会社のミッションから部署の方向性を確認する【職務記述書(JD)を書くためのコーチング6】

プロジェクト推進部のプロジェクトリーダー、菅沢は部署の価値を高めるため、他部署との連携した改善やプロジェクトの立ち上げのための部下を採用することになりました。上司、佐久間とのコーチングを通して、職務記述書(Job Description/ 以下JDと略します)を新たに作ります。

前回のコーチングでは菅沢は、部署のミッションと会社のカルチャーについて文書化するというアクションプランを掲げ、文書化したものをメンバーの東堂と佐久間も入れて、レビューをしたいと言っています。

今回はこのコーチングの時間でレビューをすることになりました。東堂も入ってディスカッションです。

プロジェクト推進部の背景:
彼らはオミヤゲドットコムという会社のプロジェクト推進部の社員です。
プロジェクトマネージャーの佐久間はチームメンバーの成長のためにOne on One(一対一の面談)をコーチングで行っています。主に直属の部下で、女性管理職のプロジェクトリーダー菅沢を対象としています。

主な登場人物:
佐久間省吾 35歳 プロジェクトマネージャー
菅沢莉子  32歳 プロジェクトリーダー
東堂聡志  28歳 プロジェクトメンバー

<部署単位のミッションについて>

えっと、今日は皆さんと部署のミッションと会社のカルチャーについて、意見を聞きたくてお時間いただきました
菅沢
東堂
あの、ちょっと背景について確認したいんですけど
すみません。ミーティングの案内だけ送ってしまって
菅沢
佐久間
私から説明しましょう。もう一人、この部署に採用枠が確保できた話は、全体ミーティングで伝えたと思います
東堂
あ、僕の同僚になる人っていうことですよね
佐久間
そうです。今回、他部署間のプロジェクト推進や、改善推進を視野にいれて、部署の役割の強化をはかるという動きの一環です。その採用枠の職務記述書、ジョブ・ディスクリプションを菅沢さんに書いてもらうのに、まず部署のミッションと、採用したい人に伝えるための会社のカルチャーを整理しようという話になりました
そうなんです。で、私が言葉におこしてみたので、お二人からも意見が欲しくて。なので、①今日のミーティングのゴールは、皆が納得いく部門のミッションがはっきりすることです
菅沢
東堂
僕も、なんというか、仕事を進めていくうえで、ポリシーというか、プロジェクト推進部が目指している方向性が欲しかったです
東堂さんが?
菅沢
東堂
東堂さんがって?どういう?
何の迷いもない仕事ぶりだと思っていたので
菅沢
東堂
そんなわけないじゃないですが
そうなの?
菅沢
東堂
すぐ見かけで判断するんだから。僕だって、一瞬悩みますよ
一瞬なのね
菅沢
佐久間
一瞬ね。②その一瞬の悩み聞かせてもらえますか
東堂
佐久間さんまで、ええっと、いいですか。プロジェクト推進部って、名の通りの部署なんでしょうけど、結構やってることが多岐にわたるし、他部署間に挟まれた時に、プロジェクト推進部は目指すところここだから、こっちが優先とか言えるものがあるといいなと思ってたんです
佐久間
なるほど、優先順位のつけ方の根拠となるものですね
東堂
もちろん、優先順位は、この部署内、開発のリソース(人員)とか、会社のプロジェクトの優先順位とか、コストとか、タイムラインとかで決めて、ちゃんと説明できてますけど、そういうのって、ともすれば、部署の都合みたいに思われてるかなと
そうそう。まさにそこです。プロジェクト推進部は会社のミッション遂行のためにこういった方向性で動いているからって思えるもの。データだけではなくて、会社に貢献するための根拠がはっきりさせられるものをって思って
菅沢
佐久間
これ、ちゃんと決まったら他部署にも公開したいですね
ぜひ、そうしたいです
菅沢
東堂
会社のミッションって、世界のお客様に満足、日本製品、日本文化を届けるでしたっけ
端折ったわね
菅沢
東堂
意味は一緒だし、時間短縮です
佐久間
まぁまぁ。じゃあ、菅沢さん、文章にしてみたのを見せてもらえますか?」
菅沢「私が考えたのは、
1 お客様の望むサービスの実現
2 低コストと利便性のためのテクノロジーの追求と導入
3 部署間の円滑で効率的なコミュニケーションの推進
です
東堂
うーん
な、なに?東堂さん。何でも言ってください
菅沢
東堂
いえ、これだと、今やってることを無難にまとめた感じかなと。ま、テクノロジーへの追及というのは、今まで言われて導入してきたテクノロジーが多いから、これから積極的にという意味では、新しい気もしますけど
自分も書いててありきたりだなとは思ったんだけど。佐久間さんは?
菅沢
佐久間
ちょっと聞いてもいいですか
はい。もちろんです
菅沢
佐久間
③『お客様が望む』というのをあえてつけているというのは?
低コストだったり便利だったりというのは当たり前の事になっていると思うんです。でも、買う側の都合だったり、事情だったり、それこそ購買環境の変化によって、自分達が思う低コスト、利便性とは違うサービスをお客様が望んでいる場合もあるかなと
菅沢
佐久間
なるほど。だからあえてお客様が望むなんですね
東堂
それ、僕も思ったことがあります。おみやげって、ある意味、心を込めて選ぶものじゃいですか。それこそ記念日とか誕生日プレゼントとかと一緒で、そうしたら、例えば、オーダーメイドでいいから、こういったデザインにしてほしいとか、色にしてほしいとか。そんなのも出てくるのかなと。あと、昔買ったものが今でも手に入るかとかの検索サービスとか
佐久間
面白いね。セレクションのバリエーションというサービスですね。買い付け部の提案も率先して検討できるという方針にするのはいいですね
東堂
もちろん。お客様から不便だという顧客担当部からの意見もそういったところで優先順位を上げられるし
東堂さん、顧客担当部と定例会議してくれてるものね
菅沢
佐久間
じゃあ、1と2は問題なく、皆の合意が取れてる感じかな?
東堂
あと、3を補足する意味で、『積極的な改善策の提案』を入れたいです
そうだ、そうですよね。今回の方に積極的にお願いする部分ですから
菅沢
佐久間
じゃあ、僕からも『データ分析と品質管理へのこだわり』
東堂
はぁ
あー
菅沢

セッションのポイント

1 今回はコーチングではありませんが、グループで時間を設けた場合、ミーティングのゴールを明確にして始めると、最後にまとめる時に予定通りのことができたかどうか確認しやすくなります。
2 佐久間は、あいまいな言葉をひらって言葉の明確化を行い、チーム内で同じ目線に立てるようにしています。
3 ここでも、あえて入れた言葉がチーム内でどのように理解されているかを助ける質問をしています。

まとめ:

グループで話をする場合、一つの言葉がそれぞれのイメージを持ってしまうと、同じ会議にでていても、次に話をしたときに、食い違うことも出てきます。コーチングのあいまいな言葉を明確にする方法を使って、同じ目線で話し合えるようにすることで、より深い理解につながります。

次回は人事、リクルーターのメンバーをいれて、カルチャーについて話をする回となります。
*この物語に登場する人物名、団体名、システム等はすべて架空のものです。

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