日本のコンサルティング業界といえば、従来は経営コンサルタントを標榜する企業がほとんどでした。しかし、外資系コンサルティングファームが進出してきたことによって様相が変わりました。
現在のコンサルティングファームは、総合系を除いてテーマの領域ごとに専門化しているのが一般的です。その中でITと絡んで着実に伸びてきたのが、外資系ITコンサルティングファームです。しかし、その業務内容を具体的に知っている人は少ないのではないでしょうか。
今回の記事では外資系ITコンサルティングファームへの転職を検討しているみなさんに向けて、その業務内容や特徴、そして面接を突破するための秘訣について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
外資系ITコンサルティングファームとは
外資系コンサルティングファームの中で、圧倒的な存在感を持つ系統が2つあります。
ひとつはアクセンチュアやアビームコンサルティング、日本IBMなどのIT導入による業務改革を専門とする外資系ITコンサルティングファームです。
もうひとつはマッキンゼー・アンド・カンパニーやベイン・アンド・カンパニー、ボストンコンサルティンググループなどの戦略立案を専門とする外資系戦略コンサルティングファームとなります。
一般的にあまり理解されていないITコンサルティングファームの業務内容について、詳しく見ていきましょう。
ERP基幹システムの導入をサポート
まずITコンサルティングファームの主要業務としては、ERP(Enterprise Resource Planning)導入をサポートが筆頭に挙がります。
ERPは、日本語で言えば「統合基幹業務システム」です。ERPを分かりやすく説明しましょう。企業の中での業務は一般的に分業となっており、部門に分かれてそれぞれが業務管理を行います。企業規模が大きくなると、部門が違えば異なる管理システムを用いていることも珍しくありません。
しかし、部門ごとに管理システムが異なると、データの総合的な活用は困難になり、部門間の連携がスムーズにいかなくなります。ERPは同一企業内の業務システムを一つにまとめてデータを集約し活用する「一括管理」を行うことで、業務効率化を目指すシステムです。
ERPは業務分野ごとにパッケージとして個別に用意されており、なおかつ各パッケージを連携させて機動的に使用 できます。具体的には「予算」「製造」「納期」「在庫」「営業」「経理」「人事」などが、それぞれ別個で機能し、総合的にも活用できるのです。
例えば、営業実績のデータが単なる売上数字にとどまらず、製造コストや在庫状況、キャッシュフローや人件費などのさまざまな要素との関連の中で分析・掌握できるのです。
また、ERP導入に伴って業務体制の改善も行う必要があるので、業務フローもコンサルティングの対象となります。現在の日本の大企業はほとんどERPを導入しており、海外進出先での現地法人への導入もおおむね落ち着き、一巡しています。そういうクライアントにはERPの保守運用やシステムのアップグレードなどの業務に軸足が移行しています。
もちろん、今後も新たにEPRを導入する企業のサポートと、彼らの海外進出のサポート業務は継続されるでしょう。
システム開発全体を一気通貫で受注
また、ERPのように出来上がったものを導入する業務とは別に、企業の課題解決や業務効率化のためのオーダーメイドのシステムの開発を請け負うのもITコンサルティングファームの重要な業務です。
アクセンチュアなどの外資系ITコンサルティングファームは、とりわけシステム開発における上流・中流・下流と表現されるシステム開発の流れの全体を、一気通貫で取り組める強みがあります。
上流は企業の課題解決や業務改善にITを活用するプランを立てるシステムの根幹を決定する工程です。中流は、そのプランを実際に活用できるようにシステムとして設計する工程となります。下流が仕様書通りにプログラミングしてシステムを実装・完成させる工程で、運用後の保守を含む場合もあります。
一般的なITコンサルティングファームであれば、自社がプランニングしたシステムの開発の中流や下流工程を、それぞれを専門とする外部のIT企業にアウトソーシングして完成させます。そして、システム開発は上流から下流に向かって流れていくだけの作業になるものです。
