ディープテックとは?国も後押しする注目分野をわかりやすく解説

「地球温暖化」「食料危機」「不治の病の克服」——人類が直面する巨大な課題に、科学的な発見と革新的な技術で挑むのが「ディープテック」です。単なるIT技術の進化ではなく、量子コンピュータ、バイオ工学、核融合といった基礎研究のブレイクスルーに基づいている点が最大の特徴です。本記事では、国も後押しするこの注目分野の全体像をわかりやすく解説します。この次世代技術の波は、あなたのキャリアパスに大きな変革をもたらす可能性があります。

-メディア運営-
Talisman Corporation / IT・外資の転職はタリスマン
外資系企業や日系大手、ベンチャー企業への転職にご興味のある方はぜひお問い合わせください。転職エージェントとして10年以上の経験、データを持つ弊社タリスマン株式会社がサポートさせていただきます。[厚生労働大臣許可番号] 01-ユ-300282

ディープテックとは?

ディープテックの特徴

ディープテックは、根底にある科学的な原理や複雑な技術を基盤とした革新的な技術やソリューションを指します。これには、AI(人工知能)、量子コンピューティング、バイオテクノロジー、ロボティクスなどが含まれ、これらは私たちの生活、経済、そして社会に革命をもたらす潜在力を秘めています。

これらの技術は、研究開発の初期段階から商業化に至るまでの期間が長く、資金とリソースが豊富に必要とされることが一般的です。そのため、ディープテックの企業やプロジェクトは、長期的なビジョンと戦略が求められます。以下に「ディープ(深い)」という言葉が示す、3つの特殊性をまとめます。

  • 技術的難易度が高い(Tear Down Difficulty):Webサービスのような比較的短期間での複製が難しく、特許や知財に裏打ちされた参入障壁の高さが特徴です。
  • 開発期間が長期(Time Horizon):研究開発(R&D)から商業化まで5年〜10年と長い時間軸が必要とされます。
  • 資金ニーズが大きい(Capital Intensive):試作品の製造、実証実験など、初期段階から多額の資金とリソースが必要です。

産業への影響

ディープテックは、ヘルスケア、製造業、輸送、エネルギーなど、多くの産業に革命をもたらしています。例えば、人工知能は医療診断の精度を向上させ、量子コンピューティングは複雑な問題を解決する可能性を持っています。バイオテクノロジーは、持続可能な方法で資源を生産する手法を提供し、ロボティクスは労働の自動化と効率化を推進しています。
このように、ディープテックは未来のイノベーションと産業の発展を牽引するカギと位置づけられ、持続可能な開発、クリーンエネルギー、パーソナライズされた医療、効率的な輸送システムなど、日本社会はもとより人類が直面する課題の解決に向けて、その発展が期待されています。

 

ディープテック特有の課題

不確実性への対応

ディープテックの特徴の1つとして、事業化・社会実装までの不確実性が挙げられますが、これらの技術が持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、政府、企業、アカデミアが連携し、資金、リソース、政策のサポートを充実させる必要があります。ディープテックが持つ可能性へのチャレンジと、そしてそれをサポートするエコシステムの形成が、次世代のイノベーションをリードするカギとなるでしょう。
より具体的な課題のポイントを以下にまとめてみました。

資金調達 ディープテックスタートアップは、特に初期段階で莫大な投資を必要とすることが多いです。しかし、それに見合うほどのリターンが速やかに得られるわけではないため、ベンチャーキャピタル(VC)等の投資家を見つけるのが困難な場合があります。
リソースと
タレントの不足
ディープテック分野で成功するためには、特定の技術や知識を持った専門家が必要です。しかし、そのようなタレントは限られており、獲得競争が激化しています。技術や事業開発を担う人材自身にも不確実性を伴う研究開発や事業領域への参入するイノベーターとしてのマインドセットも必要になります。
規制と法律のハードル バイオテクノロジーやAIなど、ディープテックの分野はしばしば厳しい規制に直面します。これは、新技術の開発と実装を遅らせ、事業のスケールアップを困難にすることがあります。国や自治体による政策的な支援も求められます。
技術の複雑性と
市場への導入
ディープテックのプロジェクトは通常、技術的に専門的で複雑であり、それを製品やサービスに変え、市場に導入するプロセスは難易度が高くなりがちです。技術的なハードルを乗り越えたとしても、市場に新しい技術を受け入れさせ、その価値を理解してもらうことは大きな課題になります。ただでさえ、新規事業のPoCやPMFには困難が伴いますが今までにない技術を用いたサービスを浸透させていくには、よりハードルが高くなることもあるでしょう。
エシカルな問題 AIやバイオテクノロジーなど、ディープテックの産品やサービスが倫理的、社会的な問題に直面することがあります。これに対処するための枠組みやガイドラインの整備は、進行中ですが未だ十分ではありません。

