退職後に失業保険をもらうための条件と給付期間・金額を解説

転職活動に離職してから臨むのであれば、失業保険をもらうことが経済的な負担を少しでもカバーするために重要です。とはいえ、給付金は申請すれば必ず受けられるのではなく、条件があります。この記事では、給付金を受けるための条件と給付期間・金額などを解説します。いざというときに慌てないように、ぜひ知っておきましょう。

失業保険とは?

まずは一般的に「失業保険」と呼ばれているものに関して、正式な名称と内容についても解説します。

「失業保険」は俗称、正しくは雇用保険の失業等給付の基本手当

「失業保険」とは正式な名称ではありません。正しくは「雇用保険」の給付の中の「失業等給付の基本手当」です。この制度は、離職後の求職期間中に受給できる給付金制度を指しています。さまざまな呼び方が存在しますが、ここでは「失業給付」あるいは「失業給付金」と呼びます。

失業給付は自己都合や会社都合での退職によって、経済面の不安を緩和して転職の活動に励んでもらい、一日でも早く次の仕事に就くために支給されるものです。雇用契約の満了による失業の場合でも利用できます。給付を受けるためには管轄地のハローワークにて手続きをすることが必要です。失業給付は雇用保険に加入し、受給条件を満たしていれば、正社員だけでなくアルバイト、契約社員やパートタイマーでも受給できます。

受給の前提である「失業状態」の定義

失業給付を受給するためには、前提として問われるのは「失業状態」であるかどうかです。この定義としては、働く意欲と能力はあり、積極的に休職活動をしているにもかかわらず仕事に就けない状態のことを指します。勤め先の会社で雇用保険に加入していて、その会社を辞めた場合でも、以下のような場合は失業と認定されないので注意しましょう。

  • 自営業を始めている、もしくはその準備をしている
  • 家業や家事の手伝いをしている
  • 法人の役員に就いている
  • 学業に専念している
  • 次の就職先が決まっていて転職活動をしていない

また、会社を辞めた後に以下のような場合も失業とは認定されませんが、失業給付の受給期間延長の手続きをハローワークで行うと、状況が変わって働ける環境になったら給付を受けることができます。

  • 病気やケガ、妊娠や出産、育児などのために働けない
  • 病人の介護をする必要があって働けない

これらが前提となる失業状態を見極める要素ですが、それをクリアした上で、さらに必要な条件について以下で明らかにします。

受給者が満たすべき2つの条件

失業給付を受けるためには、先に述べたような失業の状態であることに加えて、雇用保険に関して満たしているべき2つの条件があります。

ひとつめの条件は、退職日より前の2年間に通算12ヵ月以上の加入期間があることです。ただし、特定理由離職者・特定受給資格者については、退職日より前の1年間に加入期間が通算で6ヶ月以上あればOKです。特定理由離職者とは、契約更新を希望するも更新されなかった人や、配偶者の転勤や病気、妊娠や出産などの理由で失業した人です。特定受給資格者とは、後者は解雇や倒産などにより失業した人を指します。

ふたつめの条件は、ハローワークにて「求職票」に氏名住所などの基本情報と、経歴や希望する条件などを記載し提出することで求職の申し込み手続きを行うことです。通常、失業給付の受給開始のためには、上記の手続きを最初に行わなければならないので、忘れずに申し込みましょう。

こんな場合に雇用保険は適用されるのか?

雇用保険の失業給付が実際に適用されるのか、一般人ではわからないケースもありますよね。ここでは、そういう判断がしにくいケースを取り上げて、適用されるのかどうかをについて見ていきましょう。

長期休職で休職期間満了による退職

病気の療養や怪我などの理由で、長期間にわたって休職する場合があります。就業規則において、一定の休職期間が満了する際にまだ復帰ができなければ、「解雇」もしくは「退職扱い」になることが定められているケースです。「解雇」の場合は特定受給資格者にあたり、給付制限なしで給付日数についても優遇を受けることができます。

一方、就業規則に休職期間満了が「退職事由」として定められている「退職扱い」の場合は特定理由離職者とされます。離職票上では理由は「その他」になり、「休職期間満了」と記載されます。