しかしアクセンチュアなどは内部で一貫して行えるので、中流の設計段階、あるいは下流の実装段階やすでに運用後の段階でもプランニングを見直して修正・変更をかけ、品質の向上を図ることができます。この柔軟な対応によって、クライアントのニーズに最大限に合致するシステムを提供できるという強みがあるのです。
外資系ITコンサルティングファームの特徴
外資系ITコンサルティングファームの業務について紹介したところで、次は彼らの特徴について詳しく見ていきましょう。外資系ITコンサルティングファームの主な特徴は以下のとおりです。
- クライアントは大企業が多い
- 中途採用に積極的である
- スキルは現場で身につける
- ダイバーシティの壁がない
- Up or Outの文化が浸透している
- 技術革新の流れが早い
それぞれを詳しく見ていきましょう。
クライアントは大企業が多い
外資系ITコンサルティングファームのクライアントは大企業が中心です。そのため、プロジェクト規模が基本的に大きくて自ずと予算規模も大きく、数十億というプロジェクトもあります。
それぞれのプロジェクトの期間は比較的長く設定されます。システム開発なら1年は普通で、導入後もシステムの保守運用、システムのアップグレード、業務改革などで案件を継続するケースが多いです。
また、ひとつのプロジェクトに掛かる人数が多いことも特徴です。数十人体制になることが珍しくありません。このように、外資系コンサルティングファームに転職できれば、大企業を相手としたスケールが大きい案件にチャレンジできる可能性があります。
中途採用に積極的である
外資系ITコンサルティングファームの特徴として、採用に関しては新卒よりも中途採用に積極的です。その方が新人教育にコストや時間をかけずに、すでにある程度出来上がった人材を確保できて効率的だという、外資系らしい合理的な考え方に由来します。
また、企業のコンサルティングという業務の性質上、社会人になりたての人材よりもすでに何年か企業に勤めて、社会人経験を積んでそれなりに苦労もしてきた人材の方が即戦力として歓迎される傾向にあります。
他にも、さまざまな業界の経験者を内部に抱えることで、コンサルティングファームとしての守備範囲を広げられるという側面もあるでしょう。
スキルは現場で身につける
外資系企業は一部の日系企業にあるようなのんびりした雰囲気はなく、ビジネスに対してシビアであり、新人も入ってすぐに現場に駆り出されます。
多くの日系企業では新入の頃はミスがあっても仕方ないとされ、わからないことは先輩に聞けばどうにかなりますが、そういう甘さは期待しない方が良いでしょう。
とはいえ、実践の舞台に最初から立って主体的に仕事をさせてもらえるのは、いわゆるマニュアルに沿いながら仕事を覚えるよりもスキルが鍛えられる良い環境とも言えるかもしれません。
ダイバーシティの壁がない
日本でもようやく男女平等に働ける労働環境やダイバーシティへの理解が進んでいますが、いまだに旧弊が残る企業もたくさんあります。
外資系ITコンサルティングファームにおいては、本来性別や年齢、国籍などで人材を区別する傾向はあまり見られません。そういうことで仕事内容を手加減されるということもなく、誰に対しても同じようにシビアです。
男性同様の仕事が女性にも与えられるので、キャリア志向の女性にとっては仕事に集中できる良い環境であると考えられます。パフォーマンスの質が評価のほとんどである成果主義なので、仕事にダイバーシティの壁などありません。
Up or Outの文化が浸透している
外資系ITコンサルティングファームでは「Up or Out」の文化が浸透しています。端的に言えば「スキルアップしろ、さもなくば職場を去れ」という意味の、仕事に対する厳しい価値観です。個々のスタッフのパフォーマンスに対する評価についても、マネージャーが手間をかけて徹底して行うので可能な限り正当に評価されます。
ダメな場合は容赦なしに厳しく指摘され、良好な場合は充分に評価されます。日系ITコンサルティングファームの場合は、一般企業よりも成果主義的な面があることはいえ、そこまでは徹底していません。
しかしながら、「スキルアップしろ、さもなくば職場を去れ」という考え方は合理的な価値観とも言えます。なぜなら、ITコンサルティングの仕事はコンサルティングの質がすべてだからです。向いておらずスキルアップできなけければ、やり続けるのは本人にとってもマイナスです。むしろ一旦入ったらパフォーマンスが振るわなくても雇用が守られると考えるスタッフが多ければ、企業がそのものがダメになります。
逆にいうとスキルアップが当たり前であれば、仕事に対する向き合い方もより真摯になって成長できる環境といえるでしょう。
