福島ロボットテストフィールドの目指す未来 – 福島イノベ構想実現に向けた取組み

福島ロボットテストフィールド

国家プロジェクトとして動き出している「福島イノベーション・コースト構想」。その中核を担い、福島県浜通りの復興と日本のロボット産業の未来をけん引する「福島ロボットテストフィールド(RTF)」を現地取材しました。
本インタビューでは、日本におけるロボット社会実装のためのナショナルセンターを目指し設立された「福島ロボットテストフィールド」の施設概要と、目指すビジョン、現在の状況や、利用企業の取り組み、地域との関わりなどを伺いました。
インタビュアー:タリスマン株式会社代表 盛内文雄
※本記事は以下の動画をベースとした再編集版です。動画でも同じ内容をご視聴いただけます

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ロボットテストフィールドはどんな施設?

ーー 本日は、福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールド管制室より、副所長の安藤さんにお話を伺います
ロボットテストフィールド副所長の安藤でございます。本日はよろしくお願いします。

ーー 早速ですが、この施設の大きさが、50ヘクタール、東京ドーム10個分ぐらいということで、この外側のフィールド施設に非常に目がいくんですけれども、建物の中にもいろんな施設がおありなんですよね
広い敷地で外にいろんな施設がありますので、そちらに目が行くのは当然のことですが、屋内施設としてドローンの試験をする風洞棟や水中ロボット、水上ロボットを試験するプールなどもございますし、今日来ていただいているこちらは、研究棟と言いますが、研究棟の中にも、雨の中、風の中、振動など、ドローンの性能を評価する試験設備もございます。加えて、ロボットテストフィールドには基礎的な試験ができるようにいろいろな分析装置や測定装置、3Dプリンター(プラスチック / 金属)やX線で断面を見るCTなど、基本的にはドローン・ロボットの施設ですが基礎研究的なこともやれるような設備が整っております。

ロボットテストフィールドが誕生した経緯

ーー この施設ができた経緯についてもお伺いしたいんですが、この大きな敷地で、ゼロイチで造られるというのは、立地条件的にも環境的にもかなり難しい部分があるかと思うんですが、東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県の太平洋側、浜通りというエリアの復興と政府のロボット新戦略といった複数の社会的なニーズ、国家的なニーズが一致した結果なのでしょうか
おっしゃられたように、この浜通り地区は、ご存じの通り東日本大震災、原子力災害で産業がかなりなくなってしまいました。そこを産業復興させて、新しく産業基盤を作るということで、福島イノベーション・コースト構想ができあがったわけですが、その構想と、国家戦略であるロボット新戦略がうまくマッチしたと言えるかなと思います。また、今年(2025年)の4月から福島国際研究教育機構(通称:F-REI)に施設が統合されました。F-REIは、研究開発を中心に最先端のことをやられている機関で、そちらでは研究開発、我々の施設ではいろいろな実証試験ができる、それにイノベーション機構も加わり、お互いが相乗効果を持つことによって福島県の復興を推進していきます。福島県の復興の一つの拠点でもあって、地域の皆様の足元に根付いた活動としてこれらを進めていきたいと考えています。

福島イノベーション・コースト構想とF-REI

ーー 今、福島イノベーション・コースト構想推進機構さんのお話とF-REIさんのお話とありましたが、改めて立ち位置と役割について教えてください
ちょっと繰り返しになりますが、F-REIさんは世界の最先端の技術を研究開発をしており、我々は試験・実証する設備を持っていて、また福島イノベーション・コースト構想推進機構はどちらかというと浜通りも含めた福島全体の地域の連携にそれぞれ強みを持っています。したがって今後復興を進めるうえで研究開発から地域を含めた人材育成、産業集積を共同して進めることによってイノベーション構想をさらに前進させていくということを期待しています。

