SIerとは?業務内容や年収事情、必要スキルと働くメリット&デメリット

ITエンジニアとして働く企業のタイプとして、SI企業があります。「SI」と呼ばれるサービスを提供するSI企業は、SIer(エスアイヤー)と呼ばれることが一般的です。
SIerとはどういう業務内容で、エンジニアとしてSIerで働くメリットやデメリット、年収などが気になる人も多いことでしょう。
この記事ではSIerはどういう企業か、求められるスキル、そして年収事情なども解説していきます。

5系統あるSIer

まずは、SIerの定義から確認しましょう。SI(System Integration)とは、コンピュータやソフトウェアおよびネットワークなどを組み合わせることによって、利便性の高いシステムを開発することです。
そしてSI案件を受注して開発を請け負う企業はシステムインテグレーター (System Integrator)と呼ばれ、略してSIerと呼ばれます。
このSIerは、大別して以下の5系統です。

  • ユーザー系
  • メーカー系
  • 外資系
  • 独立系
  • コンサル系
  • 系統別に解説しておきましょう。

    ユーザー系SIer

    企業内の情報システムを担当していた部門が、自社の案件だけでなく外部からの案件も請け負うSI企業として独立した場合に、これをユーザー系SIerと呼びます。
    もともとは金融や通信、商社などの企業が、自社内の業務改善や経営戦略のために大規模なシステム開発を始めたことがきっかけです。
    代表的なユーザー系SIerとしては、通信業界の株式会社エヌ・ティ・ティ・データや銀行業界のみずほ情報総研株式会社、証券業界の株式会社野村総合研究所など、大企業が多く見られます。
    それぞれ親会社の業界ノウハウを活かしなが、幅広い案件を手掛けているのです。

    メーカー系SIer

    ハードウェア機器を製造していたメーカーが、SI業務も手掛けるようになった場合に、これをメーカー系SIerと呼びます。
    ハードウェアおよびソフトウェア、システム開発などのサービスを幅広く提供している代表的なメーカー系SIerとしては、富士通株式会社や日本電気株式会社、株式会社日立製作所などです。
    それぞれが多くの関連会社を抱えており、企業グループとしてSI案件を請け負うことが多い、大規模なSIerといえるでしょう。
    具体的にはプライム案件(1次請けした案件)を、自社や関連会社で開発するケースが多く見られます。関連会社の製品を効率よく使った開発が中心です。

    外資系SIer

    グローバルマーケットでSIサービスを展開する、外資系のIT企業が外資系SIerです。代表的な外資系SIerとしては、日本アイ・ビー・エム株式会社や日本オラクル株式会社、日本マイクロソフト株式会社などが該当します。
    日系企業のような年功序列の企業風土はなく、実力主義の傾向が強いといえるでしょう。外資系SIerは、日系のSIerよりも年収が高いという特徴もあります。

    独立系SIer

    親会社を持たないで独立してSI事業を展開する形態が独立系とSierと呼ばれます。代表的な企業は、株式会社オービックや日本ユニシス株式会社、トランス・コスモス株式会社や株式会社大塚商会、富士ソフト株式会社などです。
    関連企業を持たないので、使用する製品に制約がない開発が行える自由度を活かして、クライアントに最適の提案ができるところが強みといえるでしょう。

    コンサル系SIer

    クライアント企業の業務課題や経営課題を改善して、利益構造を改善するコンサルティングを伴ったシステム開発を提供するのがコンサル系SIerです。
    代表的な企業はアビームコンサルティング株式会社やフューチャー株式会社が挙げられます。

    SIerが携わる5項目の業務内容

    SIerのシステム開発業務の内容を立て分けると、以下の5項目になります。

  • 要件定義
  • 設計
  • 開発
  • テスト
  • 運用保守
  • これらの項目を、順を追って進める「ウォーターフォール型」が代表的な手法です。
    ウォーターフォール型の前半である要件定義と設計が、一般的に「上流工程」と呼ばれ、後半の開発・テスト・運用保守が「下流工程」と呼ばれます。
    上流工程を大手のSIerが担当し、中小SIerに下流工程を外注するパターンが比較的多いようです。企業規模によって、自ずと請け負う案件の内容が異なってきます。
    ここからは、項目別に具体的な内容を紹介しておきましょう。

    要件定義

    クライアント企業がシステムを必要としている目的がどのようなものか、ヒアリングによって聞き出し、システムに盛り込むべき機能などを定義する業務です。
    システム化の対象となる業務を洗い出し、システムの操作や業務の処理手順、入出力する要件などを整理した上で要件定義書にまとめ上げます。
    ウォーターフォール型開発では後戻りすることは困難となるので、要件定義は極めて重要な工程です。よって、主として確かな知見があるSEやITコンサルタントが担当します。

    設計

    要件定義書をベースにして、システムの設計を行う業務です。ハードウェア設計からデータベース設計、業務設計やプログラミング設計など幅広く、さまざまな設計をSEが主として担当します。

    開発

    設計の工程で完成させた設計書に基づいて、プログラミングを行う業務です。採用されたプログラミング言語で、コーディング基準に従ってコードを書きます。
    主としてプログラマーやコーダーが担当する工程です。コードを書いた後にコードレビューが行われ、必要に応じてデバッグも行われます。企業によっては、設計者が開発の担当です。

    テスト

    できあがったプログラムが、設計書通りに動作するかを確認する業務です。この段階でバグなどの不具合を発見します。
    テストの種類は、実にさまざまです。単体テストと呼ばれるプログラムコードを1行ずつテストするものや、モジュールをつなげて行う総合テストがあります。
    ほかにも、総合テストと呼ばれるユーザーがUIからシステムを利用する想定で行うテストや、パフォーマンステストと呼ばれる性能を検証するテストなどです。
    テストを専門に行うテストエンジニア(テスター)や、プログラマーならびにSEが担当します。性能やセキュリティ面のテストを、テスト専門の企業に依頼する場合もあるでしょう。

