係長は「長」がつく最初の役職です。昇進の第一段階とも言える係長は、管理職であるような、違うような微妙な役職であるともいわれています。その仕事内容や役割、定義や位置付けとはどのようなものでしょうか。
また、役職がつくことによって責任は重くなりますが、それに見合う年収を稼ぐことができるのかもきになるところです。この記事では係長という役職にフォーカスして、その実態を明らかにし、年収事情なども詳しくご紹介します。
目次
係長は管理職?その定義と位置付け
係長という役職は、「管理職」にあたるのかどうかがよく分からないという声をよく聞きます。ここでは、管理職かどうかも含めて、係長の定義や位置付けを掘り下げてみましょう。
係長は管理職かどうか
一般的には管理職とは「課長」「次長」「部長」を指す場合がほとんどです。つまり、係長は管理職ではないという認識が妥当でしょう。
しかしながら「中間管理職」は課長と係長が該当するとされているので、混乱してしまいがちです。中間管理職であって管理職ではない、微妙な立場が係長といえるでしょう。
係長は、組織の中で業務を行う一般的な最小単位である「係」において、管理的立場を任された役職です。管理職でないとしても管理的立場にあることは間違いありません。
ともあれ、係長に昇進すると年収は上がり、役職なしの同期と比べて数十万円から百万円前後、あるいはそれ以上の開きが出るようです。
係長の位置付け
係は「課」の下位組織であって、係長は課長の補佐的な役割を担います。組織的には課長の部下であり、同じ係の中の非役職者および主任の上司です。
主として若手から中堅の社員に与えられる役職であり、早ければ20代の前半で任命されることもあります。順調に課長に昇進する場合もあれば、長く係長にとどまり、そのまま定年退職の時期を迎える場合もあるのです。
一部では部下を持たない「部下なし係長」も存在します。
係長の下に主任が設けられていることもあり、係に相当する単位として「班」という名称を使う企業もあるようです。大所帯の企業では係の下に班を設けていることもあります。
近年の傾向では組織の階層をシンプルにするために、係長職を設けない企業も増えているようです。
係長の仕事内容と役割
若手社員にとって昇進の第一歩である係長とは、どのような役職なのでしょうか。その時点ではまだ管理職ではないとしても、将来管理職になるための登竜門ともいうべきポジションです。
仕事内容としては係というチームのリーダーとして、一般社員よりも仕事の熟練度や交渉力などが求められます。
係としての業務の進捗を管理し、部下が仕事上のミスを犯した場合はその責任も取らなければなりません。部下の業務の監督をしつつも、係長自身も業務をこなすプレイングマネージャーであることが一般的です。
係長の重要な3つの役割とは?
係長が組織の中ではたすべき、重要な役割は以下の3つです。
●現場最前線のリーダーとして部下を牽引すること
●職務遂行に関する責任者であること
●管理職と現場のよきパイプ役であること
経済環境が時代の流れの中で刻々と変化し、業務の内容は高度化し、また複雑化しています。コンプライアンスの問題もあり、意思決定の前段階で各種法令を深く読み解いて判断しなければならない場合も多くなっているのです。
そんな経済環境の中で、係長の求められる役割もまた多様化しています。例えば、少数精鋭の企画チームのプレイヤーを兼ねる係長と、製造業のように数十人の従業員やパートを指導する係長の仕事の具体的な役割は種類が別です。
しかしながら、どんな職種であっても係長に共通する役割は上記の3点に絞りこむことができます。
優秀な係長が行う部下への「問いかけ」
最も現場に近い役職である係長は、最前線で業務に励むメンバーと日々身近に接します。そんな係長だからこそできる「問いかけ」こそ、多くの優秀な係長が実践し、チームを活性化している手法です。
例えば、部下に何らかの指示を与えたとして、どこかのタイミングで完了の報告や中間報告などが部下から戻ってくるでしょう。その場合、ともすれば「では次はこれを」などと次のステップに進みたくなるものです。
特に多忙であればあるほど、その傾向は強くなります。しかし、ここで一旦立ち止まって、部下に問いかけることがとても意味があるのです。
どのようなフレーズで問いかけるのかは、まさに無限に考えられます。
