エンジニアの転職活動において、職務経歴書は単なる経歴の羅列ではありません。自身のスキル、経験、そして将来性を、採用担当者に的確に伝えるための「技術仕様書」であり、あなた自身の「プレゼンテーション資料」です。
「自分のスキルをどうアピールすればいいのだろう?」
「実績と言えるほどの経験がない…」
そんな悩みを抱えるエンジニアのために、本記事では、数多くの書類を見てきた採用担当者の視点を取り入れ、あなたの市場価値を最大化する職務経歴書の書き方を、具体的な例文と共に徹底解説します。
目次
採用担当者はココを見ている!エンジニアの職務経歴書「3つの鉄則」
毎日何十通もの職務経歴書に目を通す採用担当者。彼らは決して、書類を隅から隅まで熟読しているわけではありません。転職エージェントとして頻繁にコミュニケーションしている企業の採用担当者に聞くと、ほとんどの方が”最初の15秒ほどで「会う価値があるか」「書類を深く読み込むか否か」を判断している”と言います。
この短い時間で興味を引くために、以下の「3つの鉄則」を押さえておきましょう。
鉄則1:最初の15秒で「会いたい」と思わせる「職務要約」
採用担当者が最初に読むのが「職務要約」です。ここで「おっ」と思わせることができなければ、その先をじっくり読んでもらえる可能性は下がります。職務要約には、「これまで何をしてきたか」「何ができるか」「これから何をしたいか」を簡潔に盛り込み、興味を持ってもらえるように意識して書きましょう。文字数は特に決まりはありませんが、120〜180文字程度にまとめると良いバランスに見えます。
【改善前】
約5年間、WebエンジニアとしてECサイトの開発に携わってきました。主にPHP(Laravel)を使用したサーバーサイド開発を担当し、詳細設計からテストまでの一連の工程を経験しています。
【改善後】
約5年間、WebエンジニアとしてECサイトのバックエンド開発を担当。PHP(Laravel)やMySQLを用いた新機能設計・実装に加え、キャッシュ最適化やSQLチューニングを行い、ページ表示速度を平均30%向上させました。今後は、高トラフィック環境でのパフォーマンス改善やスケーラビリティ向上に強みを活かし、サービスの成長に貢献したいと考えております。
ポイント: 具体的な数字と今後の展望を加えることで、単なる経験者から「実績があり、目的意識を持った候補者」へと印象が大きく変わります。
鉄則2:スキルと実績は「数字」で語る
「コミュニケーション能力が高い」「業務を効率化した」といった表現は、具体的でなく説得力に欠けます。エンジニアであればこそ、定量的な表現を意識しましょう。
【改善前】
パフォーマンス改善を担当しました。
【改善後】
SQLのチューニングとキャッシュ戦略の見直しにより、特定APIのレスポンスタイムを500msから150msに短縮しました。
【改善前】
チームリーダーとして後輩の指導を行いました。
【改善後】
チームリーダーとして3名の後輩を指導。週1回の1on1とペアプロを導入し、チーム全体の開発速度を前四半期比で15%向上させました。
ポイント: 数字にできない場合は、「どのような課題」を「どのような技術や工夫」で「どう解決したか」という再現性のあるプロセスを示すことが重要です。
鉄則3:「会社の求める人物像」と自分の経験を結びつける
素晴らしい実績も、応募先企業が求めていなければ意味がありません。企業の求人票や技術ブログを読み込み、「どのような技術課題を抱えているのか」「どのようなスキルを持つ人材を求めているのか」を徹底的に分析しましょう。
その上で、自分の経験の中から、その企業にマッチする部分を戦略的にアピールします。職務経歴書は「一枚の書類」を使い回すのではなく、企業ごとにカスタマイズするのが常識です。
これで完璧!エンジニアの職務経歴書の基本構成と書き方
それでは、実際の職務経歴書の構成要素と、それぞれの書き方のポイントを見ていきましょう。
① 職務要約
冒頭で解説した通り、最も重要な項目です。3〜5行程度で、あなたのキャリアのハイライトを凝縮してください。
② 活かせる経験・知識・スキル
箇条書きで、自分の技術スタックを分かりやすく整理します。採用担当者が知りたいのは「あなたが何語を知っているか」ではなく「その技術をどのレベルで使えるか」です。
【書き方の例】
- 言語: TypeScript (実務経験5年, Node.js/Expressを用いたAPI開発), JavaScript (実務経験3年, React/Next.jsでのフロントエンド開発)
