ITの発展で業務効率化のためのデジタルツールが、世の中に多く出回っています。その中で、日本のビジネスシーンに根強く受け継がれている「名刺」をアプリで取り込んで管理できるビジネスSNSが人気を呼んでいます。
アメリカ発のビジネス特化型SNS、LinkedInには名刺管理機能はありませんが、名刺がわりになるプロフィール機能によってユーザーを増やしてきました。今回の記事ではLinkedInアプリでプロフィールを名刺がわりに使いながら、人脈拡大を行う方法について解説します。
目次
日本と欧米の名刺文化の違い
日本のビジネスシーンでは、ことあるごとに名刺交換をする文化が長い間受け継がれてきました。このたまっていく名刺で、取引先関係の担当窓口が誰なのかを一括管理ができるメリットがあります。名刺ホルダーに企業名の五十音順や地域別で保管すれば、素早くアクセスできます。名刺は商談や打ち合わせ、会議などの場で受け渡しするだけなので、SNSのように相手にコンタクト申請をして承認を求めるルールはありません。しかも、日本の名刺文化は、多くの場合名刺で全ての関係先を網羅できます。
一方欧米では、国によって多少の違いはあっても、基本的に名刺(ネームカード)はキーマン同士で交換されるものです。誰もが交換するものではないので、名刺で関係先を網羅することは不可能です。名刺中心の取引先管理は、日本独自の文化とも言えるでしょう。
名刺連携型SNSとLinkedIn
名刺をスマホのカメラでアプリに取り込んで管理できる、名刺連携型のビジネスSNSで有名なものとしてEightやWantedly Peopleがあります。これらとLinkedInの違いについて触れておきましょう。
上陸当初は名刺連携型SNSに押されていたLinkedIn
LinkedInはアメリカのシリコンバレーで2002年に始まり、今では欧米におけるビジネスSNSとして絶大な人気を集めています。日本版は2011年にリリースされましたが、その翌年にリリースされた後発のEightやWantedly Peopleの方が先行してユーザーを増やしていきました。
名刺をカメラでスキャンするだけでデータとして取り込めるEightやWantedly Peopleは、名刺による取引先管理がデフォルトになっている日本の多くのビジネスパーソンには使いやすかったのです。日本上陸からしばらくは、LinkedInは名刺連携型SNSに押されて苦戦します。その理由のひとつとしては、名刺を反映できなかった点にあります。
また、第二の理由として、自分のキャリアをプロフィールとして公開するLinkedInの使い方に抵抗を感じる人が、まだまだ多かった点もあります。そして第三の理由は、Facebookとのバッティングです。欧米ではプライベートなつながりにはFacebookアカウントを交換し、仕事上ではLinkedInアカウントを交換するケースが一般的といわれています。FacebookとLinkedInを公私で使い分けています。
一方、日本上陸当時の日本のビジネスパーソンは、プライベートでもビジネス上でも、Facebookアカウントでつながっていました。そういった理由により、LinkedInの日本における初動は苦戦を強いられる状況になっています。
名刺連携なしで着実に普及してきたLinkedIn
名刺連携はなかったものの、外資系企業のビジネスパーソンや、終身雇用や年功序列とは異なるグローバルスタンダードな考え方に立つビジネスパーソンによって、LinkedInは着実に普及していきました。
経済のグローバル化が進んできた事も追い風になり、LinkedInも国内で200万人を超えるユーザーに使われるようになりました。Facebookのアカウントを交換するように、気軽にLinkedInアカウントを交換するユーザーが増えてきたのです。
また、LinkedInで名刺のようにプロフィールでキャリアやスキルを公開し、コンタクトがそれを推薦したりスキルテストで客観的にアピールしたりするユーザーが増えました。リクルーターから人材にアプローチするなどのさまざまなアクティビティが活発になり、着実にユーザー層を拡大しています。
LinkedInを名刺がわりに使う方法