ただし、いずれの場合も病気や怪我が治癒して働ける状態にならないかぎりは、失業給付は受給できませんので注意しましょう。

適応障害による退職

自己都合退職でも医師に適応障害と診断されるなどの、いわゆる心の病気により退職したケースでは、給付制限がない特定理由離職者とされることがあります。会社都合とはいえないものの、労働環境にも責任があると考えられるからです。ハローワークでは実際の適応障害などの理由を伝え、適応障害などの診断を下した医師に書いてもらった「就労可否証明書」を見せましょう。

ただし、この場合も辞めたことにより精神的な安定が戻って、働ける状態になったという前提がなければ受給できません。これは自己申告にて、働けるということを意思表示することでクリアできます。

産休後の退職

出産する前は産休後に復帰するつもりでいても、実際に出産を経験した後は、職場復帰をさまざまな理由で断念する人も珍しくありません。このような場合でも、失業給付は受けられます。ただし、あくまでも仕事があれば働くことが前提なので、主婦業に専念するつもりであればそもそも受給できません。

また、出産度しばらくは体調的に働くことが難しい場合は、受給期間の延長を申請することで受給が可能になります。

失業保険の手続き

失業給付を受けるための手続きについて、離職理由別も含めて詳しく見ていきましょう。

失業給付の基本的な流れ

まずは、退職後に失業給付を受けるための、基本的な流れは以下のとおりです。

【第1段階】ハローワークにて求職の申し込み
居住地の管轄のハローワークを離職後できるだけ早く訪れて、離職票を提出し求職票を記載して求職の申し込みを行います。
ハローワークは失業給付の受給要件を満たしていることを書類上で確認した上で、受給資格の決定をし、離職理由についても判定するのです。
受給資格が決定したら「雇用保険受給資格者のしおり」が手渡され、雇用保険受給者説明会の日時が案内されます。

<求職の申し込み手続きに必要なもの>

  • 雇用保険被保険者 離職票1および2
  • マイナンバーカードもしくはマイナンバー通知書
  • 運転免許証などの身分証明するもの
  • 写真2枚(縦3cm×横2.5cmの正面写真・上半身かつ、3ヵ月以内に撮影されたもの)
  • 印鑑
  • 本人名義の普通預金通帳

最重要なのは離職票で、これがないと手続きできません。離職する会社が給与情報などを社会保険事務所に提出し、社会保険事務所がそれをもとに作成して会社に郵送します。
少し日数を要するので、退職日までに届かないケースもあります。そんな場合は郵送してもらいましょう。

【第2段階】待機期間
離職理由にかかわらず離職日の翌日から7日間の待機期間があります。この間は求職活動を一切行ってはいけません。

【第3段階】雇用保険受給説明会
待機期間が明けると雇用保険受給説明会に出席して、給付のための説明を受けます。この時に失業認定日のスケジュールも伝えられます。

【第4段階】失業認定日(第1回目)
受給資格の決定から約4週間後に第1回目の失業認定日があります。自己都合と会社都合のいずれの場合も、この間までに1回以上の求職活動を行うことが必要です。

ここからは自己都合か会社都合かによって、パターンが変わります。

会社都合の場合は、待機期間明けから給付日数のカウントが開始されます。第1回目の失業認定日で認定を受けて問題がなければ、約1週間後に認定日の前日までの失業給付金が金融機関への振込にて支給されるでしょう。また、第一回目以降は4週間ごとに認定日があり、その間に2回以上の求職活動が必要です。その都度認定を受けて支給されるパターンが給付満了まで繰り返されます。

自己都合の場合は、基本的に2ヵ月間は給付制限される期間です。それが明ける頃に2回目の失業認定日があり、それまでに2回以上の求職活動が必要です。
それ以降は会社都合の場合と同じく、給付満了まで4週間ごとに認定日があり、その間に2回以上の求職活動が必要です。その都度役1週間後に給付金が支給されます。

なお、自己都合の場合でも特定理由離職者や特定受給資格者、その他の正当な理由によるものと認定されれば給付制限がかからないケースもあるので、詳しくはハローワークで相談してみましょう。

ちなみに、現行のルールでは給付制限は2ヵ月ですが、2020年10月1日に失業等給付の制度改正が行われるまでは3ヵ月でした。また、過去5年の間で自己都合による退職を2回以上していると、3回目以降の自己都合による退職においての給付制限期間は3ヵ月間になります。

