会社で上司が部下を指導して、育てる時代は終わりました。エンジニアが、自ら道を切り開く時代です。エンジニアとしての経歴を棚卸し、「職務経歴書」を作成して、自らのキャリア・パスを開拓しましょう。
今回はエンジニア・マネージャーとして、実際にエンジニア採用の面接も行っている筆者が、職務経歴書のポイントをお話します。
職務履歴書から、面接官は応募者の何を知りたいのか。どのように職務経歴書を作成したらよいかなど、私自身が面接官として選考する際の視点や、実際に転職した際の経験をもとにお伝えします。
業界や企業によっても異なる部分もあるかと思いますが、ひとつの事例として参考にしていただければと思います。
面接官、企業が採用したいエンジニアは、自ら考えられる人材
私(面接官)がエンジニア・マネージャーとしてエンジニアを採用する時は、最初に、自己PRを見て、以下の2点が、具体的に、数字/データで記載されているか見ます。そこで、興味があれば、詳細な職務経歴を確認し、面接をお願いします。そうでなければ、詳細は読まずに、お断りします。
1. 自ら考えて動ける点をアピール
まず応募してきたエンジニアが、これまでのプロジェクトの中で直面した問題をどのように解決したか、新規の全く新しいプロダクト開発をした経験が記載されているか見ます。ポイントは、いかに自分で考え、他の人と協力して、また、他の人に影響を与えて、これらを実施したかということです。少なくとも、これまでの経験の中で自ら考えて、どのように品質/プロセス改善をしたかを見ています。
近年注目されている、アクティブ・ラーニングという教育改革のひとつの言葉を聞いたことがありますか?
アクティブ・ラーニングとは、ウィキペディア(1)によれば、「学修者が能動的に学習に取り組む学習法の総称である。これにより学習内容を確かに修得しつつ、座学中心の一方的教授方法では身につくことの少なかった21世紀型スキルをはじめとする汎用的能力、ひいては新しい学力観に基づくような「自らが学ぶ力」が養われることが期待されている。」と定義されています。
私は何年も前から新卒も含めて、なぜ、エンジニアの多くが、言われたこと指示されたことしかできないのか悩んできました。自ら考えて問題を解決できない。さらには、新しいことにどのようにチャレンジするのか分からないのです。高度成長時代は、これで問題なかったのですが、今や、自ら考えるエンジニアが求められています。その根本的な問題のひとつは、日本の詰め込み教育にあり、今やっと教員改革が始まり、企業の求める人材が育てられようとしています。
しかしながら、今まさに転職者には、この自ら考える能力が求められています。「職務経歴書」の自己PR欄に具体的に数字を使って、この能力を示す具体的な事例を記載しましょう。無ければ、現時点で転職は難しいかもしれません。面接官は、自己PRにこの能力が記載されているかどうかで、それ以下の職務経歴書をみるか見ないか判断しています。
2. 何ができるか貢献度をアピール
次に応募してきたエンジニアがこれまでの経験や自ら考える能力を発揮して、どのように会社に貢献してくれるかも見ます。
そのため応募者は、応募する会社、担当部署の業務について、会社案内(ホームページ)を読み、転職エージェントの話を聞たりして、よく理解する必要があります。その上で、自己PRのアピールポイントや「職務経歴書」の内容を応募する会社向けにカスタマイズしましょう。
その時の重要なポイントは、その会社、担当部署の「お客様」はだれかと言うことを思い浮かべて、記載することです。例えば、「お客様」は、社内の他の部署か、消費者か、企業か等々、その実際のお客様に何をどのように貢献できるかを記載すれば、面接官に強くアピールできます。
初めての職務経歴書作成は自己分析/データ収集から
初めて「職務経歴書」を書くためには、まず入社してからの職歴を時系列に、人、もの、お金の観点から、箇条書きにします。(入社年月、配属部署名、役職は、社名データベースを確認して正確に記述します。)
いつからいつまで、どの部署でどのようなプロジェクトを担当したか、プロジェクトの期間、体制、予算/費用のプロジェクト概要を具体的な数字/データを使って記述します。そして、そのプロジェクトでの自分の役割、特にどのような技術を利用し、何を習得して、新技術は何で、何の改善を実施したしたのか、自分の貢献度を具体的な数字で記述します。
エンジニアとしての技術スキルとして、現在従事している最新の技術名、利用しているシステム/機器/ツール名も、列挙します。最新の情報が最も重要で、それまでに経験した技術と一貫性があるようにします。
取得した技術資格、英語レベル(TOEIC点数)も、取得日を含めて正確に記載します。場合によっては、証明書の提出を要求されることもあるので、正確に記載します。
QC活動、社外活動等、自己PRのサポートとなる活動・成果を、記載します。
これで「職務経歴書」を書くためのデータは準備できました。
職務経歴書を完成させるまでのプロセス
新卒採用ではなく、中途採用、特に初めての転職であれば、転職エージェント利用して、「職務経歴書」を完成させ、ターゲットの企業に応募するのがいいでしょう。転職エージェントを利用すると、自分自身の市場価値も分かります。
もちろん直接、希望の会社に応募することも可能ですが、初めて「職務経歴書」を作成するのであれば、客観的なアドバイスがもらえる転職エージェントを利用することをお勧めします。
【プロセス1】ベースとなる職務経歴書を作成する
希望職種/会社が掲載されている転職エージェントがあれば、まずは、自分に合いそうな1社を選んで、登録しましょう。その会社の「職務経歴書」のテンプレート、書き方のガイドラインに従って「職務経歴書」を作成するのが、最善・最速の方法です。
「職務経歴書」は、特に決まった形式はないので、転職エージェントの「職務経歴書」のテンプレートを使います。
【プロセス2】第三者に添削してもらう
作成した「職務経歴書」を転職エージェントの添削サービスを利用して、自分のベースをなる「職務経歴書」を完成させます。
第三者に作成した「職務経歴書」を、必ず見てもらいましょう。きっと自分では気付かないアピールポイントが見つかるハズです。
【プロセス3】応募先に合わせてアレンジ
応募先の企業、職種に合わせて、応募企業向けの「職務経歴書」を完成させます。
最初に述べたように、応募企業に貢献できることを、応募企業にあわせてアレンジします。転職エージェントの担当者が、企業採用担当者の実際の意向をよく理解しているので、エージェントのコメントも反映します。
【プロセス4】完成度・精度を高める
できれば、他の転職エージェント(1 あるいは 2社)にも登録して、同様のことを実施し、「職務経歴書」の完成度を高めます。
もちろん、同じ会社に、複数の転職エージェントから応募はできません。転職エージェントによって、強い業界等、特徴があるので、うまく利用しましょう。
まとめ
自分のやりたい仕事が、今現在できないと思っているエンジニアは、今一度、これまでの職務の棚卸を、「職務経歴書」を作成することで、自己分析しましょう。
きっと、現時点の問題点や、将来やりたいことが明確になると思います。企業も千差万別、求めるエンジニアも色々です。自分にあった会社がきっと見つかります。
定性的な「これまで、運用に携わってきたので、開発:設計をやってみたい」といような漠然とした志望動機は、面接官の心を動かせません。定量的に自己分析し、自分で考え、アクションが起こせるか、会社ひいてはその会社のお客様に具体的に何をどのように貢献できるかを、自己PRでアピールしましょう。詳細な職務経歴や、資格、技術的なスキルは、その能力をサポートするエビデンスにすぎません。