金融業界志望者は必須!Fintechの影響と転職事情について徹底解説

2017年にメガバンク3行が大幅な人員削減を発表し、時を同じくして仮想通貨バブルが起こりました。それと同じくして、ニュースでよく使われるようになった言葉が「Fintech(フィンテック)」です。当時はその意味が分からなかった人も、結構多いのではないでしょうか。

しかし、今ではモバイル決済やAI投資を利用する人も増えましたよね。フィンテックはこのように、今や私たちの身近なところに普及しました。この記事では金融業界やフィンテック業界への転職を考えるみなさんに向けて、金融業界と経済活動に大きな影響を与える、金融の新しい並みであるフィンテックについて詳しく解説します。また、フィンテック関係の転職事情についても紹介しますので、転職活動の参考にしてください。

Fintechとはファイナンス+テクノロジー

フィンテックとはFinanceとTechnologyを組み合わせた造語で、金融にITを活用したサービスを指します。元々はアメリカで使われ始めた言葉であり、2010年代の中頃から仮想通貨の登場と連動するように日本でも使われるようになりました。

また、今まで金融機関で行っていた業務はIT化による効率化が進んでいます。さらに金融規制緩和によって異業種からの参入が増えて、従来より低コストで迅速な送金サービスやインターネットを介した広範囲からの資金調達など、世の中のニーズに見合った多種多様な金融サービスが生まれました。

これに大きな衝撃を受けた金融業界も負けてはいません。勢いのあるフィンテック企業と連携するなど、金融業界全体を活性化させ、新しいビジネスチャンスが生まれています。

Fintechの多様なサービス

フィンテックには実に多様なサービスが存在しています。代表的なものだけでも、以下のとおりです。

  • ロボアドバイザー
  • モバイル決済
  • クラウド会計
  • 仮想通貨
  • クラウドファンディング
  • ソーシャルレンディング
  • トランザクションレンディング

それぞれを解説しましょう。

ロボアドバイザー

ロボアドバイザーとはAIによって、投資や資産運用が自動的に行えるフィンテックサービスです。スマホアプリやWeb上で、株式投資やFXなどができるようになっています。株や投資に対して自分に知識がなくても、AIが最適な運用先を選択します。これなら、手軽に投資を始められるでしょう。

また、私たちが投資の選択において感情や思い込みが入ってしまって失敗することもあります。AIはこのような要素がなく、あくまで統計データを駆使して選択できるので、リスクを避けられる点もポイントです。

電子マネー・モバイル決済

最も日常生活に身近なフィンテックのサービスとしては、電子マネーやモバイル決済などのキャッシュレスサービスがあります。決済がスマホやICカードだけで完了するため、現金よりスピーディに決済ができるほか、ポイントが貯められたり取引データを管理できたりというのがメリットです。

ICカードでタッチする、またスマホでQRコードを読み取る、バーコードを提示するなどで決済ができるので、簡単で便利ですよね。実際に、キャッシュレスサービスはコンビニやドラッグストア、スーパー、飲食店など使える場所が増えています。経済産業省も「キャッシュレス・ビジョン」政策を掲げています。よって、これらのサービスは今後ますます私たちの生活に浸透していくのは間違いなく、サービスの種類もまだまだ増えるでしょう。

クラウド会計

フィンテックはクラウド会計にも活用されています。企業の経費のQRコード決済やコーポレートカード決済が連携して、経費明細が自動で会計ソフトに取り込まれて便利です。個人が使う家計簿でも同様に、クレジットカードなどをモバイル決済サービスと連携させると家計簿に動入力されます。

銀行専用アプリを利用すれば、残高照会や入出金記録もスマホで管理できるので、通帳を記帳する手間が省けます。データはクラウド上で同期されるので、万が一端末が故障しても管理情報が消える心配もありません。どの端末からでもアクセスできるので、大変便利ですよね。

仮想通貨

仮想通貨はフィンテックという言葉が聞かれ始めた際に、代表的なものとしていち早く認知されました。今でもフィンテックといえば仮想通貨をイメージする人も多いのではないでしょうか。