これらの課題に取り組み、解決策を見つけることがディープテックの発展には不可欠です。それには、多様なステークホルダーの協力と、継続的なイノベーションが求められます。
そこで政府では、2023年度より事業費1000億円の「ディープテック・スタートアップ支援事業」を立ち上げ、技術の実用化研究開発や量産化実証、海外技術実証などの支援に動いています。

出典:経済産業省 ディープテック・スタートアップ支援事業について(令和5年2月産業技術環境局)

 
ディープテック・スタートアップ支援事業は、2025年11月までに7回の採択が実施されていますが、以下に7回目までの採択状況の内訳資料を掲載します。これを見ると98社564.6億円が採択決定されており、事業領域はヘルスケア分野が43%と大きな割合を占めていることが分かります。
なお、表内の「STSフェーズ」は、要素技術の研究開発や試作品の開発等に加え、事業化に向けた技術開発の方向性を決めるための事業化可能性調査の実施等を支援するフェイズを示し、同様に「PCAフェーズ」は試作品の開発や初期の生産技術開発等に加え、主要市場獲得に向けた事業化可能性調査の実施支援フェイズ、「DMPフェーズ」は、量産技術に係る研究開発や、量産のための生産設備・検査設備等の設計・製作・購入・導入・運用等を通じ、商用化に至るために必要な実証支援フェイズを示しています。

出典:NEDOホームページより

ディープテックの「今」|世界と日本の最新投資・市場動向(2025年以降)

ディープテックが単なる夢物語ではなく、現実のビジネスとキャリアの機会であることを理解するには、その経済的なインパクトを把握することが不可欠です。

1. 世界市場は2034年までに急拡大へ

ディープテックは、その長い開発期間ゆえに「時間がかかる」というイメージがありますが、市場の拡大予測は驚異的です。
リサーチ企業の分析では、ディープテックの世界市場規模は、2024年から2034年の間に年平均成長率(CAGR)18.7%で急拡大し、。世界市場は2024年時点で約6.9億ドルとされ、2034年までに約38.6億ドルに達すると予測されています。(出典:Future Market Insights
この成長を牽引しているのが、AI、製薬・バイオ、そして気候変動対策に直結するクリーンテクノロジー(クライメイトテック)分野です。

2. VC投資動向:「投資額の伸び」と「日本の壁」

世界的に見ると、ベンチャーキャピタル(VC)の投資総額に占めるディープテック分野の割合は増加傾向にあり、特にAIやバイオテクノロジーなどの分野に多額の資金が流入しています(※1)。一方で、日本のディープテック・スタートアップが乗り越えるべき特有の課題も存在します。特に創薬や先端技術の分野において、日本のスタートアップは上場時の時価総額が100億円前後に留まるケースが多いという課題は、一部で「100億円の壁(100均問題)」として報道されています(※2)。この時価総額の差は、その後の大規模な研究開発費の調達を困難にし、グローバルな競争力を削ぐ原因となり得ます。しかし、この課題を克服するため、近年はシードステージ(創業初期)に特化したVCや、政府の「ディープテック・スタートアップ支援事業」(5年間で1,000億円規模)が、長期的な視点と潤沢な資金でイノベーションを後押しする動きが加速しています。このことは、技術を社会実装するまでの長期的なビジョンを持つ研究者やエンジニアにとって、追い風となっています。
(出典)
※1 内閣官房:スタートアップ・エコシステムの現状と課題(ディープテック分野を中心として)
※2 日経ビジネス:株式公開はしたけれど… 新興バイオ企業の「百均問題」

