第三回は課題や障害を明確にしていくセッションです。
目標が明確になってきたところで、前回は目標とのギャップを確認しています。
つまり、目標に対してどれくらいできていて、どれくらいできていないのかという質問です。
こういった、できてないところにフォーカスすることで、取り組むべき方向と課題が明確になります。
目標に対してすぐに解決法を出せてしまう人もいますが、できてないところを明確にせず、解決法を出してしまうと、正しいゴールにたどり着かない可能性があります。
なぜなら、そこに横たわっている課題や障害を明確にせず、分析していないと、目についた解決法を言ってしまい、結果、ゴールに結びつかない解決法だったという場合があるからです
前回、目標に対して80%はできていると菅沢が言ったのに対し、佐久間はできてない20%について確認したいと締めくくっています。
背景:
彼らはオミヤゲドットコムという会社の社員です。彼らはMade in Japanの製品だけを売る通販のジェイズグッズカンパニーという部門を2020年4月までに立ち上げなくてはなりません。プロジェクト推進室の使命は、このビジネスの中核となるMade in 他国製品を制御する“EXO”というシステムを、3月第一週までに立ち上げることです。
プロジェクトマネージャーの佐久間はチームメンバーの成長のためにOne on One(一対一の面談)をコーチングで行うことにしました。主に直属の部下で、女性管理職のプロジェクトリーダー菅沢を対象としています。
主な登場人物:
佐久間省吾 35歳 プロジェクトマネージャー
菅沢莉子 32歳 プロジェクトリーダー
東堂聡志 28歳 プロジェクトメンバー
課題・障害を聞く
セッションのポイント
①前回のセッションで菅沢は「信頼あるシステムの立ち上げ」で、できてないと感じている20%について聞かれており、それについて答えています。佐久間は言葉を丁寧に復唱してひらって、相手の言葉を明確にしています。
②できてないところが明確になったら、今度はそれに対する障害や課題についての質問をします。それができてない壁のようなものを確認してきます。
③菅沢は自分が課題を話している間に、信頼ある部署と、部下東堂の信頼ある仕事がつながっていると自覚します。こういった瞬間をコーチングでは「気づき」といいます。コーチはこれが「気づき」だと思っても、大げさに肯定したり、否定したりせず丁寧に復唱し、相手の鏡に徹します。
④課題や障害はすべて出てくるまで確認します。最初に出てきたものが大事だとは限りませんし、話をしている間に気づく課題も出てきます。コーチは全部出てくるまで、丁寧に確認します。
⑤課題と障害が出たら、何が一番気になっているのかを確認します。どこから最初に見ていきたいのかを確認する質問をします。どこから手を付けるのかをきめるのも、コーチされる側が決めます。
障害や課題を聞く質問はそのままアクションプランにたどり着くことがあります。
また、障害を聞く段階では物理的な障害もさることながら、心に感じている壁のようなものも一緒に出てくることがあります。
この場合、菅沢と東堂との関係を菅沢自体がよりよい関係になりたいと思っているところでしょうか。
聞いていく中で、詳しく話をしてもらいたいときには、すべて復唱するのではなくても、語尾をもらって聞き返すと話が広がります。
「っていうと?」「というとどんな感じですか?」などです。
コーチングでOne on One(一対一の面談)を行う際のチェックポイント
□現状とのギャップを明確にし、できてないことを確認できているだろうか
□できていないことに対する課題もしくは障害としてすべて聞き出しているだろうか
□聞く段階でも大事な言葉を拾い、深掘りできているだろうか
□「気づき」を確認できたら、復唱し、相手の鏡になれているだろうか
□課題や障害について確認する場合、優先順位も相手に決めてもらっているだろうか
*この物語に登場する人物名、団体名、システム等はすべて架空のものです。