現代のビジネスシーンにおいてコンサル業務の経験は、経営幹部に昇進するための近道ともいえるほど評価されます。そのため、ポストコンサル(コンサル出身者)は転職する際に優遇される事が多いです。
それも決して大手の外資系ファームに限定された話ではありません。さまざまなコンサルティングファームの出身者が転職市場において重宝されています。今回の記事ではポストコンサルの気になるキャリアパスについて、詳しく解説しましょう。
目次
「コンサル出身者」ポストコンサルとは
ポストコンサルとはコンサル出身者、つまりコンサルティングファームでコンサル業務に従事した経験を持つ人材を意味します。戦略系を筆頭にコンサルティング案件をこなしてきた人材は経営センスや問題解決能力、行動力などが備わっていると評価されることが多いです。そのため、コンサルティングファームを辞めて転職する人材は需要が高く、好条件で採用される場合が多くなります。
また、コンサルティングファームでコンサル業務に携わる多くの人材が、いずれは転職や独立を視野に入れており、その企業でずっと働こうという人のほうが少ないかもしれません。そもそもずっと働きたくても、コンサル業界に多い外資系などでは終身雇用もありません。だから多くのコンサル人材が、5年後10年後のキャリアの方向性を見つめながら働いているのが現状です。
コンサル出身者が評価を受ける理由
ポストコンサルが高い評価を受けるのは、主に以下の3つの力が裏付けとなっています。
- 先を読む力
- 問題を解決する力
- 人を動かす力
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
先を読む力
優れたコンサルタントは、時にはクライアント自身が気づいていないことや、リクエストの範疇を超えた内容にも踏み込んで思索を巡らす場合があります。そこまで考えなくても、プロジェクトの終了時にクライアントの満足は得られるかもしれません。
しかし、クライアントを短期的に満足させるだけではなくその先を読み、長期的な実績につながる成果を上げるポストコンサルは、より高い評価が得られるでしょう。また、現代の経済や社会の抱える課題は刻一刻と変化します。そのため、先を読む力を保ち続けるためには日常業務のスキマ時間やオフタイムを利用して、最先端の知識を学び続けることも必要です。
問題を解決する力
多くの一般企業では、20代から30代前半の若さで経営課題に向き合い、取り組むような仕事ができる機会は少ないでしょう。若くして経営陣に選ばれて経験できたとしても、あくまで自社の改革のみなので、多くの企業の経営改善に役立つ汎用的なスキルを身につけるのは難しいです。
一方、コンサルタントはそもそもクライアント企業の経営者の視点で、経営課題の解決のための提案と実行を行うのが仕事です。そのため特定の業界や企業に限定されない、汎用的な問題解決力を身につけることができます。日常的に経営課題の解決を行っているので、若くとも豊富な経営視点の改革経験を持ちます。これによって、ポストコンサルが事業会社の経営幹部や幹部候補などの、ハイクラスのポストに抜擢されやすくなります。
人を動かす力
近年のコンサルティングファームは経営課題解決の提案だけでなく、実行のサポートまで踏み込み、クライアントの懐深く入って具体的な成果を上げることを重視しています。そのため、コンサル案件の成功はクライアント企業の社内のスタッフや社外のステークホルダーも巻き込んで、多くの人を動かすということが重要になります。しかも、社内では組織内の上下関係を使うのではなく、社外では大企業の威光を使うわけでもありません。
だからこそコンサルタントは、無理強いすることなく人を動かす優れた力を求められます。ロジカルな説得力はもちろん、個々の人物の感情にも配慮して人を動せることが、ポストコンサルの評価が高い理由といえるでしょう。
知っておくべきキャリアパスとキャリアアップの関係
コンサルティングファームに従事する中で、さらなるキャリアアップを目指す人も多いのではないでしょうか。その際、キャリアパスが大きなカギを握ります。
しかし、キャリアパスを使って昇進していくことは理解していても、作成するにあたって何が重要になってくるのかイメージできる人は少ないのかもしれません。ここでは、キャリアパスについて簡単に解説した上で、キャリアパス作成にあたって知っておくべきことを解説します。
キャリアパスとは
キャリアパスとは、目標とする職務や職位に就くために必要なスキルや経歴を洗い出し、どのようなステップでキャリアを歩むべきなのかを時間軸とともに示したものです。「自分が進むべきキャリアの道筋」を明確にしてくれる、キャリアの地図のような存在と言い換えられることもあります。キャリアパスが丁寧に思い描けていると、キャリアアップに向けて自分自身が習得すべきスキルを認識しやすくなります。キャリアパスは、働き方に思い悩んだり躓いたりしたときにも、自分自身が進むべきキャリアの方向性を指示してくれる存在となることでしょう。
ここからは、コンサルティングファームで働く方が、キャリアパスを役立てる際に大切になってくる3つのポイントを解説します。
キャリアパスのポイント①継続的な成果
