ITエンジニアに転職したい人や、現役エンジニアでプロジェクトマネージャーなどへのキャリアアップを考えている場合に、IT系資格のことを考えることも多いでしょう。エンジニアになること自体には資格は必要ありませんが、それでも資格を取得するとさまざまなメリットがあるといわれています。
この記事では、エンジニアが取得すると転職や昇進で有利になる国家資格やベンダー資格、またマネジメントに生かせる国家資格について解説します。資格取得のメリットや勉強法も合わせて解説するので、今後の勉強に生かしましょう。
目次
エンジニアにとっての資格を取得するメリットとは?
世間では、IT系資格を持っている人だから仕事ができるとはかぎらないという声や、エンジニアに資格は不要と断言する意見もよく聞かれます。エンジニアにとって決して必須ではない資格ですが、取得しているとそれなりにメリットがあります。
実際に、求人の条件で「資格手当」及び「資格取得のサポート体制が充実」などと、資格取得の支援・推奨する企業も多いです。ここではエンジニアにとっての資格取得のメリットを、分かりやすく解説していきましょう。
エンジニアが資格を取得するメリットを集約すると、以下の3つになります。
●ITの知見が評価される
●資格手当の対象になる
●資格取得のための学習を通して知見が深まる
それぞれを、少し掘り下げてみましょう。
ITの知見が評価される
エンジニアがIT系資格を持っていると、そのエンジニアの力量をまだ知らない人たちにとって、その領域の知見があると一定の評価を得られるメリットがあります。たとえば転職の選考においては、面接を数回行うだけでは、仕事ができる人材かどうかを選考担当者が見極めるのは難しいですよね。
すでに現役エンジニアの実務経験が豊富な場合はまだしも、経験が少ない、もしくは未経験からの転職の場合に、資格があると知見および意欲を測るひとつの物差しになりえます。つまり、資格は転職活動において、選考担当者が客観的にあなたを選ぶ後押しになる可能性があります。
また、現役エンジニアの場合は上司が案件をアサインするエンジニアを検討している際に、その案件と深く関わる領域の資格があれば、アサインされる可能性が高まるでしょう。他のエンジニアと比べて力量に差がみられない場合には、資格を持たない人と比べて、任せてみようとなりやすいからです。
エンジニアのスキルアップについては、こちらの記事で解説しています。
IT技術が人びとのあらゆる営みに深く関わっている現代において、産業の各方面からITエンジニアの人材が求められています。そんなITエンジニアへの転職を考えたり準備したりしている人も多いことでしょう。しかし、IT業界においてエンジニアとして第一線で活躍するためには、最低限必要なスキルを身につけなければなりません。また、エンジニアになってから学んでいくべきスキルもあります。この記事では、エンジニアへの転職を考えているみなさんに向けて、必要なスキルについて整理して解説をしていきましょう。エンジニアにはスキル... エンジニアに転職するときに必要とされるスキルとは? - 35ish |
資格手当の対象になる
大手のSIer系企業では、特定の資格を持っていると資格手当が給与に付加される場合があります。資格の種類によって手当の額も2〜5万程度になることもあるようです。そうすると、年間トータルで20〜30万円ほど年収が増えます。もし複数の手当対象資格を持っていれば、年収が100万円近く増えるケースも実際にあるでしょう。
資格手当を支給するということは、企業にとっても資格保持者が在籍していることでメリットがあるからです。たとえば官公庁をクライアントとすることが多い企業の場合、入札において資格保有者がリーダーであることが条件とされるケースが現実としてあります。その制度が良いのか悪いのかは、ここでは議論しません。
あなたが転職を志望する企業が資格取得を推奨しているのであれば、資格を持っていることは重宝されることになり、プラスに働くでしょう。
とはいえ、IT系の資格の種類は非常に多いです。せっかく資格を撮るなら、少しでも転職やプロジェクトのアサインに役立つものを選びたいですよね。このため資格をなんでも取得するわけではなく、どれを取得するかをしっかり選びましょう。
ちなみに、IT系資格を持っていることで支給される手当は企業ごとに異なります。参考までに、目安は以下のようになっています。
【IT系国家資格の手当相場一覧】
資格名称 | 資格手当の相場 |
基本情報技術者試験 | 5,000円前後 |
応用情報技術者試験 | 5,000~2万円 |
ITサービスマネージャ試験 | 1万~2万円 |
システム監査技術者試験 | 1万~2万円 |
情報処理安全確保支援士試験 | 1万~2万円 |
システムアーキテクト試験 | 1万~2万円 |
データベーススペシャリスト試験 | 1万~2万円 |
プロジェクトマネージャ試験 | 1万~2万円 |
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 | 1万~2万円 |
ネットワークスペシャリスト試験 | 1万~2万円 |
ITストラテジスト試験 | 2万~3万円 |
【ベンダー資格の手当相場一覧】
資格名称 | 資格手当の相場 |
Oracle認定Javaプログラマ | 5,000~2万円 |
ORACLE MASTER | 5,000~2万円 |
Cisco技術者認定 | 5,000~2万円 |
Microsoft認定試験 | 1万~2万円 |
引用:おすすめの資格・相場の一覧つき資格手当とは?どのくらいもらえる?
