IT業界におけるWeb業界とは?その歴史から、市場動向や転職事情を解説

転職志望者に人気が高いWeb業界とは、IT業界の中でもWebサイトやWebコンテンツのプロデュース、Webサービスの提供などを手がける業界を指します。ユーザーが求めるものを、インターネットを通して形にする仕事といえるでしょう。
今回の記事では、Web業界の事情や転職動向などについて詳しく解説します。Web業界への転職を検討しているみなさんは、ぜひ参考にしてください。

Web業界(インターネット業界)とは?

Web業界はインターネット業界とも呼ばれ、主にインターネット上のWebサイトやWebコンテンツ、Webサービスの制作や運営などの事業を行う業界です。
Web業界が認知されるようになったのは、1990年代後半に始まるとされるIT革命以降なので、その歴史はまだ20年少々にしかなりません。しかしその間で、Web業界は私たちの暮らし方やビジネスの在り方を根底から変革したともいえます。
ここではWeb業界についてIT業界との違いや関係性についても触れつつ、その歴史を外観してみましょう。

IT業界との違いと関係性

「IT業界とWeb業界はどう違うのか?」という声がよく聞かれますが、まずWeb業界はIT業界という大分類の中の小分類と考えましょう。
IT業界>Web業界の関係にあるので、別物ではありません。飲食業界とファストフード業界、あるいは観光業界と宿泊業界の関係のようなものです。
Web業界に転職検討している人は、漠然とWeb業界を目指すのではなく、具体的にどのようなタイプの企業でどんな業務に取り組みたいのかを考えて、転職ビジョンを描きましょう。

IT業界の5つの分類

IT業界の5分類の中のWeb業界

IT業界はWeb業界を含む以下の5つの業界に分類できます。

  • Web業界(インターネット業界)
  • 情報処理サービス業界
  • ソフトウェア業界
  • ハードウェア業界
  • 通信業界

それぞれの概要を見ていきましょう。

Web業界(インターネット業界)

Web業界の企業は、具体的にはWebコンテンツ制作企業やSNSを運営する企業、Web広告やSaaSプロダクト、eコマース、eラーニングやソーシャルゲームなどのサービスを提供する企業など多岐にわたります。
GAFAMの中のGoogle、Amazon、FacebookなどはずばりWeb業界の範疇に入るでしょう。また、MicrosoftもクラウドサービスやSaaSの提供を行い、Appleもクラウドサービスやコンテンツ配信を手がけているので、ともにWeb業界にも食い込んでいます。

情報処理サービス業界

情報処理サービス業界は、クライアントが求めるITシステムの設計開発から運用までを担います。SI(システムインテグレート)業界とも呼ばれ、この業界の企業はSIer(システムインテグレーター:エスアイヤー)と呼ばれています。
AIの発達やIoTの実用化などの新技術の浸透もあって、情報処理サービスの市場は大変好況です。さらに国を挙げてのDX(Digital Transformation)の進展によって需要は拡大すると見込まれます。
富士通やNECなどの大手以外にも、大小のSIerが多数存在します。

ソフトウェア業界

ソフトウェア業界は個人や企業が使用するアプリケーションの制作販売や、家電やIT機器に組み込まれるアプリケーションの受託開発を行います。
ただし大手外資系のMicrosoftやオラクルなどは開発機能が日本にはなく、海外で制作されたソフトウェアを日本市場にアジャストして販売する「ベンダー」として機能しています。

ハードウェア業界

ハードウェアとは、PCやスマートフォン、タブレットほか周辺機器などの形あるデバイスを指します。ハードウェアの企画制作販売までをおこなうのが、ハードウェア業界です。
IoTの実用化によってハードウェアの活躍の場が広がっています。日立やSONY、パナソニックなどが大手企業です。

通信業界

インターネットを消費者や企業が利用するための、光ファイバーや無線、LTE-Advancedや5Gなどの通信インフラを扱うのが通信業界です。
大手企業のNTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルなどの電気通信事業者も、通信サービスを販売する通信業者です。
最新通信システムである5Gは、最先端技術のIoTやVR、ARなどに不可欠であり、今後の通信業界、ひいてはIT業界において重要な役割を担うであろうと注目されています。

Web業界の歴史を概観

インターネットの理論的発想は1960年代初期に誕生しており、実現に向けて始動したのは1960年代中頃です。
アメリカ国防総省のARPA(高等研究計画局:後にDARPAに改称)の資金提供により西海岸の複数の大学と研究機関で始められたARPANET(アーパネット)がインターネットの前身であり起源です。

