業を成功させるポイント
スタートアップ営業では、幅広い業務を兼任できるだけの知識と的確な数値分析が重要です。ここでは、スタートアップ企業での営業を成功させるポイントについて4つ解説します。
自社製品への深い知識を持つ
自社製品を売り込むためには、製品のメリット・デメリットを把握し、深い知識を身に付けることが重要です。そうすることで、競合他社の製品との違いを顧客に伝えられ、成約につながるでしょう。
まずは1件売って、実績を作る
知名度が低いスタートアップ企業では、友人や知人などの人脈を使い、まず1件販売することがポイントです。販売実績を作ることで製品に対しての信頼も上がるため、そこから2件目につながります。
このように徐々に購入者が増えることで、知名度も上がり売り込みやすくなるでしょう。
サービスレスポンスの分析をしっかり分析する
商品が売れたら、顧客から満足度を聞き取り、改善点がないか分析することが重要なポイントです。自社製品が想定していたニーズを満たせているか、コストは見合っているかを分析します。
また、購入に至るまでの経緯を分析することも大切です。どのような方法で自社製品を知り、何が決め手で購入を決断したのか、売れるまでのプロセスについても丁寧に聞き取りましょう。
営業の質と量を重視する
顧客からの反響の分析が終わったら、営業手法と自社製品に反映させることで、売り上げアップにつなげます。特にスタートアップ企業は商品・サービスで振り向いてもらえる点は少なく、個人の行動が重視されます。
売り上げにつながる効果的なアプローチを見つけ出せれば、成約につながる質の高い営業が可能です。質の高い営業を何度も繰り返すことで、成約率が高まり売り上げも伸びるでしょう。闇雲に営業を繰り返すのではなく、営業の質と量を重視しましょう。
まとめ
スタートアップ企業の営業は、ノウハウを一から作り上げ、売れる手法を考え出すスキルが必要です。大企業と違ってある程度裁量権を持って仕事ができるため、やりがいを感じることも多いでしょう。
教育コストをあまりかけられないスタートアップ企業の求人では、即戦力として貢献できる長年の経験やスキルを持っている人が求められています。スタートアップ企業の営業は、これまでの営業職としての経験や知識を最大限活かせる場と言えるでしょう。