万が一紛失しても大丈夫!退職の際の年金手帳に関する手続きまとめ

年金手帳は会社で働いている時には、これといって使用する機会がありません。そのため、いざ退職する際の手続きで必要となった場合に、どこにあるかわからなくなる人や紛失している人もいますよね。

また、退職後にすぐ新しい就職先に入社するなら厚生年金が継続できますが、次が決まっていない場合や個人で仕事をする場合は国民年金に切り替える必要があります。今回の記事では退職の際のケース別で、年金手帳に関する手続きについてわかりやすく解説します。

年金手帳とは?

年金手帳とは、日本の公的年金制度に加入している人に交付される年金に関する情報が記載された手帳のことです。この手帳にて、かつての社会保険庁を前身とする日本年金機構が運営する、公的年金制度の被保険者という身分を証明できます。

公的年金とは国民全員が加入する国民年金と、企業に勤務する人が基本的に加入する厚生年金の2階建ての年金の仕組みのことです。どちらも運営主体は日本国政府なので、年金手帳発行者の名義は厚生労働大臣となっています。現状では原則的に、年金加入者1人に対し1冊が交付されます。基礎年金番号は生涯にわたって有効で、なおかつ公的年金制度共通のものです。そのため退職や転職、個人事業主として独立するなどで加入する年金が変更されても、年金手帳が新たに交付されることはありません。

企業に就職する際の厚生年金への加入手続きや、離職後に転職する際の継続の手続き、年金の受給を開始する際の手続きなど、年金の手続きに関するほとんどの場面で基礎年金番号が必要です。なお、年金手帳の表紙の色は、当初オレンジでした。1997年に基礎年金番号が導入されて以降に交付された、基礎年金番号が記載されている年金手帳は、それ以前の手帳と区別するためにブルーになっています。

退職後の年金手帳の扱い

企業に勤務していた人が退職する際は、主に以下の3つのケースに分かれます。

  1. 1日も空けずに就職するケース
  2. 就職先は決まっているが入社までしばらく期間を置くケース
  3. 就職先を探しているが未定、もしくは個人で仕事を始めるケース

それぞれのケースごとに、年金の手続きが異なります。個別に解説していきましょう。

1:1日の空けずに就職するケース

退職後に離職期間を1日も設けないですぐに就職するのであれば、厚生年金は継続になり、国民年金への切り替えの手続きは発生しません。たとえば5月31日付で退職して6月1日付けで入社するように、空白期間がゼロになる場合です。

厚生年金の継続の事務手続きは転職先の企業が行います。本人は年金手帳を提出するだけです。年金手帳が見つからない場合でも、基礎年金番号かマイナンバーのどちらかがわかれば、それを転職先の企業に伝えるだけで問題ありません。

2:就職先は決まっているが入社までしばらく期間を置くケース

退職後に次の勤務先に入社するまでの離職期間が設けられるケースは、退職後の次の就職先に入社するタイミングによって、手続きが変わってきます。

A:離職期間が始まった月の末日には就職しているケース
B:離職期間が始まった月の翌月以降に就職するケース

Aの場合、離職期間があっても社会保険料は月単位なので、月末に企業に在籍していれば保険料はその企業が納めます。手続きとしては1の「日を空けずに就職するケース」と同様に、転職先の会社に年金手帳か基礎年金番号、マイナンバーを提出すれば完了です。ただし離職期間が1日でもあると年金の空白期間となるので、後日に日本年金機構から年金加入に関する確認書類が来る場合があります。

Bの場合は、月末に企業に在籍していない状態が生まれるので、自身で国民年金第1号資格取得の手続きをしなければなりません。また、次の就職月の前月までは自分で保険料を納める必要があります。なお、国民年金に切り替える際には、被扶養者となる配偶者の分も手続きが必要なので、注意して下さい。

3:就職先を探しているが未定、もしくは個人で仕事を始めるケース

転職先がまだ決まっていない場合や個人事業主として仕事を始める場合は、国民年金第1号資格取得の手続きを自分で行わなければなりません。次に述べる国民年金加入の手続きに沿って対応して下さい。

国民年金に加入する場合の手続き

次に、国民年金に加入する場合の、年金の切り替え手続きについて解説します。国民年金第1号資格取得の手続きは、退職した日の翌日から2週間以内に居住地のある地域の役所の国民年金窓口で行いましょう。

年金の種別変更で変わるもの

退職前は厚生年金に加入しているので、年金の種別は第2号被保険者です。退職してから離職期間がある場合には国民年金に加入する第1号被保険者となります。また、第2号被保険者の被扶養配偶者は第3号被保険者であって、保険料を納付する必要がありません。しかし、扶養者が国民年金に変わるとそれも変わります。

