【2021年最新版】IT業界の年収事情と年収アップ4つの選択肢

IT業界で働く人たちの年収は、平均よりも高めだとよく言われています。年収が高い原因は人材不足や売り手市場であることがありますが、実際にはどれくらい年収をもらっているのか気になりますよね。また、年収を少しでも上げるためには何をすれば良いのでしょうか。

今回の記事ではIT業界の年収事情について全体的な傾向を概観した上で、IT人材を代表して「SE」と「プログラマー」について詳しく見ていきましょう。また、年収を上げるための選択肢も紹介します。

IT業界の全般的な年収事情

まずはIT業界の年収事情について、お伝えしましょう。今回の場合は、『IT関連産業の給与等に関する実態調査結果』と厚生労働省の『令和元年賃金構造基本統計調査』を参考とします。

先にIT業界の年収における全体の状況を見ながら、代表的な職種としてSEとプログラマーの年収について取り上げていきます。

IT業界の年収事情

経済産業省の『IT関連産業の給与等に関する実態調査結果』によれば、IT業界で最も標準的な年収と考えられるのは542万円となります。この調査は経済産業省がIT人材に焦点を絞って、業種や職種、あるいはITのスキルレベルなどの属性ごとに給与水準の実態を調べたものです。この調査によってIT業界の年収事情が明らかになりました。

ここではその中から2種類のコンセプトを、それぞれ表に落とし込んだものについて見ていきます。

まず、給与水準を「最高水準」「標準水準」「最低水準」と3分類し、それぞれに給与制度を「能力・成果型」「年功型」「中間型」の3分類を掛け合わせて落とし込まれているのです。それぞれの組み合わせごとに平均年収がわかるようになっています。

【給与制度別の生涯年収及び平均年収】

給与水準 給与制度 平均年収(万円)
最高水準 (能力・成果重視型)最高水準 710
(中間型)最高水準 676
(年功型)最高水準 648
標準水準 (能力・成果重視型)標準水準 543
(中間型)標準水準 542
(年功型)標準水準 542
最低水準 (年功型)最低水準 458
(中間型)最低水準 437
(能力・成果重視型)最低水準 425

出典:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省

給与水準が標準で給与制度が中間型の年収542万円が、全体としての標準的な年収と考えてよいでしょう。国税庁による同じ年度の『民間給与実態統計調査』において、国内の民間企業における給与所得者の平均年収は436万円とされています。やはりIT業界の年収は、高めであることがわかります。

参考:令和元年分民間給与実態統計調査|国税庁

そして年功型の最高水準と最低水準の開きは1.4倍、中間型の最高水準は最高水準と最低水準の開きは1.5倍です。それに対して、能力・成果重視型の最高水準と最低水準の開きは1.7倍となっています。能力・成果重視型の制度がそれなりに反映されて、金額にして285万円の差が出ています。そのように給与水準の最高水準と最低水準に関しては、給与制度の違いが実際の年収に反映されるのです。

ただし、標準水準においては給与制度に違いがあっても実際の年収にはほとんど反映されません。年収面から考えるとロースキルの人は年功型の企業を選ぶ方が多少有利になり、ハイスキルの人は圧倒的に能力・成果重視型の企業が圧倒的に有利になります。

次の表は職種別の平均年収に、ITスキルの標準レベルを添えて表にしたものです。

職種(※はインターネット関連企業の職種) 平均年収(万円) スキル標準レベル
ITコンサルタント 928.5 4.1
プロジェクトマネージャー 891.5 4.2
※プロデューサー/ディレクター 792.9 3.7
営業/マーケティング 783.3 3.5
ITアーキテクト(基板設計担当) 778.2 4.0
ITスペシャリスト(DB・NW・セキュリティ等) 758.2 3.9
※営業/マーケティング 682.1 3.2
IT関連講師/インストラクター 651.0 3.6
IT運用・管理(顧客向け情報システム) 608.6 3.4
組み込みソフトウェアの開発・実装(SE・PG) 603.9 3.4
顧客向け情報システムの開発・実装(SE・PG) 593.7 3.5
顧客向け情報システムの保守・サポート 592.2 3.3
※Webエンジニア/プログラマー 592.2 3.2
ソフトウェア製品の開発・実装(SE・PG) 568.5 3.4
※Webデザイナー/コンテンツクリエイター 411.0 3.1
※顧客サポート/ヘルプデスク 309.9 2.9