「仮想通貨」はデジタルな通貨の一種で、インターネットを介して不特定多数の個人や法人の間で決済方法として使用できます。取引所を通じて法定通貨との交換も可能です。これによって、金融機関に依存せずに安全な金銭管理を実現できます。金融機関の手続きの手間や手数料などが要らなくなるので、今後は個人間でやり取りをするケースが増えるでしょう。

仮想通貨は種類も多く、有名なところではBitcoin(ビットコイン)やFacebookのLibra(リブラ)、Ripple(リップル)などがあります。特徴として以下のような項目が挙げられます。

  • 手数料が安く送金は瞬時に届く
  • どこにいても24時間送金ができる
  • ブロックチェーン技術で安全性が高い
  • 仮想通貨を用いたQRコード決済ができる
  • 国際通貨を換金して所有できる

ブロックチェーンとは取引データなどをすべてつないでしまって、多数のユーザーで情報を管理することによりデータの改ざんを不可能にするセキュリティ技術です。これによって、金融機関に依存せずに安全な金銭管理を実現できます。金融機関の手続きの手間や手数料などが要らなくなるので、今後は個人間でやり取りをするケースが増えるでしょう

ただし、値動きが激しいので通貨としての安定性は低いです。そのため、現状では決済や個人間の送金といった実用的な利用よりも、主に投資の対象にされています。

クラウドファンディング

起業をする場合に従来のように銀行の融資の審査を受けて資金調達を行うという方法に頼らなくても、クラウドファンディングを利用すればオンラインで複数の個人から資金の提供を受けられるようになりました。

クラウドファンディングの利用手順自体はシンプルです。実現したいプロジェクトを企画して、それをクラウドファンディングサービスのプラットフォームに投稿します。後はそれに共鳴する人たちから、支援という形で資金を調達できるのです。

支援なので、出資というよりも寄付のイメージに近いといえるでしょう。収益が上がれば支援者にモノやサービスという形で還元されます。

ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングは、クラウドファンディングと似ていますが、支援ではなく資産を運用したい投資家と、資金を借りたい企業や個人をオンラインでマッチングさせるプラットフォームです。

投資をしたい人はソーシャルレンディングを利用すれば、少額の資金から投資に参加できます。借りたい企業や個人は複数の投資家から集められるので、大口資金の調達も可能です。また、利回りは良いですが元本割れはありえます。ローリスクミドルリターンと評されることが多いです。

利回りが高い理由は2つあります。ひとつめは、ソーシャルレンディングは借手企業に対する貸出金利が非常に高いからです。ソーシャルレンディングの仕組みは事業者が投資家から資金を集めて融資を行い、借手企業から支払われた高額金利から事業者の利益を差し引いて投資家に分配するというものです。投資家に5〜8%前後の高い利回りを提供できるのは、貸出金利がだいたい9〜15%程度というかなりの高金利だからです。つまり、銀行からの融資だけでは必要資金として足りない、もしくはさまざまな事情で銀行から融資を受けられない企業が利用しているのです。

ふたつめの理由は、借手の対象に選ばれるのが高収益プロジェクトであるという面です。ソーシャルレンディングで多いのが不動産に関わるプロジェクトです。融資によって取得した土地や建設した物件を売却するプロジェクトが成功した場合の収益率は非常に高いのです。そのため、事業者から高額金利で資金を調達しても、採算が充分に合います。不動産以外にも風力発電所や太陽光発電所などの再生可能エネルギー関連や新興国企業への融資などの高収益性が期待できるプロジェクトが対象であるので、利回りが高くなります。

ただし、貯蓄ではなく投資であるかぎりリスクはつきものです。事業者がさまざまにリスクヘッジの手段も講じているのでハイリスクではないにせよ、プロジェクトが成功しなければ元本が戻らない場合もないわけではありません。

トランザクションレンディング

トランザクションレンディングとは、日常の取引データをもとに借入条件を決定するフィンテックならではの新しい融資形態です。銀行が従来行なっていたような財務情報をもとに借入条件を決定する融資形態とは一線を画します。銀行での融資は審査に時間がかかるので、すぐに資金が調達できなかったのに比べ、トランザクションレンディングを利用すると、審査にかかる時間は大幅に短縮できます。

