製薬会社MRの仕事内容とは?取り巻く環境の変化と今後の展望

製薬会社MRの仕事内容とは?取り巻く環境の変化と今後の展望

MRは、法改正等により従来とは取り巻く環境が大きく変化してきました。医師との面談は制限され、「売らない営業」と表現されることもある職種です。
今回の記事では、医療分野への転職も視野に入れている転職志望者のみなさんに向けて、そんなMRの仕事内容と取り巻く環境の変化、今後の展望について解説します

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MRとは製薬会社の医療情報担当者

MRは “Medical Representatives” の略称です。製薬会社において、自社が製造販売する医療用医薬品の適正かつ安全な使用のために、医療現場に必要な情報を共有する役割です。それと同時に、医療現場から得られる情報を開発部門などにフィードバックします。
一般的な営業職のような、販売を目的とした営業活動や価格交渉を行わないのが特徴です。
ちなみにMRの平均年収は551.8万円となっており、一般的なサラリーマンの平均よりも120万円ほど高めで、比較的高額な年収の部類に入るでしょう。

MRの仕事内容

MRの仕事は以下の3種類に大別されます。

  • 医療現場との情報共有
  • 医療現場からの情報をフィードバック
  • 臨床情報の分析・評価を医療現場に伝達

これらの3つのベクトルの情報活動を通じて、自社が提供する製品の適正な使用と普及を促進します。
個別に見ていきましょう。

医療現場との情報共有

病院や診療所、調剤薬局などの医療機関を訪問し、現場の医療従事者に自社が製造販売している医薬品の適正使用のための情報を説明し、問い合わせにも対応します。

医療現場からの情報をフィードバック

医療の現場から自社製医薬品の安全性や有効性、副作用などの品質にかかわる情報を収集し、開発部門にフィードバックします。現場からのアイデアや要望などもヒアリングして、開発に役立てます。

臨床情報の分析・評価を医療現場に伝達

医療の現場から収集した医薬品に関する臨床情報について、詳細に分析・評価した内容を速やかに現場に伝達します。また、講演会や勤務医と開業医の連携など、医療情報を広く共有するための医療従事者間のネットワークの拡大もサポートします。

MRになるための資格

MRに関連する資格としては、MR認定試験(主催:公益財団法人MR認定センター)があります。
製薬会社の採用活動における選考では、未経験かつ無資格でも、ひとまずMR候補として採用されます。ただし前提として、入社してからMR認定試験を受験し、合格することを求められるのが一般的です。
合格することがMRとして仕事をする絶対条件ではありませんが、MR候補で入社する人材のほとんどが入社後に研修(導入教育)を受けます。製薬業界の共通のカリキュラムにもとづいた研修で、自社製品情報に加えて医学、薬学や関連法規を学び、MR認定試験に備えます。
このようにMR認定は入社してからの受験・取得が一般的ですが、選考の時点ですでに「MR認定取得のための準備をしている」などアピールができれば、志望意欲を伝える効果があるでしょう。

MRを取り巻く環境の変化

製薬業界はこの10年余りの間に、いくつもの大きな変化がありました。それはMRの仕事にも直接関係するものです。
かつてのMRのイメージは、連日医師の接待に明け暮れつつ、製薬会社の屋台骨を支える花形職種でした。
しかし、法改正にて2012年には原則として接待が禁止となり、加えて2019年には情報提供活動の規制が強化されます。MRは本来の役割である医療情報提供とフィードバックの活動に、重きを置かれるようになりました。
製薬業界においてMRを取り巻く環境の変化の中で、特に大きいのは以下の2つです。

  • 医師の医薬品情報チャネルの変化
  • 医師との関係性にかかわる規制強化

具体的に見ていきましょう。

医師の医薬品情報チャネルの変化

インターネットが普及し、あらゆる営業分野やマーケティング手法のデジタル化が進む中で、医師はインターネットを通して医療用医薬品情報を容易に入手できるようになりました。
パンデミックの影響による営業の非対面化から、MRと面会できなくても、ネットで情報が入手できるので困らないと考える医師も増えており、医療従事者にとってのMRの必要性を下げる要因となっています。