出典:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省

この表の16分類された職種のうち9割近い14の職種で、一般的な給与所得者の平均年収を上回っています。また、全体的にスキルレベルの高さは年収の高さと比例関係にあります。つまり、転職先として考えるIT業界は、年収は高めで転職してからのキャリアビジョンとしてもスキルアップすれば年収の向上が叶いやすい業界といえるでしょう。

SEの平均年収

IT人材の最も代表的な職種の1つである、SEの年収について触れておきます。厚生労働省の『令和元年賃金構造基本統計調査』によると、SE(システムエンジニア)の平均年収(但し従業員数が10名以上の企業の従業員)は約569万円です。

調査対象や調査方法、算出方法が違うので一概に言えませんが、先の経済産業省の調査によるIT業界の標準的な年収約542万円を22万円ほど上回っています。また、前述の国税庁による統計調査での給与所得者の平均年収436万円に比べて、SEの平均年収は133万円も上回っているのです。

SEの平均年収が一般の給与所得者に比べて大幅に高い理由のひとつは、この業界の深刻な課題である慢性的な人材不足です。IPAの発表によれば、国内のIT関連企業を対象にした調査において、調査対象企業の中でIT人材が「大幅に不足している」あるいは「やや不足している」と回答したのは全体の実に93%となっています。

このように、IT関連企業の大半がエンジニア不足に陥っている状況から、SEの人材ニーズは高くなり、それが年収にプラスに反映しています。

参考:令和元年賃金構造基本統計調査|厚生労働省
参考:IT人材白書2020|IPA(独立行政法人情報処理推進機構)

プログラマーの平均年収

次に、IT業界においてエンジニアのスタートラインともいえる、基本職であるプログラマーの年収についても触れておきましょう。厚生労働省の『令和元年賃金構造基本統計調査』によると、プログラマーの平均年収(但し従業員数が10名以上の企業の従業員)は426万円です。SEの平均年収から143万円の開きがあります。

給与所得者全体の平均年収436万円に対しても、10万円ほど低くなっています。プログラマーの平均年収の方がSEよりも低い理由として挙げられるのは、SEは基本的に開発の上流工程を担当しますが、プログラマーが担当するのは下流工程であるためです。

具体的な業務の内容は企業やプロジェクトによって異なりますが、SEは要件定義や設計などの上流工程を担当し、プログラマーはその設計をもとにプログラミングを行なうのが一般的です。スキルレベルが高い人ほど人数がかぎられてくるので、年収などの条件を良くしなければ人材が確保できません。つまり、この工程におけるスキルレベルが年収に反映しているとも言えるでしょう。実際に、IT業界においてはプログラマーがスキルを身につけキャリアを積むことによってSEになるキャリアパスは比較的よく見られるコースです。

同調査において職業別の平均年齢も出ていますが、SEの平均年齢は38.8歳でプログラマーの平均年齢が33.8歳です。5歳の差があるので、端的に言えばプログラマーを5年経験してSEにキャリアアップするというパターンが想定できます。