3. 2025年以降、特に注目される最新トレンド

ディープテックは常に進化しており、2025年後半から2026年にかけては、以下の3つのブレイクスルー技術が特に注目され、VC投資と研究開発の焦点が当たっています。

AIの「実体化(フィジカルAI)」と「特化」

2023年に世界を席巻した生成系AIは、ディープテック領域に深く浸透し、さらに次の段階に進んでいます。

  • フィジカルAI(Physical AI)の台頭:ロボティクスと高度なAIが融合し、物理世界で自律的に行動するAIの開発が加速しています。これにより、製造業やインフラ、物流など、現実世界での複雑な課題解決が飛躍的に効率化されます。
  • ドメイン特化型AIの普及:創薬、金融、医療といった特定の業界固有の文脈に対応し、高い精度とコンプライアンスを担保できるドメイン特化型言語モデルが、エラー削減と R&D の迅速化を牽引します。

(出典)ガートナージャパン:2026年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド

量子技術の商業化と実用化

ディープテックの究極的なフロンティアである量子技術が、いよいよ商業化に向けて現実的な段階に入ります。内閣府の戦略においても、量子技術とAI技術の融合が推進され、バイオ・マテリアルなど計算負荷の高い分野での応用が加速しています。量子コンピューティングの検証環境整備が進むことで、「不可能な計算」への扉が開き、産業界全体に根本的な変化をもたらすことが期待されています。

バイオ・マテリアル分野における「ものづくり革命」

ライフサイエンス分野は、ディープテックの中でも引き続き投資が活発な領域です。特に、合成生物学やAIを活用した「バイオものづくり・バイオ由来製品」や、再生医療、細胞治療といった分野の市場環境整備が産学官金連携で進められています。これは、持続可能な資源の生産や、医療の根本的な改革に直結する、次世代の産業の柱となる動きです。

ディープテックの有望分野とプレーヤー企業

以下に一例としてディープテックで注目されている領域と主要なプレーヤー企業を紹介します

ロボティクス

労働の効率化、コスト削減、安全の向上、アクセスの拡大など、多様な価値を提供するポテンシャルを秘める分野です。ロボット技術におけるディープテック企業の一例を紹介します。

Starship Technologies

小型の自動運転配送ロボットを開発し、ラストワンマイルの配送を効率化。特定の都市圏での小型自動運転配送ロボットのサービスエリアを拡大。

BUILT ROBOTICS

重機用座標プログラムと耐振性部品技術による建設現場の自動化を推進。

株式会社 SteraVision

自動運転技術のキーデバイスとして注目される高機能で応用性の高いセンサーLiDAR(ライダー)を開発。

AI

AI分野は急速に進化しており、多くのスタートアップが新しい技術とアプリケーションを開発しています。AIに特化したディープテック企業の一例です。

株式会社アークス

人工知能(AI)とロボティクスの技術を活用した生殖補助医療自動化システムを開発。成功率の高い不妊治療の実現を目指す。

エルピクセル株式会社

医療画像診断のAI化による、医師の負担軽減と診断精度の向上に取り組む。2024年以降、AI医療画像診断支援ソフトウェアの国内外での導入が加速している。

Zebra Medical Vision

医療画像の解析を行い、病気の診断をサポート。

IoT

IoT(Internet of Things)分野も、様々な産業や日常生活の効率化と革新に貢献する分野として注目されています。

Quantela

AIを利用して都市のインフラストラクチャを最適化、エネルギー、交通、公共サービスの効率を向上させるソリューションを提供。

株式会社エイシング

端末側に組み込み、センサーなどのデータから機械制御を行うエッジAIを開発。機械制御の高度化など実現する。

AeroFarms

IoT技術を活用して、インドアでの垂直農業を最適化し、持続可能な食品生産方法を推進。

クリーンテクノロジー

持続可能なエネルギーソースを提供し、環境への影響を最小限に抑える技術が注目されています。クリーンエネルギーの技術とその分野で注目される主要なプレイヤー企業を紹介します。

