コンサルティング業界に資格は必要か?分野別の有利な資格も紹介

転職先として人気がある「コンサルティング業界」への転職を検討しているみなさんの中には、「何か資格が必要か?」「持っていると有利な資格は何か?」などの疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
この記事では、コンサルティング業界においての資格の位置づけや、分野によっては有利になるかもしれない資格について解説していきましょう。

コンサルティングに資格は必要か?

まず結論からいえば、コンサルティングファームに転職するために、資格は絶対条件ではないのです。応募の要件の中で何らかの有資格者であることなどは、極めてピンポイントの求人を除けば、あまり見られません。

資格はマストではないが、有利な場合も

とはいえ、資格がまったく無意味というわけではありません。資格を持っているということは、少なくともその分野の基礎知識を身につけ、資格試験をクリアしたことは間違いないので、信頼性はプラスされます。
そのため、コンサルティング全般で選考に有利に働くと思われる資格や、コンサルティングの対象分野によって有利に働く可能性がある特定の資格が存在するのです。

ポテンシャル採用の後押し材料

現状のコンサルティングファームの転職市場では、基本的にコンサルタント採用において多くの場合に「ポテンシャル採用」を行っているようです。
というのも、コンサルティングは企業の経営課題を解決することが仕事とはいえ、経営の経験を積んだ転職志望者などまれでしょう。よって、コンサルタントの採用にはポテンシャルが重視される傾向にあると考えられます。
その中でも資格取得者は、自身のリソースを割いて資格を取った行動によって、多少なりともポテンシャルの裏付けとして後押しの材料になると考えてよいでしょう。
資格を取るまでのプロセスで得たことが、具体的に活かされた事例などを選考担当者にアピールできれば、なお有利になるのではないでしょうか。
ここからはコンサルティングファームの系統別で、選考に有利とされる資格やスキルについて解説していきます。

戦略系コンサルティングで有利な資格

戦略系コンサルティングファームへの転職の選考では、MBAとIT関連資格が有利とされています。それぞれについて、詳しく解説しましょう。

MBA(経営学修士)

MBAはコンサルタント関連資格の代表的なものですが、特に戦略系コンサルティングの選考に関して有利に働くことがあると考えられます。
厳密には「資格」ではなく「学位」であって、経営に関係するテーマを実務家として幅広く、体系的かつ科学的に学びます。
MBAを取得するためには、2年間のビジネススクール(英米の経営大学院と日本における大学院修士課程または専門職学位課程)の受講が必要です。
なお、MBAを海外のビジネススクールで取得するのであれば、経営にかかわるスキルはもとより、ビジネス英語を実践の中で学ぶ機会にもなります。

MBA取得は最終学歴として履歴書に追加される

MBAを取得したビジネススクールは最終学歴となるので、履歴書には出身大学に加えてさらに高位の学歴を記載できることになります。
日本でも取得できますが、転職においては世界的に認知されたビジネススクールでMBAを取得したほうが、より高い評価を受けるでしょう。
これは、MBA取得を通して、経営戦略や会計、財務はもとより、マーケティングや組織論などの多岐にわたる基礎知識が磨かれるので、コンサルタントとしての土台となる基礎力を持っていると認識されるからです。
実際に中途入社にて好条件でコンサルティングファームに転職する人には、MBA取得者が多く見られます。

IT関連資格

現在の戦略系コンサルティングでは、ITコンサルティングの要素を切り離して考えることができないほど、デジタルコンサルティングの流れが顕著です。そのため戦略系ファームのコンサルタントは、ITスキルが欠かせない要素になってきています。
そのような背景の中、IT関連資格である「ITサービスマネージャ試験」や「ITストラテジスト試験」、「プロジェクトマネージャ試験」などの、高度情報処理技術者資格を持っていると、戦略系ファームの選考で有利に働く可能性があります。
それぞれの資格を、簡単に紹介しておきましょう。

ITサービスマネージャ試験

これはクライアントのニーズを踏まえ、システムの継続的改善を通して安全で信頼できるITサービスを提供し、IT投資の効果を最大化できるITサービスマネージャを目指す人材のための資格といえるでしょう。
高度なIT人材として専門分野を理解し、求められるサービスのリクエストを満たし、サービスの計画立案から設計、リリース、改善に至るまでの組織活動やリソースをマネジメントするスキルを見極める試験です。

ITストラテジスト試験

これは経営戦略をベースにIT戦略を策定し、高度にITを活用した業務改革や事業革新を進め、プライオリティを持つ製品やサービスを企画してビジネスの方向づけができるITコンサルタントやCTO、CIOを目指す人材のための資格となります。
ビジネスモデルや企業活動のプロセスについて、ITを活用して事業を高度化、最適化するための戦略を策定できて、組込みシステムやIoTを利用したシステム開発をマネジメントし、新しい価値を生む戦略を策定できるスキルを測る試験です。

プロジェクトマネージャ試験

これはプロジェクト全体の責任を持って意思決定を実行し、クオリティ・コスト・納期の制約の中で確実に成功に導き、プロジェクトに参加するメンバーを成長させるマネージャを目指す人材のための資格す。
システム開発プロジェクトの成功に向けて、プロジェクト計画およびプロジェクトマネジメント計画を作成し、必要なリソースを確保し、クオリティ・コスト・納期の計画に沿ってプロジェクトをマネジメントするスキルを見極める試験です。

