【転職者向け】コンサルティング業界についての基礎知識まとめ

コンサルティング業界は転職志望者に人気があります。この業界は、いくつもの系統のファームに分かれており、それぞれ特色があって転職動向も異なるので、系統について知っておくほうが賢明です。

この記事では、転職志望者向けにコンサルティング業界の基礎知識について、ファームの系統別の特徴や転職動向、代表的な企業の平均年収や世代別最高年収なども一覧にして紹介します。

コンサルティング業界とは?

コンサルティング業界とは、企業をはじめとした組織が抱える種々の課題に対して、解決や改善を図る提案やその実行などでサポートを行なう、コンサルティング業務に携わる業界です。日本のかつてのコンサルタントは、おおむね経営コンサルタントを意味していましたが、最近では、外資系のあらゆる専門分野を持ったコンサルティングファームが日本に進出を果たしました。

具体的な業務内容は、系統によって異なってきますが、いずれもクライアントへのヒアリングから始まります。丁寧にヒアリングを行なって、現状の理解をもとに市場や環境を分析し、課題解決の鍵を見極め、有効な施策を練り上げて実行しなければなりません。そのため、クライアントの業界や関連する分野の動向を把握する必要があります。

そして施策として、系統ごとに異なるアプローチがあります。例えばマーケティング戦略、システム導入、組織改革、財務体質の改革など、専門分野に沿ってサポートが行われます。

コンサルティング全10系統の特徴と転職動向

では、次にコンサルティングファームを専門分野ごとに分けて、特徴と転職の動向を合わせてご紹介しましょう。

戦略系

戦略系は外資の、クロスボーダーなビジネス展開をしているファームがほとんどです。欧米流のロジックをベースにしながらもローカライゼーションが進んでおり、日本の企業風土や日系企業特有のニーズに合わせたコンサルティングを手掛けています。

クライアント企業の経営ビジョンをより明確化して、その企業のリソースを最大限に活かせる中長期戦略を策定します。全社レベルで行う改革や、特定の部門のみの改革もあります。従来は大企業の経営陣に対して、経営に対する方針や戦略を提案をするのが基本でした。

現在では経営陣への提案にとどまらず、企業の現場の懐深く入って先方の人材を巻き込み、具体的な実行面にも踏み込み、包括的にサポートをする手法が一般的になっています。

戦略系の転職動向

戦略系コンサルティングファームでは、第二新卒や30代半ばまでの若手を中心に積極的に採用しています。業界未経験者に関しては、旧帝大などの有名大学出身者などが採用されやすい傾向があります。また、資格としてMBAの取得が重要であるイメージがありますが、特に必須というわけではありません。さまざまなキャリアを経験した人材の、ポテンシャルを重視した採用が行われています。

英語力は絶対必要とまではいかないものの、グローバル案件が増加しているため、英語力はあるほうが転職に有利であるに違いありません。

総合系

総合系コンサルティングファームはおおむね企業規模が大きく、幅広い分野のコンサルティングを行うファームです。扱う課題によって製造業や金融業、流通業、官公庁などの業界別の部隊と、戦略や人事組織、財務会計などのソリューション別の部隊に大きく分かれます。一般的には、各分野の専門家のコンサルタントが内容に応じて協業し、チームを編成してコンサルティングを行なっています。

実際にデロイトやKPMGなどの、会計事務所から生まれた大手総合ファームは、グループ内にファイナンシャルアドバイザリーや監査法人、法務、会計事務所などの企業を抱えており、それらと連携をとってグローバルに活動しています。

総合系の転職動向

総合計は若年層である20代~30代前半の求職者については、キャリアよりも有名大学出身者を中心としてポテンシャル採用が行われる傾向があります。また、英語力に関しては高いレベルを求められます。

