近年では企業の雇用もグローバル化の傾向があり、海外からの人材を採用する企業も増えつつあります。海外の高度な人材を採用するメリットは注目されており、間違いなく今後もその傾向は強まるでしょう。
外国からの人材力を活かす上で、欠かせないのが上司のマネジメントスキルです。外国人を指導する要領を心得ているか否かは、仕事を進めるスピード感や成果にも大きく反映します。
しかしながら、外国からの人材を採用している多くの企業の、外国人を部下に持った日本人上司が指導の大変さを訴えているのです。
この記事では外国人部下を持つ上司が、彼らを誤解しやすい部分や彼らにしてはいけないNG項目を確認し、そして上手に指導するためのポイントをご紹介します。
目次
外国人部下が扱いにくいと感じる3つの理由
さまざまなアンケート調査によりますと、外国の人材を受け入れた企業の上司の半数を超えるひとたちが、外国人は扱いにくいと感じている結果が出ています。
そう感じる主な理由を、外国人が正社員レベルの場合を対象として見ると、「自己主張が強い」「昇給の要求が強い」「指示通り実行しない」「組織へのロイヤルティが低い」などが多いようです。
多くの上司にそう感じさせてしまうことには、以下のような外国人部下が持つバックグラウンドが関係しています。
幼少期の教育方針
アルバイト経験に乏しい
組織がわかっていない
それぞれについて、少し詳しく触れておきましょう。
幼少期の教育方針
国によって差はありますが、多くの外国人は幼少期から家庭で、自己主張をしっかりするように教えられています。学校でも社会に出たら際立つことや、周囲に流されずに自分の意見を主張することを教えられて育ってきたのです。
日本でもそういう育て方の家庭はあるにしても、主流とはいえません。むしろ、周囲との協調を教える方が多いのではないでしょうか。そのため、日本人上司は外国人部下のスタンスには違和感を感じ、戸惑ってしまうのです。
アルバイト経験に乏しい
日本の学生はアルバイトをするのは、必須ではないにせよごく普通のことです。しかし外国から日本を訪れる優秀な人材は、意外とアルバイト経験が乏しい傾向にあります。
外国では、大学のランクが高ければ高いほどアルバイト経験は少なくなるようです。大学からの課題も多く、勉学にかける時間が生活の大半を占めるようになります。
また、アルバイトをするにしても、学内の軽作業を少々する程度です。企業のアルバイトをガッツリ行う学生の割合は、日本ほどは多くないでしょう。
日本のようにさまざまな企業でアルバイトをすると、学生でありながら社会人が働く現場の空気をたっぷりと実感できるのです。その中で、上司や同僚との適切な関わり方や、指示にはきちんと従うことなどの、働くことの基本をたくさん学べます。
一方、アルバイト経験が乏しい外国人は、大学を出たこと自体で充分にプロフェッショナルであるという意識を持つ人が、案外多いようです。よって、自信を持つ割には、社会的な常識がまだ育まれていないことになるのでしょう。
組織がわかっていない
これは先の2つの項目とも深い関係があります。つまり、個人の主張は大切にしつつも社会の現場を知らない外国人は、同時期に入社した日本人に比べれば組織全体の仕組みや自分が配属された部署の位置づけを理解していないことが多いのです。
上司としては日本人の新人と同様に、それぐらいは理解していると考えてしまいます。そのため、それを詳しく説明することもありません。結果的に外国人は、期待されている役割を果たせないまま、日々を過ごしてしまうことが多いようです。
これらの要素が絡み合って、外国人の部下を持った上司は思うように彼らを使うことができずに困惑します。では、打つ手はないのかというと、そんなことはありません。
上司が外国人部下にしてはいけないことを確認し、その上で上司が誤解しがちなことや具体的な解決策について説明することにしましょう。まずは、してはいけないNG項目について触れておきます。
外国人部下にしてはいけない3つのこと
外国人部下にしてはいけないコミュニケーション上のNG項目は、主に以下の3つです。
