保守系システムエンジニアの仕事とは?運用との違いやメリットを紹介

システムエンジニア(SE)の業務は大きく開発と保守・運用に大別されます。しかしセットで語られることが多い保守と運用も実は別物です。
今回の記事ではSEの開発および保守と運用の違いを明らかにし、保守・運用系エンジニアとして働くメリットや必要スキル、年収事情などをわかりやすく解説します。
エンジニアへの転職を考えているみなさんは、ぜひ参考にしてください。

開発系と保守・運用系システムエンジニア(SE)

システムエンジニア(SE)とひと口にいっても、すべてのSEが同じような仕事をするわけではありません。もっとも大きく分けると開発系エンジニア保守・運用系エンジニアに分かれます。
前者はSEとしてイメージしやすい、システムやアプリケーション、ITサービスの開発業務に携わるエンジニアです。後者は開発されたシステムやサービスがリリースされた後の、運用および保守業務に携わるエンジニアです。
ここではその違いがわかるように、それぞれの業務を見ていきましょう。

開発系システムエンジニア(SE)とは

開発系システムエンジニアの業務は「システム開発」で、実際に稼働するシステムそのものを作り上げる仕事です。具体的な業務内容としては、システム発注者(クライアント)の要望をヒアリングして適切なシステムの全容を構想し、それを構成する各部分の仕様を決め、設計書に落とし込みます。
設計書に沿ってプログラミングを実行し、数種類の動作テストを経て稼働させるまでがシステムエンジニアの仕事です。
このように、開発プロセス全般に関わるのがシステムエンジニアで、設計に沿ってプログラミングを担当するのがプログラマー、プログラミングの中でコーディングのみを行うのがコーダーと呼ばれます。

保守・運用系システムエンジニア(SE)とは

保守・運用系システムエンジニアは開発作業が完了してシステムやITサービスがリリースされ、実際に稼働を初めてからが活躍の舞台です。

保守と運用は違う

保守と運用は「保守運用」「運用保守」などとひとまとめにされることが非常に多いのですが、開発後の運用フェーズでの仕事であるということは共通しているにせよ、具体的な役回りは異なります。
それぞれを見ていきましょう。

保守業務とは

保守業務を端的にいえば、システムやサービスの運用に支障がないよう措置を講じたり、発生したシステム障害を速やかに復旧したりすることです。
運用と大きく異なるのは必要に応じてシステムに修理や調整、改修を行うことです。いわゆるメンテナンスと考えてよいでしょう。
システム障害の発生やハードウェア機器の故障を、事前に予測することは非常に困難です。局面や状態に応じて臨機応変に対応することが求められます。トラブル発生は常にイレギュラーなものなので、保守系エンジニアには冷静な判断力と問題解決スキルが要求されます。

運用業務とは

運用業務は、トラブルを起こさないようにしてシステムを停止させず、安定的な稼働を維持するための仕事です。そのための管理対象となるものはネットワークやデータベース、ハードウェア、ソフトウェアなど多く存在します。
保守がメンテナンスだとすれば運用はマネジメントです。システムの安定運用のためにはシステムを常時監視して、その状態を的確に掌握している必要があります。
稼働ログの確認や監視ソフトウェアによる自動監視などを駆使して、日常のシステムの状態をチェックしつつ、サーバーの起動および停止などのさまざまな定型化されたオペレーションを担うのが運用の領域です。
このように保守と運用はメンテナンスとマネジメントの違いがあるにもかかわらず、ひとくくりにされがちなのはなぜでしょうか。それは双方の業務が密接につながっているからです。
システムにトラブルが発生すると稼働状況を監視する運用系エンジニアが異常を確認し、一次対応を行います。それで解決できない場合、状況の共有を受けて保守系エンジニアが対応します。ひとりのエンジニアが保守と運用を兼任することも珍しくありません。

保守・運用系エンジニアとして働くメリットとデメリット

保守・運用系エンジニアとして働く場合の、メリットとデメリットを見ていきましょう。

メリットの第1は、稼働しているシステムやITサービスの問題点および課題などへの対応を日常的に経験するので、システムというものを肌感覚で知ることができ、保守能力が高まることです。
システムはアップデート、アップグレードすることが前提のものなので、品質を保つためには保守性が重要であり、そういう意味で経験によって人材価値が高められます。
メリットの第2は、インフラ関連のリアルな知識とイレギュラーな事態への対応能力が磨かれる点です。SEはたくさんいても、それらに精通している人材は多くいませんので、キャリアアップや転職への貴重な武器になるでしょう。
次にデメリットとしては、業務の拘束時間が長いことや、緊急時は夜間や休日でも対応を求められる場合があることです。
もちろん複数のチームメンバーによるシフト制サポートが基本ですが、通常のエンジニア業務よりイレギュラーな対応を求められることがあるのは否めません。

保守・運用系エンジニアに必要なスキル

保守・運用系エンジニアを目指す場合には、求められるスキルを理解し、着実に身に着ける必要があります。
両者に共通する必要スキルは、IT全般に関する基礎知識です。基礎をしっかりと押さえた上で、それぞれで求められるスキルを見ていきましょう。

