Webフレームワークとは?開発に不可欠な役割と注意点を解説

現代のWeb開発において「Webフレームワーク」は開発効率向上のためには、必要不可欠の存在です。プログラミング言語が進化するにつれて、より使いやすく高度な機能を備えた多くのWebフレームワークが生まれています。上手に使えば、開発効率が飛躍的に向上します。

この記事では、そんなWebフレームワークとはどういうものかを分かりやすく解説し、代表的なフレームワークやそれを使用している企業、フレームワークを使用したWeb開発においての注意点などを紹介していきましょう。

そもそもWebフレームワークとは?

Webフレームワークとは、ひと言で表現すれば「WebシステムやWebアプリケーションを開発するために必要な機能があらかじめ備えられている開発基盤」を指します。Webフレームワークは言語の違いだけでなく、使う目的とする項目によっても分類されます。例えば、データベースにアクセスするためのライブラリやテンプレート、セッション管理などを提供するもの、フロントエンドを実装するためのものや、テストに特化したものなど多種多様です。

Webフレームワークの目的は、Web開発で行われる共通した作業に伴う時間と労力を軽減し、開発効率を向上させることです。開発に必要なライブラリやツールが組み込まれていおり、スピーディに実装できるうえ品質や保守性も向上します。頻繁に使用される機能をライブラリ化し、コードを書かなくても呼び出すだけで利用できるように実装のテンプレートを提供します。これにより、異なる実装者が使用しても、品質が一定化できるでしょう。

本来Webフレームワークは、大規模プロジェクトの開発効率を向上させるために活用されてきましたが、近年ではWebアプリケーションの開発に欠かせない存在です。

Webフレームワークの目的:コードを再利用する

多数のWebフレームワークがデータベースへのアクセスのためのライブラリやWebテンプレート、セッション管理を提供し、コードの再利用を促進させています。新しいWebサービスを開発する際には、市場にリリースするまでの期間をいかに短縮するかが鍵になります。リリースが遅くなればそれだけ競合他社にシェアを奪われ、機会ロスを生んでしまうからです。

そのためWeb開発企業の多くは、必要となるファイルやツールを用意して一からコードを書いていく手法ではなく、Webフレームワークを使用しています。

WEBフレームワークを含むソフトウェアフレームワークについてもっと詳しい解説が必要な場合は、こちらで解説しています。

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ライブラリとの違い

ライブラリとは、多くのプログラムでよく使われる機能を集積した、いわば「部品集」です。一方、Webフレームワークはそのライブラリも含め、開発の補助ツールなども多数備えた「開発基盤」といってよいでしょう。

Webフレームワークが「厨房」とすればライブラリは「調理器具」や「調味料」といえます。さまざまな器具や調味料を駆使して厨房でさまざまな料理を作ることができるように、システムやアプリケーションを作り出せるのです。フレームワークに備わったライブラリを活用すれば、クオリティの高いアプリが比較的簡単に作れます。

Webフレームワークがもたらすメリット

Webフレームワークを導入することでもたらされるメリットの、代表的なものは以下の3つです。

●開発効率の向上
●開発コストの低減
●統一性による品質と保守性の安定

個々のメリットの内容を補足しましょう。

開発効率の向上

フレームワークを活用することにより、開発効率が目覚しく向上し、品質が安定したアプリケーションをスピーディに開発できます。テンプレートやベースとして使えるパーツなどが備わっているので、結果的にアプリケーションの開発期間が短縮できるのです。決まっている様式に慣れれば慣れるほど、実装スピードが向上します。

それぞれのプログラミング言語に合ったWebフレームワークが存在します。個々のフレームワーク特有の書き方のルールを学ぶ必要はあるものの、あらかじめ機能が備えられているので、プログラミング初学者でも短期間でWebアプリケーションを作ることが可能です。

開発コストの低減

フレームワークを活用した開発は保守性にも優れているので、テスト工数や改修工数、戻り作業なども減って全体的に工数が少なくなります。それによって、開発コストを低減する効果が生まれるのです。

