chatGPT関連のニュースを見ない日が無いほど、私たちの日常に浸透し始めているLLM（Large Language Models／大規模言語モデル）ですが、その高度な文章生成、質問応答能力を活用したキャリア関連サービスが既に複数リリースされています。このようなサービスを利用することで、キャリアの選択や転職活動の方法はどのように変わっていくのでしょうか。この記事では最近リリースされたchatGPTを組み込んだキャリア・転職関連サービスを紹介します。また書類作成など、ChatGPTを利用して転職活動を効率化するための実用的なプロンプトの例も紹介します。
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目次
chatGPTが組み込まれたキャリア関連サービス5選
既にchatGPTを組み込んだ採用・キャリア関連サービスが複数リリースされていますので、ここでは転職検討者向けのサービスに絞り5つ紹介していきます。現在リリースされている転職検討ユーザー向けサービスには以下のようにいくつか種別があり、いずれかに特化したものや、複合的に利用可能なものまで様々です。
- 転職相談: 自分のキャリアパスや転職戦略に関するアドバイスを求める
- 履歴書の添削: 履歴書の書き方や強調すべきスキルを確認する
- 面接対策: 面接での回答の準備やアドバイスを求める
ジョブえもん
「ジョブえもん」は、求職者に特化したLINEアプリで、キャリアの悩みや現職でのトラブル、職務経歴書の添削や自己PRの作成、面接対策など、転職活動に関することをChatGPTのAPIを利用し、対話形式で自然な文章で答えを返してくれるサービス。LINEから会話形式で始めれるので、気楽に利用できそうです。
運営：株式会社RYOMA サービスリリース：2023年4月
詳細情報
職務経歴書AIアドバイザー（β版）
職務経歴書の入力および添削をサポートするサービス。同社が運営するスカウト型面談サービスのプロフィールの作成をサポートしてくれる機能としてリリースされています。ChatGPTのAPIを利用したAIアドバイザー機能によって、以下のメリットがあるとのことです。
１．初めて転職（求職）活動される方でも短時間で職務経歴書を作成することができるようになる
２．作成済み職務経歴書をAIが添削し、より充実したプロフィールに改善することが容易になる
運営：株式会社PayCareer サービスリリース：2023年4月
詳細情報
ChatGPTキャリアパス診断
現在の年齢・職種・年収などを入力すると、各年齢ごとに想定される職種、年収、要求されるスキルが分かり、ChatGPTからの一言アドバイスももらえます。
この診断で、以下のことが可能になるとしています。
１．将来のビジョンがイメージしやすくなる
２．自分に合うキャリアや働き方を見つけられる
３．キャリアアップのための具体的な行動目標が定まる
また、キャリアパスに関するより具体的なお悩みはキャリアアドバイザーに個別相談することもできます。
運営：株式会社GEEKLY サービスリリース：2023年5月
詳細情報
「GPT-4」を搭載した面接診断AIサービス
Webカメラを活用して、特定の質問内容に対して、ユーザーが実際に回答し、その回答内容、声の抑揚、テンポ、表情、動作等をデータ化し、AIが様々な角度から評価・レポートすることで、本人の面接力向上を支援するサービス。従来バージョンにChatGPT（GPT-4）を搭載することで、ユーザーの希望に合わせ、自身の履歴書やこれまでの経験などのデータを読み込むと、生成AIによりパーソナライズされた自己PRなどの内容の作成支援が可能となり、分析レベルの向上や分析内容をもとにしたフィードバックの精度を上昇させることができるとしています。
運営：ポート株式会社 サービスリリース：2023年3月
詳細情報
キャリアフォワードβ by AI
Chat GPTを利用し、転職活動をするかどうかで悩んでいる方や、就職活動をはじめたばかりの学生などが、気兼ねなくAIのキャリアアドバイザーに相談できることが特徴です。AIには熟練のキャリアアドバイザーの人格を事前に設定しているため、キャリアに関する的確なアドバイスを受けることができます。LINEで気軽に利用することができますが、2023年5月31日以降は、質問数に応じて有料化する可能性があるとのことです。
運営：株式会社フォワード サービスリリース：2023年3月
詳細情報
上記で、企業からリリースされているchatGPT組み込み型キャリアサービスを紹介しましたが、どれだけ有効に活用できるのかは、提供されるサービス品質による部分も大きいですし、利用する側の状況（転職の検討度合いや、現在のキャリアでの経験年数、今後のキャリアの見通しなど）にも左右されそうです。また、編集部ではいくつかのサービスを実際に使ってみましたが、chatGPTという話題のサービスを使ったプロダクトを「リリース優先」で開発した印象を持ってしまうものもあり、まだサービスとして「こなれていない部分」もありそうです。
転職活動におけるchatGPTの効果的な活用法
一方で、自分の手元でいつでも使えるchatGPTの無料版でも、入力するプロンプト(※)を工夫することで、かなり自分にカスタマイズされたキャリアアドバイスを得たり、転職活動時の書類作成をすることができます。以下に利用方法と具体的なプロンプトを記載します。
（※）ChatGPTにおいて「プロンプト」とは、ChatGPTが応答を生成するために入力する指令文や文章のことを指します。どのようなプロンプト（質問）を与えるかによって、生成される応答（回答）は変わってくるため、有効な回答を得るには、ある程度のテクニックが必要になります。