頭ごなしの叱責
曖昧な伝え方
空気を読むことを期待
それぞれを、少し詳しく見ていきましょう。
頭ごなしの叱責
日本の企業は、昨今ではボトムアップ型経営の優良企業も増えつつありますが、まだまだトップダウン型経営の企業が多いといわれています。このトップダウン型は、海外では決して主流ではありません。
外国人部下にトップダウン型の上下関係を求めてしまうと、外国人部下が不満を持ちやすく、離職するおそれもあります。たとえ部下がミスをした場合でも、頭ごなしに叱ることは避けましょう。できる限り感情を抑えた冷静な対応が必要です。
また、冷静な叱責であっても、あまり多いと相手が自信を失ってパフォーマンスが低下するおそれがあります。
曖昧な伝え方
外国人はおおむね曖昧な表現を好みません。はっきりとした指示や指摘が重要です。例えば上司が部下に「時間がある時にこの情報を入力して欲しい」という指示を与えたとします。「時間がある時に」は彼らにとっては曖昧です。外国人にとって、そのタスクのデッドライン(締切り)がわからないので、困惑させます。
他にも、外国人部下が日本語の誤用をしているような場合には、遠回しではなくはっきりと指摘しましょう。誤用を続けていては、部下自身も仕事や生活においてデメリットが生じます。
空気を読むことを期待する
「言わなくてもわかるだろう」というのは、空気を読み合う文化を持つ日本人ならではの考え方です。外国人には通用しないと考えておきましょう。彼らに空気を読むことを期待してはいけません。
さて、してはいけないことを確認したところで、次に上司の代表的な困惑が実は誤解であるということを説明し、その解決策についてご紹介します。
よくある上司の悩みに潜む誤解と解決策
外国人部下を持つ上司のよくある不満の中には、実は「誤解」があります。そういう項目の代表的なものは以下の2つです。
指示通りに動かない
プライベートが絶対優先
それぞれを少し掘り下げると、これらが誤解であることがわかり、解決する方法が見えてきます。
指示通りに動かない
外国人の部下は、主張が激しい割には任務を遂行してくれないと感じる上司の多いことが、さまざまなアンケートによってわかります。このように感じてしまうのには、先に言及した「外国人部下が扱いにくいと感じる3つの理由」が直接関係しているのです。
「指示通りに動かない」のは「誤解」であるという理由を説明しましょう。
日本人の会話は、いわば聞き手が責任を持つスタイルです。つまり聞き手は、話し手との関係性や話題の背景や前後の関係、文脈をふまえて、言わんとしていることを察しなければなりません。
これを象徴するのが「暗黙の了解」や「本音と建前」、あるいは「空気を読む」や「阿吽の呼吸」などという言葉です。聞き手側が汲み取る責任があるので、話し手はとりたててわかりやすく伝えようとは、あまり思わない傾向にあります。
一方、諸外国の多くの国は、話し手が責任を持つ会話スタイルです。話し手側が明確に伝えなければならないと考えます。聞き手は言葉の裏を汲み取る気がないので、すべて相手から受け取った情報のとおりに対応するのです。
そのために、上司の意図とは違う対応をすることが往々にして起こり、互いにストレスを感じることになります。つまり、言うことを聞かないのは誤解であり、上司が伝えられていないだけなのです。
ここからは、外国人部下に明確に指示を伝えるポイントをご紹介します。
くどいほど細かく、何度も繰り返す
外国人部下に指示を適切に伝えることは、何も特別な技術は必要ありません。要点としてはあくまでも、具体的かつ明確に詳細まで伝えましょう。これくらい言わなくてもわかるだろうというのは日本人的感覚です。
「何のために」「何を」「いつ」「ごこで」「どのように」するのかを、具体的な数字や固有名詞も補足しつつ、言語化して伝えましょう。それも、一度ではなく繰り返して伝えることが望ましいのです。
コツをひと言でまとめると「くどいほど細かく、何度も繰り返す」ことに尽きます。それくらいでちょうどよいと考えていれば、円滑にコミュニケーションがとれるでしょう。外国人部下も理解して、指示に従ってくれるはずです。
