管理職の目標設定を明確に共有する方法【育成コーチング2】

第二回は目標設定を明確にしていくコーチングです。

部下を成長させるためには、達成したときに上司・部下のお互いがはっきりわかる目標設定が必要であることは前回ふれました。

今回は上司の佐久間が部下の菅沢の目標を明確にするセッションです。ここは集中力が必要とされます。

コーチングで最も難しいと言われているのが傾聴です。傾聴とは相手の言葉にフィルターなしに耳を傾け、しっかり聞いて復唱していくことをいいます。

フィルターとは、相手の話を聞いているときに心に浮かぶ、様々は心の声のことです。

例として下記のようなものがあります。
「そうではない」「いや、ただしい」などと、相手の話を判断しているフィルター。
「こうすればいいのに」「解決策は」と相手が話をしているそばから、解決策を考え始めるフィルター。

これらのフィルターをもって聞いていると、相手の大事な言葉を聞き逃します。
また、相手に考えながら聞かれているということが伝わり、相手は潜在意識に入っていけなくなります。

コーチングで大事なことの一つは、相手が潜在意識から話をしてくれることにあります。そしてそれは、正しい傾聴がされ、相手との信頼関係が構築されてこそ実現可能です。

大事なことはフィルターに気づいても決して出さない、言わないです。

下記は今回のプロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーとの会話です。
前回、佐久間は部下の菅沢に自身の目標について確認するセッションを行いました。

菅沢が出したのは、「部下の東堂のさらなる成長」と「部署の評価を向上させる」です。
菅沢の言葉では「この部署に任せておけば必ずプロジェクトがうまく運ぶという評価をもらって、確かな仕事を積み上げたいです」でした。

前回のセッションで、次回のセッションでここを掘り下げたいと佐久間は菅沢に伝えています。

背景:
彼らはオミヤゲドットコムという会社の社員です。彼らはMade in Japanの製品だけを売る通販のジェイズグッズカンパニーという部門を2020年4月までに立ち上げなくてはなりません。プロジェクト推進室の使命は、このビジネスの中核となるMade in 他国製品を制御する“EXO”というシステムを、3月第一週までに立ち上げることです。

プロジェクトマネージャーの佐久間はチームメンバーの成長のためにOne on One(一対一の面談)をコーチングで行うことにしました。主に直属の部下で、女性管理職のプロジェクトリーダー菅沢を対象としています。

主な登場人物:
佐久間省吾 35歳 プロジェクトマネージャー
菅沢莉子  32歳 プロジェクトリーダー
東堂聡志  28歳 プロジェクトメンバー

目標を明確にする その2/ 現状把握をする

佐久間
佐久間
菅沢さん、前回の話をおぼえていますか。
はい、確かな仕事を積み上げたいというところを具体的にとおっしゃった件ですね。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
そうです。もう少し詳しく話をしてもらえますか①
プロジェクト推進室というのはプロジェクトが終わってしまうと、組織変更が行われるのをよく見てきました。なので、自分のキャリアの積み上げが難しいと不安に思うことがあって。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
ご自身のキャリアの積み上げが難しいと不安に思うんですね。というと?②
はい、不安というか、個人的な感想なんですけど。私もっと、部署の存在価値をはっきりさせたくて。例えば、会社のプロジェクトだけではなく、会社がよりよくなるための提案が受けられるような部署になっていけば、部署の価値が上がっていくと思うんです。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
なるほど。プロジェクトだけでない案件も、担当できるようになればということですね。
そうです。どの部署も他部署と連携をした改善や新しい取り組みをやりたいと思っていると思うんです。私たちがその中心に常にいて、手助けしていければ、部署の価値、いえ、最終的には会社の価値も上がると思うんです。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
他部署間の連携を手伝えれば、部署のみならず、会社の価値もあがると。会社の価値があげられる部署にしたいとおもっているということでしょうか。
あ、はい、すみません。えらそうなことを。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
いいえ。素晴らしい考えだと思います。じゃあ、いつまでにどうしたいか、もう一度聞いてもいいですか?③
そうですね。今回のプロジェクトで各部署の信頼を得たうえで、期日通りのプロジェクトの立ち上げができれば、一番近道かと思います。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
各部署の信頼を得るとは?菅沢さんは前回も東堂さんの話をされたときに、信頼という言葉をおっしゃってました。④そこを聞いてもいいですか。
そうですね。信頼というのは、ちゃんと相手の要望も確認しながら進めるが一つ。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
いいですね。他には?
みんなが納得するシステム仕様に仕上がること。正しいタイムラインで今回のシステムが導入できること。あと…
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
あと?
予期しないトラブルがあった場合に、真摯に対応できることです。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
要望を確認できて、タイムライン通りのシステム導入ができること。トラブルに真摯に対処する、ですね⑤
そうです。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
菅沢さん、今の理想に対して、現状の進み具合はどうですか⑥
それぞれの部署からのプロジェクトマネージャーさんが決まって、仕様の確認はスムーズだったと思います。こちらから最初にできること、できないことを伝えていたので、それに沿った案や、改善策を出してくださっていました。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
そうなんですね。
ある程度仕様通りの模擬システムが作れそうだと、インドの開発の方からも聞いています。疑似システムで確認するテスト項目についても、期日までに各部署が出してくれました。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
この間の会議で、そう言ってましたね。
それを総合すると、現時点での達成としては80%から90%はできてるかもしれません。
菅沢
菅沢
佐久間
佐久間
では、あとの20%について教えてもらえますか?