ロボットテストフィールドの実績

ーー これまで実証実験が1,000件くらいされていると伺って、期待通りの実績を積み重ねてきていらっしゃるのかなと思いますがこの辺の手応えはいかがですか?
ロボットテストフィールドが活動を開始してから大体5年ぐらいになりますが、その間に約1,000件、企業、大学、いろんな自治体や機関で使っていただいて、毎年300から400ほどの機関の方がいろいろな試験をされています。その中で既に合計80社ほどの企業さんが浜通り地区に進出しています。5年間でそれだけ出てきていただいているのが一つの成果かなと思ってます。
また、ロボットテストフィールドのお話をしましたけど実は企業が進出してくださるために、南相馬市さんも復興工業団地という場所的な面でのサポートや、産業創造センターでのスタートアップ企業の立ち上げ支援などを行っています。
自治体のいろいろな支援や補助金も含めて浜通り地区に移転していただける方々に手厚い支援をしていることが企業様が進出するための大きな後押しになっていると思います。

ロボットテストフィールドのここに注目!

ーー かなり壮大なプロジェクトかと思うんですが、実績の部分で、特徴的なものや注目してもらいたい技術エリア、業界エリアはありますか?
ロボットテストフィールドでは陸上から水中・水上、空までいろいろな実証をやっています。例えば、空を飛ぶドローンで言いますと、実際の社会で使えるように広域の中で飛ばすための実証や、水中ドローンだと、今プールでいろいろやってますけど、災害時に確認や探査に行くとか、地上ロボットも含めて、あらゆるロボット関係のものをここで実証実験できるという感じです。
この後ろに見えるのが、滑走路とヘリポートで、あと、ご紹介したいのは、その奥にネットがあります。通常のドローンを飛ばす時には、法律の制約があって申請をして許可を得ないといけないんですが、ネットで覆われたところは室内と同様の扱いなので、例えば「夜間は飛ばしてはいけないです、ちゃんと申請してください」、「ものを投下するんだったら、ちゃんと申請してください」みたいな規制を受けずに、いろいろな試験ができるので、ドローンをこれから開発をする方にとってはすごく使いやすい場所だと思います。

ヘリポートと緩衝ネット付飛行場
ヘリポートと緩衝ネット付飛行場

ーー 反対側には、さっきおっしゃられた水中とか、トンネル、いろいろな環境の実験ができるところもありますね。
トンネルなんかも崩落事故等の災害がありますが、実際のトンネルを使って検査や教育ってできないじゃないですか。だけどこういう実験施設では機械を使って検査方法の確認などができます。ゼネコンさんが来て、教育とかそういう場面でも使っていただいています。
ーー 市街地フィールドとかもありますね
自治体の消防の方々が来て、災害救助の訓練にも役立っています。

市街地フィールドと試験用トンネル
左上:水没市街地フィールド 左下:試験用トンネル 右:市街地フィールド

ドローン・ロボット開発の課題や挑戦

ーー そう遠くない未来にドローンやロボットが活躍すると思うと非常にワクワクする部分であると思いますが、今後の課題や挑戦についてもお伺いしたいです
今、日本だけじゃないですけど、少子高齢化、人手不足の中で、ドローンやロボットが必要とされて活躍する場面がどんどん増えてくると思うんですね。なのでドローンやロボットが社会に出ていった時に、それを使ってくれる皆さんとその周りにいる地域の皆さんが安全で安心して使える環境を整えなければいけないと思います。そこが一番重要なところで、皆さんが普段使う航空機、車、食品であっても安全安心というところがしっかりしてないとなかなか社会の中で広まっていかない。そういう意味では、我々としては実証試験とともにいろいろな基準であったり、ガイドラインやルールを整備して、皆さんが安心して使って見ていられる、そういう環境を整えるのが今後のドローンやロボットの発展に重要なところ。時間はかかるとは思うんですけど、地道にやっていかないと将来につながって発展していかないので、そこが一番重要だと思っています。

ーー 社会実装していくうえでのガイドラインなど、そこがこれからの課題とかチャレンジなんですね
一歩一歩地道に、且つ少しずつチャレンジしながら枠を広げていくというところが重要なんだと思ってます。