インターネットの前身はARPANET

当初の目的はARPAが資金提供している全米各地の大学や企業の研究者がARPAの資金で開発されたコンピュータ群にアクセス可能にし、コンピューターサイエンスの成果を速やかに広めることでした。
ARPANETはさまざまな技術革新を織り込みながら進化し、エリアも広げられていきます。
アメリカ西海岸で始まったARPANETは、1970年代には東海岸まで達していました。日本で初めてのARPANETへの接続は、1981年に東北大学がハワイ大学のネットワークを経由して接続されたのが最初です。

1990年代に現在のインターネットに

ARPANETに資金提供を行っていたアメリカ国防省の判断で、ARPANETの通信プロトコルをインターネット・プロトコル・スイートに切り換えました。
インターネット・プロトコル・スイートとはインターネットを含めた多くのコンピュータネットワークで標準的に利用されている通信プロトコルのセットです。
これによってARPANETは初期のインターネットのサブネットになり、やがて今日のインターネットに置き換わっていきました。
現在民間に普及しているインターネットの形になったのは1990年代半ばです。
ちなみに、「Web」という言葉はWorld Wide Webを意味します。World Wide Webとはインターネット上で提供されるハイパーテキストシステムです。
現在では「インターネット」という表現がWebを指す場合もあれば、Webという言葉でインターネットを表現することもあり、ほとんど同義語となっています。
なお、ARPANETが「軍事用に開発されて民間に転用されたもの」とする俗説がかつて流布しましたが、国防総省やインターネット協会、および複数の学者たちによって合理性を伴って否定されています。

Windows95がインターネット普及を後押し

1994年にリリースされてまさに爆発的に普及したOS「Windows95」には、インターネット接続機能が搭載されていました。そのため容易にインターネットが活用でき、その効果で日本でもインターネット利用者が急激に増加の一途をたどります。
1998年には、後に検索エンジンとしてインターネットに絶大な影響を与えるようになるGoogleが設立されます。
1999年にNTTドコモの「iモード」サービスが始まり、携帯電話でインターネット接続が可能となりました。
また、日本でSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が市民権を得たきっかけは、2004年にサービスが開始されたmixiの影響が大きいのは間違いありません。
2006年にはTwitterがサービスを開始し、また学生に限定されていたFacebookも一般公開されました。

スマートフォンの誕生

2007年にはAppleが史上初のスマートフォン「iPhone」を発表し、さまざまなモバイルアプリがリリースされる土壌が生まれます。やがてWebサービスの種類は増加し、現代を生きる私たちにとって身近なものとなりました。
今でこそインターネットの常時接続は当たり前ですが、インターネットの接続方法も初期からさまざまに進化しています。
当初は電話回線を使うダイヤルアップがデフォルトでした。しかし電話代が高くつくために、利用時間帯限定の定額サービス「テレホーダイ」を多くのユーザーが使用する時期もありました。
通信速度を上げるために電話回線を2本使うISDNなどが流行った時期もあり、やがてASDLや光ファイバーなどのブロードバンドが登場し、モバイルデータ通信も高速化しました。とどめはWi-Fiの普及です。
あらゆる場所であらゆる時間にインターネットに接続できて、快適にWebサービスを享受できる時代となり、Web業界の今後の発展が大いに期待されます。

Web業界の伸びゆく市場規模

Web業界においては、パンデミックに見舞われるまでは毎年市場規模が拡大してきました。パンデミックによって一時的に足踏みはしたものの、いち早く回復基調に戻っています。

DXが進み拡大するIT市場

パンデミックによってもたらされた外部環境の変化に対応するため、リモートワークの急増や、非対面・非接触接客のニーズが増加しています。それによって、企業の業務のオンライン化およびデジタル化需要の高まりで、IT市場は拡大傾向です。
また、​​国を挙げてのDX推進の流れから、本格的にDXに取り組む企業が増えつつあります。それもまた、IT業界の受注を活性化しているでしょう。
2021年の日本国内のITサービス市場は、ポストパンデミックを見据えての回復局面にあります。ITサービスを提供する企業は、成長領域のDX関連サービスを強化するため、DX人材の確保や育成に力を入れています。

勢いづくWeb業界の市場規模

Web業界では、動画投稿サイトやインターネット検索サービス、オンラインゲームやSNSといったインターネット関連サービス部門が急速に成長しています。
2021年決算期でのインターネット業界の市場規模の目安(主要対象企業139社の売上高の合計)は5兆9,082億円となっています。これはGMS(総合スーパー)14社の営業収益を合計した、5兆9,430億円に肉薄する巨大な市場規模といえるでしょう。