統一性による品質と保守性の安定

通常の開発を複数人で行う場合は、各エンジニアがコーディングを独自のルールで行うことにより、他のエンジニアが見た時に分かりにくいプログラムになってミスが発生しやすくなります。フレームワークを活用する場合にはフォルダの名称やルール、使用する関数などにある程度の制約があります。そのため、複数人での開発においてもバグ発生のリスクを減らすことが可能です。

また、フレームワークの活用でコーディングのルールが統一されることにより、担当以外のエンジニアがコードレビューや保守を行う場合でも内容を理解しやすくなり、品質や保守性の高さが確保できます。

代表的なWebフレームワークの特徴と採用企業

数あるフレームワークの中でも、以下の代表的な5つのWebフレームワークをここでは取り上げます。

●Ruby on Rails
●React
●AngularJS
●Django
●Vue.js

それぞれの特徴を解説し、それらを採用している企業も参考に挙げておきましょう。

Ruby on Rails

Ruby on Railsは名前からわかるようにRuby用のWebフレームワークです。Rubyを使った開発はそのままRuby on Railsを使った開発と認識されるほどの実績を誇っています。

Rubyは日本発信の言語なので、関連情報が豊富にあることも人気の高さに関係しているようです。汎用性が高く、Web開発の効率を向上させるさまざまな機能を備えています。エンジニア間でよくいわれる「Don’t Repeat Yourself」、つまり同じことを繰り返さないという原則に従って、同じコードを繰り返し記述しないことを意識して効率的に実装を進めます。

また、「Convention over Configuration」、つまり設定より規約が大事という原則に従って、用意されている規約に準じて開発を進めることにより、余計な設定を省くことが可能です。結果的にシンプルで無駄のないコーディングにより、容易に開発が進められます。

Ruby on Railsを採用している主な企業は以下のとおりです。
●GitHub
●Hulu
●CookPad

React

Facebookによって公開されたReactは、厳密にはフレームワークではありません。UI構築のためのJavascriptのライブラリですが、一般的にWebフレームワークと認識されることが多いので、ここでも取り上げましょう。

MVCモデルのView機能に特化しており、UIのコンポーネントであるテキストボックスやボタンなどの作成が簡単にできて覚えやすいともいわれています。また、Webページの更新された部分のみを変更する「仮想DOM」の仕組みによる高速処理によって、ページ表示の切り替え速度を向上できます。

Reactでは基本的にコンポーネント単位でUIパーツを作成するので、関係する処理はコンポーネント内で完結できます。パーツごとに分割可能なので、再利用性が高いパーツが作成できることも強みといえるでしょう。

Reactを採用している主な企業は以下のとおりです。
●Instagram
●Twitter
●Netflix
●Airbnb

AngularJS

AngularJSはJavascriptのWebフレームワークで、Googleおよび企業や個人のコミュニティによって開発されました。MVCモデルをベースとしたWebアプリケーションの設計に活用されています。

Javascriptフレームワークの定番として認知されており、その歴史と実績によって現在でも人気があります。Web開発に求められる機能が、ほとんど揃っているフレームワークといえるでしょう。コンポーネントごとの干渉などを、配慮しなくてもよいというメリットもあります。このフレームワークは一部を取り入れるより、比較的規模が大きなプロジェクトにて豊富な機能を活かす使い方に向いているでしょう。

フロントエンド開発のトレンドである、コンテンツの切り替えが同一ページ内で可能なSPAの作成にも利用され、表示速度のパフォーマンスを向上させます。AngularJSでは主にTypeScriptを使用してコードが記述されます。学習コストは(学習に要する時間や労力)はライブラリや機能、ツールの豊富さに比例してやや高いといえるでしょう。