地域との交流・連携について

ーー 本日、見学もさせていただきましたが、地域との連携といった部分に関連してこのような見学などは常時されているんでしょうか? また、そういったことも含めた地域内外との交流・連携について教えてください
見学に関しては、ネットでの申し込みになるんですけども、一般の方も随時受付していますし、企業・自治体の方の視察も受け入れています。また、先ほど言った社会実装を進めていくために自治体の皆さんの理解も必要ですので、市町村勉強会では、我々の方から出かけていってドローンやロボットの教育をしたり、来ていただいて施設や実際に飛ばしているところを見てもらったりと、そういったことも積極的に進めております。
また、年に一回、ロボットテストフィールドの中で「ロボテスフェスタ」をやっています。大学でいうオープンキャンパスみたいな感じですが、たくさんの人に来ていただいて、見て、体験してもらっています。あと今年のトピックスとしては、ワールドロボットサミット(WRS)があります。これはF-REIさん主催で、世界各国のロボット関係の方が来ていろいろなチャレンジやコンペティションが予定されています。

短期・中長期で描いている構想

ーー 今少し今後のご予定もありましたけれども、改めて今年、来年の計画や中長期的なビジョンを教えていただきたいです
昨年度、長崎県と福島県が「新技術実装連携“絆”特区」に指定を受けまして、今まではドローンを飛ばすのにルートを決めて「ここは飛んでいいよ」だったのが、ドローンの将来の発展性も考え長崎県と福島県に関し一定のエリアでの飛行を認めていただきました。エリアをある程度自由に設定(申請)して、実際に近い環境でドローンを飛ばせるよう規制緩和をしていただいたので、もっといろいろな実証を積み重ねていきたいと思います。
あと、今年に関しては、ワールドロボットサミット(WRS)があります。ロボット開発されている方はもちろん一般の方も見ていただけるので、ぜひたくさんの方に来ていただき、今のロボットやドローンの現状を理解していただければ大変ありがたいです。

編集部注(※)
ワールドロボットサミットの情報はこちらよりご確認いただけます。

カギとなる「新技術実装連携“絆”特区」の活用

ーー 「新技術実装連携“絆”特区」のお話もありましたが、福島と長崎は、それぞれどういう課題があって連携に至ったんですか?
今、福島県は震災から産業復興ということでロボットに力を入れています。長崎県さんは離島がすごく多いんですね。物資の供給など、やはり船だと時間もかかりますし、そういうところでロボットやドローンの活用をしようと、実際に固定翼のロボットを使いながら、すでに実用化もされています。我々が持っている技術、施設、あとは国の認定を持っている6社のドローンのうち、2社は福島県産なので、そのドローンを長崎県さんに使ってもらうとか、そのようにお互い連携してドローンの社会実装の普及をやっていこうと進めております。
ーー いろいろお話をお伺いできてよかったです。本日はありがとうございました
どうもありがとうございました。

福島ロボットテストフィールド副所長・安藤則雄氏

タリスマン株式会社代表 盛内文雄
インタビューを終えて
タリスマン株式会社代表 盛内文雄


今回取材した福島ロボットテストフィールドは、東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県浜通りの復興を目指す国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」の重点6分野(「廃炉」「ロボット・ドローン」「エネルギー・環境・リサイクル」「農林水産業」「医療関連」「航空宇宙」)の1つである「ロボット・ドローン」領域の中核施設。既に80社を超えるロボット・ドローン関連企業がこの地域に進出し、年間300~400件の実証実験が実施されていると聞き、ロボットテストフィールドの職員はもちろん、自治体および地域が一体となって大きな成果を出しつつあることに感動しました。とはいえ、ロボットやドローンの社会実装はまだ道半ば。当然福島だけではなく、国民全員が関心を持ち続けていくべき挑戦であると改めて認識をさせていただきました。ありがとうございました。

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