資格取得のための学習を通して知見が深まる
試験結果はともかく、資格取得を目指して学習することによって、純粋に対象となっている領域に関しての知見が深まります。もちろん、知識は実践として業務に落とし込んでこそ身に付きます。それでも、知識としてまず学ぶことで実践でより理解が深まる可能性があるのは間違いありません。
このような3つのメリットが、企業側のメリットとも関係しつつ存在します。ここからは、資格の大分類である国家資格とベンダー資格の特徴を解説しましょう。
そのうえで、エンジニア志望者や現役エンジニアに有利な資格と、マネジメントの方向性でキャリアパスを考えているエンジニアに有利な資格について紹介します。
IT系資格の種類
IT系資格には大きく分けて「国家資格」と民間資格である、一般的に「ベンダー資格」と呼ばれるものがあります。それぞれを詳しく解説しましょう。
IT系国家資格
IT系国家資格は、正しくは「情報処理技術者試験」と呼ばれる一連のIT系の国家試験に合格することで取得できる資格です。経済産業省から情報処理技術者として、ITに関する技術やその運用のための知識とスキルが一定水準以上であることを認定されます。
この国家資格は技術者からユーザーまで、ITに関係するあらゆる人が活用できる試験として実施されるものです。特定のIT製品に関する試験ではなく、情報技術の背景となる広範な知識を総合的に評価するもので、合格者には「情報処理技術者試験合格証書」が交付されます。
試験事務は、独立行政法情報処理推進機構(IPA)が行い、例年50~60万人もの受験者がトライします。運転免許試験を除けば、年間でもっとも受験者数が多い国家試験で、合格率はおおむね十数パーセントです。
ベンダー資格とは?
ベンダー資格とは、大手IT企業が、自社ソフトウェア製品に関する深い理解やスキルがある技術者であることを認定する資格です。そのソフトウェアを製造している企業から直接認定されるので信頼性が高く、特定の製品をどのレベルまで扱えるかが明確に証明できます。
国家資格との相違点は、更新しなければならない場合があることです。IT国家資格は、情報処理安全確保支援士を除いて資格の更新は基本的にありません。一旦取得すれば、資格は永続するということです。
しかし、ベンダー資格には更新制となっているものが少なくありません。有効期限が過ぎると資格は失効してしまうので、資格を保つためには再受験が必要です。再受験が必要なことは、資格保有者に負担に感じるかもしれません。しかし、それは仕方がないことでしょう。なぜなら、ソフトウェア製品がアップグレードされて異なる製品になることも珍しくないからです。そのため、製品に対する常に最新の知識とスキルを証明するために更新制度があります。
また、ベンダー資格の受験者に受験料や、合格者に合格一時金を支給するなどで支援する企業も多く見られます。自社のルール、および転職活動であれば応募先企業のルールを確認しておくとよいでしょう。
エンジニアに有利な国家資格
エンジニア未経験の転職志望者や現役のエンジニアにとって、取得することで知見を評価されたり、資格手当が付いたりすることがある有利な国家資格です。その国家資格には、以下の7つがあります。
●基本情報技術者試験
●応用情報技術者試験
●システムアーキテクト試験
●ネットワークスペシャリスト試験
●情報セキュリティスペシャリスト
●データベーススペシャリスト
●エンベデッドシステムスペシャリスト
個々の資格の概要を補足しておきましょう。
基本情報技術者試験
ITエンジニアとして基礎的なスキルや知識を持っていることを証明できる国家試験が、基本情報技術者試験です。情報技術に関して全般的な知見があり、プログラムを設計から開発、単体テストまでのプロセスを担当する技術者のための資格です。問題はシステム開発に関する技術面や管理面、戦略面の各分野やマネジメントも含めた、基礎から広く出題されます。
ITエンジニアにとっての最も基礎的な資格といわれ、受験者数は年間10万人以上にものぼります。どちらかといえば現役のエンジニアよりも、これからエンジニアとして転職しようとする人がIT業界へ入るための準備としておすすめの資格です。試験は午前と午後の2回で、どちらも60点以上で合格となります。
応用情報技術者試験