消費者へのFintechの影響

私たち消費者にとっては、フィンテックの普及によって「得」であったり「便利」になったりのポジティブな影響が出ています。
目立った影響としては以下の3点です。

  • 決済が手軽になった
  • 銀行を介さず個人間取引ができるようになった
  • 投資が気軽に始められるようになった

個別に見ていきましょう。

決済が手軽になった

スマホで使える電子マネーやモバイル決済によって、ショッピングや日常のちょっとした買い物が楽になりました。財布から現金やカードを取り出さなくても、スマホで手軽に決済できるようになったのです。

銀行を介さず個人間取引ができるようになった

これまでは個人間の送金などの取引に関して、手数料を払って銀行を利用するのが一般的でした。フィンテックによってそういう取引でも、スマホを使い手軽で手数料もなしに、瞬時に送金できるようになったのです。

投資が気軽に始められるようになった

従来は投資を始めるに、資金の準備や勉強など一定のハードルがありました。現在は気軽にスマホを使って投資ができます。先に紹介したロボアドバイザーやソーシャルレンディングの普及により、投資が少額から気軽に始められるようになっています。

金融業界へのFintechの影響

金融業界にとって、フィンテックの普及は多大な影響を及ぼしています。具体的な影響は次のようになっています。

  • 銀行業務の市場が開放される
  • 業務が自動化され人員とコストが削減される
  • 異業種からの金融業界参入が増える
  • 異業種との連携サービスが増える
  • 保険でのテクノロジー活用が進行する

それぞれを詳しく見ていきましょう。

銀行業務の市場が開放される

フィンテックの普及により従来は銀行が独占的に行なっていた業務の多くが、いまや銀行以外でも扱うようになっています。たとえば、何か事業を始めるにあたって資金調達をするためには、念入りな審査を受けて銀行から融資を受けるのが一般的でした。

しかし、「クラウドファンディング」が登場し、個人が銀行を介さずに手軽に資金提供を受けることが可能になっています。このほかにも、送金は銀行を経由せず行ったり、公共料金の支払いや納税などもインターネットでできるようになったりしています。ほかにも枚挙にいとまがないくらい、従来の銀行業務は市場が開放されつつあるのです。

そういう背景によって、従来の金融業界以外の企業が金融経験者を求めたり、その逆に金融機関が他分野の人材を求めたりというように、転職市場への影響が出ています。

業務が自動化され人員とコストが削減される

AIやIoTのテクノロジー導入によって、これまで人によって行われていた業務の多くが自動化されています。それは必ずしも単純な業務だけでなく、融資の審査などの高度な業務もAIによるデータ解析などにより自動化されつつあるのです。

当然ながらそれは余剰人員の削減につながり、その結果人件費の大幅な削減につながっています。AIで代替できる業務の求人は間違いなく減少するので、金融業界を目指す場合は交渉や広報的な仕事などのマンパワーでしかできない業務に関するスキルを持つことが必要です。

異業種からの金融業界参入が増える

規制緩和も追い風となって、流通系企業やネット系企業をはじめとして、異業種から多くの企業が金融業界に参入してきました。先に述べた銀行業務だけでなく、証券業や保険業、クレジットカードなどの分野でも異業種からの参入が増えています。今後はさらに別の業界からの参入も増えていくかもしれません。

保険でのテクノロジー活用が進行する

保険の分野でもフィンテックが業務に影響を与えています。生命保険の分野では従来のように代理店から加入するのではなく、ユーザー自らネットで検索し、直接加入できるようになっているのです。

がん保険の一部では、モバイルアプリを用いた生体認証によって本人確認書類の提出を省略し、保険金が即時に支払われるようになっています。損害保険での損害調査や事故判定などにも、AI搭載ドローンやAIによるドライブレコーダーの解析などが導入されており、迅速な対応可能となりました。企業保険の分野では、取引信用保険の保険引受審査にAIが導入されています。

保険業界への転職を検討するなら、テクノロジーだけでは置き換えできないスキルは何なのかをよく考えて身につけておくことが重要です。

Fintech業界の転職事情

フィンテックの台頭は金融業界の採用にも影響を与えています。また、伸び盛りのフィンテック企業としては採用に前向きな企業が多く、特にキャッシュレス関係、モバイル決済や仮想通貨などは人材ニーズが旺盛です。
金融業界およびフィンテック業界の転職事情について、詳しく見ていきましょう。

