TOEICは英語力を測定する試験として認知され、日系企業ではTOEICのスコアが採用試験の結果に大きく影響を与えることがあります。外資系企業へ転職するには英語力が必須で、TOEICのスコアが何点あれば採用試験に合格できるのか、疑問に思いますよね。この記事では、外資系企業への転職に有効なTOEICの点数、またTOEICのスコアよりも重要視されるポイントについて解説します。
目次
そもそもTOEICとは
TOEICとは、国際コミュニケーション英語能力テストと称される、英語のビジネス・コミュニケーション能力を検定するための試験です。TOEICの試験の種類は、日本経済団体連合会等の要請に従って、以下の5種類があります。
- TOEIC Listening & Reading Test (TOEIC L&R):リスニング(約45分間・100問)、リーディング(75分間・100問)のマークシート方式で構成されています。
- TOEIC Speaking & Writing Tests (TOEIC S&W):スピーキング(約20分・11問)、ライティング(約60分・8問)で構成されています。国際的な職場環境で効果的に英語でコミュニケーションを図るために必要な「話す」「書く」能力を測定するテストです。
- TOEIC Speaking Test:テスト時間約20分、問題数11問で構成され、「TOEIC Speaking & Writing Tests」のスピーキングと同じ内容が出題されます。
- TOEIC Bridge Listening & Reading Tests:初中級向け:リスニング(約25分間・50問)、リーディング(35分間・50問)のマークシート方式で構成されています。問題の内容は身近な日常生活を題材にしており、基礎的な英語力を測定できます。
- TOEIC Bridge Speaking & Writing Tests:初中級向け:スピーキング(約15分・8問)、ライティング(約37分・9問)で構成されており、試験会場でパソコンを使って受験します。「TOEIC Bridge Listening & Reading Tests」と同じく、英語学習の初級から中級を対象としています。
一般的に「TOEIC試験」と呼ばれるものは、「TOEIC Listening & Reading Test (TOEIC L&R)」です。名称の通り、リスニングとリーディングが評価対象になっており、スピーキングやライティングは項目に入っていません。
TOEICの点数別にみる英語力
英語を使う機会があまりない日本人にとって、英語力を身につけるのは簡単ではありません。ビジネスで英語を使う機会があまりない人が、TOEIC対策を行わずに受験した場合、700点台に達するのは難しく、一般的には450~600点台後半になるでしょう。人によって個人差がありますが、TOEICの点数でどの程度、英語ができるようになるのかご紹介します。
TOEICスコア | 基本的な英語力 |
600点台 | ある程度、英語がわかるという程度で、簡単な短文であれば聞き取りが可能だが、長文になると理解力が乏しい部分がある。自分の意見を述べるはできるが、言葉に詰まったり、語彙力が乏しいため同じ表現を使うことが多い。中学程度の英文であれば理解できるが、ネイティブ同士の英語のミーティングをすべて理解することは難しい。履歴書に記載することもできるが、外資系企業への転職において有効なアピール材料にはなりにくい。 |
700点台 | 基本的な英語力がある程度習得できており、長文の英語でも理解しながら話についていくことができる。突発的に意見を求められても自分の知っている情報の中で、考えをまとめて発言できる。日常会話程度の英会話であれば問題なくこなせるが、文法上の誤りが残る可能性がある。外資系企業でも、一定レベルの英語業務がこなせると判断できる点数であり、履歴書に記載して英語力をアピールすることが可能である。 |
800点台 | 短文・長文の内容を正確に理解することができ、理解した内容に応じて、発言したり、資料をまとめることができる。しかし、外資系企業のプレゼンテーション等で重視される、「要点の裏付け」などについては、不十分な部分があり、継続的な英語の学習が必要となる。 |
900点台 | 文法や語彙力については、問題なく英語を使った業務をこなせるレベルと思われる。ネイティブとの商談や販路を拡大する営業職にも挑戦できる。 |
上記の表はあくまでも目安となる基準です。後述で詳しく解説しますが、TOEICの点数が高ければ、外資系企業への転職に有利になるわけではないので、注意が必要です。
外資系企業を目指す人が取るべきTOEICの点数とは?