IT系

IT系コンサルティングファームは、オーダーメイドのITシステム開発および導入によるソリューション、ERP(基幹系情報システム)やCRMなどの導入をサポートおよび運用のメンテナンスなどを行っています。クライアントは中堅企業から大企業まで幅広く、スケールが大きい数十億規模の案件を手掛ける場合もあります。AIやRPAなどを活用した案件も加速度的に増えており、常に最先端技術に触れられるのもIT系の魅力です。

IT系の転職動向

総体的に人材ニーズは旺盛です。出身大学よりもキャリアが重視され、機械学習やクラウドなどの先端技術に関しての、高い専門性を持つ経験者は優遇される傾向が強いです。AIやRPAの進化により、ITコンサル的な業務も増え、エンジニア経験者にとってキャリアアップするチャンスが期待できます。

組織人事系

組織人事系コンサルティングファームは、クライアント企業の人事や組織面での課題解決をプランニングおよびサポートするファームです。具体的には、経営者の報酬システムの見直しや給与体系および評価制度の調査や設計、人材能力の開発、企業風土の変革、退職金制度などの課題に対応します。人事や組織の問題は、社内での解決が難しい面があります。そのため、第三者の介入として組織人事系ファームの需要が高まっています。

また、この系統の中で最近注目をされている新しい分野が、チェンジマネジメント系コンサルティングです。これは、研修やワークショップ、業務改善による成功体験などを通じて、社員の意識変革を促すことにより組織の体質改善をサポートする新しい手法です。人事制度や評価制度をドラスティックに変革する場合、社員の価値観が変化についていけずに反発や不満が出て、業務に悪影響を及ぼすことがあります。

それを軽減するために、さまざまな体験をもって社員の価値観を変革した上で、必要に応じてルールを変更するアプローチをとります。社員の意識改革やモチベーションアップは非常に難しい課題なので、それを押し付けではなく社員の内面の変革からサポートして、企業としての業績向上に結びつける点が注目で集めています。

組織人事系の転職動向

人事経験者はもちろん、戦略系ファーム出身者やM&Aアドバイザリー経験者などにも人材ニーズが旺盛です。また、日系企業のグローバル展開に伴う案件も増えており、英語力が重視されるようになっています。

財務アドバイザリー系

財務アドバイザリー系コンサルティングファームは、財務に関連した課題解決のサポートを行います。案件として近年に多いのは、さまざまな業界の再編からくるM&Aの資金調達やデューデリジェンスのサポート、係争分析、企業価値評価、企業再生などです。

財務アドバイザリー系の転職動向

財務アドバイザリー系のコンサルタントは、必ずしも会計士資格を持っている人ばかりではなく、金融業界出身や他系統のコンサルティングファーム出身者などの活躍が見られます。公認会計士やUSCPA(米国公認会計士)、税理士資格保持者以外にも、外資系投資銀行やM&A仲介会社の出身者などが採用されています。また、証券会社のリテール人材も案件獲得部隊の要員として人材ニーズがあります。

また、最近のM&A案件はクロスボーダー化しているため、英語力を条件とするファームも増加中です。

国内独立系

国内独立系コンサルティングファームとは、日本国内の独立した企業で経営や人事組織改革、業務改革、物流や製造などのさまざまなテーマに対してコンサルティングを行うファームです。国内でのコンサルティングだけでなく、クライアントである日系企業のグローバル展開のサポートなど、幅広いサービスを展開します。コンサルティングの主な対象は中小企業で、チームではなく個々のコンサルタント単位で複数のクライアントを担当する場合が多いです。

そのため、若いコンサルタントもクライアント企業の経営トップと語り合う機会があります。また、コンサルタントが現場に入って実践的なサポートを行うので、将来独立を目指す人には、よい勉強となるでしょう。

国内独立系の転職動向

外資系ファームのような人材の流動性の高さはありませんが、中途採用の人材ニーズもあります。会計士や税理士の資格があると有利ですが、総合的な知識やコミュニケーション能力なども求められます。