- フレームワーク: xpress.js, Next.js, React
- データベース: PostgreSQL (スキーマ設計、パフォーマンスチューニングの経験)
- インフラ: AWS (ECS, S3, RDS, Lambdaの構築・運用経験), Docker, Terraform
- ツール: GitHub, GitHub Actions, Jira
③ 職務経歴
ここが本文です。時系列に沿って、所属した企業やプロジェクトの情報を記載します。プロジェクト単位で区切り、以下の要素を盛り込むと非常に分かりやすくなります。
- プロジェクト名:○○社向けECサイト フルリニューアル
- 期間:2023年4月~2024年3月
- 役割・規模:サーバーサイドエンジニア(チーム5名)
- 開発環境:PHP 8.1, Laravel 9, MySQL, AWS(EC2, RDS), Docker, Git
- 担当業務と実績:
- 会員登録・ログイン機能の設計、実装、テストを担当
- 決済代行サービスとのAPI連携部分を実装
- バッチ処理のパフォーマンス改善を行い、処理時間を約50%短縮
④ 自己PR
職務経歴で示した「事実」に基づき、あなたの強みや仕事への姿勢をアピールする項目です。求人内容の深い理解にもとづいて、それに連動させて自分の強みをしっかりアピールしましょう。技術への情熱、チームへの貢献意欲、課題解決能力などを、具体的なエピソードを交えて記述しましょう。
また、業務に関連する資格があれば記載しておきましょう。取得を目指して現在進行形で勉強中の資格があれば、「資格取得を目指して〇〇〇〇〇〇などで学習中」などとしてアピールするのも効果的です。
⑤ ポートフォリオ(GitHubなど)
特にWeb系エンジニアにとって、GitHubはスキルを証明する強力なツールです。アカウントのURLを記載するだけでなく、自信作のリポジトリを2〜3個ピックアップし、「〇〇という課題を解決するために作成」といった簡単な説明を添えると、採用担当者の目に留まりやすくなります。
【要注意】これだけは避けたい!エンジニア職務経歴書のNG例
良かれと思って書いた内容が、実はマイナス評価に繋がっているかもしれません。よくあるNG例を3つご紹介します。
NG例1:技術スタックの羅列だけで、何ができるか不明
PHP, Java, Python, Ruby, C#… といったように、経験した技術をただ並べるだけでは、採用担当者は「結局、この人の得意分野は何だろう?」と疑問に思います。得意な技術、実務で深く使った技術に絞り、経験年数やレベル感を併記しましょう。
NG例2:プロジェクトの成果が「担当した」「経験した」で終わっている
「〇〇機能の開発を担当」「△△の運用を経験」だけでは、あなたがプロジェクトにどう貢献したのか全く伝わりません。「担当した結果、どうなったのか」まで書くことで、初めて「実績」になります。
NG例3:自己PRが学習意欲だけで、企業への貢献意欲が見えない
「新しい技術を学ぶのが好きです」というアピールは悪くありません。しかし、それだけでは「会社の資産を使って勉強したいだけの人」と見られかねません。「学んだ技術を活かして、貴社の〇〇という事業に貢献したい」というように、企業への貢献という視点を必ず加えましょう。
経験・実績に自信がない? 若手・経験が浅いエンジニアの逆転戦略
「大規模サービスの開発経験がない」「自慢できるような実績がない」と悩んでいませんか? 心配は無用です。特に若手エンジニアの採用では、企業は「現時点でのスキル」と同じくらい「将来性(ポテンシャル)」を重視しています。
「実績」は「学習プロセス」と「アウトプット」で見せる
華々しい実績がなくても、技術に対する探究心や学習意欲を示すことは可能です。
【アピール例】
前職ではテストの自動化が進んでいなかったため、独学でJestとCypressを学習。まずは担当機能のユニットテストから導入し、その有用性をチームに共有しました。結果的に、チーム全体でE2Eテストまで導入する文化の醸成に貢献できました。
このように、自発的に課題を見つけ、学び、行動した経験は、実績と同じくらい価値のあるアピールポイントになります。
GitHubを最強の武器にするための見せ方
あなたのGitHubアカウントは、もう一つの職務経歴書です。採用担当者はあなたのコードを見て、スキルレベルや学習意欲を判断します。
- READMEを丁寧に書く: 個人開発したアプリなら、その目的、使用技術、工夫した点などを丁寧に書きましょう。
