企業の管理職になると、年頭や期初(会計年度の始め)あるいは昇進した際などの何かの節目に、社員を前にして「抱負」を語るシチュエーションがありますよね。そんな時に、何をどのように語ればよいのか、分からない人も多いことでしょう。
この記事では管理職が抱負を語ることになった場合の、シチュエーション別の例文およびポイントをわかりやすく紹介します。管理職のみなさんは、ぜひ参考にしてください。
目次
管理職が語る抱負とは
「抱負」とは、そもそもその人が胸中に秘めている決意のことです。一般的に新年の最初の朝礼や会議、あるいは何らかの新しい環境でスタートする際などに役職のある人が語ることが多い日本社会の風習といえるでしょう。
一見すると、抱負と目標は似ているように感じられるかもしれません。しかし抱負との違いは、前者が数値化された理想形の表現であることに対し、後者はその目標を達成するための精神面での意気込みの言葉による表現です。
管理職が昇進時に語る抱負
多くの企業の職場では、誰かが昇進すると朝礼や会議でその人が抱負を語る機会があります。ここでは、管理職に昇進する場合や、すでに管理職だった人がさらに上位の役職に昇進する場合に語る抱負の例文を紹介し、語るポイントについても解説しま しょう。
昇進時の抱負の例文
昇進にあたっての抱負の例文として、3種類を紹介します。基本的な内容は大きく変わりませんが、それぞれ微妙に語り口が違うので、あなたがしっくりくるものを参考にしてください。それぞれの持ち味を参考に挙げておきましょう。
Aは格式と現代感覚、および親近感がほどよくブレンドされた、一般的に好印象を持ってもらいやすい語り口です。Bは謙虚さや誠実さ、実直さを表現するのに向いている語り口です。多くの職場で違和感がないでしょう。Cは最も格式を意識したもので、上下関係や年功序列に厳格な職場にはふさわしいです。
【例文A】
このたび、〇〇〇部〇長を拝命いたしました〇〇〇〇〇です。
もとより力もありませんが、ご指名の栄誉に賜われましたのはひとえに、素晴らしい環境と機会を用意してくださり、私の能力を実際以上に引き上げてくださった上司と、常に快くサポートしてくださった周りの方がたの存在あってこそだと感じております。
これまでは与えられてばかりではありましたが、これからは私のほうから、お世話になった皆さまに素晴らしい環境や機会を提供できる存在になっていかなくてはと深く決意しております。
まだまだ力不足ではございますが、精一杯精進してまいりますので、今後とも変わらぬご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願い申し上げます。
【例文B】
この度はひとかたならぬお引き立てを賜りまして、誠に有難うございます。
〇〇〇部〇〇長という大役を賜りましたことは、ひとえに入社以来ご指導いただきました諸先輩方をはじめとした皆さまのご支援の賜物であると、心より感謝申し上げます。
これまでの仕事で培ってまいりました経験を活かし切り、皆さまにご満足いただける実績を上げるべく、〇〇長という立場からより広い視野をもって真摯に取り組んで参ります。
まだまだ至らぬ点も多くご不便をお掛けすることもあるかと存じますが、拝命させていただいた責任をしっかりと果たせるよう邁進する所存です。今後ともより一層のご指導ご鞭撻のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
【例文C】
本日付けにて〇〇〇部〇長を拝命いたしました〇〇〇〇〇でございます。
この度の人事に関しましては、大変に名誉なことであると受け取っております。これも入社以来絶え間なくご指導を賜った上司と、〇〇〇課のメンバーのサポートの賜物であると、心より感謝いたしております。
それと同時に、このような大役を仰せつかりまして、改めて責任の重大さに身の引き締まる思いです。