AngularJSを採用している主な企業は以下のとおりです。
●Microsoft
●NASDAQ
●BMW

Django

代表的なPythonのWebフレームワークがDjangoです。近年ではAI・機械学習の分野でPythonが大いに注目を集めるようになり、将来性が高く用途の幅も広がっているフレームワークといえるでしょう。

コンテンツ管理やユーザー認証、RSSフィードやサイトマップなど、Web開発で求められる機能がおおむねパッケージされているので、一気通貫した開発を可能にします。シンプルなコードによって、Webアプリケーション効率的に完成させられます。またセキュリティも重視しており、ありがちなセキュリティミスの回避できるでしょう。

また、メンテナンス性が高いテンプレートが提供されています。ファイルごとに分割して開発を進めることができるので、規模の大小を問わず対応できる汎用性の高さも人気の理由です。Djangoを採用している主な企業は以下のとおりです。

●Instagram
●Pinterest
●Mozillaなど

Vue.js

Vue.jsはUIを構築するための必要最低限の機能を備えた、軽量フレームワークといえるでしょう。比較的手軽で簡単に扱うことができて、最近では人気が高まっています。

Vue.jsのアーキテクチャは、決して開発をフルスタックにカバーするものではなく、部分的・段階的な要求に対応するためのツールやライブラリのサポートというスタンスです。
ほかのライブラリや既存のアプリケーションにも組み込みやすく、柔軟性が高いことも強みです。SPAの開発にも、しばしば利用されています。
構造が非常にシンプルであり、Javascriptを使用するため新たに他の言語を習得する必要がありません。
日本語で参加できる開発コミュニティも多く、日本語での潤沢な技術記事が入手できるので、不明点の問題解決なども容易です。学習コストはかなり低いといえるでしょう。
Vue.jsを採用している主な企業は以下のとおりです。
●DMM
●Alibaba
●LINE
●Nintendo

Webフレームワークを使うWeb開発の注意点

Webフレームワークを使うWeb開発において最も注意を払うべきは、セキュリティ対策がいかに講じられているかに尽きます。オンラインでの作業となるので、それが甘いと自社の極秘情報のみならずユーザーの個人情報の漏洩などからも多大なる被害になりかねません。時には、企業として甚大なダメージを受けることにつながります。

具体的な注意点として代表的なものは、以下の4つです。
●サーバーとプログラムのセキュリティ対策
●管理者権限とアクセス権の設定
●メンテナンス&アップデート
●対社内のセキュリティ対策
それぞれの注意点について、詳しく触れておきましょう。

サーバーとプログラムのセキュリティ対策をしっかり行う

WebアプリケーションやWebサービスは、どのような環境でもサーバー上に構築されることがほとんどです。そしてサイバー攻撃は基本的にサーバーに対して行われます。
よってサイバー攻撃を受けると、サーバー内のデータが危険に晒されます。しばしばニュースになる「個人情報の漏洩」は他人言ではありません。充分にセキュリティ対策を施している企業でさえ、サイバー攻撃の被害を受けることがあります。

また、プログラムの脆弱性を悪用した攻撃もあり、サーバーとプログラムの双方においてセキュリティ対策が必要です。企業の規模によっては、セキュリティエンジニアを配置する必要もあるでしょう。

社内外を監視し、不正アクセスの発生時に対応できる人材がいるだけでセキュリティリスクを下げることができます。このようにWeb開発ではソフトウェアやシステムの機能や利便性の方に、どうしても意識が向きがちですが、安全性や堅牢性の重要性を意識しなければなりません。

管理者権限とアクセス権の設定を行う

管理者側の権限とユーザー側のアクセス権などが、詳細に設定されているかどうかは非常に大切な部分です。管理する側であれば、安易に権限を与えてしまうことで、内部の者による情報漏洩が発生しかねません。

ユーザー側も同様で、容易にアクセスできると情報の改竄による被害を受けてしまうおそれがあります。管理者権限とアクセス権の詳細な設定することに加えて、管理者のログインページへのアクセス自体もアクセス制限を掛けるなどで、二段階認証による物理的なログイン制限を施すことで、セキュリティ強度を高めることができます。

