転職活動が順調に進んで人事や現場の責任者による一次面接、二次面接を通過すると最終面接にたどりつきます。この場合は役員や経営トップが面接官となって最終判断を下す段階です。
最終面接での詰めが甘いと、そこまでたどりつくために払った努力が報われなくなるリスクがあります。今回の記事では、最終面接を突破するためのマニュアルをお届けしましょう。
目次
最終面接とは?
まず最終面接とは何か、その意味合いと一次面接や二次面接などと何が違うのかについて触れておきましょう。
最終面接に進めばほぼ合格レベルに近づいている
一般的に一次面接や二次面接は、人事の採用担当者や現場の課長クラスが面接官となるケースが多いです。場合によっては最終面接までに、三次以降もあるかもしれません。
ともあれ、それらを通過して最終面接に呼ばれれば、社員レベルでは内定ラインが出ていると考えられます。つまり、ほぼ合格のレベルに近づいているのは間違いありません。最終決定に必要なのは部長や役員、社長などの経営幹部からのOKがもらえるかどうかです。
最終面接の通過率はどのくらいか?
最終面接は顔合わせといわれることもありますが、必ず内定が出るわけではありません。企業によっても異なり一概に言えませんが、最終面接まで残った場合に内定が獲得できる率は30〜50%といったところでしょう。つまり、2〜3人から1人に絞られるくらいの感覚です。
最終面接で面接官が見極めたい3つのこと
最終面接に至るまでに、人事部や現場の視点から業務に関する知識やスキル、ビジネスパーソンとしての品格や立ち振る舞いは内定ラインに達しているでしょう。最終面接で経営幹部である面接官が見極めたいのは、主に以下の3つです。
- 確固たる自分のビジョンを持っているか
- 入社意欲は本物か
- 価値観や相性が合うか
それぞれを見ていきましょう。
確固たる自分のビジョンを持っているか
最終面接を担当する経営幹部や社長は、企業の永続性を最優先に考えています。つまり短期的な業績向上や目の前の打ち出しだけではなく、長期的に企業に貢献できる人材を求めているのです。あなたという候補者がそういった人材かどうかを見極めるために、確固たるビジョンを持っているかに注目されます。
そのため、5年後や10年後にどのような仕事をしていたいか、何を実現したいか、どんな人材になっていたいのかなどを尋ねられることが多いです。ここで具体的な将来像を語れなければ、評価が確実に下がります。あらかじめ入社5年後や10年後を想定したキャリアビジョンを、しっかりと描いておきましょう。
入社意欲は本物か
最終面接における面接官である経営幹部は、それまでの面接官と違って自社を鳥瞰したうえで候補者が本当に必要な人材かどうかを見定めようとします。その一環として候補者の言動から、本当に自社で働きたいのかという点も見極めようとするでしょう。能力だけでなく、本気の入社意欲も企業にとっては人材価値になります。
本気ではないと思われれば確実に落ちるのは間違いありません。最終面接に残った候補者の中で、あなたが一番本気で入りたいと願っていることを証明するつもりで準備をして最終面接に臨んで下さい。
価値観や相性が合うか
企業にはそれぞれ社風や企業風土、企業文化があります。いくらビジネスの能力に長けていてもそういう部分の価値観や相性が合わなければ、チームとしての総合力の足を引っ張るおそれがあるのです。
そのため、経営幹部は自社の企業風土と候補者の価値観や相性が合うかを見極めようとします。それをクリアするためには徹底した企業研究によって、その企業を深く理解しましょう。
最終面接の頻出質問と回答例・NG例
最終面接における頻出の質問と、それに対する答え方のポイントおよびOK回答例、併せてNG例も紹介します。
他社ではなく当社を選んだのはなぜでしょうか?
最終面接の面接官である経営幹部や代表は、自社に対する誇りと愛着においてそれまでの面接官と一線を画しています。同業他社ではなくなぜ自社を選んだのかを問いかけることで、どの程度深く業界や企業を研究し理解しているかを見て、入社意欲の高さを判断します。
そのため業界知識や動向を、応募先企業のことはもちろん、他社の状況を含めて把握しておく必要があります。また、安易に他社を批判する回答は、よそでは自社についても同様に批判をする人材だと思われるリスクがあるので避けるのが賢明です。そうではなく、応募企業が他社より優れている点を客観的に挙げたうえで、回答するようにしましょう。
OK回答例)
「経済のグローバル化やマーケットの成熟から、多角化や海外市場への進出が増えているこの業界の中で、御社はあくまでも本業を貫き国内市場で展開する姿勢を崩しておられません。従来の顧客層を大切にしながら国内の若い世代にも視線を向けて、あらたな顧客創造に注力している経営の方向性に、私は大きな魅力を感じています」
NG回答例A)
「他社のことはよく分かりませんが、御社の方向性が素晴らしいと感じています」
NG理由)
業界研究が足りないと判断される
NG回答例B)
「他社の多角化は間違いだと思います。御社のこだわった経営が正解だと思っています」
NG理由)
発言の底が浅いうえに、他社を安易に否定しているので印象が悪い
NG回答例C)
「御社の業績が近年右肩上がりだからです」
NG理由)
右肩下がりになったら転職するのだなと思われる
仕事のやりがいを感じる瞬間とはいつですか?
