外資系企業への転職活動では、資格はどの程度の意味を持つのでしょうか。一般的に即戦力人材が求められる外資系企業への転職活動には、有利な資格についても理解しておきたいですよね。
今回の記事では、外資系企業への転職活動における資格の持つ意味と有利になる可能性がある資格について、代表的な業界ごとに解説します。
目次
外資系企業にとって資格の持つ意味とは?
一般的に外資系企業は、日系企業ほどは資格を重視しないといわれています。つまり、資格や肩書きではなく、実際に仕事に活かせる実践的なスキルを備えていることが重視されるということです。
たとえば外資系の選考においては、英語スキルに関してTOEICのスコアがどうであれ、実際に英語でやり取りしてみてコミュニケーションが取れるかどうかで判断されますよね。TOEICを受けていない人であっても、英語でのやり取りに問題がなければその点はクリアできます。かといって資格が無意味かというと、そういうわけではありません。何らかの資格を取得しているということは、その分野を実際に学んで試験を通過しているという事実が証明されます。
つまりそれに向けての学習を継続し、その成果が資格取得として出ているので、選考担当者が候補者の即戦力の度合いを見極めるためのひとつの参考となるでしょう。外資系企業への転職に有利と考えられる資格は、実際にいくつか存在します。資格にもさまざまなカテゴリーがあるので、闇雲に取得しても有利にはなりません。
しかし明確な意図をもって資格取得を目指すアクションを起こせば、たとえ選考段階ではまだ取得できていなくとも取り組みをアピールできます。そういう意味からも、資格取得にチャレンジするのことはおすすめできます。
では、次に外資系企業への転職を有利にする可能性がある資格を、代表的な業界別に紹介します。
外資系金融業界に有利な資格
外資系の金融企業に転職するために有利な資格は、主に以下のとおりです。
- FP技能士
- CFP
- 宅地建物取引士
それぞれを詳しく見ていきましょう。
FP技能士
FP(ファィナンシャルプランナー)技能士は主に個人の財政的なライフプランを立てる専門家の資格で、国家試験であるFP技能検定を合格して取得できる国家資格です。個人の財政的な現状を分析し、ライフプランを達成するための長期的で総合的な視点の資産設計をサポートするための知識が求められます。
FP技能士は、保険や金融商品の提案・販売を行う人だけでなく、不動産関連でも役立ちます。3級〜1級の3つのレベルのうち、目指すなら2級以上、できれば1級を取得するのが望ましい資格です。試験範囲は貯蓄・投資・保険・住宅ローン・不動産・年金・税金・相続などの個人のお金に関係する幅広い領域が含まれます。外資系のBtoC企業の営業職を目指すなら、取得しておくと有利になる可能性が高いでしょう。
CFP
CFPとは、FP技能士1級と並ぶファイナンシャルプランナーとしての最高難易度の資格となります。「サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー(Certified Financial Planner)」が正式名称で、その頭文字をとって「CFP」と呼ばれます。
FP技能士とCFPの大きな違いは、前者が日本の国家資格であるのに対し、後者はグローバルに通用する国際資格であることです。CFPはアメリカやヨーロッパ、オセアニアを中心に広く認知されています。資格を持っていれば、外資系企業や広くは国際社会においても財政のスペシャリストとして認められ、それに見合う仕事ができます。グローバル化が進んだ現代では、訪日している外国人が財政に関する相談を望む場合も少なくありません。そういった際にCFPを所持していれば、外国人の相談者からも信頼を得られるでしょう。
宅地建物取引士
宅地建物取引は略して「宅建」と呼ばれている資格で、不動産の売買や賃貸借契約を取り扱うのに必要な国家資格です。毎年およそ20万人前後が受験する、国内で最大規模の国家資格といえます。この資格は不動産契約のプロセスの中で、重要事項説明を行なうために必要となります。
合格難易度は高く、合格率は15%程度です。この資格があると不動産関係の企業や建築関係の企業だけでなく、金融業界に転職する際にも有利となります。
外資系IT業界に有利な資格
外資系のIT企業への転職に有利に働く資格は、主に以下のとおりです。
<技術者向けの資格>
- 基本情報技術者試験
- 応用情報技術者試験
- Oracle認定Javaプログラマ
- ORACLE MASTER
- Cisco技術者認定
- Microsoft認定試験
<マネージャー・コンサルタント向けの資格>
- PMP
- プロジェクトマネージャ試験
- ITストラテジスト試験
- ITサービスマネージャ試験