医師との関係性にかかわる規制強化

医療機関の多くは、法改正による医師との関係性にかかわる規制強化を受けて、MRの訪問による面談について自主規制を強めています。
MRによる医師の接待が原則禁止となって以降、三重大病院事件やディオバン事件のような不正が続々と明らかになり、製薬会社は世間から非難を浴びました。そういった一連のことが、MRの存在意義が変容するきっかけとなっています。
また、製薬業界のビジネスモデルのトレンドがブロックバスター(画期的な効果の新薬を創り出すもの)からアンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされない医療ニーズ)に応える方向へシフトしつつあります。
また、ジェネリック医薬品の普及が進んでおり、抗がん剤などのスペシャリティ製品の領域が伸びていることも手伝って、MRが取り組む領域は狭くなってきています。
ほかにも、厚生労働省が策定した、不適切なプロモーションを排除するためのガイドラインが2019年4月から適用されています。このようにMRの活動を規制する動きが強まっているため、かつてのような医師との関係性は持てなくなりました。

画期的新薬の不在や薬価引き下げ

もともと日本の薬価は欧米に比べて高く設定されていましたが、外圧により2年ごとに薬価が改定され、その都度5~8%ずつ引き下げられてきました。2018年から政府の薬価引き下げ圧力が強まり、2021年度には初の中間修正が実施されています。
また、新薬開発には1,000億円を超える巨額の費用がかかり、基礎研究に対する政府の支援は決して手厚くなく、オプジーボのような革新的な新薬を生み出すことは困難です。
先に述べた要因もあり、新薬の上市が遅れているため、本来、新薬の重要な情報を医療機関に伝える使命を持つMRは、活躍の場が少なくなりエンゲージメントが高まりにくい環境となっています。必要に応じてCSO(医薬品販売業務受託機関)からMRの派遣を受け、正規雇用のMRの数を最小限に抑える製薬会社も見られます。

今後のMR像と展望

ここまでで触れてきた背景から考えて、これからのMRには、より一層の専門性が要求されるでしょう。今はまさに転換期です。
新たな法律や医療制度の理解を深め、あくまでも患者主体の医療に貢献できる人材や、医療従事者と深い信頼関係を構築できるMRにとっては、活動の舞台が広がるとも考えられます。
今後のMRに求められるものを集約すると、以下の3項目になります。

  • 症例ベースの情報提供
  • 市場分析に基づく情報提供
  • 高度に専門的な情報提供

それぞれを見ていきましょう。

症例ベースの情報提供

医療情報の入手がインターネットで容易となった現在、医師がMRに求めるのはネットで入手できない情報です。
個別の症例ベースの医療用医薬品情報や、他社の医薬品も含めた他の病院、他の医師の処方情報などの詳細なデータを収集した症例ベースの情報提供こそ、医師がMRに求めるものです。

市場分析に基づく情報提供

MRが医師を訪問面談することに関して、多くの医療機関が自主規制を強めたため、医師との面談機会が激減し、関係性の構築が非常に困難になりました。
限られた貴重な時間の中で、自社の医薬品に関する有益な面談を行わなければなりません。そのためには、的確な市場分析に基づく情報提供が重要です。

高度で専門的な情報提供

コンテンツマーケティングの主戦場はオウンドメディア
製薬会社の新薬開発が、ブロックバスターねらいからスペシャリティ製品にシフトしてきたことや、オンコロジー(腫瘍学)領域の薬剤の上市が主流となりゆくトレンドから、MRにはより高い専門性と先端情報が求められます。
医薬品製造は本来化学だけでなく、生物学とも関係の深い業種です。大学院レベルの専門知識が日常の話題となる場合も珍しくありません。そのため、MRには専門的な医療情報を医療現場に伝えるための高度な知識が求められます。

