転職活動というものは社会常識として、現職の会社の関係者には知られないように行う必要があります。知られると転職前後にさまざまなトラブルが発生するリスクがあり、場合によっては退職が困難な状況になることもありえます。
重々気をつけるのが基本ですが、LinkedInを使って転職活動を行っている人は、そのせいでばれるリスクがあるのか気になりますよね。今回の記事ではLinkedInの活用で転職活動が社内にばれるリスクについて詳しく解説し、対策や注意点などをわかりやすく解説しましょう。
目次
LinkedInとは?そのメリットとデメリット
まずはLinkedInをよくご存知でない方のために、基本情報およびメリットとデメリットを紹介しておきましょう。
世界最大のビジネス特化型SNS
LinkedInは、シリコンバレーで2002年に生まれたビジネス特化型SNSです。2021年8月現在では登録ユーザー数は7億5,000万人を軽く超え、日本ではおよそ200万人のユーザーがいます。
LinkedInは本来、プロジェクトメンバーを探す目的でエンジニアによって作られました。現在はビジネスパーソンが転職に活用したり、企業がリクルーティングに活用したりするだけでなく、人脈開拓や個人営業、コラボレーションにも使われています。
ネットワークを広げるためには、気になるユーザーにつながりリクエストを送ります。それが承認されれば、コンタクトとしてメッセージのやりとりができます。プロフィールを公開しているとは企業やヘッドハンターから、スカウトメールが来ることがあります。外資系企業やグローバル企業などのバイリンガル向け求人の情報は結構豊富です。
英語が話せるビジネスパーソンには、活用のしがいがあるかもしれません。海外のビジネスパーソンにとってはすでにデフォルトのメディアになっています。 なお、LinkedInを活用して転職する方法に関しては、以下の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ参考にご覧ください。
LinkedIn利用のメリット
LinkedInを利用するメリットはたくさんあります。主立ったものだけでも以下のとおりです。
- スカウトの声が掛かる
- ビジネスネットワークが広がる
- 自分の市場価値が見えてくる
- 成功者から学べる
個別に詳しく見ていきましょう。
スカウトの声が掛かる
LinkedIn利用のメリットとしては、まずヘッドハンターからの誘いが来ることです。企業のリクエストに応じて人材を探すサーチ型の転職エージェントや、ヘッドハンティング会社、企業の採用担当者などから声が掛かります。
転職を志向しているユーザーであれば、プロフィールの全てでなくとも、出身大学や現在の職種(コンサルティングやマーケティング、財務、営業など)や過去のキャリア、保有スキルなど一部を公開していればおおむね声がかかってくるでしょう。スカウトが来ることによって、自分から探さなくとも、自分に合う企業と出会える可能性が生まれます。
ビジネスネットワークが広がる
また、ビジネス上のネットワークが広がります。有意義な情報交換ができる相手を見つけることができたり、スタートアップの起業などで新しいビジネスに関してのパートナーを募ったりする場合も、他のSNSより効率的に集めることが可能です。
なぜならLinkedInは、ビジネスに特化したSNSなのでユーザーの基本スタンスが、無関係な情報や無駄なやり取りは省略して、お互いに本質的な話から入る方向性だからです。他人から見た自分の評価を載せれば、社会的な信用度を補強することに役立ちます。外資系に転職をする際には、推薦状が重要です。そういう文化に溶け込むためにも、LinkedInで人脈を広げて推薦状を描いてもらえる人間関係を構築できます。
自分の市場価値が見えてくる
LinkedInを利用してネットワークを広げたりスカウトを受けたりして、どんどん他者や他社と絡んでいると、それまでの自身のビジネスの世界観と視野の広さは、より広大なステージに移っていきます。
そこで感じるのは自分の、ビジネスシーンにおける人材価値、転職市場における付加価値です。それまであまり実感がなかった自分自身の市場価値が、少しずつ見えてくるでしょう。それをもって、転職ビジョンをより鮮明に描いていくことが可能になります。
成功者から学べる
他にも、情報を完全に公開しているエグゼクティブな成功者と呼べるユーザーから、どういうプロセスで今のポストに上り詰めたかのストーリーを学ぶことが可能です。
評伝やインタビュー記事では伝わらない、本人からのリアリティがある説明を見聞きできるからです。大いに、自身のキャリアプランを描く参考になるでしょう。
LinkedIn利用のデメリット
LinkedInの利用で目立ったデメリットはありませんが、強いて言えば多少なりとも個人情報が赤の他人に見られることです。もちろん先に述べた、人脈を広げたりスカウトを受けたりできるメリットと引き換えなのでやむを得ないリスクといえるでしょう。
また、ヘッドハンターからのまともなスカウトメールならよいのですが、スカウトの体で単にその人材紹介サービスに登録することを促すだけのメールが、膨大に来るのが面倒だというのもデメリットです。
そこで、一読して以下のような要素があるメールはスルーしておくのが得策です。
- テンプレ的な文面である
- きちんと名乗らない
- ジョブスクリプション(紹介する仕事内容)の記載がない
メールはたくさん来るので、まともなものだけ取り合いましょう。
LinkedInでの転職活動は会社にばれるのか?