失業給付の支給額の目安

失業給付金の1日当たりの金額は「基本手当日額」と呼ばれます。これは原則として退職前180日間の一時金を除いた賃金総額を180で割った「賃金日額」に、給付率を掛けたものです。給付率は50~80%の範囲で元の賃金によって変化し、額が低い方ほど率は高くなります。また、基本手当日額には、年齢区分ごとに上限額が定められているのです。

失業給付の受給期間と給付日数

失業給付が受けられる「受給期間」と、失業給付の日数がカウントされる上限の「給付日数」があります。このふたつはどう違うのか、詳しくみていきましょう。

受給期間と給付日数

受給期間というのは、条件を満たせば所定の額の失業給付が支給を受けることができる期間(期限)を示します。原則として離職した翌日から1年間です。例外としては所定給付日数が330日と360日の場合は、それぞれ「1年間+30日」「1年間+60日」となります。

一方、給付日数は失業給付が受けられる日数としてカウントされる上限の意味です。所定給付日数は、以下のように離職理由や離職者の状況によって異なります。

退職時の年齢 雇用保険の加入期間
1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30歳以上35歳未満 90日 120日 180日 210日 240日
35歳以上45歳未満 90日 120日 180日 240日 270日
45歳以上60歳未満 90日 180日 240日 270日 330日
60歳以上65歳未満 90日 150日 180日 210日 240日

また、障害者や就職困難な人の所定給付日数は以下のとおりです。

退職時の年齢 退職時の年齢
1年未満 1年未満
45歳未満 150日 150日
45歳以上65歳未満 150日 150日

受給期間を過ぎると、残りの給付日数分は受給できません。少しややこしいので、例を挙げてみましょう。あなたの給付日数が仮に300日だったとして、受給期間内においてアルバイトなどの兼ね合いで定義上の失業状態だった日数が280日だったとします。(後の「アルバイトによって失業給付の支給が先送りになる場合」で詳述)この場合は給付日数のうちの20日分は給付が受けられません。

ただし、病気や怪我、妊娠や出産などの理由によって、受給期間中に30日以上継続的に働くことができなかった場合は、受給期間延長の申請によって最長3年の範囲で働けなかった日数分だけ受給期間を延長できます。所定給付日数330日と360日の場合に延長可能な期間は、それぞれ最大限3年から30日と60日を引いた日数となります。

なお、本人がハローワークに行けない場合は代理人による申請あるいは郵送でも可能です。

期間中に就職できたら再就職手当をもらおう

受給期間中に就職ができれば、再就職手当がもらえます。再就職手当とは、所定給付日数がまだ残っている時点で就職できた場合に支給される手当です。早期に再就職することを後押しするための、お祝い金のような意味を持つ制度です。早く再就職をすればするほど、給付率が高くなります。

ただし、再就職手当の受給には満たすべき条件がいくつもあるので、詳細はハローワークで確認しましょう。再就職手当の計算法は以下のとおりです。

再就職手当の額=所定給付日数の支給残日数×給付率60〜70%×基本手当日額

未支給日数によって給付率が決まります。ただし基本手当日額の上限は6,195円(60歳以上65歳未満は5,013円)です。

給付期間中のアルバイトの注意点

失業給付を受けている間の、アルバイトに関しての注意点を解説しましょう。

求職申し込み前および待機期間後は自由

求職の申し込み手続きをする前においては、アルバイトが自由にできます。しかし待機期間中、つまり受給資格が決定した日から7日間はアルバイトが禁じられます。そして待機期間を過ぎた後は、自由にアルバイトすることは可能です。

そもそも自己都合で退職した場合は、2ヵ月の給付制限期間があるので、貯えがあればよいですが、そうでなければ経済的に生活が逼迫するおそれがあります。そういうリスク避けるために、アルバイトは容認されています。

アルバイトによって失業給付が受給不可になる場合

主なケースは以下の2つです。

  • 定義上「就職」と解釈できる場合
  • 受給期間を超える日数のバイトをする場合

それぞれを見ていきましょう。

【定義上「就職」と解釈できる場合】
言い換えれば、そのアルバイトが雇用保険加入条件を満たしている場合です。1週間の労働時間が20時間以上になったり、31日以上の継続的な雇用が見込まれたりする場合は就職状態と判断されます。