まだまだ若輩者ではございますが、今後の〇〇〇社、〇〇〇部、そして〇〇〇課の皆さまのために微力ではありますが持てる力を尽くしていきたいと決意しております。どうか、引き続きご指導ご鞭撻のほどを、よろしくお願い申し上げます。
ただし、ここで紹介した例文を参考にして挨拶を作成するのは良いですが、例文をそのまま使うのはやめた方が良いでしょう。
なぜなら例文をそのまま使ってしまうと、テンプレート感が強過ぎて違和感や複製感が出てしまいます。例文をもとにあなたの状況にふさわしいスピーチを、感謝と決意の気持ちを込めてあなたの言葉で考えて話しましょう。
昇進時の抱負のポイント
昇進時に抱負を語る際のポイントを紹介します。まず前提として、昇進というものはこと自分だけの力で得られた機会ではなく、周囲の支援や協力があってこそであるという意識を持つことが非常に重要です。その上で以下の4つのポイントを押さえましょう。
- 上司および同僚への感謝を盛り込む
- 謙虚かつ前向きに語る
- 長過ぎないようにシンプルにまとめる
- あらかじめ練習をしておく
個別に見ていきましょう。
上司および同僚への感謝を盛り込む
昇進にあたっての抱負を語る際は、あなたを支えてくれた上司や同僚に対する感謝の気持ちをしっかりと盛り込みましょう。昇進においては、上司からの推薦や同僚から昇進試験の応援などがある場合もありますよね。そういうことを通して勝ち得た昇進であれば、その人たちへの尽きぬ感謝の気持ちを盛り込んで語ることが大切です。
謙虚かつ前向きに語る
昇進は当然ながら喜ばしいことですが、謙虚さを忘れてしまっては品位を欠いてしまいます。「私はまだまだ未熟であり、これからも一層に精進する」という心構えが言葉に表れなければなりません。その上で謙虚さだけでなく、今後の努力で活躍していきたい、このような貢献をしたいという前向きかつ具体的な目標を加えると良いでしょう。
長過ぎないようにシンプルにまとめる
昇進にあたっての抱負を全社朝礼や部署の朝礼などで話すときは、必要最低限の内容をしっかり盛り込みつつも、長くなり過ぎないように気をつけて手短に話すようにしましょう。昇進はめでたいこととはいえ、多忙な中で必要以上に長ながと話を聞かされるのは、誰にとっても不快ですよね。
あらかじめ練習をしておく
人前で注目を浴びて話すのは、誰しも緊張します。それが昇進にあたって初めての抱負を語るのであればなおさらのことでしょう。そのため語るべきことはシンプルにまとめて、事前に原稿を作って時間も測ってみて、長過ぎないか確認しておくのが賢明です。
そして繰り返し練習し、スムーズにスピーチができるようにしておきましょう。
管理職が期初に語る抱負
管理職が会計年度の初めや、半期や四半期などの節目の冒頭で語る抱負について解説します。まずは、前年度の業績がよかった場合とそうでない場合の、2種類の例文を紹介しておきましょう。
期初の抱負の例文
【例文A:前年度の好業績を受けてさらなる飛躍を目指す抱負】
昨年度は〇〇業界全体が苦戦する中においても、〇〇社〇〇部として見事にエリア目標を達成することができました。これもひとえに〇〇部の皆さまの、真摯な取り組みの結果でございます。
本年度はより一層〇〇社の発展に貢献すべく、既存顧客様の新しいニーズを引き出す努力によるさらなる市場創出のために、日々の業務に邁進していきたいと思います。どうか今後も引き続き、変わらぬご指導とご鞭撻の程をよろしくお願い申し上げます。
【例文B:前年度が芳しくなかった場合にその反省を込めた抱負】
昨年度は〇〇業界全体が苦戦する中、私も昇進して間も無く力が足りないばかりに皆さまに多くのご迷惑をお掛けする結果となってしまいました。
本年度は心機一転その教訓を最大限に活かして新規開拓に注力しつつ、より一層〇〇社〇〇部の発展のため、尽力して参りたいと思いますので、どうか今後とも宜しくお願い申し上げます。
期初の抱負のポイント
