ディープテックとは?国も後押しする注目分野をわかりやすく解説

「ディープテック」というワードは、まだ聞き慣れない方も多いと思いますが、経済産業省の定義によれば、「特定の自然科学分野での研究を通じて得られた科学的な発見に基づく技術であり、その事業化・社会実装を実現できれば、国や世界全体で解決すべき経済社会課題の解決など社会にインパクトを与えられるような潜在力のある技術」であるとされています。
この記事では、社会実装できれば大きなインパクトを期待できるディープテックの特徴や課題を解説し、主な事業領域やプレイヤーとなる注目の企業事例を紹介します。

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ディープテックとは?

ディープテックの特徴

ディープテックは、根底にある科学的な原理や複雑な技術を基盤とした革新的な技術やソリューションを指します。これには、AI(人工知能)、量子コンピューティング、バイオテクノロジー、ロボティクスなどが含まれ、これらは私たちの生活、経済、そして社会に革命をもたらす潜在力を秘めています。

これらの技術は、研究開発の初期段階から商業化に至るまでの期間が長く、資金とリソースが豊富に必要とされることが一般的です。そのため、ディープテックの企業やプロジェクトは、長期的なビジョンと戦略が求められます。

産業への影響

ディープテックは、ヘルスケア、製造業、輸送、エネルギーなど、多くの産業に革命をもたらしています。例えば、人工知能は医療診断の精度を向上させ、量子コンピューティングは複雑な問題を解決する可能性を持っています。バイオテクノロジーは、持続可能な方法で資源を生産する手法を提供し、ロボティクスは労働の自動化と効率化を推進しています。
このように、ディープテックは未来のイノベーションと産業の発展を牽引するカギと位置づけられ、持続可能な開発、クリーンエネルギー、パーソナライズされた医療、効率的な輸送システムなど、日本社会はもとより人類が直面する課題の解決に向けて、その発展が期待されています。

 

ディープテック特有の課題

不確実性への対応

ディープテックの特徴の1つとして、事業化・社会実装までの不確実性が挙げられますが、これらの技術が持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、政府、企業、アカデミアが連携し、資金、リソース、政策のサポートを充実させる必要があります。ディープテックが持つ可能性へのチャレンジと、そしてそれをサポートするエコシステムの形成が、次世代のイノベーションをリードするカギとなるでしょう。
より具体的な課題のポイントを以下にまとめてみました。

資金調達 ディープテックスタートアップは、特に初期段階で莫大な投資を必要とすることが多いです。しかし、それに見合うほどのリターンが速やかに得られるわけではないため、ベンチャーキャピタル(VC)等の投資家を見つけるのが困難な場合があります。
リソースと
タレントの不足
ディープテック分野で成功するためには、特定の技術や知識を持った専門家が必要です。しかし、そのようなタレントは限られており、獲得競争が激化しています。技術や事業開発を担う人材自身にも不確実性を伴う研究開発や事業領域への参入するイノベーターとしてのマインドセットも必要になります。
規制と法律のハードル バイオテクノロジーやAIなど、ディープテックの分野はしばしば厳しい規制に直面します。これは、新技術の開発と実装を遅らせ、事業のスケールアップを困難にすることがあります。国や自治体による政策的な支援も求められます。
技術の複雑性と
市場への導入
ディープテックのプロジェクトは通常、技術的に専門的で複雑であり、それを製品やサービスに変え、市場に導入するプロセスは難易度が高くなりがちです。技術的なハードルを乗り越えたとしても、市場に新しい技術を受け入れさせ、その価値を理解してもらうことは大きな課題になります。ただでさえ、新規事業のPoCやPMFには困難が伴いますが今までにない技術を用いたサービスを浸透させていくには、よりハードルが高くなることもあるでしょう。
エシカルな問題 AIやバイオテクノロジーなど、ディープテックの産品やサービスが倫理的、社会的な問題に直面することがあります。これに対処するための枠組みやガイドラインの整備は、進行中ですが未だ十分ではありません。

これらの課題に取り組み、解決策を見つけることがディープテックの発展には不可欠です。それには、多様なステークホルダーの協力と、継続的なイノベーションが求められます。

実際、政府も事業費1000億円の「ディープテック・スタートアップ支援事業」を立ち上げ、技術の実用化研究開発や量産化実証、海外技術実証などの支援に動いています。

出典:経済産業省 ディープテック・スタートアップ支援事業について(令和5年2月産業技術環境局)

 

ディープテックの有望分野とプレーヤー企業

以下に一例としてディープテックで注目されている領域と主要なプレーヤー企業を紹介します

ロボティクス

労働の効率化、コスト削減、安全の向上、アクセスの拡大など、多様な価値を提供するポテンシャルを秘める分野です。ロボット技術におけるディープテック企業の一例を紹介します。

