ビジネスパーソンにとって管理職になるということは、仕事の能力が認められての昇格であり、多くの場合昇給も伴う喜ばしいことです。そして管理職になるとさまざまなメリットがありますが、もちろんデメリットもあります。
今回の記事では管理職になることで得られる7つのメリットと、把握しておくべきデメリットを紹介します。職場で管理職を目指しているみなさんは、ぜひ参考にしてください。
目次
管理職とは
管理職とは一般社員が自分という個人の業績に責任を持つのに対し、管理を任された部署やチームとしての業績に責任を持つ役職を意味します。
管理職という場合は一般的に課長や次長、部長などを指し、その下の係長や主任などは管理職としての機能を部分的に持っている職位です。
さらに上位者である経営幹部の常務や専務、副社長、社長などの取締役も管理職です。上級管理職と呼ばれ、転職市場でもハイクラス求人の対象となるケースがあります。
管理職の詳細に関しては以下の記事で紹介していますので、ぜひ参考にご覧ください。
管理職になる7つのメリット
管理職は誰もがなれるものではありません。それなりに能力があり実績を上げて評価を受けてこそ任命されます。管理職になることで、主に以下のような7つのメリットがあります。
- やりがいが増しモチベーションが高まる
- 年収がアップする
- マネジメント経験でスキルアップの機会となる
- 裁量範囲が広がる
- 経営幹部になれる可能性が広がる
- 転職時に有利になる
- リストラ対象になりにくくなる
それぞれのメリットを紐解いてみましょう。
メリット1:やりがいが増しモチベーションが高まる
管理職になれば部下を持つことになり、社員の中でも格が上がります。仕事でのカウンターパートになる人達も、それまでよりレベルが上のクラスになるでしょう。
そういういくつものプラスの変化があるので、やりがいは増していき、モチベーションも高まることが多いです。
メリット2:年収がアップする
管理職に昇格すれば、多くの場合は役職手当が付いて年収のアップにつながります。一方、残業がつかなくなってその分は差し引きされるかもしれませんが、それでもトータルでの手取り年収はおおむねアップすると考えてよいでしょう。
ちなみに厚生労働省による最新の賃金統計情報について触れておきましょう。2021年の「賃金構造基本統計調査」によれば、管理職(係長・課長・部長)および無役職の一般社員の賃金は以下の表のとおりです。
部長クラス:57.8万円
課長クラス:47.6万円
係長クラス:36.7万円
非・役職者:27.7万円
この統計での賃金は6月の「所定内給与額」です。
つまり、労働契約であらかじめ決められている支給条件と算定の方法によって6月分として対象者に支給された現金給与の額(きまって支給する現金給与額)のうち、超過労働給与額を差し引いた額で、なおかつ所得税などの控除前の額を指します。
賞与は計算外なので、賃金を平均的な月給総額と考えれば、年収の目安はその12ヶ月分に半期ごとの賞与を足したものです。
いずれにせよ、役職に就けば月額で10万円近く給与が上がり、さらに職位が上がるごとに10万円前後昇給することになります。年間100〜120万円が役職手当として加算されるということです。
(出典:令和3年賃金構造基本統計調査|役職別|厚生労働省)
メリット3:マネジメント経験でスキルアップの機会となる
管理職の任に就けば、いやでも部下をマネジメントすることになります。また、仕事の進捗管理や予算管理など危機管理などいくつもの面でマネジメントを経験するので、前向きに取り組めばマネジメントスキルを磨く機会となります。
メリット4:裁量範囲が広がる
役職に就くまでは、ちょっとした備品の購入や仕事の進め方など、仕事に関するさまざまな項目を上司に報告し、許可を得る必要があります。それに対し、管理職になればある程度部署内のマネジメントに裁量権が与えられます。
経営権の一部を権限委譲(エンパワーメント)されるので、結果を出す責任は伴います。それでも、自身が考えて良いと判断できる方向に部署の活動を向けていけることはビジネスパーソンにとって嬉しいものです。
実力主義、成果主義の価値観に共鳴できる人なら、裁量範囲が広がるのは大きなメリットでしょう。
メリット5:経営幹部になれる可能性が広がる
管理職になれば、地道に努力して順調に業績を上げ、さらに昇格を目指すことでやがて経営幹部のポストにも近づける可能性があります。
一般社員のままでは、経営幹部になれるチャンスは絶対といってよいほど巡ってきません。つまり管理職になるということは、経営幹部への道のスタートラインに立つことになります。
メリット6:転職時に有利になる
管理職になっておくことで、将来において転職をすることになった場合に、応募ポストの選択肢は広がります。条件や待遇面も役職なしの一般社員よりも、期待ができます。転職市場においてマネジメント経験は、重要なポイントとなるからです。
また、管理職はヘッドハンティングやリファラルで紹介・推薦される可能性も、役職なしの時代より確実に高まります。総じて、管理職になるということは転職時に有利になるといえるでしょう。
メリット7:リストラ対象になりにくくなる
管理職になれば、リストラの対象にはなりにくくなります。絶対ではありませんが、一般社員よりも要職であることは間違いなく、業績に問題がない限りはまずリストラの対象には入りません。
逆に言えばもし業績を悪化させるような深刻な状態が続いた場合は、一般社員よりも人件費がかかっているのでリストラ対象になりえるので注意が必要です。
管理職になる3つのデメリット