コンサルティングファーム業界で働くにあたって重要視されることのひとつに「継続的な成果」があります。これはキャリアパスの作成を役立てることで、その必要性を意識しやすくなります。
一般的に、コンサルティングファームから転職した人材は、需要が高いとされています。しかし、求められる存在となるためには、コンサルティング業界で働く者として「これまでの継続的な実績・成果」がとても大切なポイントとなります。
クライアントは、コンサルタントに対して高額な対価を支払っています。数あるコンサルタントファームの中から依頼を受けた者として、その対価にふさわしい価値を提供しなけれななりません。支払った対価に見合う成果を求められていることを忘れずに、継続的な成果を出し続けることがクライアントからの信頼につながります。キャリアパスの存在が、これらの意識づけを担う大切な存在になるといえるでしょう。
キャリアパスのポイント②幅広い領域へのスキル展開
コンサルティング業界の従事者として「幅広い領域でのスキル展開ができる」ことも重要です。コンサルタントと一口にいっても、さまざまな職種・系統があります。しかし、全てのコンサルティング業種・系統に共通することは、クライアントの持つ課題を解決していくための「総合的なサポート」です。士業とよばれる専門職とは異なり、幅広い知識や情報を元に知恵を引き出して、企業が抱える総合的な問題を解決していくことを求められます。
ただ「幅広い領域でのスキル展開ができる」とは、あまりに総括的でイメージを掴みにくいです。しかし、キャリアパスを作成しておくことで、ゴール設定や目標、それに必要となる経歴やスキルを明確化できます。習得すべき課題が膨大にあるように感じるコンサルティング業界ですが、道筋を明確にすることで、習得すべき事案に限りを持たせやすくなるといえるでしょう。
キャリアパスのポイント③適した環境選び
コンサルタントがキャリアアップを目指すにあたって、自身が身を置くべき環境選びは非常に重要です。たとえば、将来的に外資系投資銀行でのコンサルティングができるスペシャリストとなりたいのであれば、金融や株、為替など、経済全般の知識を習得していく下積み作業も必要となってくるでしょう。業務に必要なスキルはもちろんですが、その分野で必要となる新たな知識の習得も求められます。また、適切な環境に身を置くことで、将来的に必要となってくる関連業務への知識も身に着けることができます。
仕事で大きな悩みに直面した際も、キャリアパスのゴールに必要な経験だと認識できれば、課題とも向き合いやすくなります。キャリアパスは効率的なキャリアアップに直結するケースも大きく、作成の価値は極めて大きいと言えます。
【コンサル】キャリアパス8系統の選択肢
ここではポストコンサルの具体的なキャリアパスについて解説します。コンサルティングファームを退職した後のポストコンサルの代表的なキャリアパスは、以下の8系統です。
- 外資系事業会社
- 外資系投資銀行
- PEファンド・VC
- ベンチャー・スタートアップ
- 日系大手企業
- 日系中堅企業
- コンサルティングファーム
- 起業独立
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
外資系事業会社
外資系事業会社はポストコンサルの転職先として、従来からの典型的なキャリアパスです。P&Gやアマゾン、マクドナルドなどの一般消費に名が知れ渡っているグローバル企業が挙げられます。
外資系企業会社はそもそも、コンサルティングファームにプロジェクトを継続的に発注していることが多いので、ポストコンサルを好条件で受け入れる土壌があります。その上、日系事業会社が新卒一括採用中心であるのに対して、外資系事業会社は実力主義の中途採用中心です。そんなポストコンサルとしてのキャリアパスの選択肢として挙げられるのが、外資系事業会社です。
求人内容としては経営企画やマーケティング、社内コンサル、営業推進などのポストの募集が多いです。もともと外資系ファームにいた人材であれば、企業カルチャーとしても馴染みやすいでしょう。外資系事業会社への転職によって、マネージャーやディレクターになれば30代で1,500〜2,000万円クラスの高い年収となることがあります。
なおかつ、コンサルティングファームほどのハードワークにはならないため、WLB(ワークライフバランス)を重視するポストコンサルからは、人気の高いキャリアパスとなっています。
外資系投資銀行
高額年収を狙う転職志望者に人気が高いモルガンスタンレーやゴールドマンサックスなどの外資系投資銀行では、コンサルティングファームを凌駕する給与水準が期待できます。また、M&A支援などのスケール感がある仕事に携われる点も魅力です。
人材ニーズとしては、ベテランよりも若手のポテンシャル人材に注目している傾向があります。また、採用枠は少数であり、ポストが空席になってもすぐに埋まることが多いです。この系統を狙うなら、外資系に強い転職エージェントと連携するのが得策でしょう。
PEファンド
KKRやカーライルなどのPEファンド(プライベートエクイティファンド)は戦略系ファーム出身者とって人気のある系統です。培ってきたコンサルティングスキルをベースにして、投資先の企業価値を上げるのが主な業務となります。