技術革新の流れが早い
外資系ITコンサルティングファームは、当然ながらITのトレンドの影響が色濃く反映される業態です。そしてそのITのトレンドは激しく変動しつつあります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展を見ればわかるように、社会のすみずみまでITが浸透していて、今後ますますその傾向は強まるでしょう。AIやクラウドがビジネスのスキームを変えつつあり、さまざまなジャンルのビジネスがITと連動して新しいサービスがどんどん生まれています。
外資系ITコンサルティングファームはそのようなITのトレンドに常にキャッチアップしながら、将来に向けてコンサルティングの新たなニーズを開拓していかなければなりません。
代表的な外資系ITコンサルティングファーム
ここまでは外資系ITコンサルティングファームの業務内容と特徴を見てきましたが、ここではそんな外資系ITコンサルティングファームとしての代表的な企業を2社紹介します。
「アクセンチュア株式会社」と「日本アイ・ビー・エム株式会社」です。
アクセンチュア株式会社
アクセンチュア株式会社はアイルランドが本拠地の、世界最大級ファームの日本法人です。アクセンチュアは、フォーチュン誌の世界中の企業の総収益ランキング「フォーチュン・グローバル500」にも選ばれています。
あらゆる業界の企業に対し、主にIT導入による業務改善やマーケティングなどのコンサルティングを展開しています。「デジタル」「テクノロジー」「ストラテジー」「オペレーションズ」「コンサルティング」の5つの領域で幅広いサポートサービスを提供しています。
そして自社でシステム開発を上流から下流まで担当できる技術部門を保有しているため、IBMに肉迫するハイレベルのシステム開発から保守運用までを含む、一貫した良質なITサービスの提供が可能となっています。
また、アクセンチュアは特徴として、社員研修に非常に力を入れています。海外研修で社員がスキルとともに国際感覚を身につけるサポートも惜しみません。
日本IBM:GBS(グローバル・ビジネス・サービス – ビジネスコンサルティング)
日本IBM:GBS(グローバル・ビジネス・サービス – ビジネスコンサルティング)はIBMグループの中の、世界規模のコンサルテイングファームの日本法人です。コンサルティングの豊富なアーカイブをベースに、IBM系列の世界中の企業と連携を取りながら企業のコンサルティングを展開しています。
日本IBM:GBSでは2大テーマ「クラウド・プラットフォーム」と「コグニティブ・ソリューション」を掲げています。「クラウド・プラットフォーム」はオンプレミス型からその座を奪って主流になってきたクラウドサービス導入を軸に、クライアント企業の生産性と経営効率を改善するコンサルティングです。「コグニティブ・ソリューション」は膨大な情報群を解析して、マンパワーでは把握できない関係性を導き出すコグニティブ・コンピューティングを活用したコンサルティングとなります。
このような2種類の最先端技術を活用した、質が高いソリューションを手掛けるファームです。
外資系ITコンサルティングファームの転職面接を突破するための3つの秘訣
外資系の代表的なITコンサルティングファームを紹介したところで、ここからはそういった外資系ITコンサルティングファームの選考にて、面接を突破するための3つの秘訣を紹介します。
トップ2ファームの採用傾向を知っておこう
まず、本題に入る前に先に紹介したトップ2ファームの採用傾向を、参考情報として見ていきましょう。
アクセンチュアの場合
アクセンチュアは職種別の採用方式を取っています。「ソリューション・エンジニア」「デジタルコンサルタント」「戦略コンサルタント」「ビジネスコンサルタント」の4職種に分けて選考が行われます。選考プロセスは各職種で異なり、例えばビジネスコンサルタントは、おおむね以下のようなフローです。
【エントリーシート】
↓
【Webテスト】
↓
【グループディスカッション】
↓
【1次面接】
↓
【2次面接】
アクセンチュアではグループディスカッションやケース面接が組み込まれているため、ケース対策が重要となります。面接では志望動機はもちろん、なぜ他ではなくアクセンチュアを選んだのかを問われるので、しっかり準備をして面接に臨みましょう。
