エンジニアにとって将来のキャリアパスは、転職も視野に入れることでさまざまに広がっていきます。
そして、キャリアパスを考えるにあたって有効だと注目されている「キャリアの棚卸し」をぜひ行いましょう。
この記事ではエンジニアがキャリアパスを考えるにあたっての「キャリアの棚卸し」のメリットや、そこから導けるキャリアパスについて解説していきます。
目次
「キャリアの棚卸し」のメリットとは?
転職活動の話題ではよく出てくる「キャリアの棚卸し」とは、ある期間の業務経験やその期間に習得したスキルやノウハウを一覧にすることです。
これは単に経歴を確認する資料ではありません。経歴を可視化するというのが、棚卸しをする本来の意味です。
なぜ可視化することがよいのでしょうか?
たとえば「ダイエット」の場合、漫然とダイエットに取り組むのではなく、日々の体重や体脂肪率などの変化を細かく記録していくことで効果や成果が出やすいとされています。
「キャリアの棚卸し」もそれと同じ理屈です。細かい成長や変化を浮き彫りにすることで、どれを活かして何を伸ばしていくかを考えるためのものといえます。
もう少し掘り下げてみましょう。
自身の位置付けを認識する
「キャリアの棚卸し」によって、ある期間のあなたの成長をしっかりと記録することで、キャリア=人材価値の成長の過程がよく把握できます。
何ができて何はできない、何を習得途中であるかを冷静に見極めれば、自分自身のエンジニアとしての現在の位置付けが見えてくるわけです。
自身の位置付けがきちんと認識されていない場合には、あなたにとって人材価値を高める期待が薄い仕事に従事していたとしても気づかないおそれがあります。
現在の位置付けを認識できてこそ、これから先に進むことができるキャリアの選択肢が具体的に見えてくるのです。そのために「キャリアの棚卸し」は欠かせません。
棚卸しが戦略を生み出す
エンジニアが現職よりもレベルの高い企業への転職というキャリアパスを成功させるためには、良質な業務経験を積むことが重要になってきます。
よって、キャリアをなるべく頻繁に棚卸しして、よりレベルの高い環境へステップアップアップするための戦略を考える機会を増やしていく必要があるのです。
エンジニアが「キャリアの棚卸し」をする具体的な内容としては、例えばRuby on Railsを使っている駆け出しのバックエンドエンジニアであれば、開発した機能の一覧やその際に使用したgemの一覧、使用したエディタやツール、Saasを書き出します。
あるいはAWSなどのインフラに触れる機会があれば、使用したマネージドサービスなどを書き出てみましょう。
一通り書き出せば、自分がそのままのレベルでできる他の領域が分かり、また自分が進みたい領域の仕事をするためには、どんなスキルが欠けているかが見えてきます。
その欠けているものを習得するアクションを起こし、すでに持っているスキルと合わせることによって、新たな領域への転職を視野に入れた戦略が考えらるでしょう。
そういう戦略を考えるのに役立つメリットが「キャリアの棚卸し」にはあるのです。
職務経歴書のアップデート
あなたが「キャリアの棚卸し」を行なって書き出した経歴やスキル、経験を世間と共有しましょう。
これは、エンジニアとしてのサーチアビリティを高める上でも、企業からあなたへの評価を客観的に確かめる上でも役に立ちます。
自身の職務経験を世間とシェア
具体的には、あなたが求人サービスに登録している職務経歴書にどんどん追記していくのが望ましいでしょう。
つまり、プロジェクトの概要とチーム構成、そこで担当した業務や使用した言語とツールの一覧、そしてそこで発揮したバリューを詰め込んで記載します。
どこまで詳細に書くかは人それぞれであり、また、求人サービスによってフォーマットや内容は微調整した方がよいでしょう。
意外と大事なストーリー部分
駆け出しのエンジニアの場合は、そもそも担当したプロジェクトが少ないものなので、使用した技術やツールに関して、できるだけ詳細に記載しておいた方が印象は良くなるでしょう。
逆に手掛けたプロジェクトがとても多いベテランエンジニアの場合は、すべてを細かく記載するとしつこくて読みづらくなり、印象が悪くなります。
その場合は使用したgemやそれほどアピールにならない技術に関しては省略してよいでしょう。
また、経験の浅いエンジニアほど、技術だけではなく「熱意」の部分が大きく問われることになるので、「発揮したバリュー」や「チームにどう貢献したか」などの「ストーリー」の部分は、力を入れてしっかりと記載するのが賢明です。