Starship Technologies

小型の自動運転配送ロボットを開発し、ラストワンマイルの配送を効率化。

BUILT ROBOTICS

重機用座標プログラムと耐振性部品技術による建設現場の自動化を推進。

株式会社 SteraVision

自動運転技術のキーデバイスとして注目される高機能で応用性の高いセンサーLiDAR(ライダー)を開発。

AI

AI分野は急速に進化しており、多くのスタートアップが新しい技術とアプリケーションを開発しています。AIに特化したディープテック企業の一例です。

Scale AI

AIのトレーニングデータのアノテーションサービスを提供し、コンピュータビジョン技術(ロボットの目にあたるような視覚情報の処理)の進化をサポート。

Zebra Medical Vision

医療画像の解析を行い、病気の診断をサポート。

IoT

IoT(Internet of Things)分野も、様々な産業や日常生活の効率化と革新に貢献する分野として注目されています。

Quantela

AIを利用して都市のインフラストラクチャを最適化、エネルギー、交通、公共サービスの効率を向上させるソリューションを提供。

株式会社エイシング

端末側に組み込み、センサーなどのデータから機械制御を行うエッジAIを開発。機械制御の高度化など実現する。

AeroFarms

IoT技術を活用して、インドアでの垂直農業を最適化し、持続可能な食品生産方法を推進。

クリーンテクノロジー

持続可能なエネルギーソースを提供し、環境への影響を最小限に抑える技術が注目されています。クリーンエネルギーの技術とその分野で注目される主要なプレイヤー企業を紹介します。

チャレナジー

回転している物体に流れがあたると、流れと垂直に揚力(マグナス力)が発生する物理現象を利用した「羽根のない風力発電機」を開発。

First Solar

太陽光を電力に変換する低コストかつ温度や太陽光の様々な条件下でも発電能力の高い薄膜太陽電池モジュール(ソーラーパネル)のモジュール(ソーラーパネル)を製造・販売。

Aurora Solar

高機能センサーであるLiDAR(ライダー)データ、コンピュータ支援設計、コンピュータビジョンを組み合わせてソーラーパネル設置を効率化

Climeworks

大気中からCO2を回収・貯蔵できる直接空気回収(DAC)施設の開発・商業化

素材

革新的な素材と技術を開発するディープテックスタートアップ企業の一部を紹介します。

AZUL Energy株式会社

レアメタル代替材料の開発。東北大学ビジネスインキュベーションプログラム(BIP)の支援を受け設立。

Graphenest

厚さ1ナノメートル程度と極めて薄く、高強度かつ電気伝導率、熱伝導率に優れるグラフェンを安価で大量に生産する技術を開発

医療機器

AMI株式会社

心電と心音を解析し可視化する「超聴診器」を開発。独自の医療機器と遠隔医療で急激な医療革新の実現を目指す。

ライフサイエンス

ポル・メド・テック

臓器移植における臓器不足の課題を解決する「異種移植」の社会実装を目指す。明治大学農学部生命科学科の長嶋比呂志教授らによる立ち上げ。

航空宇宙等

持続可能で効率的な技術とソリューションを通じて、宇宙へのアクセスの拡大、衛星技術の進化、宇宙旅行の実現など、宇宙探査と利用の可能性を広げている分野のプレイヤー企業の一例です。

株式会社アストロスケールホールディングス

宇宙ごみ(スペースデブリ)除去の事業化を目指す。2026年度までに商用サービスとして展開予定。

Relativity Space

3Dプリンティング技術を用いてロケットを製造し、打ち上げコスト削減を目指すが2023年に事業転換を表明し、現在は完全再利用型のロケット開発に注力。

Space Perspective

成層圏に到達するバルーンによる宇宙旅行を提供するプランを開発。

OneWeb

グローバルなブロードバンドインターネットサービスを提供するための低軌道衛星ネットワークを展開。

原子力技術

NuScale Power

小型モジュラー原子炉(SMR)技術を開発し、安全でコンパクトな原子力エネルギーソリューションを提供。

京都フュージョニアリング株式会社

究極的なエネルギーソリューション「核融合」によって地球課題解決を目指す。

TerraPower

トラベリング・ウェーブ・リアクター(TWR)と呼ばれる次世代原子炉の開発。ビル・ゲイツが支援していることでも有名。

まとめ

ディープテックは、次世代の技術革命を牽引する分野として急速に注目を集め、資金の流入も進んでいます。国の支援もあり、この分野でのキャリアは、自身の持つ技術と知識を世界中で価値あるものに変えるチャンスになるかもしれません。
編集部では今後、技術とパッションで未来のイノベーションに貢献できるディープテック領域の人材募集情報もお伝えしていきたいと考えています。

 

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