MRからのキャリア展開

MR候補として製薬会社に入り、導入教育を経てMRとなった場合に、そこからのキャリア展開は、主に以下のような道が考えられます。

  • MRとしてスペシャリストを目指す
  • MRとしてマネジメント方面を目指す
  • MR経験を活かせる社内でのキャリアチェンジを目指す
  • MR経験を活かせる同業界内での転職を目指す
  • MR経験を活かせる他業界への転職を目指す

それぞれを見ていきましょう。

MRとしてスペシャリストを目指す

MRという仕事を極めて、MRとしてスペシャリストとを目指す方向性があります。そのためには、多種多様なあらゆる分野や製品を幅広く担当できる広範囲な専門知識と、特定の分野や製品の掘り下げた専門知識という、マクロとミクロの両方の知見を高めましょう。

MRとしてマネジメント方面を目指す

MRとしてマネージャーなどの、部署を統括する管理職への昇進を目指す方向性です。よりよいマネージャーであるためには、一MRとして奮闘した豊富な経験と専門知識が欠かせません。

MR経験を活かせる社内でのキャリアチェンジ

MR経験を活かして、社内で異動の希望を出し、別のキャリアにチャレンジするという方向性があります。生産管理や企画開発部門であれば、現場で培ったスキルや知見が活かせます。
直接医薬品と関わらないバックオフィスにキャリアチェンジする場合も、医療の現場を知っていることでより適切な対応やサポートが可能となります。他にもマーケティング職や教育担当、流通部門、人材部門なども、MR経験が活かせる職務です。

経験を活かせる同業界内での転職を目指す

医療現場で培った経験を活かして、同業界の別の製薬会社に転職するという方向性です。ズバリMRとして転職活動に臨む場合と、経験を活かし別の職種へ転職する場合もあります。
また、製薬会社ではなくCSO(医薬品販売業務受託機関)のMRとして働くことも可能です。

MR経験を活かせる他業界への転職を目指す

業務で培ってきた専門性を活かして、全く別の業界に転職することもできます。例えばコンサルティングファームです。
もともとコンサルティングファームは、中途採用においては業界未経験でもポテンシャル採用をする場合が多い業界です。
その背景には、コンサルティング案件がかつての「経営」という大きなくくりから多様化、細分化しており、専門性が必要な案件が増えているという事情があります。
担当コンサルタントは、クライアントの業種を深く理解して取り組まなければ、充分な提案ができないケースも多いのです。そのため、既存の社員がそれを学習してからでは間に合いません。
よってコンサルティングは未経験でも、もともとクライアントの業界で働き、専門的な知見を持った人材を確保して、既存のコンサルタントとチームを組んでプロジェクトに当たらせるやり方が増えているのです。
あるいは、〇〇テックという異業種との掛け合わせでビジネスチャンスを生み出す傾向があるIT業界の開発企業において、医療系のシステムを開発する際に、医薬品の知見を持ったMR経験者のナレッジが役に立ちます。
このように、必ずしも医療系にこだわらずとも、そこに絡むビジネスを展開する企業なら、転職できる可能性は充分にあるでしょう。

まとめ

MRはかつての製薬業界の花形ともてはやされた時代とは、状況が大きく変化しています。それでも医療の世界において重要な役割を持っている事実は変わりません。
年収も高めで未経験からでも採用されるので、医療系の企業に転職を考えている人にはチャレンジする価値があります。そのためには、MR認定試験を見据えた学習を通して志望意欲をアピールすると採用の可能性が高まるでしょう。
また独力で臨むよりも、転職エージェントの活用をおすすめします。製薬業界に強みを持つ私たちタリスマンは、あなたの転職活動を包括的にサポートできますので、安心して何なりとご相談ください。

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