また、答える内容だけではなく、結論から話すことや論理的に筋道立てて話すなどロジカルな答え方ができているかどうかも注目されます。これに関しては後ほど解説するPREP法で訓練をして対応しましょう。
日本IBM:GBSの場合
日本IBM:GBSもアクセンチュア同様に職種別採用の方式を取っています。「SE」「営業職」「コンサルタント職」などの職種別での選考です。
選考プロセスは、例えばコンサルタントの場合はおおむね以下のとおりです。
【エントリーシート】
↓
【Webテスト】
↓
【1次面接(集団面接)】
↓
【グループディスカッション】
↓
【筆記試験】
↓
【2次面接(個別面接)】
2次面接では「IBMが持つこのようなテクノロジーを使って、あなたならどのようなサービスを展開しますか」などの、クイックのケース問題も出される可能性があるので、どんな状況からでもケースに応えられるように対策を万全に行いましょう。
すべての質問にPREP法で答える
まず受け答えの大前提として、ロジカルに話を進めることは鉄則と言って過言ではないでしょう。
そもそも外資系企業自体が論理性や合理性を重んじます。その上、コンサルティング業界自体が論理性を極めて重視する業界です。さらには、IT系関連なので、最上級にロジカルであることが求められます。
そのため、面接での受け答えは徹底して「PREP法」で答える訓練をしておきましょう。PREP法とは、論説文やビジネス文書、プレゼンテーションなど、論理的で説得力のある文章を作るフレームワークです。PREPとは以下の4フェーズの頭文字です。
P:Point=結論
R:Reason=理由
E:Example=具体例
P:Point=結論
例として、「入社したらどのような案件を担当したいですか」という質問に対する回答をPREP法で答えた場合こうなります。
「私は特に医療機関のコンサルティングを担当してみたいです」(結論)
「なぜなら、医療機関は疾病の治療や予防に真摯に向き合ってきたので、経営の効率面などでは一般的な企業に比べて遅れているからです」(理由)
「しかし病院経営が効率化することによって、救われる生命も増えると確信しています」(具体例)
「医療を提供する側も受ける側にもベネフィットがあるような、医療機関のコンサルティングに挑戦してみたいと考えています」(再度結論)
回答の先にある質問まで想定しておく
質問に対して論理的に答えて説得力があったとしても、選考担当者はさらに深掘りしてくることが多いのを知っておきましょう。
先の例で言えば「なぜ病院経営が効率化すれば、救える命が増えると考えられるのでしょうか?」という問いにも淀みなく答えられなければなりません。面接を想定した回答をいろいろ準備する際には、必ずその回答の先に出てくるであろう質問も想定して、その答えまで用意するように心掛けましょう。
ケース面接は躊躇なく視覚的に説明する
ケース面接は外資系コンサルティングファーム特有の面接方法で、IT系でもほぼ必ず行われるでしょう。タイプが2つがあって、「フェルミ推定」と「ケース問題」です。
フェルミ推定は「日本にあるシネマコンプレックスの数は?」 などを、資料を何も使わないで論理に基づいて推定する問題です。ケース問題はフェルミ推定の応用編で、「日本にあるシネマコンプレックスの売上を30%アップさせる戦略を考えてください」 などの問題です。
1次面接で比較的解きやすい方のフェルミ推定、2次面接で難しい方のケース問題に移る場合が多いです。ケース面接では言葉だけでなく、図や文字、フローチャートなどを用いて視覚的に説明することをおすすめします。ホワイトボードやメモ用紙を使って、図解で話を進めましょう。ホワイトボードを使うなどは気後れするかも知れませんが、とまどうことなく大胆に使って視覚に訴え、説得力のある回答を心掛けましょう。
ケース面接の対策として、問題集などで解き方の要点を学びながら訓練するのがおすすめです。ケース面接対策は、以下の記事で詳しく取り上げているので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
外資系ITコンサルティングファームへの業務内容や特徴、面接を突破の秘訣について詳しく解説しました。代表的な業務はERP基幹システムの導入やオーダーメイドのシステム導入による経営課題の解決や業務効率の改善です。
外資系ITコンサルティングファームを目指すみなさんは、とにかく論理性が求められる業界なので、PREP法をマスターし、ケース面接対策でしっかりと訓練して、採用を勝ち取ってください。