実務経験があればなおよい

要件定義やプログラミングなど、何らかのIT関連の実務経験があれば、課題をデジタルな戦略に落とし込む手法に関して、経験者の方が未経験者よりもイメージがしやすいのは間違いありません。
もとよりITは、実務経験が重視される分野です。資格取得だけでなく、応募企業の分野に親和性がある領域の実務経験を積んでおくと、さらに評価が得られるでしょう。

経営コンサルティングで有利な士業資格

経営コンサルティングの選考で有利になる資格は、いわゆる「士業系」の資格といえるでしょう。とりわけ「公認会計士」「税理士」「中小企業診断士」の資格は、人材価値を高める可能性があります。
それぞれの特徴について、少し触れておきましょう。

公認会計士

公認会計士は会計のスペシャリストで、その国の制度によって業務の範囲と比重は変わります。共通しているのは財務諸表監査、つまり会計監査を独占業務とすることです。ほかには経理業務や税務業務、コンサルティング業務も行います。
公認会計士の資格があれば、本来の活躍の舞台である事業会社の経理財務や監査法人などがある一方で、経営コンサルティングファームでコンサルタントとして活躍するキャリアパスが開かれているでしょう。

税理士

税理士は税務のスペシャリストとして、独立した公正な立場で申告納税制度の理念に沿った納税義務の適正な実現を図る役割を担います。
納税義務者の信頼に応えて、業務としてクライアンの各種税金の申告や税務書類の作成、税務の相談や税に関する不服審査手続きなどを行う仕事です。
税理士も公認会計士同様に、コンサルタントとして経営コンサルティングファームで活躍する舞台があるでしょう。

中小企業診断士

日本の企業の大半を占める中小企業経営者が、経営の適切な診断や助言を受けるに当たって、一定水準以上のレベルのスキルを持った人材を登録するための制度が中小企業診断士制度です。
そして中小企業診断士は、中小企業の経営課題を支援するための診断や助言を行うスペシャリストであり、法律で認められた国家資格になります。
中小企業基本法において、中小企業経営者が経営リソースを確保するために、公的支援事業に限らず民間で活躍する経営コンサルタントとして位置づけられているのです。

外資系コンサルティングで有利な英語系資格

外資系コンサルティングファームでは、やはり英語スキルを持つ人材が有利になります。よって、TOEICやTOEFLなどで高いスコアを持っていることは、選考に有利になるでしょう。
TOEICやTOEFLの特徴を紹介しておきます。

TOEIC

英語によるコミュニケーション能力を評価する目的の世界共通テストで、以下の5種類が実施されています。

  • Listening & Reading Test (TOEIC L&R)
  • Speaking & Writing Tests (TOEIC S&W)
  • Speaking Test
  • Bridge Listening & Reading Tests:初中級向け
  • Bridge Speaking & Writing Tests:初中級向け

日本では、TOEICプログラム全体で2018年度に約266万人が受験しています。
もっともポピュラーなListening & Reading Test に関して、日本では年10回の公開テストが実施されており、フルスコアは990です。目標としては、ビジネスレベルといわれる800〜850以上を目指すのがよいでしょう。

TOEFL

英語圏の大学への留学を希望する人を対象とした、英語能力を測定するテストです。英語による高等教育に敵う能力かどうかを判定するのが目的で、結果が120点満点のスコアで判定される、TOEIC同様の実力測定試験となります。
目標としては、80点以上が日本人の目指すひとつの基準です。なぜなら80点前後で一部の難関大学を除いて、ほぼすべての英語圏の大学における語学入学基準を満たすからです。

外資系ファームでの英語の必要性

外資系ファームでは、社内的にも上司や同僚が英語話者であることが普通にあり、日常のやり取りやミーティングが英語で行われる事も多く、また海外本社との連絡においても当然英語で行われます。
また、プロジェクトの中でも、英語を使う機会が頻繁にあるでしょう。語学のスキルアップには時間を要することも確かなので、早いうちから地道に学んでいくことが望ましいです。
ポイントは読み書きというよりも、英語によるコミュニケーション能力が要求されると考えておいたほうがよいでしょう。読み書きは、多くの人が何とかなるものです。しかし会話は、地道にスキルを磨かないとなかなか難しいといえます。
英会話のオンラインスクールなどを利用して、ビジネスレベルのやり取りができるレベルを目指して学ぶのもよいでしょう。
また、コンサルティング業界でよく用いられる専門用語やイディオムなどを、充分におさらいしておくのが賢明です。

コンサルで資格以外に求められるもの

資格以外でコンサルティングファームの転職に求められるものとしては、論理的思考とコミュニケーションスキルが特に重要でしょう。
論理的思考は、コンサルタントにとって生命線といえるくらい重要です。クライアント企業の課題を深く理解して分析し、解決するためには必要不可欠なスキルといっても過言ではありません。
選考の面接においても、担当者はもれなくこの部分を見極めようとします。また、コンサルティングファーム独特の面接試験であるケース面接では、持っている知識以上に論理的に思考できる人かどうかが見られるのです。

まとめ

コンサルティングファームへの転職に関する資格の持つ意味合いと、分野ごとの有利となる資格を紹介しました。
基本的にポテンシャル採用が多いコンサルティングファームですが、資格は絶対条件ではなくとも、ポテンシャルの裏付けとして後押しをするだけの効果はあるでしょう。
資格によっては転職活動中に取得まで至らない場合もあるでしょうが、取得のための勉強をしていることなども選考においてアピールする要素となり得ます。
転職後に取得して、業務に活かすつもりで取り組むという考え方も含めて、一度検討しましょう。

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