製薬・医療機器メーカーの医療機器安全管理責任者とは?その役割や業務内容

製薬・医療機器メーカーの医療機器安全管理責任者は、医薬品や医療機器を扱う企業に設置することが医療法で定められている、医療機器の安全を担保するための責任者です。今回の記事では製薬・医療機器メーカーの医療機器安全管理責任者が求められる理由や、業務内容、転職するために必須の知識などをご紹介します。

医療機器安全管理責任者とは

製薬・医療機器メーカーの医療機器安全管理責任者とは、厚生労働省のGVP省令によって、医療機器等の第一種、第二種および第三種製造販売業者に設置が義務付けられている安全確保業務の責任者を指します。

医療機器安全管理責任者のミッション

製薬・医療機器メーカーの中で、第一種製造販売業者(高度管理医療機器:クラス3〜4)は、GVP(Good Vigilance Practice:製造販売後安全管理基準)省令によって安全管理統括部門の設置を義務づけられています
その安全管理統括部門は、医薬品等の販売部門や、安全確保業務の適正で円滑な遂行に支障を及ぼす可能性のある部門から独立した部門でなければなりません。
また、安全管理統括部門は総括製造販売責任者の監督下にあって、安全確保業務を適正で円滑に遂行できる能力を持った、充分な人員で構成されなければならないのです。
そして安全管理統括部門の責任者が、医療機器安全管理責任者です。安全確保業務やそれに類する業務に3年以上従事したことが任命条件で、そのミッションは安全確保業務を適正かつ円滑に遂行することに尽きます。
第二種製造販売業者(管理医療機器:クラス2および体外診断用医薬品)と第三種製造販売業者(一般医療機器:クラス1)に関しても、安全管理統括部門の設置を義務づけられていますが、条件は少し緩和されており、安全管理統括部門を置く必要はありません。
ただし、第一種製造販売業者と同様に、医療機器安全管理責任者および補助メンバーがいる場合は、その人員も含めて医薬品等の販売部門や、安全確保業務の適正で円滑な遂行に支障を及ぼす可能性のある部門から独立しているというのがルールです。

医療機器安全管理責任者が求められる理由

今日の医療機器は高度に発達しており、機器自体の動作不良や故障などの状態に陥ることは非常に稀です。何らかのアクシデントが発生する場合は、操作ミスや誤った接続方法、調整不良のようなヒューマンエラーが原因となるケースがほとんどとなります。
そのため、医療機器そのものの安全性も重要ではありますが、それ以上に人による医療機器の運用や保守管理、あるいは機器に関する情報収集が、医療の安全性に直結するような時代となっているのです。
操作手順の習得や専門知識が必要な医療機器が増えており、適切に保守管理を実行できるスペシャリストのニーズは増しています。医療系への転職を考えている場合、そのポジションを目指して準備することは転職の選択肢を増やすでしょう。

医療機器安全管理責任者の活躍の舞台

上記のような事情から、医療機器の安全な運用に長けている医療機器安全管理責任者の活躍の舞台として、以下のような選択肢があります。

  • 製薬・医療機器メーカー(GVP省令にて医療機器安全管理責任者の設置義務がある)
  • 医療機関 (改正医療法にて医療機器安全管理責任者の設置義務がある)

医薬品や医療機器等を供給する側と、その供給を受けて実際に医療に置いて活用する現場の、双方に需要があるわけです。

製薬・医療機器メーカーの安全管理責任者の業務内容

製薬・医療機器メーカーの安全管理責任者の業務内容は、ひとことでいえば製造される医療機器等が、製造販売後安全管理基準に適合するための責任を追う仕事です。
具体的には、安全確保業務が適正かつ円滑に行われているかを常にチェックして記録を作成し、保存することです。
また、安全確保業務について必要性を感じた場合には、文書によって総括製造販売責任者に対して意見を述べ、その記録も残します。
製薬・医療機器メーカーは、それらの記録を検討し、必要とされる場合は製品の廃棄や回収、情報の訂正などを行わなければなりません。

製薬・医療機器メーカー安全管理責任者に必須の知識

製薬・医療機器メーカーに医療機器安全管理責任者を目指して転職する場合には、以下の2項目の知識と理解が求められます。

  • 安全管理基準GVP省令
  • 品質管理基準QMS省令

それぞれを見ていきましょう。

安全管理基準GVP省令

GVP(製造販売後安全管理基準)省令とは、医薬品・医療機器等の製造および販売後の安全管理、つまり品質や有効性、安全性に関する事項や、そのほかの適正な使用のために必要な情報収集と検討、およびその結果にもとづいた取るべき措置の方法を定めた省令です。
GVPは販売後の安全管理となります。医薬品なら感染症や副作用を対象とし、医療機器も販売後の不具合が対象です。
GVPが求められる理由は、大きく3つあります。
まず、製品の設計ミスや生産工程のミスなどによる、不良や不具合を改善するためです。
次に製品を市場に出した際に、さまざまな環境で使用されることで、初めて発覚する不良や不具合への対策を打つためとなります。また、製造し販売した後も、製品に関する情報収集を長期的に継続する必要があるためです。
GVPを設定して、製薬・医療機器メーカーの継続的な改善への取り組みによって、保健衛生上で危害の発生と拡大を防ぐことが、GVP省令の目的です。

品質管理基準QMS省令

QMS省令は日本の医療機器分野において、薬機法にもとづいて定められている省令です。QMS(Quality Management System)とは品質管理監督システムを意味します。
適合調査も製造工場ごとの調査から、製造プロセス単位の調査に変わりました。QMS省令にもとづいた品質管理システムは、医療機器メーカーとって不可避のものになっています。
なぜなら医療機器製品の品質や安全性、そして有効性を担保する必要があるからです。 そのため、QMS体制が求められる基準に適合しなければ、医療機器や体外診断用医薬品の製造販売が認められませんし、一度は承認および認証を受けた後でも、場合によっては一部変更したり、5年を経過するごとにQMSの適合性調査を受けたりする必要があります。

まとめ

医療機器安全管理責任者は製薬・医療機器メーカーの中で、販売後の安全を担保するための重要な役割を担っています。その知識やスキルがあれば、製薬・医療機器メーカーや医療機関にも活躍の舞台が広がるでしょう。
医療系への転職を考えている人は、医療機器安全管理責任者を目指して必要とされるGVPやQMSの知識を深く学んで臨むことで、転職成功の可能性が高まります。

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