MR(製薬会社の情報担当者)の年収事情!業界動向・キャリアパスも解説

比較的高い年収が得られ、業界未経験からでもチャレンジが可能なMR(製薬会社の医療情報担当者)は、年齢を問わず転職志望者からの人気が高い職種です。
今回の記事ではそんなMRの年収事情や製薬業界の動向、キャリアパスについて詳しく解説します。製薬業界あるいはMRへの転職に興味があるみなさんは、ぜひ参考にしてください。

製薬会社のMR(医療情報担当者)とは?

MR(Medical Representatives)は製薬会社に所属し、自社が取り扱っている医療用医薬品が安全かつ有効に使用されるよう医療現場に情報共有するとともに、現場からの情報を内部にフィードバックする職種です。
営業職のような価格交渉や販売は行いません。仕事は大きく分けて以下の3種類にわかれます。

  • 医療情報の提供
  • 医療情報の収集
  • 医療情報の伝達

<医療情報の提供>
病院や個人開業の医院、調剤薬局などを訪問し、医師や薬剤師に自社の医薬品の情報(薬品の適正使用のための効能・特長・副作用・使用上の注意などの情報)を説明し、医療機関からの問い合わせにも対応します。
<医療情報の収集>
医師や薬剤師から自社製品の有効性や安全性、副作用などの情報を集めて製造部門にフィードバックします。また、医療現場からの要望やアイデアを整理して報告し、新薬開発につなげる役目を担います。
<医療情報の伝達>
医療現場から収集した薬品情報について分析、評価した内容を医療従事者に迅速かつ正確に伝達します。ほかにも医学・薬学の情報を広く共有するための講演会や勤務医と開業医の連携など、医療関係者のネットワークの支援もします。
上記のような3方向の情報活動を通じて、自社医薬品の普及と適正な使用を促進する仕事です。

製薬会社MRの年収事情

製薬会社のMR(医療情報担当者)の年収事情や年収が高い背景や給与体系の違いなどについて触れておきます。

MR(医療情報担当者)の平均年収

MRの年収は厚生労働省の『令和3年賃金構造基本統計調査』によれば全国平均で551.8万円(平均年齢41.1歳)となっています。サラリーマン全体の平均年収が約430万円なので、それより120万円ほど高く、高額年収の部類に入るでしょう。
また、有価証券報告書で2021年度の社員の平均年収が公表されている上場製薬会社の上位10社は以下のとおりです。ちなみに、11位までが平均年収で1,000万円を超えています。

順位 平均年収 会社名
第1位 1.480万円 ソレイジア・ファーマ株式会社
第2位 1,170万円 シンバイオ製薬株式会社
第3位 1,152万円 そーせいグループ株式会社
第4位 1,150万円 アンジェス株式会社
第5位 1,117万円 第一三共株式会社
第6位 1,110万円 中外製薬株式会社
第7位 1,091万円 株式会社モダリス
第8位 1,077万円 武田薬品工業株式会社
第9位 1,072万円 サンバイオ株式会社
第10位 1,051万円 アステラス製薬株式会社

MRの年収が高い背景

日本の製薬会社は、高い付加価値を生み出していることが国際的に評価されています。MRの年収が高い背景には、求められる知見のレベルが高く、それに耐える優秀な人材を確保するためという側面もあります。
また、MRは外回りが基本業務になるため、業務に関する日当・手当などが支給されるのが一般的です。また、転勤も多いので、家賃補助などの福利厚生の手当も手厚くなっており、年収を押し上げる要因となっています。

製薬業界の動向とMRに求められるもの

製薬業界はこの10年ほどの間で、さまざまな大きな変化が見られました。それはMRの仕事のあり方とも深く関係するものです。ここでは製薬業界の動向と今後のMRに求められるものについて、詳しく見ていきましょう。

製薬業界の動向

ここ10年ほどで製薬業界に起こった大きな変化として、まずは医療従事者が、医療用医薬品情報をインターネットを通して容易に入手できるようになったことが挙げられます。
次いで、医療機関の多くがMRの訪問による面談に規制を強めていることです。
さらに、画期的な効果の新薬群(ブロックバスター)を創り出すビジネスモデルから、未だ満たされない医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)に応える方向にトレンドがシフトしつつあります。
また、製薬業界では「ジェネリック医薬品」すなわち後発医薬品の普及が進んでいることや、抗がん剤などの患者や処方する医師の母数がかぎられるスペシャリティ領域が伸びていることなどにより、MRの役割が以前よりも縮小しつつあります。
ほかには、製薬会社による医療用医薬品の不適切なプロモーションを抑制するための、厚生労働省が策定したガイドラインが2019年4月1日より適用されています。
ちなみに、MRの数は2013年度をピークとして年々減少しています。2018年度に6万人を下回り、2020年度も減少傾向が続き、2021年3月末の時点でのMR総数は前年比3,572名減の53,586名です。