参考:令和元年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

企業規模でも変わってくる年収事情

IT業界の年収事情は、そのIT企業の規模によっても異なってきます。SEとプログラマーのそれぞれで、企業規模別の年収について見ていきましょう。

企業規模別で見るSEの年収

SEの年収、月額給与、賞与・特別給与、平均残業時間、平均勤続年数、平均年齢を企業規模別(従業員の数)によって3分類したのが以下の表です。

企業規模 10~99人 100~999人 1,000人以上 全体の平均
年収 536.9万円 532.2万円 627.2万円 568.9万円
月額給与 38.4万円 35.7万円 39.7万円 38.0万円
賞与・特別給与 75.8万円 103.5万円 149.9万円 112.9万円
平均残業時間 8時間 15時間 17時間 14時間
平均勤続年数 10.1年 12.4年 13.2年 12.0年
平均年齢 40.3歳 38.2歳 38.3歳 38.8歳

「10~99人規模」と「100~999人規模」では年収にあまり差が見られません。後者の方がむしろ少し低いくらいです。ところが「1,000人以上規模」になると俄然差が見られ、それ以外のいずれとも90万円以上のギャップが見られます。

出典:令和元年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

企業規模別で見るプログラマーの平均年収

次にプログラマーの年収、月額給与、賞与・特別給与、平均残業時間、平均勤続年数、平均年齢を企業規模別(従業員の数)によって3分類したのが以下の表です。SEとは違って「10~99人規模」と「100~999人規模」には38万円ほどのギャップがあります。そしてさらに「100~999人規模」と「1,000人以上規模」では120万円ほどの大きいギャップがあります。

企業規模 10~99人 100~999人 1,000人以上 全体の平均
年収 389.8万円 427.4万円 547.8万円 425.8万円
月額給与 29.5万円 30.8万円 36.3万円 30.4万円
賞与・特別給与 41.2万円 66.5万円 112.8万円 60.5万円
平均残業時間 9時間 14時間 22時間 13時間
平均勤続年数 5.6年 7.5年 11.1年 7.1年
平均年齢 33.7歳 32.9歳 36.1歳 33.8歳

出典:令和元年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

年収を上げるためにはどうすればよいのか?

IT業界の人材が年収を上げるためには、どうすればよいのでしょう。おすすめできる考え方としては、以下の4つ選択肢があります。

  • マネジメントスキルを身につけてキャリアアップ
  • ITスキルを磨いてキャリアアップ転職
  • ITスキルを活かして異業種に転職
  • 英語力を磨いて外資系に転職

それぞれを詳しく解説しましょう。

マネジメントスキルを身につけてキャリアアップ

まず、IT人材がすでに持っているITスキル以外の、マネジメントスキルなどを身につけてキャリアアップするという選択肢があります。主な対象としては「プロジェクトリーダー」と「プロジェクトマネージャー」です。

プロジェクトリーダーは、開発プロジェクトにおいて自らも手を動かしてコードを書きつつ、チーム内のスタッフを管理する職種です。プロジェクトのコンセプトや要件定義、詳細設計などを理解した上で適切にシステムが構築されているかのテストも行なって進捗を管理します。現場で何かトラブルが発生した時はフォローに入る、チーム内のモチベーションを維持するなども、プロジェクトリーダーの役割です。このキャリアを経て、さらにプロジェクトマネージャーへのステップを上がるケースもよく見られます。

プロジェクトマネージャーは、SEからのキャリアパスとしてイメージしやすい典型例とも言われる職種で、プロジェクト全体の責任者です。前出のように平均年収は891.5万円という高収入が得られます。 チームのスタッフを管理するプロジェクトリーダーよりもはるかに責任範囲が広く、それだけ高い管理能力が求められるので、年収などの条件も良くなります。

プロジェクトマネージャーはクライアントへのヒアリングを基に、目指す成果物の開発に必要なスタッフおよび機材などのリソースを想定して予算を立てます。そしてチームを編成し、スケジュールおよび品質などを包括的にマネジメントします。規模が小さいプロジェクトの場合はプロジェクトリーダーを兼任する場合もあります。