「気になったことはありますか」
「思い通りに進みましたか」
「やっている最中で感じたことがあったなら聞かせてください」
「もう一度トライするなら何かプラスできる工夫はないでしょうか」
「他の人が同じことに取り組む場合どのようなアドバイスができますか」
このように、問いかけの言葉は特にこだわらず、何でもかまいません。なぜなら、問いかけること自体が「取り組みのプロセスを自分の言葉で語る」という作業を引き出すからです。
プロセスの振り返りと言語化
係長からの問いかけによって部下はプロセスを振り返り、第三者に伝えるための言語化を経験します。この問いかけが日常で継続的に行われると、部下には振り返る習慣やそれを言語化する思考回路が育まれるのです。
もちろん、問いかけられていない部下でも、何度か同じ仕事をこなせばそつなくできるようになるでしょう。ところが、状況が微妙に変化したり、予想と違う展開になったりした場合に、途端に思考停止してしまいがちです。
ところが、常日頃から問いかけをされてきた部下は、結果的に柔軟性や対応力が高まってきます。困難な状況下でも自分で考えて乗り越えていくポテンシャルを秘めているといえるでしょう。
これは些細なことかもしれませんが、現場の最前線である係長こそが部下の力を開花させ得る、組織力を高めるための手法です。現場の部下の成長は係長の評価へとつながります。
係長と主任の違い
係長と主任について、その仕事や役割の違いと共通点などもあります。立場上は主任よりも係長のほうが上で、報酬も違いがあるのです。
主任は企業などの組織の中で、特に仕事に精通した熟練者に与えられることが多い立場となります。企業によっては、チーフやシニアスタッフと呼ばれる場合もあるようです。
主任は人を管理する立場ではないですが、係長は係の構成メンバーを管理する立場にあります。役割的には係長はマネージャーというよりチームリーダー的な要素が強い役職です。
一般社員の仕事をフォローもすればし、自分自身も一般社員と同じような仕事を進めていることもあります。
また、係長は管理職には該当しないので、主任と同じく労働組合に所属できるのです。
係長と課長の違い
一般的に係長の直属上司が課長です。係長は担当している業務を自己完結させることと、部下の監督業務を同時進行で行います。
より現場に近い部分で、業務を円滑に進めるためのフォローや指導を部下に対して行い、現場を牽引していく役割を担うのです。
一方、課長は係をその中に含む「課」という組織全体のマネジメントを行います。組織内の人材をバランスよく配置して、業務が円滑に進むような体制を整えるのです。
状況に応じて修正を加えながら、課としての業務を遂行させる役割を担うのが課長になります。
係長と課長の役割はよく似ている部分もありますが、係長はいわば「準管理職」で実務上のリーダー職です。自らお手本としてレベルの高い業務をこなし、部下を指導し引っ張っていきます。
係長の気になる年収事情
係長の年収事情を他の役職や非役職者とも比較しながら、見ていきましょう。
【2019年 年齢別役職平均年収額の比較表】
年齢 | 非役職者 | 係長級 | 課長級 | 部長級 |
平均年齢 | 39.6歳 | 45.0歳 | 48.7歳 | 52.6歳 |
平均年収 | 451万円 | 638万円 | 863万円 | 1,079万円 |
20~24歳 | 308万円 | 350万円 | 337万円 | ― |
25~29歳 | 387万円 | 505万円 | 603万円 | 633万円 |
30~34歳 | 441万円 | 607万円 | 731万円 | 757万円 |
35~39歳 | 472万円 | 668万円 | 787万円 | 880万円 |
40~44歳 | 491万円 | 696万円 | 840万円 | 963万円 |
45~49歳 | 508万円 | 739万円 | 864万円 | 1,039万円 |
50~54歳 | 532万円 | 772万円 | 915万円 | 1,150万円 |
出典:賃金構造基本統計調査役職DB | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口
この統計によれば係長級職員の平均年収は638万円なので、一般のサラリーマンの平均年収451万円よりも200万円近く高いということになります。「係長」の持つイメージよりは、実際の報酬が高いのではないでしょうか。