転職活動が会社にばれた場合には、悪くすればトラブルに発展する場合やトラブルとはいかないまでも社内の重要事項からは当然ながら遠ざけられ、会議への出席を阻まれることもあるかもしれません。
昇給の予定が決まっていたとしても、何らかの理由でまず見送られます。ボーナスの時期が近ければ、査定が著しく下がるか最悪の場合支給されません。
またそれとは逆に、会社の都合から一時的に昇給や昇進と引き換えに引き留められる可能性もあります。それもあくまでその場しのぎであり、長い目で見てよい環境で仕事が継続できるとは言えないでしょう。
さらに、転職活動をしていても、結局その職場に留まることになる可能性もないとは言えず、波風を立てないほうが賢明です。やはり内定をもらうまでは、転職活動を公表するのは避けましょう。
しかしLinkedInのように、登録制ではあってもある程度開かれたメディアを転職活動で利用している場合は、この限りではありません。そこで、LinkedInを活用した転職活動が会社にばれるリスクという点について、詳しく触れておきましょう。
利用していることを知られる可能性はゼロではない
まず大前提として、転職活動自体はともかく、少なくともLinkedInを利用していることを会社に知られてしまう可能性はゼロではありません。
あなたが公開する情報の内容や公開範囲に気をつけていても、ある程度の情報から見えてくる人物像があなたであるとピンと来る社内の人がいるかもしれませんよね。そのため、LinkedInの利用の事実がばれる可能性は、少なからずあることは覚悟しておくほうがよいでしょう。
利用自体は誰に知られてもまったく問題ない
とはいえ、LinkedInの利用がそのまま転職活動をしているとは限りません。多くのビジネスパーソンが、皆それぞれの目的でLinkedInを利用しています。
利用している事実を知られたとしても、それだけではまったく何の問題もないでしょう。そもそも見つけた相手もLinkedInのユーザーです。従業員側なら立場は同じで何も不都合はないです。
たしかに、あなたを見つけた社内の人間が採用担当者であれば、転職活動の可能性を疑うかもしれません。しかし、グローバル企業以外で日系企業の採用担当者がLinkedInを利用することはまだまだ少ないので、そういう自体になる確率は低いです。
もしそういうケースがあったとしても、あなたが転職活動をしているとは断定できないかぎり問題視されることはないので、必要以上に気にすることはありません。
転職活動は注意すればほぼばれない
あなたがLinkeInを使って転職活動をしているのかどうかは、スカウトメールのやり取りを第三者が覗き見できないかぎり誰にもわかりません。
そのため、不注意でそういうことを思わせる内容を公開情報に書き込まないかぎり、ほぼばれることはないと考えてよいでしょう。
LinkedInの転職活動がばれないための3つの対策
ここまでで述べたとおり、LinkedInの利用が知られることはあっても、転職活動をしていることがばれる可能性は極めて低いと言えます。
しかし、それでも気になる人のために、万全を期して転職活動がばれないための対策について見ていきましょう。
情報の公開範囲の設定を慎重に行う
基本的なことですが、情報の公開範囲の設定を慎重に行いましょう。
まず、公開プロフィールは設定次第で、LinkedInのユーザー以外の人でも見ることができます。公開設定がオンになっていれば、検索エンジンで名前が検索された際にLinkedInのあなたのアカウントが上位表示されます。
あえて自己ブランディングを狙う人にとっては、とても強力なツールになるかもしれません。しかしそうではなく、プロフィールをLinkedIn登録者以外には一切公開したくないのであれば、以下の手順で設定を確認しましょう。プロフィールのアイコンをクリックし、「プロフィールの表示」をクリックします。
画面右上の「公開プロフィールとURLを編集」をクリックします。