監査法人系

監査法人系コンサルティングファームは組織的に財務書類の監査や証明を行うことを主な業務とする、公認会計士の共同によって設立されたファームです。監査法人と言えば一般的に、主に上場企業などの大企業の会計監査を行い、適正に財務諸表が作成されているかをチェックする監査業務を行うイメージがありますが、最近では非監査業務も行います。

株式公開支援業務やM&Aアドバイザリー業務、セキュリティリスクコンサルティング、ITアドバイザリー、金融機関に対するビジネスプロセス改革など多様なコンサルティングを手掛けています。

監査法人系の転職動向

監査・アシュアランス部門は、原則として公認会計士(またはUSCPA)の資格がある若い人材や、同じく資格があって税理士法人や会計事務所での勤務経験がある人材のニーズが旺盛です。

医療/ヘルスケア系

医療/ヘルスケア系コンサルティングファームは、病院や介護施設、医薬・医療品メーカー、臨床・非臨床試験受託企業、バイオベンチャーなどのヘルスケア分野のコンサルティングを行います。医療はこれまで研究と治療にエネルギーを注いできて、経営面では他業界に遅れをとっている現状があります。そんな医療機関に対して経営力を強化する包括的なコンサルティングや、経営状態がよくない医療期間の再生のサポートを提供しています。

医療/ヘルスケア系の転職動向

医療は専門性が高い領域なので、医療関係の出身者を採用する傾向にあります。またグローバルな案件が増えてきていることから、ある程度の英語力は必要です。病院の統合案件も増えているので、会計士や財務関係の経験者にも人材ニーズが旺盛です。

企業再生/事業再生系

企業再生/事業再生系コンサルティングファームは、経営破綻した企業や資金不足に苦しむ企業などの危機的状況にあるクライアントに対し、再生を図るサポートを行います。クライアントの現状を把握・分析の上で、再生事業計画を作成し、クライアントの内部まで入り込み、債権者との交渉や資金調達などにも関わって包括的に再生を支援します。

企業再生/事業再生系の転職動向

財務や税務に関連する案件も多いことから会計士資格者や、戦略系や財務アドバイザリー系のコンサルティングファーム出身者を優遇するファームが多いです。

シンクタンク系

シンクタンク系コンサルティングファームは多種多様な分野のスペシャリストが集まり、リサーチや分析、提言、システム開発を行います。 業務内容は経済動向のリサーチや官公庁の政策決定のためのリサーチと提言、民間企業のコンサルティングなどです。

従来は経済調査がメインでしたが、現在はそれ以外にも企業経営全般のコンサルティングも扱います。

シンクタンク系の転職動向

新卒に関しては学部卒よりも大学院卒が優遇されるシンクタンクですが、中途採用に関しては、そこは問われません。部門別採用になるので、該当部門とキャリアの関連性によって採否を判断される傾向にあります。

系統別主要企業の平均年収および世代最高年収一覧

ここまで見てきた10系統のコンサルティングファームのそれぞれにおいて、代表的なファームを例にとって、平均年収と世代別の最高年収を参考に表にしました。

系統 企業名 平均年収 世代別最高年収
20代 30代 40代
戦略系 マッキンゼー 1,045 904 1,490 1,912
A.T.カーニー 847 642 1,300
ベイン・アンド・カンパニー 791 1,160 1,512
総合系 アクセンチュア 854 1,284 11,620 3,180
デロイトトーマツ 812 1,200 1,480 2,004
アビームコンサルティング 710 1,100 1,456 1,464
IT系 フューチャーアーキテクト 643 862 1,216 722
ウルシステムズ 746 572 849 870
組織人事系 ジェネックスパートナーズ 656 832
日立コンサルティング 640 815 1,080 1,296
財務アドバイザリー系 PwCアドバイザリー 647 600 1,200
国内独立系 船井総合研究所 483 780 1,996 780
タナベ経営 536 507 922
監査法人系 監査法人トーマツ 747 1,242 1,384 1,348
あらた監査法人 693 1,071 1,668 1140
医療/ヘルスケア系 エムスリー 634 650 780 720
企業再生/事業再生系 山田ビジネスコンサルティング 601 764 726
シンクタンク系 野村総研 763 1,172 1,406 1,780
日本総研 632 922 1,206 1,134