自己分析とキャリアゴールの明確化
転職活動を始める前に、chatGPTで自己分析を行い、自身のスキル、価値観、やりたい仕事などを明確にすることができます。その上で、将来のキャリアゴールを設定することが重要です。ChatGPTを活用して、以下のようなプロンプトを使用してみてください。
あなたはプロのキャリアコンサルタントです。
あなたはロジカルシンキングの手法や自己分析の手法を使って私の将来のキャリアをコンサルティングするプロとして振る舞ってください。
あなたの指示に従って回答するので、順次質問や指示をしてください。
答えは提示せず、私に考えさせる形で1問1答形式で引き出すように質問してください。
何度かやり取りした後で、自己分析と明確になったキャリアゴールを出力してください。
編集部が確認した時点では、上記のプロンプトにより以下の項目について質問が返ってきました。
- 自己分析： 自分の強みや得意なスキルは何ですか？これまでの経験や成果、能力について考えてみてください。
- 興味・関心の分析：どのような活動やテーマに興味を持っていますか？どのようなことに関心を抱いていますか？
- 価値観の明確化：仕事やキャリアにおいて重視する価値観は何ですか？自己成長、チームワーク、社会貢献など、どのような価値観が重要だと思いますか？
上記の質問を起点に、何度かやりとりをすると、最終的に明確になったキャリアゴールを出力してくれます。
職務経歴書の改善
職務経歴書や履歴書の添削も可能です。ChatGPTを活用して、以下のプロンプトでアドバイスや添削を依頼してみましょう。
あなたはプロのキャリアコンサルタントです。
職務経歴書を見て、スキルや実績をより魅力的に強調するために改善すべき点を教えてください。#応募する企業の条件も考慮してください。
#応募する企業の条件
・業界：人材紹介
・社名：〇〇株式会社
・役職：マネージャー
・職種：営業マネージメント
#入力
（職務経歴書のテキスト内容をコピーして貼り付けてください）
編集部がサンプルの職務経歴書を入力し、上記のプロンプトを試したところ以下のようにアドバイスが返ってきました。応募する企業の条件を考慮した内容になっているようです。途中で切れている場合は「続き」と入力すると残り部分を出力してくれます。また、自分や他人の個人情報を不用意に入力しないように注意しましょう。
インタビュー（面接）の準備と練習
面接の練習にもchatGPTは利用できます。実際の面接を想定すれば、テキストの交換ではなく、口頭でのコミュニケーションが理想です。そこで、Googleの拡張機能「Talk Berry」を組み合わせてみましょう。
「Talk Berry」はマイクを使用して音声をテキスト変換して入力、chatGPTからの応答も音声変換してくれるので、口頭で面接の練習ができるようになります。
使い方は簡単で、インストール後、ChatGPTにログインするだけで以下の様に音声入力のUIが追加されます。
ChatGPTへの入力音声は、緑のマイクボタンをクリックし、マイクを使用して話し、エンターキーで送信します。マイクボタンの横にあるコントローラで言語（現時点では18種類）、スピード、音声をカスタマイズ可能です。
編集部注：ChatGPT並びに各種Googleの拡張機能については自己の責任の元ご利用ください。
以下のプロンプトで実際の面接を想定した模擬質問と回答に対するアドバイスを受けることができます。
あなたはプロのキャリアコンサルタントです。#応募する企業の条件を加味し、採用面接の模擬練習の問題を5問作成してください。問題の順番は実際の面接を想定したものにしてください。求職者からの回答後、回答内容を分析し、面接合格率が高まるようにアドバイスしてください。
#応募する企業の条件
・業界：Saasソフトウェア開発
・社名：〇〇〇株式会社
・役職：エンジニアリングマネージャー
・職種：ITエンジニア
転職先の情報収集と研究
まずは転職先の情報を以下のプロンプトでchatGPTから引き出してみましょう。
企業〇〇〇の文化や価値観について教えてください。
必要に応じて、売上高／従業員数／平均年収／平均年齢／ビジネスモデルなどについても追加して質問できますが、ChatGPT（無料版）の学習データは、2021年9月までの情報になっています（2023年6月時点）。そもそも変動要素が多い情報のため、参考として押さえておく程度にして、最新・正確な情報が必要な場合は、IR情報などを確認してください。
次に以下のようなプロンプトで業界全体の動向も押さえることができます。サンプルはIT業界としていますが、他の業界に変えて調べることも可能です
あなたはプロのキャリアコンサルタントです。
IT業界の最新のトレンドや成長領域について、ITエンジニアとして働く求職者に向けて分かり易く教えてください。
上記のプロンプトで出力される回答は、ITエンジニアとしてキャリアを築いてきた方なら理解されている内容だとは思いますが、改めて情報を整理し、志望動機やキャリアプランを組み立てる材料としては十分に使えそうです。
いかがでしたでしょうか。
ここで紹介したプロンプトは複数回内容を変えて試行することでより最適な回答が得られることがありますので、自身の目指す業界・職種・キャリアプランにカスタマイズして、試してみることをおすすめします。
chatGPTの得意な部分を有効活用し転職活動を効率化することで、転職を通じて得たい今後のキャリアプランやゴールといった、コアな部分の検討に時間を割くことができるようにしたいものですね。
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