「公開プロフィール設定」のページの右下にある「プロフィールの公開範囲」をオフにしておきましょう。
こうしておけば、検索エンジンには自分のプロフィールは引っかからず、LinkedInのユーザーに限定して情報を公開できます。気が変わったらいつでもオンに設定を変えることができます。LinkedIn内での公開範囲は、プロフィールの「設定&プライバシー」から項目ごとに細かく設定できるので、ひとつずつ内容に応じて慎重に設定しましょう。
名前そのものは同姓同名に人が通常たくさんいるものなので、神経質になることはありません。しかし、写真は知っている人が見たらわかるので、公開範囲に注意が必要となります。見られても問題ないと思える範囲に限定しておきましょう。写真の公開範囲は基本的には以下の4段階あります。
- あなたと直接つながっているコンタクト(一次コンタクトのみ)
- あなたのネットワーク(3次コンタクトまで)
- すべてのLinkedInメンバー(ログインしているユーザー全員)
- 一般公開(前述の「プロフィールの公開範囲」をオンにした状態でのみ有効)
会社にばれることを避けるには、一次コンタクトのみにするのが賢明です。写真の設定は以上のとおりですが、設定対象の項目によって公開範囲の設定は微妙に違いがあるので注意してください。
転職活動を思わせるアクティビティの公開も気をつける
転職活動を連想させるかも知れないアクティビティに関しては、要注意です。こちらも公開範囲を、一次コンタクトに限定しておきましょう。
一次コンタクトは安全性がはっきりしているユーザーなのでまず心配ありませんが、そのユーザーから先のコンタクトには誰がいるかわかりません。よって、大事をとって一次コンタクト止まりにしておくのが賢明です。
勤務先や関係する企業をブロックしておく
Linkedinでのあなたの情報を公開する企業を、あらかじめブロックしておくことが可能です。勤務先はもちろん、取引先や前職など、そこから現職の会社に漏れるおそれがある企業をすべて、名指しでブロックしておきましょう。
そうしておけば、個人ユーザー以外からは見つかることがなくなります。もちろん取引先の人がLinkedInのユーザー登録をしている可能性はゼロではないにせよ、そこが外資系企業や日系グローバル企業でないかぎりはかぎりなく低いでしょう。
また、外資系企業や日系グローバル企業の人であればビジネスパーソンのLinkedInの利用についてはデフォルト感覚なので、そもそも問題視されません。
転職活動自体がばれないための3つの注意点
次に、LinkedInを活用している場合だけでなく、それ以外も含めて転職活動自体がばれないための注意点を解説しましょう。主な注意点は以下の3つです。
- 面談の日はできるだけ有給休暇を取ろう
- 社内の人間への相談は一切避けよう
- 何があっても現職の仕事は最優先しよう
それぞれを見ていきましょう。
面談の日はできるだけ有給休暇を取ろう
まず、応募先との面談や面接試験がある日に体調などを理由に病欠や半休にする人もいますが、できるだけ筋を通して有給休暇を取得しておくのが賢明です。
例えば突然の体調不良での休みや遅出、半休などにしていると、何か緊急なことが起こった場合に連絡が入ったり、オンラインでも良いから打ち合わせに参加できないかなどと言われたりするリスクがあります。それを頑なに断ると、周りの人が不審感を抱きかねません。
そうではなく、きちんとプライベートの用事があるからこその休みにしておけば、電話もされないでしょう。万が一大事な案件で電話されても、面談時ならスルーしてそれが終わってから対応すれば問題ありません。
社内の人間への相談は一切避けよう
次に、いくら親しい人や信頼できる人であっても、社内の人間への相談は「例外なく」やめておきましょう。残念ながら誰かひとりにでも打ち明ければ、ここだけの話として広まってしまうおそれが少なからずあります。