仕事のやりがいを問いかけることで、経営陣は候補者の仕事への向き合い方や価値観を理解します。やりがいと合わせて具体的な経験も語ることで、説得力がある好印象な回答になるでしょう。
やりがいを明確に語れる人材は、客観的な自己分析ができているブレない人材だと評価されることが多いです。正解はないとはいえ、ぼんやりした回答では仕事への熱意が低い人だと判断されるおそれがあります。
OK回答例)
「個人目標を達成したときもやりがいを感じますが、以前クライアントからしみじみと『あなたが担当でよかった』と言われたときは、それ以上に大きなやりがいを感じました」
NG回答例A)
「やりがいがあるとかないとかではなく、仕事は一生懸命やるのが当たり前だと考えています!」
NG理由)
良いことを言っているようだが、質問を否定する回答は基本的に好感を持たれない
NG回答例B)
「仕事が順調に進んでいるときです」
NG理由)
抽象的であり、また順調でないとやる気を無くすのかと思われる
当社をどのように成長させればよいと考えますか?
企業研究やそれまでの面接で伺った話を踏まえて、企業としての将来像を語るようにしましょう。この質問は、目の前の仕事という短期的なものだけではなく企業の将来という長期的で大きな視点から仕事をとらえられる人材かどうかを見極める意図があります。応募企業の方向性を的確に理解したうえで、時代の流れと事業展開の関係性から前向きにやりたいこととできることを回答しましょう。
OK回答例A)
「食品流通業界は、今後一層の商品の差別化はもちろん安全性の向上が求められると考えます。そこでセルフレジやロボットの導入を実現するとともに、食品のトレーサビリティを徹底して高めることで顧客に安心と経済性を提供します」OK回答例B)
「高齢者や子育て中の在宅ワーカーのニーズを満たす小口の宅配サービスの充実で、地域に寄り添うサービスを提供したいと考えます」
NG回答例A)
「成長分野なので、今後のさらなる発展に貢献していきます」
NG理由)
漠然としており長期的どころか、短期的にもきちんと仕事に向き合えないように思われる
NG回答例B)
「DXを推進することで実績の拡大を図ります」
NG理由)
上辺だけの回答なので、本気度に欠けると判断される
5年先のあなたはどうなっていたいですか?
まず求人内容を正確に理解し、なおかつ前回までの面接での面接官とのやりとりから、その企業が5年後に求めている人物像をあらかじめ想定しておきましょう。それを踏まえて、あなたのスキルや専門性に紐付けた回答を準備してください。5年後に自分として実現したい仕事、実現すべき仕事などを想定しておきましょう。具体的な役職について言及するのは、企業がそれを想定していない場合にミスマッチと捉えられるリスクがあるので控えるのが賢明です。
OK回答例)
「財務担当者としての経験を生かして、会計業務全般に取り組んだうえで、5年後は自社の収益構造の深い理解を活かして資金調達などの面でも貢献できれば嬉しいです」
NG回答例A)
「5年後は今回応募する経理職ではなく採用部門で仕事がしたいです」
NG理由)
求人内容と異なる仕事を臨んでいるので採用は難しいと判断される
NG回答例B)
「次長や部長のポジションで仕事をしたいです」
NG理由)
役職を将来像とはき違えている
NG回答例C)
「実際に働いてみないと想像がつきません」
NG理由)
自分のビジョンを持っていない
あなたのほうから伝えたいことはありますか?
これを問われた際に、すでに発言した自己PRと重複した内容を語ると、せっかくのアピールも印象がダウンするので要注意です。爽やかにインパクトを与えるために、それまでの面接に対し感謝の気持ちを伝えて、決意を簡潔に伝えましょう。併せて、面接を通じて一層入社への気持ちが強まったと伝えるのも好印象です。
OK回答例)
「一次面接に始まり本日の最終面接まで、本当に有難うございました。仕事の内容を直接お伺いし、私自身必ず戦力として貢献できると確信しています。この度の面接を通じて、より一層御社で活躍したい気持ちが強くなりました。どうぞよろしくお願いいたします」
NG回答例A)
「一生懸命に頑張ります」
NG理由)
入社意欲をワンセンテンスでは伝えられない
NG回答例B)
「特にありません」
NG理由)
淡白で意欲が感じられない
NG回答例C)
「御社の今後の事業における軸は何でしょうか」
NG理由)
企業研究ができていないうえに逆質問とはき違えている
最終面接で落ちるケースとは?