そのため、コンサルティングファームよりもさらに深く企業に入り込め、ある程度長いスパンで企業経営に携わることが可能です。イグジットなどの目に見える結果があることも含めて、魅力ある仕事が期待できます。投資先企業の業績が上がれば大きなインセンティブも支給されるので、報酬面でも注目されるキャリアパスです。
また、WLBの観点からの魅力もあります。投資までの意思決定や、投資後の事業のテコ入れ期間は多忙を極めるものの、事業が軌道に乗りさえすればモニタリング業務がメインとなります。そうなると日々の業務は、コンサルティングファームに比べてはるかに余裕があるものになり、高額な報酬を得ながらWLBを充実できるようになるでしょう。
ベンチャー・スタートアップ
コンサルティングファームからベンチャー企業やスタートアップへの転職も、年々増加している傾向にあります。 すでに大企業となったメガベンチャーだけでなく、上場前の企業や設立したばかりの企業など、さまざまな企業がポストコンサルを求めています。
求人ポストは新規事業責任者やマーケティング、経営企画、管理部長などです。自身の仕事が企業の成長に直結するというコンサルタントの醍醐味が味わえる環境といえるでしょう。とりわけネット系ベンチャービジネスは活気づいており、VCからの資金流入の流れも強く、事業拡大の中での上位ポストの需要増加などで、ポストコンサルを受け入れる機会が増えています。
また、多くのベンチャー企業が志向する事業は、社会の抱える課題をテクノロジーの力で解決するような社会的インパクトのあるものです。そういった社会的な意義のある仕事で力を発揮できる点でポストコンサルを惹きつけています。また、優れた起業家のもとで事業の運営を経験することは、将来の起業を視野に入れる人にとって、貴重な学習経験ともなるでしょう。
日系大手企業
以前は年功序列の人事制度や、新卒採用中心の企業カルチャーがネックとなって、ポストコンサルからはさほど人気がなかった日系大手企業に最近では変化が見られます。
潤沢な資金力の大組織でWLBを充実させながら、地に足をつけて仕事に取り組める点などで人気が高まりつつあるのです。コンサルティングファーム勤務時代に案件を手掛けたクライアントから、引き抜きの声が掛かって転職する例も多いです。
実際に日系大手企業では、ポストコンサルの求人が増えています。商社や自動車産業、ヘルスケアなどの業界の経営企画職などがイメージしやすいでしょう。またビジネスのグローバル化が進む中で、日系大手企業の海外市場への進出や海外企業とのM&Aが増加傾向です。
一般的にそういう案件のサポートを、コンサルティングファームに依頼しますが、企業によってはポストコンサルの人材を迎え入れてプロジェクトを内製化するケースもあります。さらにはDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に注力する企業が多いので、デジタル戦略室やDX推進部などのIT関連に強いコンサルタントの需要が増えてきています。
日本を代表する企業だからこそ可能な、社会的インパクトのある事業に携われる点も大きな魅力です。資源開発や環境ビジネス、社会インフラ事業や都市再開発でまちづくりに関わるなどは日系大手企業ならではといえる大きな仕事でしょう。
日系中堅企業
ポストコンサルが中堅規模(年商100億以上で1,000億未満程度)の日系企業に転職する流れが、確実に増えてきています。全国区ではないけれど地域ではトップの企業などが典型的です。
また多くの日系中堅企業は、DX普及の流れの中でビジネスモデルをどう創造できるのかという課題に向き合っています。そこでポストコンサルがIT導入や新規デジタル事業立ち上げ、あるいは次世代のための経営企画室のポストで転職するケースが増えています。
中堅規模の企業であれば、ポスとコンサルが全社的な裁量をもって仕事に取り組める点や、成果を上げれば若くして役員になれるなどが日系中堅企業に転職するメリットです。
コンサルティングファーム
コンサルtoコンサルで、同じ業界内の他のコンサルティングファームに転職するというケースも大変多いです。コンサルティング業界が近年に急拡大する中で、即戦力となるポストコンサルにこれまで以上の好条件が提示されて魅力が増しています。
転職するポストコンサルの動機としては、年収条件が良いこと以外にも色々とあります。専門性を極めたい、別の領域のコンサルがしたい、タイトル(職位)をアップしたい、WLBを充実させたい、よりハイレベルの環境で自己実現したいなどさまざまです。特に目立つのが、別のコンサルティング領域に移るケースです。たとえば財務系のコンサル案件を専門にしていた人材が、M&Aの知識や専門性を活かしてM&A関連分野に転職するケースなどが該当します。
ほかには、IT系のコンサルに携わっていたけれどビジネスサイドに関わりたくなり、ビジネスコンサルティングやインダストリーラインでの求人ポストに転職するケースです。また、戦略系から事業再生系のファームに転職して、コンサル経験を活かしながらも企業により深く踏み込んだ事業再生の仕事を望むポストコンサルも多いです。
以下記事ではファームごとの特色と年収事情について解説しております。現在所属しているファームとは別の環境で挑戦するのも一つの道です。
ぜひこの機会にコンサルティングファームの全体像を眺めてみてはいかがでしょうか?