そのため、求職申し込み前および給付制限期間中にアルバイトをするなら、週に20時間未満になるように、かつ31日以上の継続雇用にならないように契約するのがポイントです。例えば、雇用契約書にはシフトが明確になっていない場合には、シフトの組み方を1週間に20時間を超えることがないように前もって頼んでおきましょう。

また、契約期間が明確になっていなければ「就職」と判断されるおそれがあります。そのため、アルバイトを始める際に雇用主に「雇入通知書」を書いてもらっておきましょう。就職ではないかと問われた際に、それが提出できれば問題ありません。

アルバイトが許される時間数や日数の基準値は、ハローワークごとに判断が任されている可能性があります。ルールについては、必ず居住地のハローワークで確認をしましょう。

アルバイトによって失業給付の支給が先送りになる場合

基本ルールでは1日に4時間を超える労働をすると、1日分の支給が先送りされます。減額にはなりませんが、その日数分だけ、支給開始日が遅くなるということです。受給期間は離職日から1年なので、度重なる先送りにより1年を越えた分の未給付日数はカウントされなくなります。

アルバイトによって失業給付が減額される場合

アルバイトの賃金額によって減額されるケースがあります。以下のようなルールです。

A:基本手当日額+1日分のアルバイト収入(源泉徴収後の額)
B:前職の賃金日額×80%

  • AがB以下であれば、失業給付金は満額支給
  • AがBを越えれば、添えた分だけ減額されて支給
  • 1日分のアルバイト収入がBよりも多い場合は不支給

失業給付金の不正受給

条件をクリアすればアルバイトはできますが、虚偽の申告をしたり未申告であったりすると不正受給となります。ケース別に見ていきましょう。

【求職活動をしていないのにしたと偽る場合】
失業給付を受給するには、認定日と認定日の間の4週間に求職活動をした実績が必要です。何もせずに活動したとして受給するのは不正となります。
【就労の状況を正しく申告しない場合】
就職あるいはアルバイトなどの就労の状況を正しく申告せずに受給した場合は、不正となります。
【個人事業を始めたことを申告しなかった場合】
自営業や業務委託の受注などのスタイルで事業を始めたにもかかわらず、「失業認定申告書」に記載することなしに失業給付を受給した場合は不正となります。
【企業の役員に就任して申告しない場合】
名義だけを使用させる場合であっても、会社役員に就任しているにもかかわらず、申告しないで失業給付を受けると不正となります。
【働く気がないのに失業給付を受給した場合】
働く気がそもそもないのに、制度を利用すると不正となります。

不正受給に対するペナルティ

失業給付の不正受給が発覚した場合は、ペナルティが科せられます。まず、不正があった日以降の、失業給付の支給が一切受けられません。また返還命令によって、すでに不正受給した全額を返還しなければならないのはもちろんとして、納付命令により不正受給分の2倍に相当する金額を請求されます。

返還命令や納付命令を無視するとあらたに延滞金が発生する上、資産の差し押さえなどが行われます。悪質であれば詐欺罪で刑事訴訟の対象になります。

不正受給にならないために気をつけるべき点

自ら進んで不正受給をしないことは当然ですが、ルールを知らずに結果的に不正受給になるのも要注意です。あらためて、1日4時間を超えない労働や1日20時間を超えない労働、31日以上の継続的な雇用にならないように気をつけましょう。

また、雇用主が善意から雇用保険に加入する手続きをとってくれる場合があります。そうならないよう、当初に事情を伝えておく方が賢明です。

まとめ

いざ退職となった際に慌てなくてよいように、失業給付を受けるため条件と給付期間・金額などを解説しました。さまざまな条件がありますので、よく理解して確認しながら手続きを進めましょう。また、アルバイト自体はルールを守ればしてもよいのですが、減額されるケースや就職状態とみなされて失業給付が打ち切りになることもあるので注意が必要です。

経済的な負担を抑えるために、ルールをよく確認して失業給付を最大限に活用しながら転職活動に励みましょう。

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