「外資系企業に入るにはTOEIC○○点が必要」という情報を見かけますが、TOEICで高得点を取れば、外資系企業に転職できるとは限りません。実際にTOEIC800点のスコアで不採用になる人もいれば、600点で採用される人もいます。
外資系企業への転職には募集要項にあげられるノルマを達成するための能力やスキル、コミュニケーション能力が重要です。TOEICはあくまでも英語力の目安の一つという認識が必要です。
英語力に自信がない人にとって重要な点は、自分の英語力を客観的に把握することです。英語の勉強を始めるにしても、今どの程度の英語力を持っているのかを知らなければ、効果的な勉強法を見つけることはできません。
そして英語力に自信がなくても外資系には転職可能です。詳しくはこちらの記事を合わせて読むことをおすすめします。
英語ができない人でも外資系企業へ転職できるのか、気になる人も多いでしょう。実は外資系企業には、英語ができなくても転職できます。しかし職種が限定的であったり、昇進が見込めなかったりとデメリットも多く、必要最低限の英語力は必要です。今回は、外資系企業でも英語が不要なケースや英語ができないことのデメリット、求められる英語力のレベルについて解説していきます。併せて外資系企業へ転職する効率的な方法についてもご紹介。外資系企業への転職を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。英語ができなくても外資... 外資系企業へ英語ができなくても転職は成功するのか - 35ish |
TOEICが高得点であれば、外資系企業に転職できるわけではありませんが、今後英語力を向上させていく対策の一環として、TOEICを受験してみると良いでしょう。そこで、次ではTOEICにおいてどの程度の点数を目指せばよいのか具体的に解説します。
社内言語が日本語、クライアントが日系企業の場合:600~700点程度
「外資系企業」という括りでも、応募するポジションによって必要となる英語力は異なります。クライアントの多くが日本企業で、会社内での使用言語が日本語の場合、求められる英語力はさほど高くありません。本部から送られてくる連絡事項や社内情報を読み解く英語力があれば十分です。
つまり、企業内で求められる英語力は「話す」力よりも「読む」力なので、専門用語を英語で解読できたり、中学校レベルの文法が理解できれば問題ないでしょう。一概には言えませんが、TOEICのスコアに置き換えると600~700点が目安になります。
社内で英語が使われる場合:700~750点程度
外資系企業で活躍するため基本的な語彙力と文法力をマスターしたいという人は、TOEIC700~750点を目指しましょう。このスコアを取るには、外資系企業でコミュニケーションを取るために必要になる、基本単語や文章作成に必要な文法力が求められます。試験対策の参考書を何度も勉強すれば、基本的な文法や語彙力、リスニング力を身につけることが可能です。
外国人相手にビジネスをする場合:750~850点程度
外国人クライアントを相手にする営業職や社内言語が英語の場合は「読む」だけでなく、「話す」英語力が必要です。自分の考えをスムーズに英語で表現する力が必要になり、発音や文法力が求められます。会話はコミュニケーションですから、一方がしどろもどろに話すと会話は成立しません。まして商談やプレゼンテーションを行うときは、情報を伝えるだけでなく論理的に話を進めていくことが重要になります。
ビジネスにおいて、的確に話し、意思を論理的に伝えるには語彙力と文法力が欠かせません。英単語を知らなければ文章を組み立てることはできず、文法力が欠けていると話している内容を相手に理解してもらうことはできません。外国人相手にビジネスをする場合は応用できる英語力が必要となり、TOEICのスコアを目安にするとすれば750~850点程度です。
管理職へのキャリアアップを目指す場合:900点以上
外資系企業の管理職、またはマネジメント業務を担当する場合、日常会話レベルの英語力では採用されるのは難しいでしょう。上位ポジションになると自社内での意思疎通だけでなく、本部の役員会議やクライアントの経営陣とコミュニケーションを図る必要があります。「日本人だから英語力は仕方がない…」とみてもらうことは期待できず、ネイティブと対等に意見を交わし、提案や解決策を提示しなければいけません。TOEICの点数に置き換えるなら、900点以上が妥当と考えてよいでしょう。
外資系企業でTOEICの点数よりも重要なこと
外資系企業への転職を望むなら、TOEICの点数を上げることよりもすべきことがあります。具体的に解説します。
海外経験を積む
外資系企業の中には、候補者が生きた英語力を持っているのかの判断基準として、海外経験の有無をチェックすることがあります。アメリカやイギリス、オーストラリアなど英語圏への留学または海外生活の経験があれば、使える英語力を持っていることをアピールできます。
海外に支店を持つ日系企業では、国内だけでなく海外への赴任者を募集していることがあります。外資系企業に転職する足掛かりとして、まずは日系企業の海外支店で実績を作るというのも有効です。
また、思い切って英語圏に移住して、そこで転職先を探すという方法もあります。数年間の海外生活があれば、TOEICの点数では図れない英語力を習得できますし、実効性や行動力の面でも有効なアピール材料になります。
英語での面接の練習をしっかりする
外資系企業への転職において、面接は非常に重要です。外資系企業は日系企業のように生涯雇用を前提としていないので、即戦力の人材を求めています。採用担当者にとって、「この人材は自社にとってプラスになるか、売上実績を伸ばすことができるか」を判断するのが面接なのです。
外資系企業の場合、面接は英語で行われることが多く、英語力に自信がない人にとっては大きな難関となります。日本では謙虚さや謙遜が美徳とされるので、「英語にはあまり自信がありませんが…」と言ってしまうこともありますよね。しかし、外国人には「仕事に対するやる気がない、向上心がない」と判断される可能性があります。
