製薬業界マーケティング職のキャリアを目指すのに必要なスキルとは?

製薬業界におけるマーケティング職(マーケター)は、比較的難易度が高い仕事とされています。法令によって医療機関への訪問営業の規制が強化され、プロモーション戦略がデジタルシフトする中で、マーケティング職の重要性はいやが上にも高まり、やりがいのある仕事となっています。
今回の記事では、製薬とは違う業界での現職マーケターとして働きながら、製薬業界のマーケティング職に興味がある転職志望者のみなさんに向けて、そのキャリアを目指すために必要なスキルに関して詳しく解説します。

製薬業界のマーケティング職とは?

製薬業界のマーケティング職が取り組む仕事は、非常に多岐にわたります。医薬品の販売戦略の構築や国内外の関連部門との連携および調整、医薬品のライフサイクルの管理、新薬品の発売に際して価格を戦略的に構築することやプロモーションの実行などです。
日常の具体的な取り組みとしては、マーケットの分析や顧客心理の把握に基づき、医薬品の提供を通しての医療に貢献するための情報提供やサポートを実施します。
製薬業界のマーケティングは、職業として難易度が高いといわれています。それは、常にマーケットのニーズに耳を傾け、それを満足させる方策を考える能力や、医療現場の環境や疾病に関する専門知識、加えて業界特有の商習慣の理解も必要なことなどが理由です。
また、製薬業界は生命に関わる薬品を扱うために、ビジネス上の表現のルールが非常に厳しいことで有名です。広告宣伝において使ってはいけない文言がたくさんあり、明確な根拠なくして競合他社の製品と比較することも禁じられています。
そういったさまざまな制約がある中で有効な戦略を構築して、製薬のマーケットにおいて自社のポジションを確立することが、この仕事のやりがいであり喜びだといわれています。
ちなみに現職マーケターのみなさんには容易に想像がつくでしょうが、製薬業界のマーケティング職は、業界内において「花形」という印象がある一方で、「多忙」「ハードワーク」であるという泥臭い面もあります。
マーケター未経験の転職志望者の方は、そういうことを認識しておきましょう。

製薬業界マーケティング職の転職事情

そもそも業界を問わず、マーケティング職自体が比較的難易度が高い部類の職種なので、業界未経験から転職するのは少々難しいと考えてよいでしょう

製薬会社の別の部署からの異動も、決して簡単ではありません。当然ながら新卒で入社した人材が、いきなりマーケティング職に就くこともほとんどないと考えてよいでしょう。何らかの部署で数年の業界経験を積んだ人材が、それを活かしつつ学びながらチャレンジすることが多いキャリアです。
製薬業界においてのマーケティング職の人材ニーズは、外資系製薬会社を中心として断続的に発生しますが、それは企業側の事業のタイミングが関係しています。それに関して、詳しく掘り下げてみましょう。

人材ニーズの絶対数はタイミングによる

マーケティング職は製薬会社が自社内の人事異動でカバーするケースも多く、新会社設立や新しい事業部門の開始のようなタイミング以外は、求人案件の絶対数はそれほど多くないのが現状です。
大手製薬会社では同時に複数の事業部において、マーケティング職の求人が出ているケースもあります。一方、スペシャリティファーマにおいては、新製品ローンチや新たに日本法人を立ち上げるなどのタイミングで、マーケティング職の求人案件が登場します。
管理職級のハイクラス求人に関しても、マネージャーおよびシニアマネージャーを中心に、アソシエイトブランドマネージャーからディレクターまで幅広いポストで人材ニーズが発生します。
また、製薬業界ではここ10年余りで、グローバルレベルでの業界再編による企業統合が進行してきました。日本国内の製薬会社の多くが、昔の社名と変わっているのは業界再編、企業統合の結果です。
大手製薬会社によるバイオファーマの買収などでパイプラインの拡充を図り、バイオ医薬品の製造の拡大や遺伝子治療薬、個別化医療などの新たな領域も広がりを見せています。
こうした背景により画期的な薬効をもつ「ブロックバスター」から、未だに満たされない医療ニーズである「アンメット・メディカル・ニーズ」に応える方向性にトレンドがシフトしつつあるようです。
そのため、業界のマーケティング職求人においても希少疾患・中枢神経・オンコロジー・バイオなどの領域が大半を占める状況となります。

製薬業界のマーケティング職へ転職に有利な4つのスキル

製薬業界のマーケティング職の採用で、有利になると考えられるスキルは以下の4つです。

  • マーケティングスキル
  • 英語スキル(特にリーディング)
  • デジタルスキル
  • マネジメントスキル

個別に詳しく見ていきましょう。

マーケティングスキル

マーケティングのスキルは一朝一夕では身につかないので、業界は異なっていてもマーケティング職の経験がないと厳しいのが現状です。
また、業界経験者は業界知識があるため優遇されやすい面もあるでしょうが、製薬業界においてのマーケティング職の経験があったとしても、スキル等も重要視されるため、必ずしも異業界からの転職が不利とはいえません。
フォーキャスティングやブランディング、データドリブンマーケティングなど、戦略に深く関わった経験や新製品の上市経験を持つ人材は異業界出身でも高く評価されます。
また、アンメット・メディカルなどの新時代のニーズの発生を背景に、これまでのマスマーケティングではできなかった潜在需要を掘り起こすスキルやセンスが求められます。