管理職になったとしても、メリットばかりが得られるわけではありません。デメリットもあるのでそれを把握して、マイナスにつながらないように対策を施しましょう。認識しておきたい主なデメリットは以下の3つです。
- 数字のプレッシャーが重くのしかかる
- 部下との距離や温度差を感じる
- 人間関係のしがらみに苦労する
個別に見ていきましょう。
デメリット1.数字のプレッシャーが重くのしかかる
管理職になる前も一社員として個人目標があり、それを達成するための努力も必要で、プレッシャーがなかったわけではないでしょう。しかし、部署やチームの目標を任される管理職の数字の責任は、個人目標よりもはるかにプレッシャーが重くなります。
未達成の場合の影響力も個人目標の比ではありません。また、自分が直接動いて数字を出す部分があったとしてもそれは一部で、大半は部下を動かして実績を上げなければなりません。
必ずしも自分が思うように行かないことも多く、ストレスも感じるでしょう。それが毎月、毎年続いていくので大変ではありますが、数字を達成できればさまざまな良いことも待っています。決して悲観的になる必要はありません。
デメリット2.部下との距離や温度差を感じる
管理職になると、部下のような一般社員とは立場が変わってしまいます。部下からすれば「経営側の人」という一面があるので、それによって心を開かなくなる人も中にはいるでしょう。
親密に接していても、部下の方で幾ばくかの距離感を取ろうとすることもあります。また、会社都合の思惑で叱咤激励すると、一般社員と温度差を感じることもないとはいえません。
部下を上手に巻き込んで、チームがファミリーとなって目標にぶつかっていければ上々ですが、孤立するリスクもあるので充分に注意しながらマネジメントを進める必要があります。
デメリット3.人間関係のしがらみに苦労する
組織には往々にして人間関係のしがらみが存在します。昔のような学閥や役員の誰それ派のような派閥争いは、時代とともに減っていると思われますが、完全にゼロになったわけではないでしょう。
そのため、仕事以外の人間関係のしがらみに苦労することがあるかもしれません。場合によっては不本意であっても妥協せざるを得ない局面もあるでしょう。それを理解しておく必要があります。
「管理職になりたくない」人の増加の背景
ひと昔まえでは企業に入ったからには「出世」したいと考える人が大半で、そのために早く管理職になろうと頑張るのが一般的なビジネスパーソンでした。ところが昨今では、企業に所属しながらも管理職になりたくない人が増えている傾向があるといわれています。
その背景にあるものを見ていきましょう。
責任を負いたくない
まず、責任や達成すべき目標が重くなることを嫌って、管理職になりたくないと考える人が多いようです。管理職になれば、部下である一般社員よりも広い範囲の責任がのしかかるのは当然で、部下の失敗もチーム目標の未達も管理職の責任に帰します。
また、責任の重さと比較してその対価としての報酬が、苦労に見合わないと感じて管理職になりたくない人もいます。
外資系企業のように、報酬に関して会社側と交渉できる環境であれば、心境が変化して管理職になりたいと思うかもしれませんが、現実的にはなかなか難しい実情です。
管理するポジションに立ちたくない
人を管理するポジションに立ちたくないという理由から、管理職昇格を拒否するケースも一定数あるようです。
あるいは、管理側に回ると現場で専門性を高める機会を失うから、などの理由も考えられます。ずっと第一線でプレイヤーとして活躍したい人にとって、管理職への昇格に気が進まないのです。
時間外手当がつかなくなる
ちなみに管理職になると残業代が出ないケースも多く、それまでが基本的に長時間の残業をこなしてきた人の場合、総支給額はかえって少なくなることもありえます。それがわかっているので、管理職になりたくないケースもあります。
また、金銭的な問題は別としても、管理職になって残業が増えるとプライベートにしわ寄せが来ることを嫌がる人もいるでしょう。
仕事以外にも情熱を傾けられる趣味や活動を持っている人は、ワークライフバランスを維持するためにも、管理職にはなりたくないという考え方もあります。
管理職を務め転職の選択肢を広げよう
管理職になってその責務をしっかりと果たせば、社内での評価が上がって年収も上がる可能性があります。そうやって仕事が良い巡りをすれば人脈も広がり、業界内外の多くの情報に触れることができるでしょう。
また、マネジメント経験を積むことでスキルアップと自信につながります。それらの要素が積み重なれば、さらにその上のステージを目指しての転職への可能性と選択肢が広がってくるでしょう。
まして、前述のように管理職になりたくない人が増えている上に、少子化による人材不足も前提としてあり、どの企業もマネジメントができる人材や幹部候補が欲しくても確保できない状態です。
つまり管理職として充分な実績を上げた人たちの人材ニーズは、旺盛であることを意味します。管理職経験者にとって、売手市場になっていると考えて差し支えないでしょう。
求人検索も管理職としての求人から探せます。また、転職エージェントを活用することによって、肩書だけでなく保有スキルを見極めてもらった上で、企業と候補者の双方にメリットがあるマッチングの案件を提案してもらうことも可能になります。
まとめ
最近では管理職になりたくない人も増えていますが、前向きに仕事に取り組み、今の職場に固執せずに将来の転職も視野に入れている人にとって、その場で管理職になっておくことはさまざまな点からメリットが生まれます。
将来のキャリアアップや転職を望んでいるみなさんは、ここで紹介した情報を参考に、管理職への昇格を目指して仕事に取り組んでください。