プロジェクトマネージャーとしての資質を客観的に裏付けする、有利な資格といえば「プロジェクトマネージャ試験」「PMP」「PM2資格試験」などです。特に国家資格である「プロジェクトマネージャ試験」はIT関連の技術や知識に加えて、経営戦略に関する知見も問われるのでおすすめです。プロジェクトマネージャーへのキャリアアップに関しては、以下の記事を参考にしてください。


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ITスキルを磨いてキャリアアップ転職

次に、前述の通りIT人材は高度なスキルを身につけるほど、年収を上げられる可能性があります。

スキルを磨くことによって、具体的にはITアーキテクトやITスペシャリストと呼ばれるDBやネットワーク、セキュリティなどの高度に専門的な知見を持つ上級エンジニアが目指せます。IPAの『IT人材白書2020』でも、高度なスキルを持つ「先端IT従事者」と「先端IT非従事者」では大きく高年収の割合に差があることが示されています。前者は年収1,000万円以上の人材が全体の19%であるのに対し、後者は全体の9%なのでほぼ2倍の差です。スキルが高いほど年収の高い人が明らかに多くなるので、スキルアップによって年収アップのチャンスは広がると期待できます。

プログラミングスキルに関していえば、ニーズが高い言語を用いた開発経験のあるIT人材は、年収を上げやすいでしょう。特に、機械学習と関係が深いPythonや、Kotlin、Go言語、Swift、Scalaなどの希少性が高い言語を使える人材は年収も高くなる傾向があります。

また、企業規模が大きくなるに伴い、従事するIT人材の平均年収も上がる傾向があるので、保有スキルと経験が活かせる大企業に転職して高額年収を目指すという選択肢もあります。企業規模が小さい職場で働いてきたので、大企業への転職はハードルが高いと考えている人もいるかもしれません。しかし、SESで大企業に常駐して仕事をした経験や、企業規模が小さかったからこそ、幅広くさまざまな領域を担当してきた経験などは、転職時にスキルや実績があると判断される場合もあります。

また、ベンチャーやスタートアップで高額年収を得られる可能性はあるので、大企業だけが選択肢ではないと言えるでしょう。ただし年齢が高くなるに伴い、求められるスキルレベルも上昇することは理解しておかねばなりません。

IT人材のスキルアップに関しては、以下の記事で詳しく触れていますので、ぜひ参考にしてください。

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ITスキルを活かして異業種に転職

続いて、ITスキルを活かしつつ異業種に転職するという選択肢があります。

たとえばコンサルティングファームに、ITコンサルタントとして転職するというパターンです。ITコンサルタントとは、ITの導入によって経営課題をサポートするコンサルティングを行なう仕事といえます。提案によって生まれるプロジェクトの管理やシステムの最適化まで、多岐にわたる仕事です。それだけにITの深い知見と提案力、プレゼンスキル、コンサルティングスキルなどが求められます。

また、社会および経済のデジタル化の進展に伴って金融業界の銀行や保険、証券、資産運用や教育の分野などを始め、さまざまな非ITの業界でIT人材が求められています。IT以外の業界をある程度理解するセンスがあるなら、IT人材にとって現代は転職先の選択肢が広がっているでしょう。

英語力を磨いて外資系に転職

最後にIT人材で「実戦的な」英語力、つまり英語でインタラクティブなコミュニケーションが取れるスキルを持ち合わせているなら、高額年収が期待できる外資系企業への転職の道もあります。

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まとめ

IT業界の年収事情について全体的な傾向と、IT人材の代表格である「SE」と「プログラマー」について詳しく触れ、年収アップの選択肢を紹介しました。

IT業界では、一般的な仕事よりもおおむね年収が高めであることは間違いありません。ただし、IT人材の職種によって年収の差はあります。また、企業規模もある程度関係してくるのも事実です。年収アップを目指すなら、ITスキルやマネジメントスキル、英語スキルなどを磨き、同業界や異業種、外資系などへのキャリアビジョンを描いてみましょう。