今後のMRに求められるもの

上記のような背景から、今後のMRにはこれまで以上の高い専門性が要求されると考えてよいでしょう。
「数から質」への転換期にあるので、新しい医療制度や法律などの理解を深め、患者主体の医療に貢献できる人および、医師や薬剤師と深い信頼関係を築けるMRは活動の幅が広がると考えられます。
求められる具体的なスキルや知識としては以下の3系統に集約されます。
・症例ベースの情報
・市場分析に基づく営業スキル
・専門領域の高度な知識
それぞれを見ていきましょう。

症例ベースの情報

インターネットによる情報入手が一般的となった現在、医師がMRに求めるのは、インターネットでは入手が困難な個別の症例に基づいた薬剤の情報や、ほかの病院およびその専門医の処方情報です。
他社製品も含めて、症状に対してどういった処方が効果を上げたのか、細かいデータを収集した症例ベースの情報こそ価値が認められます。

市場分析に基づく営業スキル

MRの訪問面談に多くの医療機関が規制を強めたため、医師との面談機会が減り、関係構築が難しくなっています。かぎられた面談の中で、プロモーションを効果的に展開しなければなりません。
そのためには緻密な市場分析に基づいて、説得力のあるセールスプランを立てていくスキルが重要です。

専門領域の高度な知識

製薬会社の新薬がブロックバスターからスペシャリティ製品にシフトしてきたことや、オンコロジー領域の薬剤上市がより主流となりゆく傾向から、MRにはより高度な専門知識と最先端の知識が求められます。
そもそも製薬会社は化学だけでなく、生物学の知見も問われる業種です。大卒レベルを超える専門性の高い知識が求められる場合も少なくありません。医療情報を医療現場に伝えるMRには、当然ながら高度な知識が求められます。

製薬会社MRのキャリアパス

MRの道を極める選択肢や、キャリアチェンジも存在します。ここではMRのキャリアパスについて見ていきましょう。

MRとしてキャリアアップ

MRという職務を極めていくというキャリアパスがあります。極め方は主に3種類です。
まず、多種多様な製品を幅広く担当する、守備範囲が広いゼネラリストのMRです。次に、ゼネラリストとは逆に、1つの製品や領域の専門性を高めていくスペシャリストのMRという選択肢もあります。
もうひとつはMRとしてマネージャーや事業部長などの、管理職へのステップアップをするキャリアパスです。

MR経験を活かせるキャリアチェンジ

MR経験を活かして、異なるキャリアにトライするという道が2つあります。同業態の中でのキャリアチェンジと、別業態へのキャリアチェンジです。

経験を活かして同業態で別職種に進む

MRとして医療現場で培った経験を活かして、社内異動もしくは別の製薬会社に転職して医薬品のマーケティング職や教育指導担当、流通担当、人材部門担当になるケースもあります。

経験を活かして別業態に転職する

MRの経験と専門性を活かして、たとえば製薬会社ではなくCSO(医薬品販売業務受託機関)の営業部門や臨床開発部門などで働くことも可能です。MRとして培った知見が活かせる医療関連の職業はたくさんあります。

製薬会社のMRになるには

製薬会社では未経験で無資格でも、MR候補として採用されます。そして入社後に「導入教育」と呼ばれる研修を受けるのが一般的です。
導入教育とは製薬業界が定める共通のカリキュラムによる研修で、自社製品情報だけでなく広く医学と薬学、疾病の知識や関連法規を学びます。その上で、MR認定試験(主催:公益財団法人MR認定センター)を受験するケースが大半です。
合格しないとMRになれないわけではありませんが、ほとんどのMR候補は入社してからMR認定試験に合格した後、仕事をしています。認定MR資格を持っていないMRはほとんど見られません。
ちなみに、2021年におけるMRのMR認定取得者率は97.9%です。ちなみに製薬会社の管理職(マネージャー)のMR認定取得者数は96.8%です。
つまり、MR認定に関しては入社にしてからの取得でよいのですが、選考の時点でMR認定に向けて学び始めていることや、すでに取得したなどの要素があると、確実に有利に働くと考えてよいでしょう。

まとめ

製薬業界のMRは業界事情の変化で絶対数は年々減っていますが、今後も人材需要が途絶えることはないでしょう。未経験でも採用されますが、入社後に求められるものはより高度な専門知識を学ぶことです。
MR認定試験に関しては、入社後に取得を進められるので、あらかじめ取得する必要はありません。しかし、入社意欲を示すアピールになるでしょう。
製薬会社のMRへの転職を視野に入れているみなさんは、本気でねらうならMR認定取得にトライすることも検討しましょう。

製薬業界マーケティング職のキャリアについて、こちらの記事で解説しています。ライフサイエンス系の業務に関心のある方はご参考にどうぞ!

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