そこからあらぬ憶測が飛び交い、不都合な状況になりかねません。最悪の場合には、辞めにくい状況に陥ったり、ボーナスの査定が下がったりするリスクもあります。
もともとが社内だけの関係ではなくプライベートでの本当の親友であればともかく、仕事が縁で知り合った人に「この人なら打ち明けても大丈夫」という油断は禁物です。たとえもともと知人であっても、社員としての立場のある人ならそれも例外にはなりません。
何があっても現職の仕事は最優先しよう
職場にいても頭が転職活動の方へ行ってしまうこともあるでしょうが、それは側から見ていると違和感を生む要因になります。複数の人がそう感じると、「彼は様子が変だ。近々転職するのではないか?」との噂がすぐに立ちます。
そうならないように、職場にいる時間帯は現職を最優先して、転職のことは頭から排除しておきましょう。そしてきちんと現職で良いパフォーマンスを発揮することが、円満退職の秘訣でもあります。
ばれたくないがための偽名登録は賢明でない理由
LinkedInに登録する名前に関して、会社にばれたくないために偽名で登録する人もいますが、これは賢明ではありません。その理由を解説しましょう。
そもそもLinkedInの規約違反になる
偽名登録することは、そもそもLinkedInの規約違反になります。実際に、LinkedInの規約には次のように書かれています。
“you will only have one LinkedIn account, which must be in your real name; and you are not already restricted by LinkedIn from using the Services. Creating an account with false information is a violation of our terms, including accounts registered on behalf of others or persons under the age of 16”.
和訳すると以下のような内容です。
「LinkedInアカウントはひとりに1つだけで、本名である必要があります。そうすれば、LinkedInサービスの使用で制限を受けることはありません。虚偽の情報でアカウントを作成することは、他人または16歳未満の人に代わって登録されたアカウントを含め、当社の規約に違反します。」
引用元:User Agreement | LinkedIn
つまり偽名で登録していれば、発覚するとLinkedInの使用に何らかの制限を受けたり、アカウントを停止されたりなどの厳しいペナルティがあるということです。だから、本名できちんと登録しようという内容を入れてください。
偽名は信頼されず誰にも相手にされなくなる
偽名で登録して、もしスカウトにあったとしましょう。それが良い話であって順調に進んでいったとしたら、どこかで本名を打ち明ける必要が出てきます。
偽名であったことを伝えた瞬間から、あなたの信頼がなくなるのは間違いありません。偽名は匿名と同じで、真面目なやり取りに関しては誰にも信用されず、相手にされないです。よほど珍しい名前でないかぎり、前述のように同姓同名の人がたくさんいるので、名前だけでは転職活動がばれることはありません。必ず本名で登録しておきましょう。
まとめ
LinkedInを活用することで転職活動が会社にばれるリスクについて解説し、対策や注意点などをわかりやすく解説しました。
基本的にはLinkedInの利用がばれることはあってもそれ自体は問題ありません。転職活動自体がばれないように情報公開に関して細心の注意を払い、リスクある企業をブロックし、アクティビティの発信内容に気をつければ問題ありません。
職場においては転職のことを一旦忘れて、違和感を生まないように慎重に行動し、応募先との面談日の有給休暇の取得や、仕事への真摯な取り組みを怠らないようにしましょう。