また、英語で質問されると慌ててしまい、理解できる英語なのにしっかりと答えられないこともあります。そうならないためには、面接の練習をしっかりとしておきましょう。
英語の面接では、以下のような質問がよく聞かれます。
- あなたのことを教えてください
- 転職する理由は何ですか
- なぜこの会社に興味を持ちましたか
- 長所と短所を教えてください
- これまでの会社で何を習得しましたか
- 新しい会社で何をしたいですか
想定できる質問一つ一つに自信をもって答えることができるよう、何度も声に出して練習しましょう。以下の記事では、外資系企業の面接対策と答え方のポイントを解説していますので参考にしてみましょう。
外資系企業への転職を考えている方は、面接ではどういう質問をされるのかが想像できませんよね。また、外資系企業では選考過程の中で、英語の面接が行われることもあります。面接担当者が外国人なら当然ですが、日本人でも英語に関する質問から、突然英語面接に切り替わることもあります。そのため、外資系企業を受ける場合は想定される質問への回答の準備はもちろん、いつ英語面接が行われても対応できるように準備しておきましょう。この記事では外資系企業においての面接の傾向や流れ、見られるポイントなどを実戦に応用できる動画... 【英語回答例付き】外資系企業の面接対策と答え方のポイント - 35ish |
プレゼンテーション力を磨く
外資系企業で管理職へのキャリアアップを目指している場合、プレゼンテーション力や論機的思考を磨く必要があります。これらのスキルはTOEICの点数では図ることができず、TOEIC満点を取っているからと言って、管理職やマネジメント業務の全うできるとは限りません。
将来的にこれらのポジションへのキャリアアップを目指している場合、TOEICの点数獲得だけに注力するのではなく、自分の考えを論理的に表現できるようプレゼンテーションのロールプレイングをしましょう。
コミュニケーション能力を磨く
TOEICのスコアが高くてコミュニケーション能力が低い人と、TOEICのスコアは低いけどコミュニケーション能力が高い人では、後者のほうが採用率が高くなります。
コミュニケーションは英語力だけで測るものではありません。英語力が高くても聞かれたことにYes/Noだけで返答するようでは、採用枠を勝ち取ることはできません。限られた語彙力であっても「なぜそう言えるのか、自分には何ができるか」を自信をもって、自分をアピールすることがコミュニケーション能力に含まれます。
コミュニケーション能力を高める方法としては「聞く力」を鍛えることが有効です。つまり、相手の言葉の背後にある考えを推察することが必要です。例えば、面接官から「転職する理由は何か?」と聞かれた場合、単に「仕事が合わなかったから、人間関係に問題があった」だけでは、採用担当者に良い印象を与えることはできません。転職の理由だけではなく、自分のキャリアプランや新しい職場でどうやって能力を開花させていくつもりかを含めて答えましょう。
コミュニケーション能力は短期間で身につくものではありません。日頃から、相手が何を言いたいのか、どうすれば自分の考えを的確にわかりやすく伝えることができるのかを意識することで、英語力に不安があったとしてもコミュニケーション能力でカバーできるでしょう。
外資系に入ってからも使える、スピーキング力を鍛える方法
英語力における日本人の弱点と言われているのが、「話す能力(スピーキング)」です。採用試験をクリアしても業務上のコミュニケーションで支障が出ると、仕事を続ける上で問題になります。ここでは、外資系企業に入ってからでもスピーキング力を伸ばせる3つの方法をご紹介します。
スピーキングの機会を増やす
外資系企業に転職しても積極的に会話の機会を作り出さなければ、英語力は向上しません。外国人スタッフに積極的に近づいて会話をしたり、インターネットの英語教室や語学学校で英語を話す機会を多くしましょう。正しい文法や発音も重要ですが、まずは、自分の言いたいことを英語で言えるトレーニングを積みましょう。
インプットの量を増やす
英語学習において「アウトプットが重要」と言われますが、アウトプットするにはインプットの量を増やす必要があります。インプットの量を増やすには、英字新聞や英語のネットニュースを読むことが有効です。
ただし、自分の英語力に見合わない難易度の英文を読もうとすると、すぐに意欲がそがれ継続できません。ちょっと努力すれば理解できる、という程度の教材を選ぶと良いでしょう。
とにかく継続すること
英語力は一朝一夕で向上するもではありません。「読む、聞く、書く、話す」能力を、バランスよく、短い時間でも毎日続けることが重要です。週末にまとめて勉強するより、毎日、短時間でも繰り返し勉強することで、必ず英語力はアップします。今ではスマートフォンを使ったeラーニングも多く提供されているので、通勤や昼休みなどの隙間の時間を英語学習に充てることもできます。
まとめ
本稿では、外資系企業に転職するためにTOEICは何点必要かについて解説しました。結論から言うと、TOEICの点数が高いからと言って外資系企業に転職できるわけではありません。
外資系企業では、TOEIC試験の点数よりもコミュニケーション能力や経験値が重要視されます。候補者にとって大切なのは、限られた英語力であっても自分の考えや強みを自信をもって相手に伝えることです。なぜ転職したいのか、新しい職場で自分には何ができるかをしっかり伝えられる英語力を身につけることが先決です。
しかし、TOEIC試験を受けるのが全くの無駄というわけではありません。試験勉強をすることで、語彙力や文法力を伸ばすことができ、アウトプットの機会と組み合わせることで使える英語を身につけることができます。
英語力は短期間で身につくものではありません。外資系企業への転職のチャンスをしっかりとものにできるよう、今から英語の学習を始めましょう。