英語スキル

製薬会社のマーケティング職求人の多くは、外資系企業によるものです。そのため、英語力は必須と考えてよいでしょう。求められるレベルはポジションによって変わります。
ディレクタークラスであればグローバルな折衝や交渉ができる、ハイレベルの英語スキルが必要です。チームで仕事を進めるアソシエイトクラスは、直ちに高いレベルは求められません。入社後にブラッシュアップする意欲があれば問題ないでしょう。
製薬に関する英語の論文読解は必須なので、リーディングはまず磨いておく必要があります。また、人口が減少する傾向の先には海外マーケットの重要性が高まるのは確実なので、リーディング以外も含めて英語力スキルの向上は重要課題です。

デジタルスキル

従来ではMRが医療機関を訪問し、医師との面談の席上で自社製品のプロモーションや情報提供を行うのが一般的でした。しかし近年ではさまざまな理由から法令によってMRの医療機関訪問や面談に規制がかかるようになりました。
それまでのMRの活動に代わって、インターネットを通して情報提供を行う「eディテーリング®」というプロモーション方法が普及しています。
加えて、コロナ禍によってさらに訪問規制が強化されたので、各製薬会社は、デジタルマーケティングへの取り組みを一段と進めてきました。今後は製薬業界でも、さまざまな顧客接点を活用する「オムニチャネル戦略」が重要視されるでしょう。
また、機械学習を活用した精度の高い需要予測や営業戦略策定の技術が進めば、マーケティングの仕事も大きく変わります。
そういう背景から、製薬会社のマーケティング職には、アクセス可能な膨大なデータをマーケティングに有効に使うための、デジタルスキルやデジタルリテラシーが強く求められます。

マネジメントスキル

マーケティングという多面性を持つ仕事に一貫したテーマを持って取り組むためには、マネジメントスキルが欠かせません。マネジメントの対象は部下だけではありません。
たとえば単独で取り組む仕事であっても、その仕事にまつわるさまざまなタスクを並行して進めてゴールを目指すには、自走するための能力、および他部門と連携する能力も必要です。
それぞれを補足しておきましょう。

自走する能力

製薬会社で新薬を上市する際に、大人数のチームではなく、ひとりもしくは少数精鋭でローンチまで持っていける能力をもった人材が求められる傾向にあります。
極論でいえば上司に頼らず、部下に任せずとも自己完結できるプレイングマネージャーのイメージです。マネジメントスキルの中でも「自走する能力」があれば、採用に有利となるでしょう。

他部門と連携する能力

マーケティングという仕事は、決して自分の部署だけでは完結しません。営業部門や開発、広告などのさまざまな部門と連携を取って大いに巻き込みながら、進進していく力が求められます。
各部署と良好なコミュニケーションをとりながら、有機的に連携する能力があれば、採用に有利となるでしょう。

製薬会社マーケティング職のキャリアパスの選択肢

製薬会社のマーケティング職でのキャリアパスに、どのような選択肢があるかを見ていきましょう。
まずはマーケティング部門で実績を上げてゆき、マネージャーやディレクターなどの管理職を目指す道があります。実力次第で経営幹部(役員)や経営トップを目指せる場合もあるでしょう。
マーケティング職としてキャリアアップを目指すためには、英語力をビジネスレベルにブラッシュアップしたり、MBA取得にトライしたりして、人材価値の向上を図るのも有効です。
また、マーケティングを通して得た知見を活かして、広告宣伝部門、製品企画部門、経営企画部門、ライセンシング担当などの他部門に新たな舞台を見出すことも可能です。

転職で製薬会社マーケティング職を目指すキャリアプラン例

転職によって製薬会社のマーケティング職を目指す場合、業界経験も職務経験もない状態ではポテンシャル採用も難しいでしょう。異なる業界であっても、マーケティングの仕事に関わることが最も確実です。
対象となる分野は違っていても、本来マーケティングの基礎となる部分(市場分析・仮説・検証)は同じです。その上で、新時代に欠かせないデジタルマーケティングやデータドリブンマーケティングを実践の中で学び、経験しておけばアピール効果はあるでしょう。

まとめ

製薬会社のマーケティング職を目指す場合には、いずれの業界であってもぜひマーケターとしてのキャリアを積んでおきましょう。なお、選考対策としては異業界である製薬業界についての研鑽を深めておくことも大切です。

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