Fintech事業進出により金融業界のITリテラシーが後押し

フィンテック企業の躍進によって、金融業界においての採用にも変化が現れています。従来は特に求められなかったITスキルの必要度が高まっているのです。

変化の要因はふたつあります。ひとつは本来の金融業界の企業も、それぞれがフィンテック企業に対抗してサービスを開発していることです。もうひとつはフィンテックを業務に取り入れて、AIやIoTなどのテクノロジーを導入していることです。

これらの要因によって、金融業界未経験であってもITスキルを持つ人材や新しいサービスと関係する業界の知見を持った人材は、採用される可能性が高まっています。また、かつてなかったタイプのプロジェクトが生まれていくので、それをマネジメントできるITの知見を持ったマネージャークラスの人材もニーズが増えています。

このように、今後の金融業界への転職には業界未経験であれ、経験者のハイクラス人事であれ、もはやITスキルは必須条件になっていくことでしょう。

Fintech企業は営業部門を中心に採用ニーズが旺盛

フィンテック市場の拡大によってフィンテック企業では営業部門を中心に採用ニースが旺盛です。日系と外資系に分けて見ていきましょう。

日系Fintech企業の転職事情

日系フィンテック企業は新規顧客獲得のための営業職や新規事業を創造する企画職の人材がフォーカスされています。グローバル展開を視野に入れたポストも多く、英語スキルがある金融業界経験者は好条件でキャリアが伸ばせるポストに転職できる可能性が高いです。

また、社内業務のオンライン化やリモートワークの導入などのデジタルトランスフォーメーションを進めるプロジェクトのプロジェクトマネージャーの採用ニーズも旺盛です。より好条件でのポストを目指すなら、英語スキルとメネジメントスキルを磨くアクション(資格取得を目指す行動やスクール受講)を行ない、それをアピールすると有利になる可能性があります。

外資系Fintech企業の転職事情

外資系フィンテック企業でも、日系フィンテック企業同様に新規顧客獲得のための営業部門の採用ニーズが高まっています。これには顧客管理などの後方支援部門も含まれます。ただし、外資系フィンテック企業は少数精鋭で運営しているところが多いため、難易度は高い傾向にあります。

それまでの業務経験やコミュニケーションスキル、語学力などの面でスキル、経験ともに充実した人材を求める企業が多いです。また、当然ながらエンジニアの人材ニーズも旺盛ですが外国人採用に積極的な外資系が多く、ライバルは多いと考えられます。

先を見据えたスキル獲得のために証券や銀行からの転職も増加

かつては外資系金融企業に転職する、金融業界出身者が多く見受けられました。ところが最近の傾向としては、証券会社や銀行からフィンテック業界への転職がかなり増加しています。動機として、5年後や10年後に訪れているであろう社会の変化を見据えて新しいスキルを今からでも身につけるために、フィンテック業界転職を志向する場合が多いためです。

フィンテック業界では最新テクノロジーや革新的サービスにトライしている企業が多いです。そのため、常に変化を求めて新しいことに挑む資質を持つ候補者が採用されやすい傾向にあります。個々の企業で方向性は異なるので、応募先企業の企業研究を入念に行なって今後の方向性を調べておき、それに関連するテクノロジーやスキルに関して学んでおくと有利になる可能性があります。

まとめ

金融業界だけでなく、私たちの経済活動にも強い影響を与えるフィンテックについて詳しく解説しました。個人の消費活動や企業活動のいたるところで、フィンテックによる変化が日々生まれています。フィンテック業界への転職を目指すのであれば、金融業界の経験やスキル、ITエンジンジニアとしてのスキルがあれば有利です。外資系の場合はさらに英語力が必要な場合もあるでしょう。

個々の企業によって求められるものも異なってくるので、転職エージェントを利用してあなたの資質やスキルに見合った企業を探してもらい、選考対策のサポート受けることをおすすめします。外資系企業とIT業界に強みを持つ私たちタリスマンは、金融業界やフィンテック業界とのパイプ役としても転職成功者を輩出しています。金融およびフィンテック業界への転職に関するどんなことでも、お気軽にご相談ください。

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