Web業界の主要なビジネス

ここからは、Web業界の主なビジネスモデルに関して見ていきましょう。
Webビジネスを、理解しやすくするために以下のように分類します。

Web業界のBtoCビジネス
┗コンテンツを提供するBtoCビジネス
┗サービスを提供するBtoCビジネス

Web業界のBtoBビジネス
┗コンテンツを提供するBtoBビジネス
┗サービスを提供するBtoBビジネス

個別に見ていきましょう。

Web業界のBtoCビジネス

Web業界のBtoCビジネスは、企業からエンドユーザーの消費者に直接商材を提供するビジネスモデルです。その中で、提供するものが「コンテンツ」か「サービス」なのかによって分けてみます。

コンテンツを提供するBtoCビジネス

Webを通じてコンテンツを提供するBtoCビジネスは、主に以下のとおりです。

  • コンテンツ販売
    (電子書籍や記事、動画、音楽データの販売やサブスクリプションなど)
  • ECサイト
    (インターネット通販による物品販売など)

サービスを提供するBtoCビジネス

Webを通じてサービスを提供するBtoCビジネスは、主に以下のとおりです。

  • プラットフォーム
    (SNS、ユーザー投稿サイトなど)
  • マッチングサービス
    (フリマアプリ/出前アプリなど)

Web業界のBtoBビジネス

Web業界のBtoCビジネスは、企業が企業を顧客として商材を提供するビジネスモデルです。こちらも提供するものが「コンテンツ」か「サービス」なのかによって分けてみます。

コンテンツを提供するBtoBビジネス

Webを通じてコンテンツを提供するBtoBビジネスは、主に以下のとおりです。

  • 業務用ECサイト
    (事務用品や業務用のさまざまな製品のインターネット通販など)

サービスを提供するBtoBビジネス

Webを通じてサービスを提供するBtoBビジネスは、主に以下のとおりです。

  • 制作会社
    (Webサイト・コンテンツ制作など)
  • Web広告代理店
    (Web広告やWebマーケティングのコンサルティングおよび代行)
  • クラウドサービス
    (クラウドを通じてのSaas・Paas・IaaS・DaaSの提供など)

Web業界の盛り上がりゆく転職市場

2022年の転職市場における最新の動向で注目すべきは、中途採用の人材ニーズが急激に回復していることです。大企業からベンチャーまで、すべての業種で採用が活発となっています。

パンデミックが反映されたIT業界の求人事情

前述のIT業界の市場規模で述べたとおり、パンデミックによるリモートワークや業務の非対面化、オンライン化の急激な需要拡大によって、IT人材のニーズは加速度的に増えています。
経験者であれば、少し前では転職が難しかった30代後半や40代であってもよい条件で転職しやすくなっています。経験豊富なミドル層の枠を、設定している企業もあるようです。
また、未経験でも20代であれば入社後にスキルを身につける前提のポテンシャル採用が増えているのが現状です。研修のコースが用意されているので、未経験者にとってはよい条件です。
いずれも売手市場ならではの対応であり、当面は転職しやすい状況が続くと考えてよいでしょう。

活発化するWeb業界の転職市場

2021年度上半期は、70%ほどの企業が採用計画数を満たせていません。とりわけWeb業界では、採用計画数が額面通り実現した企業は15%程度です。
そのため、今後も引き続き活発な採用活動は続けられるでしょう。デジタルマーケティングやDXを加速する人材の争奪戦はますます過熱する見込みです。

Web業界の主な職種

Web業界(インターネット業界)の代表的な職種は以下のとおりです。

  • ディレクター
  • エンジニア
  • クリエイティブ
  • マーケティング
  • Webライター

それぞれの職種を見ていきましょう。

ディレクター

Web制作においてプロジェクトを監督、統括する立場にある職種です。制作チームを率いて新プロジェクトの立ち上げからスケジュール管理、品質管理や納品にいたるまでの全体を担当します。
成果物の品質を安定させるために、Webに関する全般に精通している必要があります。デザイナーやコーダーに仕事を依頼するので、デザインやコーディングの知識も必要ですが、実務を担当することは少ないです。
また、チームをまとめて進捗も管理し、プロジェクトを進めていくマネジメントスキルが欠かせない職種です。
ディレクターは上流工程を担当するため、未経験者が転職でいきなり担当するケースはほとんどありません。
転職してまずは営業やマーケター、エンジニアやデザイナーなどの経験を積んでから、マネジメントスキルを磨いていくことでディレクターへのキャリアパスが見えてくるでしょう。