セッションのポイント

①部下が目標について語った時、自分と同じ景色の目標なのかがはっきりするまでは、広く聞く質問を必ずします。目標の背後には本当の目標が潜んでいます。今回は「確かな仕事を積み上げたい」の先に、「会社に貢献できているという部署の価値を上げたい」が潜んでいました。
例えば、「マラソンを走れるようになりたい」という目標を出してきた場合であっても、コーチは必ず、「詳しく話してください」と聞きます。一見、ブレのないような目標に見えていたとしても、その背後には、本当は「やり遂げられる自信を得たい」や、「継続的な健康管理方法を見出したい」など別の本当の目標が隠れているものです。

②コーチングで大事なことは、相手の鏡になり続けるという事です。ですので、常に丁寧に内容を要約して返し、「というと?」などで、より、深く考える質問を繰り返します。

佐久間は、この部署のマネージャーなので、この話を聞いている時に、なにがしかのフィルターがでていた可能性があります。

「キャリアの積み上げが難しいと不安」や、「部署の存在理由をはっきりさせたい」と聞くと、例えば、「そんなことはないよ」とか、「そうならないためには」などの否定や、自ら解決方法を言ってしまうことも考えられます。

ですが、訓練されたコーチは傾聴に徹し、フィルターを相手に出さないことができます。それは、コーチが相手の目標は自分の目標ではないと自覚できおり、相手との心の距離が保てているからです。

とはいえ、佐久間の「素晴らしい考えだと思います」という言葉は、少しフィルターが出ていますね。でも、ここでは、部下の菅沢の考えを承認し、背中を押す言葉の一つとしてとらえることができます。

③コーチは具体的な目標が明確になったと思ったら、いつまでにどうしたいかを再度コーチされる側に確認します。

④コーチは二度出てくる言葉を聞き逃しません。前回、部下の信頼について語っていた菅沢の言葉を復唱し、コーチされる側が何を大事にしたいかを明確にします。

⑤コーチは、コーチされる側が複数の話を続けて言っても、丁寧に項目に分けて要約します。このことで、コーチされる側はそれが自分の考えていることとあっているかどうかを、コーチという鏡をみて確認できることになります。

⑥目標が明確になったところで、現状とのギャップを確認する質問をします。数値でもいいですし、具体的な事象について聞いてもいいでしょう。

コーチングでOne on One(一対一の面談)を行う際のチェックポイント

□テーマや目標について深く聞く質問をしているだろうか
□傾聴するときに自分のフィルターがどんな風に出やすいか把握しているだろうか
□自分のフィルターを把握した上で、相手に出さないことはできるだろうか
□相手の言葉を大事にして、復唱しているだろうか
□相手が複数回言った言葉を大事にできているだろうか
□現状について確認し、ギャップを見る質問をしているだろうか

*この物語に登場する人物名、団体名、システム等はすべて架空のものです。

Talisman編集部

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