まずは技術者向けの資格を見ていきましょう。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、ITエンジニアとしての基礎的な素養を証明できる国家試験です。年間10万人以上が受験する、人気の資格です。内容はシステム開発に関する技術や管理、戦略などそれぞれの分野から出題されます。これを取得すれば、プログラムの設計・開発から単体テストまでの工程を担当できる力が証明されるでしょう。
現役のエンジニアよりも、今後エンジニアとしての転職を考えている人がその準備として、学習し取得するのに向いています。
応用情報技術者試験
応用情報技術者試験は、基本情報技術者試験の合格者が次に目指すべき、上位資格です。 すでにITエンジニアとして充分な応用的知識やスキルを持ち、IT業務に対する確固たるスタンスを持っている人たちが対象となる国家試験です。
応用情報技術者試験では、より高度な専門知識が問われます。具体的には、ITを活用した経営戦略を策定する際の、営ビジョンや外部環境を理解して情報を分析できる知見が求められます。また、基本情報技術者試験は選択式のみの解答方式ですが、応用情報技術者試験は記述式問題も含まれてさらに難易度が高まります。
Oracle認定Javaプログラマ
Oracle認定Javaプログラマは、3段階にレベルが分かれている、Javaを扱うエンジニア向けの資格です。Javaの資格としての代表的なもので、プログラミングスキルと深い専門知識が必要となります。3段階とはBronze、Silver、Goldの3つのレベルです。
Bronzeは、Javaに関する基礎的な知識が問われます。Silverは上級者の指示のもとで開発に携わることができるスキルを問われる内容です。Goldは、受験できるのがSilverの合格者のみという上級者向けの資格で、設計者の意図を正しく汲み取ってプログラミングできるスキルや、独力で実装するスキルが求められます。
ORACLE MASTER
ORACLE MASTERは、Oracle Databaseシリーズ(日本オラクル社製)を扱える技術力を認定する資格です。試験レベルはブロンズからプラチナまでの4段階があり、もっとも基本のブロンズから順番に受験していきます。
ORACLE MASTERを取得していれば、Oracle Databaseを扱えるスキルの証明となります。資格取得を通してデータベースの管理者が身につけるべきSQLからDB管理までのスキルを身につけることができるので、SEに人気が高い資格です。
Cisco技術者認定
Cisco技術者認定は、シスコシステムズ製品に関係する技術者認定資格です。スキルレベルは3段階(CCNA・CCNP・CCIE)に分かれており、CCIEはネットワークエンジニアの最高クラスの資格といわれています。
問われる範囲は広く、ネットワーク全般の基本知識です。主にネットワークエンジニアやインフラエンジニアを対象とした資格で、Cisco製品に関する問題以外も出ます。
Microsoft認定試験
Microsoft認定試験は、Microsoft社製のソフトウェアについての知見が問われる試験です。試験のグレードや種類の数が多いという特徴があります。
たとえばWindowsの「MCSA: Windows Server 2016」やDynamicsの「MCSA: Microsoft Dynamics 365 for Operations」、SQL Serverの「MCSE: Data Management and Analytics」ほか、非常にたくさんの認定資格が存在します。特定のMicrosoft製品や特定のバージョンにフォーカスした知見を証明できるので、自身の方向性の確立にも役立つ資格です。
次にマネージャーやコンサルタント向けの資格を見ていきましょう。
PMP
PMP(Project Management Professional)は、PMBOK(プロジェクトマネジメントのグローバルスタンダードである知識体系)に基づく国際資格です。プロジェクトマネジメント体系の全般にわたって試験の対象となり、なおかつ受験資格に実務経験の要件も満たさないといけません。取得の難易度は高いですが、取得できれば海外の企業から評価されます。
国際基準のプロジェクトマネジメントスキルを身につけている証明となり、世界的な認知度が高いため、オフショア開発やグローバル案件などに参画するための後押しになります。
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、開発プロジェクトに関する進行、予算、品質、納期などすべてに責任をもち、限られたリソースで完遂する責任者としての能力を証明する国家資格です。実務経験のあるSEやプログラマーなどのエンジニアが、キャリアアップのために受けることが多い試験となっています。
ITストラテジスト試験