前出の基本情報技術者試験合格者が目指すべき、上位資格に位置づけられている国家試験が応用情報技術者試験です。ITテクノロジーを活用した経営戦略を錬る際に、経営方針や外部環境を把握して情報を分析するなどの高い水準が求められます。
基本情報技術者試験の解答方式は選択式のみですが、こちらは記述式問題も含まれ、難易度をさらに高めます。ITの応用的知識やスキルを持ち、すでにエンジニアとしての方向性を持っている人が対象です。
システムアーキテクト試験
コンピューターシステムに関する深い知識に基づいた分析を行って、ニーズに適した情報システムを構想して実現させる、上流工程を主導する上級被術者の国家試験がシステムアーキテクト試験です。ITストラテジストから提案された業務システムを実現するためのアーキテクチャを設計したり、情報システムの開発を主導したりする技術者を対象にしており、合格率が15%という狭き門となります。
ネットワークスペシャリスト試験
コンピュータネットワークに精通して、ネットワークの構築ができるスペシャリストであることを証明できる国家試験がネットワークスペシャリスト試験です。情報システムの企画や要件定義から開発、保守運用の技術支援を行えるレベルの技術者が対象です。
合格率は約14%とさらに難易度は上がりますが、持っていると転職の選考で評価されたり、勤めながらの取得が人事評価に繋がったりするケースも少なくありません。
情報処理安全確保支援士試験
かつて、情報セキュリティスペシャリスト試験と呼ばれたものの後継資格です。情報システムのインフラを整備し、情報セキュリティ管理をサポートできるスペシャリストであることを証明する国家試験が情報処理安全確保支援士試験です。
資格保有者は情報処理安全確保支援士の名のもとに、企業や政府機関における情報セキュリティ確保支援を業とすることができます。
データベーススペシャリスト試験
データベースに関係する高度な技術を活用して、情報システムの企画から要件定義、開発、保守運用の技術支援が行えるスペシャリストであることを証明する国家試験です。合格率は約14%と難易度が高いですが、サーバーエンジニアやインフラエンジニア、SEにとっては取得すると有利になるでしょう。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデッドシステムとは組み込みシステムのことで、スマホやデジカメ、エアコン、テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、カーナビなどあらゆるものに組み込まれているシステムのことです。高度IT人材として組込みシステム開発に関係する幅広い知見を活用し、最適な組込みシステム開発やその開発基盤の構築などを主導的に行えるスペシャリストであることを証明する国家試験です。
人材ニーズが増えている組み込みエンジニアを主な対象とする、この試験の合格率は約16%です。
エンジニアに有利なベンダー資格
数あるベンダー資格の中で、持っていると人事評価や資格手当がもらえたり、転職の選考で有利になったりするベンダー資格として、以下の4資格を紹介します。
●Oracle認定Javaプログラマ
●ORACLE MASTER
●Cisco技術者認定
●Microsoft認定試験
個別に解説しましょう。
Oracle認定Javaプログラマ
Javaを扱うプログラマーやSE向けの資格で、レベルが3段階に分かれているのがOracle認定Javaプログラマです。Javaの資格としてはもっとも有名で、深く詳細な知識とプログラミングスキルが必要となります。
ORACLE MASTER
日本オラクル社の「Oracle Database」シリーズを使いこなす技術力を認定するための資格が、ORACLE MASTERです。ブロンズからプラチナまの4段階の試験レベルがあり、ブロンズから順に受験することになります。
ORACLE MASTERを取得していることで、データベースを扱うスキルの証明が可能です。データベースを管理する者が身につけるべきSQLからDB管理までの知識を得ることができ、SEには人気が高い資格となっています。
Cisco技術者認定
シスコシステムズ製品に関する技術者認定資格がCisco技術者認定です。レベルは3段階(CCNA・CCNP・CCIE)に分かれており、CCIEはネットワークエンジニアとして最高級の資格とされています。