新しく出会った人がLinkedInアプリを使っているなら、お互いのスマホを使ってLinkedInプロフィールを、まるで名刺交換するように手軽に相手に知らせる方法があります。具体的なやり方を紹介しましょう。
QRコードでプロフィールをやり取り
まずは、iPhoneやAndroidの端末でLinkedInアプリを開きます。画面の最上部にある検索窓の右端にQRコードを模したアイコンがあるので、そこをタップしましょう。すると画面にあなたのプロフィールにアクセスできるQRコードが表示されます。
受け取る側も同じプロセスから、QRコードが表示された画面の「スキャン」をタップしてスキャナー状態にします。相手のQRコードを読み取りとると、瞬時にして相手のプロフィールが表示されます。そしてつながり申請をすれば、名刺交換の必要がなくなるでしょう。
この機能は対面以外の場合でも可能です。QRコードの下の「コードをシェアする」をタップすれば「写真と共にシェアする」と「コードのみシェアする」が画面下部に表示されるので、望む方をタップし、共有方法(Air Drop・メッセージ・メール・LINEなど)を選択して送信するだけです。
そうやってプロフィールを交換すれば、名刺以上の深い情報がお互いに交換できて、そこから先の人脈の広がりの可能性も高まるでしょう。
LinkedInを名刺がわりにしてできる3つのこと
Linkedinを名刺がわりに使うことで、主に以下の3つのことができます。
- 気になる企業やビジネスパーソンとつながる
- スカウトやヘッドハンティングを受ける
- 生きた人脈を広げる
個別に見ていきましょう。
気になる企業やビジネスパーソンとつながる
LinkedInの無料プランでは、他のユーザーとつながるためにはコンタクト申請をして承認をもらうことが必要です。コンタクトにならなければ、メッセージのやりとりもできません。
しかし、「InMail」という誰にでも直接メッセージが送れる機能があります。有料アカウントの登録により、コンタクト以外の個人ユーザーや企業、転職エージェントなどに直接連絡できます。この機能を積極的に使えば、人脈拡大や転職活動のプラスになるでしょう。
スカウトやヘッドハンティングを受ける
多くのリクルーターや転職エージェントがLinkedInを積極的に利用していて、簡単につながることができます。
InMailによって自分からつながることも可能ですが、ほとんどその必要はありません。なぜならプロフィールを公開すれば、ほとんどの場合ほどなく転職エージェントやリクルーターからのスカウトメッセージが届くことになるからです。プロフィールの内容を充実させればさせるほど、スカウトメッセージは頻繁に来るようになります。
プロフィールの公開は、自分の職務経歴書を一般公開しているようなものなので、リクルーターや転職エージェントの方から、あなたのスキルに合いそうな求人案件を携えてアプローチしてきます。
また、かならずしも採用関連だけでなく、スポット的なビジネスオファーが企業から気になる個人に向けて送られてくることもあるでしょう。その場合は転職とは違いますが、スキルを活かせる副業の話として前向きにとらえることができます。
生きた人脈を広げる
LinkedInでは価値観が共鳴できる、あらゆる国の人たちやあらゆる業界の人たちとつながって生きた人脈を広げることができます。そこから仕事や転職先の紹介が生まれるケースもあるでしょう。
紹介は一般募集よりも、仲介する人の信頼がプラス材料となって採用されやすくなります。人脈が広がれば広がるほど、紹介される可能性が広がるでしょう。ほかにも、同じ業界や職種の人たちとつながって、専門的な情報交換や意見交換ができます。そういう価値ある人脈を作れるのも、LinkedInの強みです。
まとめ
日本のビジネスシーンでは名刺文化があり、名刺連携機能がなかったLinkedInは日本への上陸当初、名刺連携型SNSに押されていました。
しかし、手軽にやり取りできるプロフィールの情報は名刺よりも充実しており、結果的にうわべではない必然性がある人脈の拡大役立ち、仕事のパートナー探しや転職活動にも有効なSNSとなっています。転職活動中のみなさんはLinkedInを名刺がわりにして人脈をどんどん広げ、自分に合う転職先に出会う可能性を高めてください。