最終面接まで残ったのに落ちるケースには、いくつかのパターンがあります。典型的なものは以下の3つです。
- 面接官と噛み合わない
- 面接官に意欲が伝わらない
- 発言内容の視野が狭い
個別に見ていきましょう。
面接官と噛み合わない
最終面接では、経営陣との相性を重視するケースが少なくありません。短時間で判断するために、端的に話が噛み合うかどうかを見られるでしょう。質問内容も、業務や業界ではなく人生観や労働観などが多くなるので、全神経を集中して質問の意図を汲み取って答えてください。
面接官に意欲が伝わらない
内面では意欲があったとしても、それが客観的に伝わらなければなりません。発言内容はもちろんですが表情や目の輝きなどにも神経を行き届かせるようにしましょう。
発言内容の視野が狭い
いくら覇気がある発言であっても、その内容が視野の狭いものや浅薄なものであれば評価は下がります。もちろん緊張もあり想定外の質問なら、咄嗟に考えがまとまらないこともあるでしょう。それを見越して、第三者に協力してもらって最終面接を想定したさまざまなランダム質問に答える訓練を積んでおくことが賢明です。
最終面接での注意点
最終面接においての注意点として、主に以下の3つに留意しましょう。
- 特定の業務やポストへのこだわりは諸刃の刃
- 上辺だけの発言は見透かされるので避ける
- 逆質問の機会があれば最大限に利用する
それぞれの注意点を見ていきましょう。
特定の業務やポストへのこだわりは諸刃の刃
たとえ意欲的な発言であっても、具体的な仕事やポストにこだわるのはリスクがあります。昨今では企業の展開する事業も変化のスピードが速いので、変化に柔軟な対応ができなければ、企業体そのものが存続できなくなるでしょう。
経営陣としては、新たに迎え入れる社員に想定されるさまざまな変化への対応を求めています。それなのに、特定の業務やポストにこだわる発言をすると以下のように思われても仕方ありません。
「まったく異なる事業領域を任せることになったら対応できないのでは?」
「大きな変化が起こった際にモチベーションが下がるのでは?」
「そもそもいずれ管理職になって部下を率いることができるだろうか?」
このように、特定の業務やポストにこだわるのは、意欲を示すことができる反面、柔軟性や変化に対する脆弱さを懸念される要素があります。慎重に言葉を選ばなければ諸刃の刃となって評価を下げてしまいかねないので気をつけましょう。
上辺だけの発言は見透かされるので避ける
人と人とのコミュニケーションにおいて、もっとも大切なことは誠実さです。誠実の反対である不誠実との違いは、ひと言でいえば発言に対して責任を持っているか、それとも上辺だけの体裁をつくろっているだけかということです。
話すことが上手なひとは、その能力を活かして一次および二次面接を乗り切ることができることもあるでしょう。しかし、内容が伴っていなければ、業の舵取りをする人たちには通用しません。
最終面接の担当は役員クラスなので、人を見る目がそれまでの一次面接や二次面接の担当面接官より鋭いです。下手に飾っても見透かされるので、逆効果となるでしょう。必要以上に自分をよく見せようとはせずに、正直に応対してください。
逆質問の機会があれば最大限に利用する
最終面接で面接官を迷わせた場合には、落とされやすい傾向は否めません。しかしこれは逆に考えれば、面接官を迷わせなければ内定が確実になることを意味します。そもそも面接官が迷う根本的な理由は、突き詰めると本気でその企業で働きたい意志があるのか、確信を持てないからです。
最終面接では多くの場合に、逆質問の機会があります。それまでの回答でも確信を与えるように発言するのはもちろんとして、逆質問の機会を与えられたらそれを最大限に利用しましょう。それにはあなたが就職する前提での、真摯な質問をぶつけることです。たとえば以下のような質問です。
「3日前の御社のプレスリリースに、今後〇〇〇〇方面の事業に注力していく旨が発表されていましたが、私はその方面にも強い興味を持っています。その部門に従事するための資格や要件があれば、ぜひ教えて頂けないでしょうか」
これはあくまで一例ですが、このようによく調べていることや働くことを前提とした具体的な熱い内容の質問で本気度のダメ押しをしましょう。
また、逆質問を用意していっても極度の緊張で忘れるケースもあります。その場合にしどろもどろになっては印象が下がるでしょう。また、頭が真っ白になって「特にありません」などのNG発言に走ることも避けなければなりません。万が一のそういった場合を想定した対応として、以下のような発言を暗記しておきましょう。これなら印象を下げる心配はありません。
「これまで面接でお伺いした懇切丁寧なお話にて、御社に関して知りたかったことを充分に知ることができたので、今特に質問はございません。御社で働かせて頂きたい気持ちはより一層強くなりましたので、なにとぞよろしくお願い申し上げます」
まとめ
面接の段階が進んで最終面接におよぶと、3〜5割の確率で内定が獲得できます。それを10割に高めるためには、経営陣である面接官が見極めたい「確固たる自分のビジョン」や「入社意欲」「価値観や相性」において確信を与える発言をすることです。
転職活動に励むみなさんは、それらを意識して頻出質問への回答を準備しておきましょう。併せて第三者によるランダムな質問攻めも訓練し、想定外の質問への対応も訓練しておきたいものです。ぜひここで紹介した情報を参考に、最終面接の入念な準備に余裕を持って取り組んでください。