扶養者の退職とともに被扶養配偶者も第1号被保険者となります。また、第1号被保険者は自分で保険料を納める必要があるので注意してください。国民年金第1号被保険者の1ヵ月当たりの保険料は2021年度で16,610円です。年度によって金額が変わるので、最新の保険料は日本年金機構のホームページを確認しましょう。年間の保険料をまとめて前納すると、割引が適用されます。

なお、経済的な事情などで保険料の納付が困難な場合に利用できるのが、失業による国民年金保険料の特例免除制度です。適用されるかどうかは審査の上で決定されます。居住地の市区町村の役所か年金事務所の窓口に「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」「年金手帳あるいは基礎年金番号かマイナンバー」「雇用保険受給者資格者証などの失業状態を確認できる公的な書類のコピー」を持参して相談しましょう。

国民年金加入の手続きに必要なもの

国民年金加入の手続きに必要なものは、おおむね以下のとおりです。

  • 本人確認のできるもの(免許証/マイナンバーカード/パスポートなど)
  • 退職日がわかる書類(雇用保険受給資格者証/雇用保険被保険者離職票/社会保険資格喪失証明書/離職票/退職証明書など)
  • 年金手帳あるいは基礎年金番号かマイナンバー

なお、被扶養配偶者がいる場合は第3号被保険者の種別変更手続きを併せて行う必要があります。そのため、配偶者の委任状と年金手帳あるいは基礎年金番号かマイナンバーも持参しましょう。

またその後転職先が決まって就職する際には、再び厚生年金への切り替えが必要です。しかし手続きは企業が行うので、本人は転職先に年金手帳あるいは年金基礎番号かマイナンバーを伝えるだけです。

基礎年金番号は年金手帳以外では、日本年金機構から郵送されてくる「ねんきん定期便」やその他のお知らせのハガキの中に記載されています。もちろん、勤め先の人事部に尋ねても確認は可能です。

年金手帳が見つからない場合の対応

普段使用する機会などほとんどない年金手帳は、いざ必要な時に見つからないことが非常に多いですよね。そんな際の対応の仕方について、触れて起きましょう。

勤務先が保管している場合もある

自宅を探してもまったく見つからない場合に、意外とよくあるのは勤務先が保管しているケースです。確かに勤務しているかぎり、必要になることはほとんどありません。社員が紛失することがないように、就職した時点で預かるのは企業側の配慮です。ある程度探して見つからない場合は、企業の人事部門が保管していないか問い合わせてみましょう。

紛失の場合は再発行が可能

年金手帳を本当に紛失した場合も、心配ありません。その時点の勤務先を通じて再発行の手続きが取れます。今の会社に入社する以前に別の企業に勤務していた場合は、その事業所の名称や所在地などの情報が必要です。

年金手帳は2022年4月に廃止される

年金手帳は法改正により廃止されることが決まっています。2022年4月1日以降に年金制度に加入した人に交付されるのは、年金手帳ではなく「基礎年金番号通知書」です。その基礎年金番号通知書によって、個人の基礎年金番号を確認するようになります。

年金手帳廃止の大きな理由は、現在すべての被保険者情報がシステムで管理されており、マイナンバーの導入によって年金情報を手帳の形式で管理する必要性がなくなったからです。2018年3月5日以降は、マイナンバーでほとんどの公的年金の手続きが可能になっています。もちろん、現在みなさんが所持している年金手帳は、基礎年金番号を明らかにする書類として、引き続き使用できます。現時点では年金手帳を紛失した場合に再発行が可能ですが、2022年4月1日以降は手帳の再発行に代わり、基礎年金番号通知書が発行されることになります。

現在勤務中で転職の予定が特にない人が年金手帳を紛失した場合、特にあわてて再発行をする必要はないでしょう。しかし、国民年金保険料の口座振替の手続きなどの一部の手続きは、基礎年金番号を記入しなければならないものもあります。そのため、当面は基礎年金番号が必要です。いざ転職などで手続きをするときに慌てないように、少なくとも基礎年金番号はしっかり管理しておきましょう。

まとめ

年金手帳は普段使用する機会がないだけに、いざ退職や離職に絡んだ手続きの際に見つからなくて困ることがあります。しかし実質的に必要なのは基礎年金番号かマイナンバーなので、それらを管理できていれば大きな問題はありません。

また、2022年4月以降は年金手帳の発行自体がなくなります。今のうちに基礎年金番号だけはいつでも確認できるように準備しておきましょう。退職後は次の就職のタイミングなどで手続きのパターンが変わるので、注意が必要です。転職を先に控えているみなさんは、ここで紹介した情報を参考に、退職後の年金の手続きを行って下さい。

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