「退職証明書」という書類があります。これは企業を退職したことを、客観的に証明する書類です。転職先の企業からの提出が求められることがあります。
離職票と混同されている場合もしばしば見受けられますが、まったくの別物です。そもそも、転職先の企業に退職証明書を提出する理由はなぜでしょうか。
この記事では、転職活動の中での退職証明書に関する大切な情報を、わかりやすく解説していきます。
目次
退職証明書とは
離職した者がたしかに退職した事実を証明する、企業が発行する書類です。企業は申請された場合には、無条件で発行する義務があります。このことは、労働基準法で定められているのです。
退職証明書が必要になった場合は、前の職場に連絡をすれば、通常は速やかに発行してもらえるということになります。
それでは、混同されることが多い離職票とは何でしょうか。
離職票とは?
失業手当の給付の手続きや、国民保険の申請に必要な書類が離職票です。多くの人がこれを、退職証明者だと思うかもしれませんがまったく別のものとなります。
企業は離職票を、離職者の退職後10日以内にハローワークに必要書類を提出して、発行の手続きをする義務があるのです。一方、退職証明書は従業員の申請に応じて発行する書類となります。
フォーマットに規定はありません。従業員からの申請がないかぎりは、企業に発行義務はないのです。また、離職票は法的効力を持つ公的文書であり、退職証明書は違い、法的効力を持っていません。
転職先が確定していれば離職票は不要か?
退職前に転職先を決めており、失業手当をもらうつもりのない人にとっては、離職票はもう関係ないと考えることもあるでしょう。
しかし、入社前に何らかの理由で内定を取り消されることや、その企業が突然に倒産するなどの、想定外の事態が発生しないとはかぎりません。
次の就職まで多少なりとも時間がある場合は、離職票を受け取っておく方が賢明です。
退職証明書が必要な場合とは?
この書類が必要になるのは、主に2つのケースです。
●転職する先の企業が提出を求める場合
●雇用保険や国民保険の手続きの際に、何らかの理由で離職票がない場合
それぞれを詳しく見てみましょう。
転職先の企業が提出を求める場合
転職する先の企業が、どういう理由から必要とするのでしょうか。理由は企業によってさまざまですが、以下のような目的で提出を求めることが多いようです。
●退職理由の確認
●履歴書や職務経歴書の記載は正しいかを確認
退職理由は面接時にも確認しているはずですが、その内容との矛盾がないかが確認されます。また、勤務歴や給与あるいは役職などの情報も、本人の申告していた事実との一致を確認する意味があるのです。
もちろん、すべての企業がこれを行うわけではありませんが、過去の採用でそういうことに関してトラブルを経験したことがある企業は、慎重になる傾向があります。
とはいえ退職証明書の提出が、そのままあなたが疑われているということを意味するわけではありません。ほとんどの場合は、あくまで手続きに必要な資料と考えればよいでしょう。
発行できるのは退職後2年間
企業が退職証明書を発行する義務は、2年間であることに注意を払っておく必要があります。
離職者は、退職後2年までは何度でも退職証明書を申請することができ、企業は申請に応じなければなりません。しかし、退職から次の転職までに2年以上のずれがある場合は注意が必要です。
かりに、退職後からブランクが2年を超えている場合を想定しましょう。転職をして、転職先の企業から「退職証明書」の提出を求められたとします。
2年が経過していて申請できなかったならば、まず転職先に相談してみましょう。そのような場合、提出を免除されるか、離職票を提出することで代用してもらえる場合が多いようです。
転職が未定でも退職時に申請
退職を考えているなら、退職証明書の申請をおすすめします退職証明書が必要な状況は限られていますが、退職を予定している場合に備えて取得することをおすすめします。
今就職するつもりがなくても、近い将来就職するかもしれません。その際に必要となる可能性があります。
また、何か理由があって離職票が手元に届いていない場合や紛失した場合は、その代用として利用できることがあるのです。退職が決定している人なら、今すぐ申請して事前に発行することをおすすめします。