保守業務に必要なスキル

保守業務に必要な主なスキルは以下の3つです。

  • ITシステムの知識
  • ハードウェアの知識
  • トラブル発生時の初動対応スキル

<ITシステムに関する知識>
保守業務に携わる人には、ITシステムに関する知識が必要です。システムの基本知識と仕事で扱うシステムに対する個別の知識、外部からのサイバー攻撃についての先端知識なども把握しておく必要があります。
<ハードウェアの知識>
システムのトラブルはプログラムのバグによるものではなく、ハードウェアが原因となることもあります。ユーザーにその違いはわかりませんが、保守担当者はシステムだけでなく、それを動作するインフラであるハードウェアの知識も欠かせません。
障害の原因がソフトとハードのどちらにあるのかを見極められるかどうかは、効率よく対応するために非常に重要です。
<トラブル発生時の初動対応スキル>
万が一トラブルが発生した場合は初動の対応が適切であれば、その後のトラブルの収束や影響の最小化を図れます。
トラブルや発生直後は原因がわからないことが多く、対応も後手に回って影響が大きくなってしまうことも少なくありません。
限られた情報から、原因を絞り込んで特定して対応するスキルが重要になります。また、関係者に障害の状況や復旧の目安、影響の範囲などに関して、冷静に正確な情報を伝えることも、不本意な二次被害を抑えるために重要になります。

運用業務に必要なスキル

運用業務に必要な主なスキルは以下の3つです。

  • コミュニケーションスキル
  • 分析および観察スキル
  • 予測スキル

<コミュニケーションスキル>
システム運用といえば、ネットワークやサーバー、ハードウェア機器を相手の業務のようなイメージがあるかもしれませんが、実のところ相手はクライアントのユーザーです。
そのため、運用担当者には、優れたコミュニケーションスキルが欠かせません。
ユーザーの声を充分に聞き入れて、不満となるポイントを潰していくことはシステムのパフォーマンス向上につながり、運用担当者が評価されることになります。
チームで運用を行っている際は、チーム内での情報共有と連携が大切なのはいうまでもなく、ここでもコミュニケーションスキルが求められます。

<分析および観察スキル>
システムの運用は、現代において企業の打ち出すサービスの根幹を支える面があります。定点的な日常業務の中で、普段と違うことはないか、些細な兆しのようなものが見られないかなど、未然にトラブル発生を防ぐための分析や観察のスキルが求められます。

<予測スキル>
システム運用を長期的に継続すると、ユーザーの利用パターンからシステムへの負荷が集中的に上がりそうな日時などがつかめるようになります。業態によっては特定の外部要因に関連してユーザーが急増し、負荷が爆発的に上がることもあります。
そうしたパターンおよび外部要因の発生を予測して、あらかじめ緩和する対策を施せる能力も、重要なスキルになります。
予測というと難しく響きますが、いわゆるPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)を繰り返すことで徐々に体得できます。

保守・運用系エンジニアの年収事情

保守・運用系エンジニアの年収事情も気になるところです。
開発・保守・運用に分けて経済産業省の調査で推計されている平均年収を見てみましょう。

開発系エンジニア:593.7万円
保守系エンジニア:592.2万円
運用系エンジニア:608.6万円

(出典:IT関連産業の給与等に関する実態調査結果|経済産業省)
こうして見ると開発系と保守系はほとんど同じくらいで、運用系が少しだけ上ですがおおむねシステムエンジニアであれば平均的には600万円前後の年収が目安になるといえるでしょう。
平均的な会社員の年収がおよそ430〜440万円くらいといわれているので、年収が高い部類に入ります。ではもうひとつ気になる将来性について、以下で触れておきましょう。

保守・運用系エンジニアの将来性

長期的、慢性的に深刻なIT人材不足を抱える現在の日本において、エンジニアは全般的に売手市場です。実務未経験でも入社後に研修でスキルを習得する前提のポテンシャル採用も珍しくありません。
また、ひと昔前では転職が難しいとされた30代半ば以降のエンジニアも、経験を活かしたミドル枠での採用が進んでいます。
そんな中で保守・運用系エンジニアの仕事は、ITシステムやITサービスが24時間365日稼働しているかぎり、必要不可欠であるため、需要がなくなることはないといえるでしょう。
とはいえ、今後自動化できるものは自動化して、マンパワーの必要量を減らす方向性にあります。つまり、近い将来ロースキルのエンジニア業務はある程度自動化される可能性が高いことを認識しなければなりません。
(もちろん、IT市場全体としてはロースキルであっても人材需要がなくなることは考えにくいでしょう)
エンジニアへの転職、とりわけ保守・運用系エンジニアへの転職を考えるなら、現在ならロースキルでもよいので早い段階で基礎的なスキルを身につけて転職し、来たるべきミドルスキル以上が活躍する時代に備えてスキルアップを目指すのが賢明でしょう。

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まとめ

保守・運用系エンジニアは秘匿口にされることが多くても、かたやメンテナンス、かたやマネジメントという住み分けがある分野です。ただし密接に連携しており、知識体系も共通項が多いので兼任しているケースも多いです。
現在は売り手市場であり、実務未経験でも最低限の基礎を学んで臨めば、保守・運用系エンジニアへの転職は可能です。
保守・運用系エンジニアを目指すみなさんは、将来において良好なパフォーマンスを提供できるエンジニア像を見据え、しっかり学びつつ転職活動に臨んでください。

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