ITストラテジスト試験は、情報システムのスペシャリストであることを証明できる国家試験です。合格率はおよそ14%という難易度の高い資格ですが、取得すると一目置かれるのは間違いありません。システムの企画や要件定義はもちろん、開発から保守運用においてもセキュリティ面の安全を確保やシステム基盤の整備などの能力が問われる最高難易度の試験といえるでしょう。
ITサービスマネージャ試験
ITサービスマネージャ試験は情報システムに安定なる稼働を確保し、障害発生時に被害の最小化ができる能力を証明できる国家資格です。システムの継続的な改善や品質管理など、信頼性の高いITサービスを提供できるスキルが問われます。合格率はこちらもおよそ14%という高い難易度です。
外資系コンサル業界に有利な資格
外資系コンサルティング業界の企業への転職に有利に働く資格は、主に以下のとおりです。
- MBA
- 公認会計士・税理士
- 中小企業診断士
個別に見ていきましょう。
MBA(経営学修士)
MBAは特に戦略系コンサルティングファームを受ける場合に、有利に働くことがあります。MBAは正しくは資格ではなく学位ですが、経営を実務家の立場で幅広く、科学的かつ体的に学べます。MBA取得のためには、ビジネススクール(英米の経営大学院か日本の大学院修士課程または専門職学位課程)の2年間の受講が条件です。
MBA取得を通して、経営戦略や組織論、マーケティング、財務など多岐にわたる領域の基礎知識が磨かれていて、経営コンサルタントとしての地力を持っていると認識されます。
公認会計士・税理士
公認会計士は会計の専門家で、国の制度によって業務領域は異なりますが、共通しているのは会計監査を独占業務とすることです。つまり、どの国でも会計監査は公認会計士しかできない業務ということです。公認会計士は経理や税務、コンサルティングも行います。
一方、税理士は税務の専門家として、独立公正の立場で納税義務の適正な実現を担います。業務として顧客の税務の代行や相談、不服審査手続きなどを行なう役割です。公認会計士や税理士の資格があると事業会社がクライアントとなる仕事が基本ですが、経営・戦略コンサルティングファームで働く選択肢もあります。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営課題の解決をサポートするための診断と助言を行なう専門家で国家資格です。有資格者は中小企業基本法において、公的支援事業にとどまらず民間で活躍できる経営コンサルタントとして位置づけられています。
日本の企業の大部分半を占める中小企業の経営者に、適切な診断や助言を与えられる一定レベル以上のスキルを持った人材を登録する制度が中小企業診断士制度です。
バックオフィスに有利な資格
バックオフィスとは「後方支援」という意味で、直接的には利益を生まない部門を指します。ちなみに、フロントオフィスは、営業や企画、開発など利益を生み出す部門を指します。バックオフィスはあらゆる企業にとって存在します。企業活動をするために必要な手続きや法的な対応、フロントオフィスの業務のサポートなどの重要な役割を担う部門です。バックオフィスに分類される業務は「経理」「財務」「人事」「労務」「総務」「一般事務」などがあります。
このバックオフィス関連の転職の際に有利になる資格は、主に以下のとおりです。
- 社会保険労務士
- 日商簿記
それぞれを見ていきましょう。
社会保険労務士
社会保険労務士は、社会保険や人事労務に関する専門家であり、国家資格です。社会保険や人事労務に関する手続きは企業にとって欠かせないものですが、難しくて複雑な内容があります。社会保険労務士の資格を持っていれば、バックオフィスでは即戦力として重宝されるので採用につながりやすい資格です。
日商簿記
日商簿記は、日本商工会議所や各地商工会議所が実施する検定試験の中で簿記に関する技能を証明する資格です。国家資格ではありませんが、バックオフィスへの就職や転職の際に有利な資格で、TOEICなどと並んで権威の高い民間資格といわれています。
企業のお金の流れを把握できるスキルが証明できる資格であり、2級以上であれば、経理部門などの即戦力として重宝がられます。一般事務の場合も経理に関わる業務を担当することが多いので、持っていると有利です。また、簿記ができると営業職であっても計数感覚を備えていることがアピールできるでしょう。
外資系で資格以外に求められる資質・スキル
外資系企業にとって、資格以外に求められる資質やスキルは、主に以下の4つに集約されます。
- 英語によるコミュニケーション能力
- アサーティブなコミュニケーション能力
- セルフマネジメント能力
- 多様性の尊重
ひとつずつ確認していきましょう。
英語によるコミュニケーション能力
近年では日本の英語教育も対話することが重視されていますが、従来は文法や英文解釈に重きを置いてきたので、実践的に話すことがあまり訓練されてきませんでした。そのため、現在の社会人の多くは英語の読み書きはできても、会話となると苦手である傾向があります。