社会保険を申請する際に離職票がない場合
退職してから次の就職が決まっておらず、雇用保険や国民健康保険の申請をする際に、万が一離職票がないケースでは退職証明書をもって代用できる場合があります。
離職票と退職証明書はどちらも「退職を証明する書類」なので、代わりになるのです。
退職証明書に記載される内容
この書類の形式は決まっていませんが、労働基準法に基づく記載項目が5種類あります。
●使用期間
就業期間を「〇年〇月」と表記しています。試用期間を利用期間に含めるかどうかは、企業によって異なるのです。
●業務の種類
企業が任せていた業務内容を記載しています。どこまで記載するかは企業が決めるため、転職先に伝えたい業務内容の詳細については職務経歴書に記載しましょう。
●地位・役職
この項目は申請者が辞める直前の役職が記載されます。
●賃金
最新の給与が記載されます。この金額は、手取りではなく総額、つまり税金や保険控除前の給与、および交通費と時間外手当を含む金額です。
●退職理由
記載の仕方は「自己都合」「定年・労働契約期間満了」「事業主からの働きかけによる」「解雇」などいろいろとありますが、企業によって異なります。
この部分は転職先の企業からすれば、一番確認したい部分です。よって、内容が足りないと感じた場合は、他の資料で補足することも考えましょう。
退職証明書にこれら5つの項目のどれを含めるかを、申請者自身が選択できます。転職先の企業が指定している場合は、最低限その項目を選択すればよいともいえるでしょう。
ただし、削り過ぎはおすすめしません。たとえば、退職理由を削除して、退職証明書を提出すると、「伏せておきたい理由で辞めたのか?」または「面接時に話していた退職理由と違うのか?」などと疑われかねないからです。
特に理由がないかぎり、すべての項目を含めることをおすすめします。ただし、社会保険の手続きで使用する場合は、退職の事実だけが伝わればよいので、いずれかだけで問題ありません。
また、法的事項ではありませんが、退職日を記載するのが一般的です。退職する前に転職活動をして、入社日が決まっている場合は、在職時と新しい雇用契約の開始が重複しないように気をつけましょう。
発行されたら内容を慎重に確認
発行されたら、内容に行き違いがないかを隅から隅まで確認しましょう。万が一、間違いや行き違いなどがあった場合、そのまま転職先に提出するのは不審を招く元になりかねません。
内容におかしなところがあれば、前の職場にはっきりと伝えるべきです。そして訂正したものを発行してもらいましょう。
退職証明書の申請の手順
退職証明書は前述のように決まったフォーマットはありません。留意すべき点は、手順が企業ごとに異なるということです。
ともあれ前の職場の人事の担当者に連絡をして、退職証明書を発行してもらいたい旨を伝えましょう。併せて、記載を求める項目をきちんと伝えておかなくてはなりません。
また、書類は郵送してもらうのか、データファイルをメールで送ってもらいこちらでプリントアウトするのかなどの、受け取り方法についても決めておくと安心です。
円滑な転職のために活用しよう
退職証明書は大抵の場合において、内定後や最終面接時などの転職活動の終盤に提出を求められます。急に書類を求められた際に慌てなくてもよいように、退職証明書は早めに申請して手元に持っておきましょう。
そして、円滑な転職のために活用してください。この書類はあなたの発言を裏付ける文書であり、転職先の企業への信頼性を証明する重要な書類です。
また、退職証明書に記載される退職理由は、前の職場で働く中での反省や課題を踏まえ、転職したい企業に自分を売り込むための戦略を考える上でポイントとなります。
ぜひとも、転職活動に役立ててください。
まとめ
退職証明書について、それが必要になる理由や記載される内容などを解説しました。離職票が何らかの理由で手元にない場合は代用もできるので、いずれにしても発行しておいて損はありません。
ましてや転職先に提出を求められている場合は、先方にとっての重要な資料になります。前の職場にはくれぐれも行き違いのない内容で、発行してもらうように気をつけましょう。