国内独立系を除いて、平均年収でも一般企業では高額の部類に入る額になっています。また、世代別最高年収も、およそ半数が1千万円超えです。コンサルティング業界はハードワークともいわれますが、それを補って余りある報酬が手に入れられるのは間違いありません。

コンサルティング業界における日系と外資系の違い

コンサルティング業界は他の業界に比べて、外資系ファームの占める割合が多い業界です。その中での、日系ファームと外資系ファームの違いについて触れておきましょう。まず、前提として個々の人材に求められるものについては、日系ファームでは組織へのロイヤルティや協調性が重んじられます。一方、外資系ファームでは自分自身をアピールする積極性が重んじられるのが大きな違いです。

受注方式の違い

日系ファームと外資系ファームは受注方式において異なる部分があります。すべてではありませんが、日系ファームではプロジェクト単位で案件を受けるのではなく、定常的にクライアントをサポートする顧問制のスタイルを取るケースが多いです。顧問制とは、経営相談に乗るスタイルで長期にわたってコンサルティングを行うスタイルです。このようにして、一人のコンサルタントが並行して、複数のクライアントをサポートする形式が一般的です。

外資系ファームの場合は基本的に、プロジェクト単位でコンサルティングを受注するスタイルです。異なるスキルを持つ複数のスペシャリストを集めたチームで、通常1~2件のプロジェクトに対して集中的に取り組みます。期間は案件によりさまざまですが、クライアント企業に常駐してプロジェクト終了までサポートを行うケースが多いです。

雇用スタンスの違い

外資系ファームでは「Up or Out」、つまり「昇格か転職か」という文化があり、数年間に集中して経験を積み、昇進しなければ転職する傾向が強いので人材の流動性は高いです。それに対して日系ファームは「Up or Out」のような極端な考え方はなく、成果主義の評価制度を採用しつつも離職率が低く、得意の専門領域を持つスペシャリストが長く勤めやすい環境です。

コンサルティング業界の今後の予想

コンサルティング業界は企業の経営課題が多様化し、またはグローバル化するのに応じて案件の幅も広がり、今後も市場はますます成長すると考えられます。

各系統の案件が多様化するにつれて、複数の領域を横断するファームが増えてきています。また、経済のデジタル化が進展する中で、多くの案件がデジタルテクノロジーとは無縁でいられません。実際に「マッキンゼーデジタル」や「デジタルBCG」の展開で明らかなように、大手ファームはデジタル部門を強化しています。

一方、クライアント企業はデジタル関連の投資が増える中で、優秀な人材確保の難易度が上がっています。そして、過去に経験したことのないスピード感で変革を迫られているため、人材不足から外部に戦力を求めざるをえません。そのため、過去に依頼して実績があるコンサルティングファームに、新たな案件も依頼する傾向が強まっています。課題別にファームを変えて依頼するよりも、すでに実績があって自社に理解のあるファームに依頼した方が安心感もあり、情報共有もスムーズだからです。ファームとしては依頼されたテーマが専門外であっても、そのテーマを得意とする人材を迎え入れ、組織内に新しい知見を広めて案件の幅を広げ、人材力を高めています。

専門分野に細分化されていながらも、多くのファームが場合によっては総合系のような包括的なサポートを行う傾向の裏にはそういう背景があります。

まとめ

転職志望者向けのコンサルティング業界の基礎知識として、系統別の特徴や転職動向、代表的な企業の年収事情を紹介しました。

時代の流れから案件は多様化、グローバル化する傾向が強く、転職する側としては保有スキルや専門性が活かせるファームの選択肢が広がりつつあります。自身のプライオリティとなるスキルを明確にアピールできれば、コンサルティング業界への転職に成功する可能性が高いでしょう。

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