- 活動の継続性を見せる: いわゆる「草を生やす」ことで、継続的に学習している姿勢をアピールできます。
- 職務経歴書にURLを記載する: 「ポートフォリオ」の欄を設け、自信のあるリポジトリのURLを2〜3個記載し、「○○の技術課題を解決するために作成したものです」といった一言を添えると親切です。
経験の浅さを嘆くのではなく、「学習意欲」と「アウトプット」という別の武器で勝負しましょう。
【職種別】そのまま使える!職務経歴書の見本とポイント
ここでは、代表的なエンジニア職種別に、アピールすべきポイントと職務要約の例文をご紹介します。
Webエンジニア(サーバーサイド)
【アピールするべきポイント】
サービス規模(PV・ユーザー数)、パフォーマンス改善の実績、チームリーダー・育成経験
【職務要約 例文】
約5年間、月間1,000万PV規模のECサイトにてサーバーサイド開発(TypeScript/Node.js, Express)を担当。新機能開発に加え、PostgreSQLのクエリチューニングやRedisキャッシュの最適化により、特定APIのレスポンスタイムを平均40%短縮しました。現在は3名のチームリーダーとして、コードレビューや若手メンバーの技術支援・育成も担っております。
インフラエンジニア
【アピールするべきポイント】
クラウド環境の経験(AWS/GCP/Azure)、IaC活用(Terraform, CDK, Pulumi など)、可用性・信頼性改善の実績
【職務要約 例文】
3年間、AWS環境におけるインフラの設計・構築・運用を担当。TerraformとAWS CDKを活用し、インフラを完全コード化することで手動作業を80%以上削減。加えて、Prometheus+Grafanaによる監視基盤を導入し、障害発生時の平均復旧時間(MTTR)を30分から5分へ短縮しました。高可用性設計やコスト最適化にも継続的に取り組んでおります。
社内SE
【アピールするべきポイント】
単なるヘルプデスクではなく「効率化・コスト削減」への貢献、業務プロセスの改善事例、ベンダー調整や導入プロジェクト管理
【職務要約 例文】
営業部門の社内SEとして4年間、SFA/CRM(Salesforce)の導入・運用・改善を担当。Power AutomateやUiPathを活用した業務プロセス自動化により、営業担当者一人あたり月間5時間の事務工数を削減しました。また、クラウドサービスの選定やベンダーとの折衝を通じて、システム導入コストの最適化と業務効率化を推進しました。
最後のチェック!提出前に確認したい5つのポイント
書類が完成したら、提出前に必ず最終チェックを行いましょう。
- 誤字脱字はないか?:
基本的なことですが、意外と見落としがちです。ツールでのチェックに加え、声に出して読んでみるのがおすすめです。 - フォーマットは適切か?(PDF推奨):
Wordファイルなどは閲覧環境によってレイアウトが崩れる可能性があります。誰が見ても同じように表示されるPDF形式で提出するのがビジネスマナーです。 - 専門用語は分かりやすく説明できているか?:
最初の選考は人事担当者が行う場合もあります。社内用語やあまりに専門的な略語は避け、誰が読んでも分かるように書きましょう。 - 応募企業ごとにカスタマイズできているか?:
「鉄則3」でも触れた通り、使い回しはNGです。企業の求める人物像に合わせて、アピールする経験や自己PRを調整しましょう。 - 客観的な視点で読めるか?:
完成したら一度時間をおき、第三者の視点で読み返してみましょう。「この書き方で、自分の魅力が正しく伝わるか?」を自問自答することが大切です。
まとめ
職務経歴書は、あなたというエンジニアの価値を伝えるための、非常に重要なプレゼンテーション資料です。
今回ご紹介したポイントは、決して小手先のテクニックではありません。「読み手である採用担当者の視点に立つ」という、ただ一つの本質に基づいています。
この記事を参考に、あなたのスキルと情熱が最大限に伝わる職務経歴書を作成し、理想のキャリアへの扉を開いてください。応援しています。
-メディア運営・監修-
Talisman Corporation / IT・外資の転職はタリスマン
外資系企業や日系大手、ベンチャー企業への転職にご興味のある方はぜひお問い合わせください。転職エージェントとして10年以上の経験、データを持つ弊社タリスマン株式会社がサポートさせていただきます。[厚生労働大臣許可番号] 01-ユ-300282