また、不正ログインを仕掛けてくるIPアドレスを自動で遮断し、普段と違う場所からのログインにはアラートや警告を組み込んで、機械的サイバー攻撃からサーバーを守ることができます。ログイン状況やトラフィックの監視において、異変を検知できるシステムについては、Web開発の分野外の技術になることも多いです。

Web開発に取り組む時点で、セキュリティに精通した人材の登用を視野に入れることが大切です。目に触れにくい部分への配慮を怠らないようにしましょう。

メンテナンス&アップデートを行う

サイバー攻撃はたえず進化しつつ、OSやプログラミング言語の脆弱性を探りつづけています。メンテナンスやアップデートをしていないとサイバー攻撃に対応できません。被害を受けて個人情報が漏洩した場合、直接的に被害を受けるのはユーザーです。

企業も被害を受けるのですが、ある意味間接的に加害者になりかねないことを意識しておく必要が、企業側にもあります。
メンテナンスおよびアップデートを怠らず、常に最新の状態にすることも、セキュリティ体制を万全に保つためには必要な項目です。

対社内のセキュリティ対策を万全にする

外からのサイバー攻撃に対してセキュリティ対策を念入りに施していても、それだけでは不充分です。社内の人間がそれと気付かず外からウィルスを持ち込んだり、ハッキングされたPCで社内ネットワークに接続したりしては意味がありません。社内の人間の不用意な行動から感染してしまったり、ハッキングされたりする可能性も考えておくべ必要があります。

つまりソフトウェア面だけでなく、社内で使用されるPCやタブレット、USBなどのあらゆるデバイスや、ネットワークなどのハードウェア面における物理的なセキュリティ対策も講じましょう。社内のセキュリティ強化は以下の4つの基礎を整える必要があります。

【物理的ネットワークの管理】

これは有線LANならびにWiFi接続も含め、社内ネットワークに入れるデバイスのアクセスを制限するという意味です。とりわけ有線LANについては、LANケーブルを差し込むだけで接続できることも多いので注意が必要です。

MACアドレス(イーサネットアドレス)によるアクセス制限やソフトウェアにもログインが必要な体制を構築することが求められます。

【すべてのデバイスの管理】

業務体制によってはノートPCを支給することもあるでしょう。USBなども含めて極力持ち帰らせないことが賢明です。本人しかアクセスできないようなデバイスの管理をさせること自体に、セキュルティの落とし穴があります。

【出入りする人の管理】

社内に出入りする人の管理が徹底されていないのであれば、何らかのルールを設けて監視する必要があります。

【アクセスの監視】

ネットワーク管理者によってアクセスを監視すると、万が一サイバー攻撃を受けたりウィルスに感染したりした場合に原因を突き止めやすくなります。何よりも監視している前提を周知することで、各スタッフの不用意なアクセスを心理的に防ぐことができます。

メールやコミュニケーションツールなどの、ファイルが添付できるものに対する監視も徹底したほうが賢明です。
また、社外からのアクセスではフリーWiFiを使用しないように定めておくことやWiFiルーターを配布するなど、自宅やカフェの回線からアクセス不可にすることも効果があります。

まとめ

現代のWeb開発において欠かせないWebフレームワークについて解説し、代表的なフレームワークや使用においての注意点などを紹介しました。

非常に利便性が高いフレームワークが多く、Web開発の進化を促しています。しかし、複数のエンジニアや企業で使用するときにはセキュリティ面の整備も重要です。サイバー攻撃のリスクを認識して使用することが望まれます。

ともあれ、Web開発の効率を飛躍的に向上させるWebフレームワークは、今後もさらに進化していくのは間違いありません。初学者でもそれほど難しくはないので、ぜひWebフレームワークを使用した開発にチャレンジして、エンジニアとしての幅を広げましょう。

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