    保守運用

    クライアント企業が問題なくシステムを利用できるよう、利用状況に応じて調整したり稼働状況を監視したりなどの継続的な業務です。
    システムに何らかのトラブルが生じた場合には、応急対応もしくは恒久対応を行います。
    システムのリリース直後に関しては、開発企業が担当するケースが多いものの、安定稼動が確認された後はBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)企業が担うケースも多いようです。

    SIerで働くエンジニアに求められるスキル

    SIerに転職をする場合に、エンジニアとして身につけておいはほうがよいと考えられるスキルを紹介しておきましょう。

    システム開発に関するスキル

    クライアントが意図しているもの的確に汲み取って、それをどのようにシステムに落とし込み、予算や納期とクオリティに関してどのあたりに折り合いをつけて開発を進めるのかというところで、SIerの真価が問われます。
    そのため、SIerの業務を行うエンジニアには、要件定義から保守運用までのシステム開発のそれぞれの業務に関するテクノロジー全般に関する知識が必要です。
    SIerの業務に関連する基礎部分のIT知識に関しては、国家資格の「基本情報技術者試験」ですべて網羅されているので、資格取得のための学習を通して身につけることができます。
    基礎より上のスキルは、書籍やネット上の技術ドキュメント、勉強会やセミナー、プログラミングスクールやOJTで身につけるのがよいでしょう。

    プロジェクトマネジメントスキル

    プロジェクトのマネジメントに携わる場合には、システム開発のそれぞれの段階における作業を円滑に遂行するための管理スキルが求められます。
    スケジュールや予算、リソースや品質、リスクなど管理対象はさまざまです。マネジメントの立場になるまでは、必須スキルではありません。
    しかし、リーダー職やマネジメント職を目指すのであれば身につけるべきスキルといえます。

    エンジニアとしてSIerで働くメリット

    SIerでエンジニア職として働くことの、メリットとデメリットを紹介していきましょう。
    まずはメリットを3つ紹介します。

    多様な業界の知見を深めることができる

    まず、SIerで仕事をしていると、実にさまざまな業界に関するプロジェクトを経験できて、それぞれの業界の知見が自ずと深まります。
    なぜなら多くのSIerは特に分野を限定せずにシステム開発を請け負うことが多く、結果的に多様な分野の仕事に関われるのです。
    それぞれのクライアント企業が関係する業界の仕組みを知ることができ、さまざまな業界を理解することで、社会の仕組みの理解も深まるでしょう。
    また、多くのプロジェクトを通してさまざまな背景の人たちと出会うことが多く、学べることもたくさんあります。

    身につくスキルの汎用性が高い

    SIerでエンジニアとして仕事をすると、プロジェクトの進捗管理や資料の作成、トラブルの対応や内外との交渉などに関するスキルが自ずと磨かれます。
    それらはSI業界やもっと広いIT業界のみならず、多くの業界で役に立つスキルです。
    SIerで習得できるスキルの汎用性はそういった意味で高く、ここでキャリアを積む事は後のステップアップへと役立つことでしょう。

    仕事の安定性

    最後に、SI業界はBtoBの案件が多く、大規模なプロジェクトを受注する傾向にあるため、仕事の安定性においてはある程度盤石です。
    例えば、金融機関や医療機関、官公庁などのシステム開発に携わる大手のSIerは仕事が無くなる心配はほとんどなく、ある程度安心といえるでしょう。
    また、AIあるいは機械学習が注目されており、システム導入のニーズが高まっていることも受注が安定している大きな要因です。

    経済社会の隅々までデジタル技術が欠かせない現代において、人気がある職業分野のITエンジニアの中でも代表的な職種のひとつがSE(システムエンジニア)です。その仕事の内容や得られる年収などは、いかなるものでしょうか。また、SEとプログラマーの違いが、よく分からない人も意外とたくさんいるようです。この記事ではITエンジニアへの転職を考えているみなさんに向けて、SEとはどんな仕事で必要な知識やスキルは何かについて、その年収やプログラマーとの違いも踏まえて解説していきましょう。SEはこんな仕事をしている!業務の概...
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    エンジニアとしてSIerで働くデメリット

    次にデメリットも3つ紹介します。

    プログラミングスキルはあまり学べない

    SI業界のデメリットとして、案件によって異なりますが、プログラミングがあまり学べないことです。
    SIerの多くは上流工程を担うので、プログラミングなどの下流工程は人件費が低めの下請け企業にプログラミング作業を任せることが多くなります。

    業務の範囲が限定される場合がある

    SIerではひとつのプロジェクトを、多くのエンジニアでの分業によって進めることが少なくありません。その場合、ひとりが対応する業務の範囲が必然的に狭くなります。

    下流工程担当のSIerであれば年収も低い

    下流工程を担う中小SIerであれば、なかなか年収が上がりません。ハードワークの割に、収入が低い傾向にあります。これは、下請けの多重構造になっているためです。
    大手SIerが大型の案件を獲得すると、下請けSIerに発注します。そこからはさらに下請けのSIerに発注する、下請けの多重構造になっているのです。

    まとめ

    SIerについての業務の内容や求められるスキル、エンジニアとして働くメリットとデメリットや年収事情などを解説しました。
    多種多様な案件を手掛けるので、さまざまな業界の知見が深められたり、汎用性が高いスキルが身についたりするので、仕事の安定性もあってそれなりに魅力があります。
    デメリットも当然ありますが、年収的にはIT業界の中でも比較的上の方なので、エンジニアとして転職を考えるような場合に選択肢のひとつになるでしょう。

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