起業独立
起業はポストコンサルにとって、すでに定番的なキャリアパスの1つとなっています。個人事業主として経営コンサルタントを行う場合と、ベンチャー企業を立ち上げて成功する事例が多くあります。古くはDeNAやエムスリー、オイシックス、比較的新しいものとしてはレアジョブやラクスル、メドレー、ロコンドなどが有名です。
VCから資金調達がしやすくなっていることや、WantedlyやLinkedInなどのWebメディアを使って優秀なパートナーを募りやすくなったことも関係しているでしょう。起業にはコンサルタント経験を活かし、問題解決能力を武器に社会的インパクトのある事業をプロモートできる魅力があります。また、自分自身で経営上の意思決定ができ、事業が成功すれば極めて高額な収入が得られる点も魅力です。
ただし、コンサルティングのスキルと起業家に必要なスキルは異なる部分もあります。よくあるのは、起業する領域の現場の深い知識やネットワークが重要なので、その辺りに欠けているポストコンサルは起業後に苦労するかもしれません。。
そのため、コンサルティングファームを辞めてすぐに起業するのではなく、一旦目指す領域の企業に転職する人も多いです。業界知識やノウハウを身につけてから起業するほうが、成功確率は上がるからです。あるいは小規模のベンチャー企業に参加して、小資本のビジネスを動かす経験を積むなども、将来起業する機会があれば役立つでしょう。
ポストコンサルのタイトル・経験領域別キャリアパスの傾向
ポストコンサルのキャリアパスには、転職するときのタイトルや経験した領域などによってある程度傾向があります。ここではポストコンサルのタイトル別および経験領域別の、キャリアパスの傾向を紹介します。
タイトル別のよるキャリアパスの傾向
20代に多いアナリスト、アソシエイト、コンサルタントなどのタイトルが転職する場合は、業界内の他のコンサルティングファームやベンチャー企業の経営幹部候補などの選択肢が多いです。日系の大手企業からの需要もあります。その場合でも20代のポストコンサルに対して経営幹部に近いポストは少なく、報酬面でも外資系に劣るため選択しないことも多いです。
30代に多いシニアコンサルタントやマネジャーなどのタイトルになると、キャリアパスが広がります。まず、ベンチャー企業や他のコンサルティングファームからのニーズが多いです。それ以外にも、外資系事業会社や日系企業のハイクラス求人の需要もあります。経験を活かして自ら起業するポストコンサルも増え、選択肢が最も広いグループといえるでしょう。
40代以上に多いディレクターやパートナー、プリンシパル、VPN(ヴァイスプレジデント)などのエグゼクティブ層になると、事業会社の取締役レベルの人材需要が多くなります。一方、他業界の企業の社会への影響力や報酬、働き方の自由度などをコンサルティングファームと比較して、ファームのエグゼクティブ層の価値を再認識する場合もあります。そのため、事業会社の取締役以外としては他のファームのエグゼクティブや、転職はせずに大学での教育活動やスタートアップの支援活動などに注力する人も多いです。
経験領域別のキャリアパスの傾向
経験領域別は、戦略系や総合系、大手シンクタンクなどの戦略コンサル経験者の場合とIT系や財務系、組織人事系などの専門領域のコンサル経験者の場合に分かれます。
戦略コンサル出身のポストコンサルは、特定の領域の専門性は薄くなるけれどゼネラリストとしてのスキルを持っている人材です。 そのため、CEO (最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)などの経営幹部の需要が多くなります。
一方、専門領域を持つポストコンサルの場合は、一旦大手企業の中の専門とする領域の部門に転職した後、そこでCHO(最高人事責任者)やCIO(最高情報責任者)、CFO(最高財務責任者)などの道を歩む傾向があります。
ポストコンサル転職でのビジネススタンスの変化に注意
ポストコンサルの転職ではビジネスに対する向き合い方が大きく変わります。以下のような3つのスタンスの変化に注意することが大切です。
- 第三者から当事者に
- 期間限定の案件担当者から継続的な責任者に
- 個人の目標達成から組織の目標達成に