期初の抱負を語る際のポイントについて触れておきましょう。これは前期の業績の良し悪しにかかわらず共通しています。主なポイントは以下の2つです。
- 外部環境に触れる
- 内部の課題解決の意気込みを語る
それぞれを見ていきましょう。
外部環境に触れる
まずは、経済や業界の環境がどうであったかを盛り込むことで、決意に客観性を感じさせるようにしましょう。その際に、あくまで誰しもそう感じるような外部環境の表現や描写を使わなくてはなりません。そうでなくては、たとえ熱意が伝わっても思い込みのや独りよがりの決意と感じさせ、共感を得にくくなりかねません。
失敗を避けるためには、一度原稿を作って周囲の人に違和感がないかを尋ねてみるのが賢明です。
内部の課題解決の意気込みを語る
ただ単に精神論での頑張りを強調するのではなく、また数字の目標を声高らかに言うのでもなく、具体的な考えや戦略を簡潔に落とし込んだ意気込みで締めくくりましょう。それによって、単に気迫だけの決意ではなく、しっかり先を見据えた深い思索から得た指針を持っていることを感じさせ、信頼感を与えることができます。
管理職が年頭に語る抱負
年明けの最初の朝礼や会議などで、管理職が年頭の挨拶を兼ねてその年の抱負を語る場面がよくあります。昨年が厳しい年であった場合と順調な年であった場合の、2種類のシチュエーションで例文を紹介してポイントも解説します。
年頭の抱負の例文
【例文A:昨年が順調であった場合の年頭の抱負】
みなさま、明けましておめでとうございます。
年末には疲れが感じられた皆さまのお顔から、年始休み明けでリフレッシュされた清々しいお顔を拝見できてなによりも嬉しく思います。
本日からまた業務がスタートいたします。この一年間、本日のそのすがすがしいお顔と気持ちを持続して仕事に励んでいきましょう。
昨年はみなさまの努力の甲斐あって、我が〇〇部も非常に充実した業績で幕を閉じることができました。
しかしご存知のように、業界自体は厳しい環境下にあります。私たちは好業績にかまけず、気を引き締めて業務と向き合うことが大切です。
そしてメンバー同士の縦と横の連携が何よりも重要です。皆さまの飛躍が〇〇部の飛翔につながるのは間違いありません。
本年もともどもに励まし合いながら頑張り、年末を昨年以上の笑顔で迎えましょう。
【例文B:昨年が厳しい年であった場合の年頭の抱負】
みなさま、明けましておめでとうございます。
現在業界を覆う不況の影響を受け、昨年は〇〇社〇〇部にとって非常に厳しい一年間でした。
今年は〇〇年であり、私は年男でもあります。私たちは生き残っていくために、引き続きさまざまなリスクと直面しながらも、一歩も引かずに攻めていく必要があります。
そのため、皆さまには昨年以上に厳しい戦いを強いることになるかもしれませんが、勝利を勝ち得た際には、それだけ得るものも喜びも大きいのは間違いありません。
本年も〇〇部は一丸となって、栄光と勝利を見据えて邁進していきましょう。
年頭の抱負のポイント
年頭の挨拶においての抱負のポイントとして、前年の業績が悪かった場合はそれを重く受け止めている感情が表現されるようにしましょう。前年が厳しかったのであれば、いくら新年の挨拶の流れであっても、軽めや明るめの抱負は真摯さを欠いていてNGです。
また、昨年が順調であった場合はトーンとしては明るめでよいのですが、「足元をすくわれないよう」な表現を慎重に後半に入れ込み、聞いている人たちの気持ちをあらためて引き締めさせる内容にすることが大切です。
まとめ
管理職が抱負を語る場合のさまざまなシチュエーション別例文およびポイントを、例文とともにわかりやすく紹介しました。
普段は使わないような堅苦しい表現をしなければなりませんが、言い回しはテンプレート的でも内容にオリジナリティがあれば問題ありません。管理職のみなさんはここで紹介した例文や情報を参考にしながら、オリジナルの抱負を語れるようにしましょう。