管理職の働き方改革の進め方

2019年4月から導入された働き方改革関連法により、各組織で整備や新しい働き方の導入が始まっていることでしょう。厚生労働省のホームページにおいても、導入するための手助けとなるリーフレットが順次アップデートされています。ですが、管理職、特に中間管理職は部下を休ませることを優先しがちで、自分の働き方改革を実行できていないという方も多いのではないのでしょうか。
筆者は、某大手外資系IT企業で管理職を勤めていました。成長率が加速している環境下で、様々な働き方改革を実施、改善活動として現場に導入、部門のパフォーマンスを落とすことなく、結果、組織の底上げに成功する機会に恵まれました。
今回の記事では、管理職の方が部下だけでなくご自身の働き方改革を実行できる方法をご紹介します。

物理的な働き方を変える

・代休取得を念頭にまめに行う

仕事に波がある場合は休日出勤や過度の残業も必要かもしれません。ですが、忙しいからとりあえず働くではなく、三か月以内に代休を取る算段をつけられないのなら、やるべきではありません。他の方法を考えましょう。
逆にこの時期は忙しいが三か月以内に帳尻を合わせられる閑散期があるなら、まず代休の予定を組んで仕事をするほうが精神的なストレスは緩和できるでしょう。夜遅くまで残らないといけない場合、フレックス勤務が導入されている会社は、翌日は昼から出勤にするなどで体を休める事も大事です。フレックス勤務が導入されていない場合でも、残業をつけずに、半休を取得し、半日出勤し、体をいたわるという方法も考えましょう。体力が落ちると集中力が落ち、ミスも増え、かえって効率は悪くなります。

・通勤時間を削減する

コロナの影響から、一般的になりつつある自宅勤務。メリットは移動時間を短縮できることです。特にDoor to Doorで通勤電車に一時間以上かかっている場合は、自宅勤務にすることで往復二時間を削減できます。職場への通勤は労働時間とほぼ変わりません。であれば、その分、家で仕事をして、体力を温存させましょう。

人と話をしながら仕事をしないといけない場合でも、パソコン一つあれば、ほとんどの事は解決します。
電話: 電話会議サービスは画面を共有することなく電話することが可能です。
チャット: 電話会議サービスにはチャットサービスも含まれています
資料のプレゼン: 電話会議サービスには資料をデジタルで共有する方法が機能としてついています。
もし共有したくない場合は、事前にメール添付で送っておくと便利です。

・出張を減らす

その場で何かを確認して話をしなくてはいけない出張もあるでしょう。ですが、事前準備や共有する資料、映像等がはっきりしていれば、必ずしも現地で打合せする必要はないかもしれません。その出張必要なのかどうか考え、現地に行く必要がなければ、テレビ会議や電話会議に変更してみましょう。

Delegationの仕方を変える

Delegationとは他の人(部下)に仕事を任せることをいいます。仕事を持ちすぎている可能性があると思う方は、一度、下記について仕事の棚卸をしてみましょう。観点は、ご自身の仕事で一番優先すべきかです。

自分の権限でしかできない仕事
部下にもできるが自分がやってしまった方が早い仕事
部下にもできるが、部下が手一杯なので自分でやっている仕事
部下の仕事をチェックする仕事

基本、1)と4)の一部だけを残すようにします。

2)については部下の成長を促せる仕事をあえて自分でやってしまっている場合があります。であれば、思い切って任せて、4)の部分だけをご自身で担当する方が、より部下が成長します。最初はチェックに時間がかかるかもしれません。ですが、心配だから任せられないと思っていればいるほど、自分の首を絞め、チームとして成長しません。

3)についてはまず、部下の仕事の見直しをしましょう。もし手いっぱいなのだとしたら、まず部下の仕事で止められるものや、もっと時間短縮できる方法がないかを部下と話し合います。成長したい部下なら仕事の効率化を図り、その分、より高度な仕事を任されて嫌がる人はいません。もしその仕事が次のステップにつながるものであればなおさらです。

部下の仕事の減らし方として、下記を部下から提案してもらい、時間を短縮します。部下からの提案を吟味し、導入できれば、実施方法も部下から提案してもらえ、それが部下の実績にもなります。
① やめてもいい仕事がないか
② 何かと一緒にできる仕事はないか
③ 品質を下げずに頻度を下げられないか
時間短縮するツールやソフトを開発できないか

4)については当然管理職がやるべき仕事です。ですが、早い段階から部下の仕事をチェックするのではなく、最終形のみをチェックできるようにしましょう。また、1)を参考にご自身の権限でなければ、動かせないところ以外は部下に決めて持ってきてもらうやり方を徹底しましょう。管理職が絶対に持っておかなければならない仕事はリソース(人員配置や資金)の采配以外は少ないはずです。

部署全体の仕事を削減し、より価値の高い仕事だけを残す

働き方改革の目指すものは厚生労働省によると下記となっています。

我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。
こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。(厚生労働省ホームページより)

意欲・能力を存分に発揮するための改革です。よりゆとりをもった働き方の環境整備ともとらえられますが、意欲を維持するためには、昨日よりも今日、三か月後、半年後、一年後と、仕事の価値が高まっていくことが意欲の維持につながります。また、革新的な企業で今一番取り組まれているのが、これからのことを考える時間を約20%持つことです。そのためにはまず部署の仕事を下記に従って分類します。
この部署ですることで価値をより高くできる仕事
この部署でなくても価値は変わらない仕事
もし2)が多いのであれば、アウトソースすることを考えてみましょう。その際、社員とご自身の20%の時間を自由に使える時間として確保することを目指します。もともと残業がある部署についてはまず残業ゼロにまで落とせることを目指します。そのあとで、例えば一か月の内、丸一日は通常の仕事以外のことを考える時間が取れるようにしていきます。社員一人一人が企業のこれからの発展を考えられるようになれば、その部署が生み出す価値は何倍にもなります。
自由に考える時間の使い方は管理職が率先して整備にあたりましょう。もちろん、部下からどんなことに時間を使えば、部署の価値が上がるかをテーマにブレインストーミングして、リスト化していくことも有効です。例を挙げると下記のような取り組みができるかもしれません。
オフサイトミーティングを開く
顧客のことを考えてより良いサービスを提案する時間にする
会社全体のコミュニケーションを考える日にする

まとめ

働き方改革とは、健全な仕事環境の整備と、個人の成長を促すことを企業が率先して実施していくことです。ですが、会社が改革してくれるのを待つより、まず現状把握し、仕事の棚卸を積極的に進め、会社側に提案していける人になる方が、より達成感が生まれます。ワークライフバランスの取れた、充実した日々を創出していきましょう。