プライベートが絶対優先
もうひとつよく聞く話に、外国人部下がプライベートを絶対優先するから困るというものです。
例えば、会社が主催する大事なイベントで海外からの来場者に対応してもらうために外国人部下に出勤を頼んだところ、休業日である土日や祝日なので断られたという類いがあります。
上司からすれば「彼らはプライベートが絶対優先なのだな」と不満になりますが、実はこれもある種の誤解です。
上司が不満に思うのも日本人なら理解できますが、ちょっと価値観の違いを整理してみましょう。
欧米の国では、充実したプライベートの時間があってこそ、仕事に打ち込めるのだという考え方が主流です。休日を有意義に過ごしたいと考える彼らは、前もって大切な予定などを組んでいたりします。
それを直前になって出勤して欲しいと頼まれても、多くの外国人は理不尽に振り回されたくないと感じるのです。これは、彼らの価値観を理解すれば解決できます。以下で具体的に見ていきましょう。
ハズせない重要事を事前に共有
会社としてどうしてもハズせない重要なイベントであれば、日程はかなり前から決まっているはずです。外国人部下に応援してもらいたいなら、早い段階でそのイベントが会社にとって持つ意義や、彼らがいてくれることの重要度を事前に共有しておきましょう。
さすがに彼らも、それを無視してまでプライベートの予定を入れることはまずないでしょう。それこそ、日本人には馴染みのある「根回し」によって、回避できることなのです。
外国人部下を上手に指導するための基本スタンス
以上が具体例に対応する方法ですが、最後にここで上司として外国人部下と向き合うのに、望ましいスタンスについて触れておきます。
彼らの価値観の背後にある文化をよく理解する
日本という一国の中でさえ、方言や習慣も違えば地域ごとの文化も少しずつ異なります。まして外国であれば、文化の違いはとても大きいものです。
重要なポイントは自国の文化や価値観を押しつけるのではなく、彼らの文化を理解し、尊重することになります。
価値観は文化の背景から育ちます。異文化を理解して尊重するように心がけることで、彼らの価値観や行動原理も次第に理解できるようになるのです。やがて、やり取りの行き違いが減少するのは間違いありません。
褒める指導法をベースにする
文化や価値観が違っていても共通の美徳である、「褒める」ということを指導のベースにおきましょう。そうすれば文化に多くの違いがある外国人部下であっても、良好なコミュニケーションを取りやすくなるはずです。
褒めることは、相手を認めることであり、有名な「マズローの欲求のピラミッド」の上から2番目にあたる高次元な「承認欲求」を満たすことになります。自信を持たせることでモチベーションを上げる結果につながるのです。
承認欲求以外にも、適切に褒められた部下は仕事での充足感によってポジティブな精神状態で仕事に向き合い、楽しみが増えるうえにストレスは軽減し、チーム内の雰囲気にもプラスに反映するでしょう。
ただし、褒める時に注意したいことがあります。単に褒めるのではなく、部下の状況に照らして、褒めるべき具体的なポイントを明確にすることがより効果的です。
パフォーマンスのどの部分を褒められているのか、焦点がぼやけていると逆効果になりかねません。的を射た褒め方をすることで、部下は自分のことが理解されていると感じ、信頼できる上司として接してくれるでしょう。
まとめ
外国からの優秀な人材を活かせるかどうかは、上司のマネジメントスキルにかかっています。外国人部下を持つことは大変かもしれませんが、異文化の理解やコミュニケーションスキルのブラッシュアップ、総じて国際的なマネジメントスキルを磨く絶好の機会です。
ここでご紹介した考え方や解決策も参考にしていただいて、外国人部下のポテンシャルはもちろん、上司の方ご自身のマネジメントスキルもさらに開花させうるような、良好で有意義な関係の構築に、ぜひとも励んでいただきたいものです。
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