外資系企業で良いパフォーマンスを発揮するには、社内外の人たちとのコミュニケーションが非常に重要です。そのため、TOEICスコアなどではなく実際にどれくらい話せるのか、理解できるのかが問われます。TOEICを受けていなくとも日常の場面の中で、英語でコミュニケーションを取っている人なら問題ありません。そうでない人なら、オンラインスクールの活用やSNSで海外の友人を作って会話するなどして、できるだけ実際に英語でコミュニケーションを取ることで実践的な英語スキルを磨いておきましょう。
アサーティブなコミュニケーション能力
アサーティブとは、相手の立場を尊重しつつ自らの主張を率直に述べることです。他者を傷つけない自己主張といってもよいでしょう。外資系企業で働く場合に大切なのは、自分の意見を明確に発信することです。外資系企業の多くの人たちは、物事を論理的かつ明確に述べることを好みます。
また、外資系企業にはイエスマンは不要だとされます。何も言わなければなにも考えがないと思われるだけです。そのため、自分の確固たる意見を持ち、それを相手に適切に伝えるスキルであるアサーティブなコミュニケーション能力が必要です。
DESC法による実践的な訓練
ちなみにアサーティブなコミュニケーションの実践には、以下の4つのポイントからなるDESC法(デスク法)が有効で、訓練に活用できます。
【Describe:事実を伝える】
自分の感情や相手への評価ではなく、客観的な事実を伝える
【Explain・Express:意見を説明する】
自分の意見を決して感情的にならずに冷静に説明する
【Specify・Suggest:要望を提示する】
自分が求めることを具体的に相手に伝える
【Choose・Consequence:結論を選択する】
相手の反応が「イエス」か「ノー」かによって自分がどういう結論を選択するのかを伝える
DESC法の活用例
例をひとつ挙げておきましょう。仕事のパートナーに依頼している資料作成が、期限になってもできていない場合を仮定します。あなたは内心では苛立っているのですが、相手も一所懸命しているのがわかるのできつくはいえない場合です。
【事実を伝える】
Aさん、資料をまとめる作業は大変かと思いますが、リミットは今日の15時だったのでもう2時間過ぎていますよね。
【意見を説明する】
明日の午後の会議に使うので、もしできなければ、その部分は私も専門外なので内容を一部変更して対応すべきかなと考えているんです。
【要望を提示する】
それでもやはり重要な部分なので、できれば本日持ち帰っていただき、仕上げてきていただいて明日の朝にいただくことは可能ですか?
【結論を選択する】
明日の朝にいただけるなら、私も発表の準備ができるように午前中の予定を空けておいて対応します。
無理であれば、私の方で内容を変更してまとめなおす作業をこれから着手します。いかがでしょうか。
このような形で、相手の立場も尊重しつつ正当な主張を行なうのがアサーティブなコミュニケーション能力です。
セルフマネジメント能力
外資系企業での働き方は、日系企業に比べると自主性が重んじられ、裁量権もある程度与えられます。従来からリモートワークやフレックスタイムを導入している外資系企業が多く、どう行動するかについて自由度が高いです。
つまり、セルフマネジメント能力が重視されているということです。スケジュールも上司の指示ではなく個人のやり方で決めます。戦略に関しても、成果が出るのであれば本人が最善と信じるもので問題ありません。上司に相談するのは可能ですが、結果を見る前からあれこれダメ出しされることはあまりないでしょう。
そして出た結果の良し悪しが、人事評価や次年度の年俸に反映されます。自分で考えて自ら行動し、課題を解決して目標を達成するセルフマネジメントができる人材が、外資系企業には求められています。
多様性の尊重
日本でも最近になってようやく多様性(ダイバーシティ)に関しての理解が進んでいますが、外資系はもともとそれが基本にあります。外資系企業で働くには多様性への理解と尊重の気持ちを持っていなければなりません。女性の登用、LGBTの採用に従来から積極的です。また、日本企業では強過ぎる個性を持つ人は組織で孤立しがちですが、外資系企業ではそんなことはありません。
本来、外資系企業はさまざまな国籍のスタッフが集まっていることも多く、異文化に触れる機会が多い労働環境です。人種や民族の背景が異なっていても、その多様性を認め合う文化が根底にあることを、理解しておきましょう。
まとめ
外資系企業への転職活動における資格の持つ意味と、有利になる可能性がある資格について代表的な業界ごとに解説しました。外資系企業への転職に資格は必須ではないけれど、業界や資格の種類によっては即戦力であることの裏付けとなり、選考に有利となる場合もあります。
未取得であっても取得する取り組みのプロセスに入っていれば、選考時にアピール材料となります。転職ビジョンの中のひとつの要素として、検討しましょう。