チャレナジー

回転している物体に流れがあたると、流れと垂直に揚力(マグナス力)が発生する物理現象を利用した「羽根のない風力発電機」等で既存の風力発電が抱える課題克服を目指す。

First Solar

太陽光を電力に変換する低コストかつ温度や太陽光の様々な条件下でも発電能力の高い薄膜太陽電池モジュール(ソーラーパネル)のモジュール(ソーラーパネル)を製造・販売。

Aurora Solar

高機能センサーであるLiDAR(ライダー)データ、コンピュータ支援設計、コンピュータビジョンを組み合わせてソーラーパネル設置を効率化

Climeworks

大気中からCO2を回収・貯蔵できる直接空気回収(DAC)施設の開発・商業化

素材

革新的な素材と技術を開発するディープテックスタートアップ企業の一部を紹介します。

AZUL Energy株式会社

レアメタル代替材料の開発。東北大学ビジネスインキュベーションプログラム(BIP)の支援を受け設立。

Graphenest

厚さ1ナノメートル程度と極めて薄く、高強度かつ電気伝導率、熱伝導率に優れるグラフェンを安価で大量に生産する技術を開発

医療機器

AMI株式会社

心電と心音を解析し可視化する「超聴診器」を開発。独自の医療機器と遠隔医療で急激な医療革新の実現を目指す。2025年度NEDO「ディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業」にも採択された。

ライフサイエンス

ポル・メド・テック

臓器移植における臓器不足の課題を解決する「異種移植」の社会実装を目指す。明治大学農学部生命科学科の長嶋比呂志教授らによる立ち上げ。

株式会社アグロデザイン・スタジオ

効果と安全性が両立できる農薬として期待されている「分子標的農薬」を開発を効率化するプラットフォームの開発及び、それを活用した創農薬を目指す。

航空宇宙等

持続可能で効率的な技術とソリューションを通じて、宇宙へのアクセスの拡大、衛星技術の進化、宇宙旅行の実現など、宇宙探査と利用の可能性を広げている分野のプレイヤー企業の一例です。

株式会社アストロスケールホールディングス

宇宙利用の持続可能性の確保として宇宙ごみ(スペースデブリ)除去の事業化を目指す。2026年度までに商用サービスとして展開予定。

Relativity Space

3Dプリンティング技術を用いてロケットを製造し、打ち上げコスト削減を目指すが2023年に事業転換を表明し、現在は完全再利用型のロケット開発に注力。

Space Perspective

成層圏に到達するバルーンによる宇宙旅行を提供するプランを開発。

OneWeb

グローバルなブロードバンドインターネットサービスを提供するための低軌道衛星ネットワークを展開。

原子力技術

NuScale Power

小型モジュラー原子炉(SMR)技術を開発し、安全でコンパクトな原子力エネルギーソリューションを提供。

京都フュージョニアリング株式会社

究極的なクリーンエネルギーソリューション「核融合」によって地球課題解決を目指す。2025年9月時点で、シリーズCラウンドを終了し、デットファイナンス(融資)を含め総額93.8億円を確保。

TerraPower

トラベリング・ウェーブ・リアクター(TWR)と呼ばれる次世代原子炉の開発。ビル・ゲイツが支援していることでも有名。

まとめ

ディープテックは、今後数十年にわたり人類と経済を牽引する、最も影響力の大きな分野です。この領域でのキャリアは、単に高待遇を得るだけでなく、自身のスキルとパッションを「未来の社会」を創るという、最も意義深い仕事に直結させます。あなたの持つ専門技術(IT、化学、物理、エンジニアリングなど)が、この革命的なフィールドでどのように活かせるのか。
キャリアの可能性を最大化するため、ぜひ専門知識を持つタリスマンDeepTechチームにご相談ください。

タリスマンに転職相談をする

いますぐ求人を探す