ある程度経験があるエンジニアでも、簡潔な内容にてどういう考え方でプロジェクトに取り組んでチームにどう貢献したかに関しては、ストーリーとしてしっかり記載しておいた方がよいでしょう。
就職に結びつかない場合があっても、先方の人事担当者から職務経歴書の良い点や悪い点をフィードバックしてもらえることも多いのです。
このように「キャリアの棚卸し」を反映させて職務経歴書をアップデートすることで、あなたが認められる可能性は上がっていきます。
エンジニアの長期的キャリアパスについて
10年先にどんなエンジニアになっていたいかという問いに答えるのは難しいですが、どんな道に向かいたいのかという大きい方向性は考えてみることができるでしょう。
目の前の転職に関しては、「キャリアの棚卸し」を実践することで、方向性が見えてきます。
そして同時に、その先にある長期的キャリアパスを思い描いておくことも、今後磨いていくべきものを知るために必要です。
ここではエンジニアの、長期的なキャリアパスの代表的な方向性を紹介しておきましょう。
大きく分けて以下の3つの方向性になります。
●スペシャリストとして特定分野の技術を極める
●ゼネラリストとして汎用性がある人材を目指す
●マネジメントの方面に進む
それぞれの特徴と、そのために必要なスキルを見ていきましょう。
スペシャリストとして特定分野の技術を極める
スペシャリストを目指してスタッフとして開発経験を積み、テックリードからCTO(Chief Technology Officer=最高技術責任者)などを目指すという道があります。技術を極めて現場の技術面の責任者になる道です。
この道は現場の中で技術的な知見や知識が誰よりも優れていて、技術的にスタッフをリードできる人であることが求められます。
求められる能力としては、コードレビューでの適切なアドバイスができたり、ソースコードの品質を管理できたり、部署の生産性を上げることができたりなどです。
部署としての成果を重視する必要があるため、あなた自身はコードを書くよもスタッフのコードレビューに時間をかけるほうが多くなるかもしれません。
技術力だけでなく、当然リーダーシップをもっている必要がありますが、マネージャーとは違うということも認識しておきましょう。人の管理ではなく技術レベルの管理なのです。
よって、このキャリアパスに必要なスキルは、技術面では誰にも負けない高い水準のITスキルといえます。
ゼネラリストとして汎用性がある人材を目指す
ある特定の分野や技術に特化するというよりは、上流工程から下流工程までを幅広く理解し、こなすことができる人材です。以前に「フルスタックエンジニア」と呼ばれていたポジションに近いと考えてよいでしょう。
データ分析をしてマーケットのニーズを把握することができたり、アプリケーションの開発もできたりする、マルチタスクの人材というイメージです。
スペシャリストが特定の分野を極めたい人だとすると、ゼネラリストはあらゆる分野を扱いたい人が向いているといえるでしょう。
このキャリアパスに必要なスキルは、ベースとしてのある程度のITスキルはもちろんとして、ビジネススキルやマーケティングスキル、そしてさまざまな分野の人と接するためのコミュニケーションスキルです。
マネジメントの方面に進む
チームやプロジェクトのマネジメントをするマネージャーの道です。現場での開発経験を充分に積んだあと、チームリーダーからプロジェクトリーダーを経てプロジェクトマネージャーやエンジニアリングマネージャーになるという方向性になります。
開発現場で手を動かすことよりも、クライアント企業との要件調整や、プロジェクトのスケジュールおよび予算の管理や人員調整などがメインです。
このキャリアパスには、技術者の知見以外にマネジメントスキルやヒューマンスキルを身につける必要があります。
まとめ
エンジニアがより良いキャリアパスを描くための「キャリアの棚卸し」のメリットや、エンジニアの長期的なキャリアパスについて解説しました。
エンジニアのみなさんはぜひ「キャリアの棚卸し」で自分の位置付けを認識してキャリアアップの戦略を練ってください。
同時に長期的なキャリアパスの方向性を意識しつつ転職を視野に入れてアクションを起こしましょう。
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