主にインフラエンジニアやネットワークエンジニアを対象としている試験ですが、Cisco製品だけでなく、ネットワーク全般に関する基本知識も問われます。
Microsoft認定試験
Microsoft社製のソフトウェアについての知識の深さが問われる試験で、試験の種類やグレードがたくさんあります。ピンポイントで特定の製品やバージョンに特化した知見を証明できるので、エンジニアとしての方向性を確立するのにも役立つ資格です。
マネジメントを視野に入れるエンジニアに有利な国家資格
エンジニアとしてのキャリアパスとしては、現場で手を動かすことを続けたい人もいますが、経験を積むに従ってマネジメントを志向する人も増えてきます。プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャー、ITコンサルタントほか、現場のエンジニアからさらに上位、あるいは上流のキャリアを志向する人にとって有利な資格をここでは紹介しましょう。
以下の3つの国家試験を挙げておきます。
●ITストラテジスト試験
●ITサービスマネージャ
●プロジェクトマネージャ試験
それぞれを解説しておきます。
ITストラテジスト試験
情報システムの企画や要件定義、開発から保守運用においてセキュリティ機能の実現やシステムの基盤の整備ができるスペシャリストであることを証明できる国家試験がITストラテジスト試験です。合格率は約14%の高難度ですが、この資格を持っていると一目置かれます。
ITサービスマネージャ試験
情報システム全体について安定した稼働を確保することができ、トラブル発生時においては被害の最小化を図ることができるスペシャリストであることを証明するのがITサービスマネージャ試験です。継続的なシステムの改善や品質管理など、安全性の高いサービスを提供するスキルが問われます。こちらも合格率が約14%です。
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクト全体の責任者として意思決定を行い、クオリティやコスト、スケジュールのすべてに責任をもち、制約がある中で確実に遂行する能力を証明するのがプロジェクトマネージャ試験です。エンジニアとしての実務経験があるエンジニアが、キャリアアップを目指す中でトライするのに向いている試験となっています。
資格取得におすすめの勉強法
資格を取得するための勉強では、真摯に取り組みたいですよね。そこで、資格取得に有効な勉強法についてお伝えしましょう。
書籍で学習する
最近の書籍では、試験別に特化されたものも出ています。教科スマホでも読める電子書籍版も多数あるので、生活の中のスキマ時間も無駄にせずに学ぶことができます。教科書と問題集を兼ねたものが多く、それらを活用するのもよいでしょう。
オンライン講座を受講する
オンライン講座でIT系資格試験に特化したものが、たくさんあります。たとえば、世界最大級のオンライン学習プラットフォームである「Udemy」では、IT系資格関連の講座だけでも、10,000件がヒットします。
トライする試験をピンポイントで扱っている講座が多く、千円台からのコスパな講座が多く見られます。
また、オンラインの生放送でさまざまな知識が学べる「Schoo(スクー)」にも、IT系国家資格にフォーカスした講座があります。定額のサブスク制で、授業は受け放題になっています。ほかにもたくさんあるので、ご自身で検索してみてください。
講習・セミナーを受講する
講習やセミナー、研修(集合研修)をリアルに受講するという選択肢もあります。「トレノケート」や「インターネット・アカデミー」でIT系資格に特化した研修コースがあります。実地で講師と対面しながら訓練したい人に向いています。集合研修は、費用はそれなりにかかりますが、参加すればモチベーションも上がり学習効果はあるでしょう。
まとめ
ITエンジニアへの転職を考える人やキャリアアップを考える現役エンジニアのみなさんに向けて、IT系資格のメリットやおすすめの資格ならびに勉強方法を紹介しました。エンジニア自体には資格は必要ありませんが、選考や人事評価、資格手当などのメリットがあり、試験に向けての学習自体にも未経験者、現役エンジニアともに知見を深める効果があります。
自身の転職先やキャリアパスを考えて、関連がありそうな資格について取得を検討するのも飛躍のステップになるのではないでしょうか。