エンジニア

WebブラウザベースのアプリケーションやWebサイトなど、Webで動作するさまざまなシステムの開発や設計・運営など全般を担当するのがWeb業界のエンジニアです。
ディレクターによって設定されている仕様にもとづいて、成果物を開発していきます。多種多様なニーズに応えられるよう、確かな技術力が求められます。
また、エンジニアは技術トレンドの変化が早く、習得した技術を常にアップデートする必要があります。
プログラミングの経験がまったくない場合は、Web系のエンジニアとして転職することは少々難しいでしょう。実務経験がなくとも、基礎を独学もしくはスクールで学び、何らかの成果物を作れば可能性が出てきます。

クリエイティブ

WebデザイナーやUI/UXデザイナー、コーディングをメインとして行うWebコーダーなどのクリエイターとして、Webサービスのビジュアル面を制作する職種です。
外観の設計だけでなく、ユーザビリティ(使い勝手の良さ)や情報の可読性なども意識する必要があります。
ディレクターの指示のもと、クライアントのニーズに配慮しつつ制作を進めていきます。デザインの基本的な知識はもちろん、グラフィックツールを扱うスキルや、フロントエンドのコーディングスキルも必要です。
また、デザイン手法やデザインツールなどの進化も早く、常にノウハウをアップデートする必要があります。
独力でWebサイトを立ち上げた実績やポートフォリオがあれば、転職活動でアピールポイントになります。

マーケティング

開発前の段階では市場がどういうニーズを求めているかを調査分析し、リリースするサービスの企画を考えます。
リリース後はユーザーを増やすために、どういう施策を打ち出すかを企画し、実行します。さまざまなデータを分析して、ユーザーの傾向を推測するスキルが必要です。

Webライター

Webサイトの記事や、コンテンツのコピーライティンを担当する職種です。ITスキルはさほど必要ありませんが、わかりやすい文章を書くライティングスキルや、SEO(検索エンジン最適化)の知識は求められます。

Web業界の年収事情

Web業界(インターネット業界)の年収事情について見ていきましょう。
経済産業省の『関連産業の給与等に関する実態調査結果』によれば、Web業界の職種別の平均年収は以下の表のとおりです。職種分類は同調査のものをそのまま記載しておきます。

 

職種 平均年収
プロデューサー/ディレクター 792.9万円
営業/マーケティング 682.1万円
Webエンジニア/プログラマー 592.2万円
Webデザイナー/コンテンツクリエイター 411.0万円
顧客サポート/ヘルプデスク 309.9万円

Web業界も他業界と同様に、マネジメント職に上がると年収がかなりアップするようです。
一方、営業・マーケティング関係は一般的な業種と比べると、条件がよいようです。おそらく通常の営業やマーケティングよりも、高い専門性が求められるからでしょう。
Web業界のエンジニア職の平均年収592.2万円は、一般のSE職の平均年収593.7万円とほぼ同じレベルです。

(出典:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省

未経験からWeb業界に転職するプロセス

未経験からWeb業界に転職するためには、2つのプロセスが想定できます。
1つめは最近IT業界で増えている、未経験者でもOKのポテンシャル採用をねらう方法です。この場合入社後に研修によってスキル獲得を図る前提なので、選考の際はとにかく志望意欲をアピールすることが重要となります。
その上で、独学であっても基礎学習をともかくスタートしておいて面接でアピールすれば、より一層志望意欲を強調できます。
2つめとして実務は未経験でも、ある程度スキルを身につけるプロセスを経てから選考を受ける方法です。スクール活用もしくは独学により、計画的に短期間で基礎を身につけておくことで志望する転職先企業に入りやすくなるでしょう。
なおWeb業界でエンジニアとして働くことを目指す人には、独学に役だつ安価な教材や効率の良い基礎スキル習得のロードマップを以下の記事で紹介しています。あまり費用もかからない方法なのでおすすめです。ぜひ参考にしてください。

 

まとめ

Web業界はインターネットの重要性とWebサービスの多様化を考えれば、IT業界の中でも成長が期待できる業界のひとつといえるでしょう。マネジメントスキルやマーケティングスキルを持っていると、年収条件のよい転職ができる可能性が高まります。
未経験のままチャレンジするか、ある程度基礎を身につけてからチャレンジするかは、あなたの転職ビジョン次第です。ただし、後者の方が転職の選択肢がずっと広がり、よい条件の企業を選びやすくなるのは間違いないでしょう。
転職を検討していてWeb業界が気になるみなさんは、ここで紹介した情報を参考に確固たる転職ビジョンを描いてからWeb業界へのアプローチを考えてみてください。
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