それぞれを掘り下げてみましょう。
第三者から当事者に
まずはこれまで外部のクライアント企業に対して行ってきたコンサルティングを、あなたが所属する組織にとっておこなうことになります。第三者から当事者にスタンスが変化するため、事者意識を持って業務にあたらなければなりません。
つまり同じような仕事をしていてもクライアント側の利益を考えて行うのと、自社の利益を考えて行うのとでは、目的意識に大きな違いがあります。判断基準や打ち出す施策にも反映するでしょう。まずは何をもって当事者意識とするかという、要件を明らかにするのが最初のステップです。真摯に仕事に向き合うためにも、その企業の一員として事業にコミットできるかをしっかり見つめ直すことが必要となります。
期間限定の案件担当者から継続的な責任者に
コンサルティングファームの仕事においては、案件は期間が設定されています。半年や1年などの期間中は集中して業務に没入しますが、あくまでも期間限定です。
しかし事業会社では仕事の期間は限定されず、継続的に責任を全うしていくことになります。つまり、ポストコンサルにとって事業会社に転職するのは、超長期案件に担当責任者としてアサインするようなものです。
ファーム時代のように短期集中で仕事に打ち込み、プロジェクトが終わると一旦弛緩してリフレッシュするような流れはありません。粛々と将来に向かって担当する領域に向き合い続ける、ストイックな責任者のスタンスに立つことが求められます。
個人の目標達成から組織の目標達成に
コンサルティングファームの案件は機能が分離されていることが多く、担当する領域と別の領域に線を引く面があります。事業会社で重職を務めるなら、自分が直接担当しない領域も含めて企業全体の成長を視野に入れて業務に向き合う姿勢が必要です。
また、コンサルティングファームでは正しい解に可能なかぎり速やかに辿り着く、ロジカルな能力が求められます。事業会社では必ずしもロジカルであることが正しいとはならず、さまざまな考え方を全方位的に受け止める必要がある点も注意が必要です。
ポストコンサルに向けてキャリアビジョン確立が大切
ここまでで紹介したように、ポストコンサルには、さまざまな業界において経営幹部や幹部候補、あるいはスペシャリストとしてのやりがいを感じられそうなキャリアパスの選択肢が広がっています。しかし、選択の幅が広いからこそ注意が必要です。
コンサルティングファームで仕事をしていると、ヘッドハンターからさまざまな好条件の引き抜きのオファーを受けることがあります。提案される年収や仕事内容の魅力、あるいは企業の知名度の高さなど判断がブレてしまい、本来自分の望むキャリアパスの軌道から外れてしまって、後々に悔やむこともあるでしょう。
そこでまず、あなた自身は仕事人生の軸とも言うべき、成し遂げたいキャリアビジョンを確立することをおすすめします。その上で、キャリアビジョン実現に向けて、どのようなキャリアパスを歩んでいくかという「キャリア戦略」を考え、転職先の業界や企業を選択しましょう。
とはいえキャリアビジョンは、一朝一夕に気軽に固められるものではありません。オファーを受けて慌てて考えるのではなく、日頃からあなた自身の価値観や問題意識と向き合いながら思索し、時間をかけて育くむのが賢明です。
迷った際には私たちタリスマンが、転職のプロとしていつでもアドバイスをさせていただく用意があります。コンサル業界から異業界への転職や業界内での転職にも、きっとお力になれることがあるでしょう。ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ:コンサル出身者キャリアパスについて
転職で優遇されることが多いポストコンサルのキャリアパスは、大きく分けると8系統に広がっています。直近のタイトルや担当していた領域によって、ある程度の傾向が見られます。
転職においてはビジネスのスタンスが第三者から当事者に、期間限定案件から継続的な案件に、個人目標から組織目標を重視するようにスタンスの変化が必要です。転職を考えているコンサルティングファーム勤務のみなさんは、ここで紹介した情報を参考に、ポストコンサルとしてのキャリアビジョンの思索を深め、転職活動に備えてください。