コーチングで書くジョブ・ディスクリプションとは【職務記述書(JD)を書くためのコーチング1】

Caucasian businessman in the office shoot

新しい雇用枠(ポジション)を開設して、人を採用する際に用意するのがジョブ・ディスクリプション(Job Description/以下 JDとして略します)です。

日本語では、職務記述書、職務明細書、仕事内容書、もしくは採用条件書などに訳されています。

つまりJDをみれば、どのような会社がどのような部署で、どのような人を求めているかを確認できる書類です。

外資の会社はJDを作成していることが多いですが、日本の会社ではあまりなじみがないかもしれません。

それは、JDを作る会社は、見込みで人を採用して、多能工や部署異動を前提としているわけではなく、この仕事をしてもらいたいから、こういう人を取るという採用方式をとっているからになります。

採用する側も、採用される側もこのJDを確認することによって、採用部署の仕事内容、求められている能力やテクニカルなスキルを明確に共有できます。

なおかつ会社のカルチャーもJDの中から読み取ることもできます。

ですので、JDを作成するには、会社のミッションから紐解かれた、人を雇いたい部署が目指していることや、部署の具体的な仕事、どのような人材を求めているかといったことを細かく書く必要があります。

そのため、新しい仕事の採用枠であればあるほど、応募者に伝わるように書かなくてはいけません。

ここではある会社のプロジェクト推進部を舞台に、JDを書くための手順を、雇用するマネージャーと上司とのコーチングを通して、八回に分けて解説していきます。

コーチングとは、傾聴、承認、質問といったサイクルのコミュニケーションで相手の潜在意識の中から考えを引き出し、最終的には自発的なアクションプランを導き出す手法です。

新しいことに取り組むためにイメージをはっきりさせたり、すべきことを洗い出す手助けしたりすることもコーチングで可能になります。

下記はこの面談の舞台の背景と登場人物についてです。

彼らはオミヤゲドットコムという会社のプロジェクト推進部の社員です。
プロジェクトマネージャーの佐久間はチームメンバーの成長のためにOne on One(一対一の面談)をコーチングで行っています。主に直属の部下で、女性管理職のプロジェクトリーダー菅沢を対象としています。

主な登場人物:
佐久間省吾 35歳 プロジェクトマネージャー
菅沢莉子  32歳 プロジェクトリーダー
東堂聡志  28歳 プロジェクトメンバー

One on Oneの時間はコーチングで行うという事になっている菅沢との面談ですが、今回はどうやら、新しいポジションを菅沢の部下としてオープンできる事になったようです。面談ではその旨を伝えて、JDの作成を依頼するようです。

新しいポジションのジョブ・ディスクリプションを書くには

失礼します
菅沢
佐久間
どうぞ
佐久間さん、いま会議室を出て行った方、藤崎さんですよね。人事のリクルーターの
菅沢
佐久間
そうです
私、入社の時にお世話なりました
菅沢
佐久間
そうでしたね。彼女、この部署担当ですから
なにかあったんですか
菅沢
佐久間
ちょうどよかった。今日、その話をしたいと思っていたんです。コーチングでの
One on Oneは今日お休みになりますがいいでしょうか
あ、はい
菅沢
佐久間
①なにかあれば、別途時間取ります
ありがとうございます。でも、大丈夫です
菅沢
佐久間
実は、この部署でもう一人リソース(人員)を確保することができたんです
え?
菅沢
佐久間
少し前に、提案書書いてもらったの覚えてますか
あ、あの、私達の、『プロジェクト推進部の今後の展開について』ですね
菅沢
佐久間
はい、菅沢さんのプロジェクト単位ではなく、継続的で、戦略的な各部門の強化を図る改善や新しい取り組みを行うというあれです
部署紹介の一環だと思っていました
菅沢
佐久間
いえ、より具体的に書いてもらったのは、実際、部門として新しい提案をしていくためのものでした
そうだったんですね
菅沢
佐久間
各部門のマネージャーには菅沢さんからプレゼンしてもらったと思うんですが
はい、プレゼンのいい練習になりました。ありがとうございました
菅沢
佐久間
②各部門、内容についてわかりやすくて、今後の展開が理解しやすいといういいフォードバックをもらいました。私もそう思いました
そうだったんですか。真剣には聞いてくださったのですが、皆さんから質問がなかったので、不評だったのかと
菅沢
佐久間
いえ。けど、ちょっと菅沢さんの顔が真剣すぎて、怖かったかな
え?こ、怖かった・・・・・・
菅沢
佐久間
眉間にしわが
どうしてすぐにフィードバックしてくださらなかったんですか
菅沢
佐久間
あ、いや、プレゼン自体は過不足なく伝わっていたし、あの後、すぐフィードバックするとすごく落ち込みそうな気がしたから
コーチングではフィードバックはタイミングが大事なんじゃないんですか
菅沢
佐久間
はは、そういうこと教えたね。たしかに。すみませんでした。だから今のタイミングで。菅沢さん、プレゼンするときには、少し微笑みを意識してください
わ、わかりました。次回から気をつけます
菅沢
佐久間
それで、本題にもどると、『プロジェクト推進部の今後の展開について』を取締役メンバーにも話をしたところ、各部門から積極的におこなってほしいと言う話になりました
え?
菅沢
佐久間
最近、会社のミッションが変更になったこともあって
『日本』で、というのを『世界』と変更になったあれですね
1 世界中のお客様に満足を届ける
2 世界中のお客様に日本製品を届ける
3 世界中のお客様に日本文化を届ける
菅沢
佐久間
そうです。ミッションが変われば、部門のミッションもかわります
部門のミッション
菅沢
佐久間
新しい採用枠を採用開始できるのは来年になります。ですが、今からそのミッションを部門のためにブレイクダウンして、新しいポジションのジョブ・ディスクリプションを菅沢さんに書いてもらいたいんです」
私がですか?
菅沢
佐久間
はい、菅沢さんにハイヤリングマネージャー(雇用マネージャー)をしてもらいたいので
ぁ。でも新しいミッションの仕事をするなら佐久間さんの直轄のほうが
菅沢
佐久間
プロジェクト推進部の仕事をもっと多角的にして、部門の価値を上げたいというのは、菅沢さんのゴールでしたから
ありがとうございます
菅沢
佐久間
も手伝います。次回からのOne on Oneをコーチングに戻しますので、『JDを完成させる』をテーマにしてもらってもいいですし、別途、ブレインストーミングをして考えるなら、時間を設定してください
はい。考えてみます
菅沢

セッションのポイント

1 今回はコーチングをお休みすると言っていますが、コーチングは継続することが大事ですので、時間を別途取るかどうかは、コーチを受ける側に確認しましょう。
2 承認のフィードバックは具体的に相手に伝わりやすい言い方をしましょう。

佐久間は次回からのOne on Oneをコーチングに戻すと伝えています。
雇用を任された菅沢がこれから、新しい会社のミッションからJDに落とし込むための時間として使ってはどうかという提案もしています。ですが、コーチングのテーマはあくまでも、コーチされる側が決めますので、次回も佐久間は時間をどう使うかを聞いてセッションを始めます。

まとめ

ほとんどの海外企業ではポジション事にジョブ・ディスクリプション(JD)を用意する事が当たり前になっています。作るには、会社のミッション、部署のミッション、雇いたい人のスキルセット等を明確にし、会わせて会社の文化も伝えられる物を作成します。新しいポジションで、部署のミッションが変化するなら、部門のゴールに合わせた内容が必要です。
*この物語に登場する人物名、団体名、システム等はすべて架空のものです。

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