係長の上位者である課長級職員は863万円とさらに200万円以上あがり、部長級職員になれば1,079万円と大台を超えてきます。しかしその課長や部長になる道も、まずが係長の就任から始まるのです。
次に企業規模別での役職別の年収比較表も参考にしてください。
【企業規模別 役職別の平均年収比較表】
企業規模(従業員数) | 100〜499人 | 500〜999人 | 1,000人以上 |
非役職者 | 396万円 | 437万円 | 495万円 |
係長級 | 547万円 | 599万円 | 711万円 |
課長級 | 698万円 | 800万円 | 990万円 |
部長級 | 903万円 | 1,042万円 | 1,250万円 |
出典:賃金構造基本統計調査役職DB | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口
これを見ると、やはり企業規模が大きくなればなるほど、同じ役職でも年収は増えることが示されています。そしてどの役職にも共通しているのが、規模が千人を超えるレベルになると年収の上がる幅も大きくなるのです。
係長でいえば「100〜499人規模」から「500〜999人規模」に変わるとおよそ50万円アップします。その次の「1,000人以上規模」に代わると、先の例の倍である100万円以上の開きになるのです。
係長のポジションは若手から中堅社員に与えられることが一般的で、係長に昇進する時期は勤続10年くらいが多くなります。そのため、係長に昇進する年齢は30代前半あたりが多くなるようです。
しかしながら、係長に就任してもそのままずっと昇進しないで、定年退職するまで係長という場合もよくあるので、係長全体の平均年齢は表のように45歳となります。
係長から昇進するために必要なものとは?
係長から課長に昇進するために必要なものについて、触れておきましょう。
係長は、現場に最も近い役職です。それと同時に長がつく役職として最も下のポジションでもあります。前述のように、係長にはプレイングマネージャーとしての要素が重要であり、またそこを期待されているのです。
プレイヤーとしてもクオリティの高い仕事を任せることができてこそ、現場の最前線で部下の指導やフォローができます。
上司の質はどのような点で決まるものでしょうか。立場を振りかざして指導し、上の顔色を伺い下に高圧的な関係性はマネジメントの質が低いと思われます。
係長が上のポジションを目指すには、マネジメントスキルとリーダーシップを養うことが特に重要です。
マネジメントスキルを磨いて、部下を監督し、職場のルールに沿って部下を指導することが求められます。
また、係長自体はマネジメント職よりもリーダー職の要素が強く、長期的な視点から業務を遂行することが望まれるものです。もちろん、その要素は課長になってからも力を発揮します。
リーダーシップは、どのように困難な状況にあっても、率先して旗を振り突き進むことができて、メンバーのモチベーションを上げる能力のことです。
上位職である課長になるには、さらにコミュニケーションスキルや計画管理やプロセス管理の能力なども必要になります。
まとめ
係長の定義や位置付け、年収事情などを詳しく解説しました。
ともすれば「万年係長」などのネガティブなイメージも持つ役職ですが、常に前向きに進もうとする人にとっては昇進へのスプリングボードとなります。
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ビジネスマンとしてのキャリアを俯瞰すると、30歳は非常に大切な年齢です。順調に成果・実績を挙げ、中間管理職に就いた方もいるでしょう。ところが能力ある人材全てが、このような出世コースを辿っているとは限りません。現実問題、日本企業は上を見ると「停滞・停留」がとにかく重たい。せっかく能力をお持ちなのに、年功序列の壁に阻まれチャンスを逸している方も少なくないのが実情です。そこで今回は、日本企業の現実をお伝えするとともに、外資系企業という選択肢をご紹介しようと思います。40代が中心を占める日本の中間管理職... 中間管理職の平均年齢はどれくらい?30歳で管理職に就くには? - 35ish |