コンサルティング業界概要
一口にコンサルティングといっても、多岐に渡る業種が存在します。コンサルティング業界を特徴別に分類し、概要、気になるコンサルティングファームの年収などをまとめてみました。戦略、IT、人事、ファインナンスなどのテーマから、製造、小売、医療など業種に特化したものまで、各コンサルティング業界がどういった役割を担っているのか、キャリア選択の参考に知っておくとよいでしょう。
戦略系コンサルティング業界
特徴のひとつとして、ワールドワイドな展開をしているファームが大半であることが挙げられます。各ファームともにローカライゼーションに力を入れ、欧米での理論をベースに、より日本のクライアントのニーズに合わせたコンサルティングを提供しています。
以前は大企業の経営者相手に、綿密な分析をベースにした提案をするのが戦略系の業務でしたが、現在は提案するだけでなく、戦略の実行面までサポートするようになり、クライアントの現場に入り込んで奮闘する側面も大きく担っています。
採用について
第二新卒から30代半ばまでを積極的に採用している傾向にあります。コンサルティング未経験は、有名大学出身者であれば、前職の職種問わず採用される傾向があります。また、MBAは必須ではなく、中途採用される方の前職種は多種多様で、ポテンシャル採用が行われています。英語力は必須でないものの、アベノミクス以降の景気回復から海外進出する企業が増え、グローバルなプロジェクトが求められるようになり、英語が話せる転職成功者が増えていることから、英語力が求められる傾向が見られます。
主な戦略系コンサルティングファーム平均年収※
・マッキンゼー 1045万円
(世代別最高年収 20代 年収904万円 / 30代 年収1490万円 / 40代 年収1912万円)
・A.T.カーニー 847万円
(世代別最高年収 20代 年収642万円 / 30代 年収1300万円 / 40代 –)
・ベイン・アンド・カンパニー 791万円
(世代別最高年収 20代 年収1160万円 / 30代 年収1512万円 / 40代 –)
総合系コンサルティング業界
総合系コンサルティングファームは、社員数が数百~数千名と規模が大きく、幅広いコンサルティングを行っているファームです。総合系コンサルティングファームが扱う課題は多岐に渡るため、製造/流通業・金融業・官公庁などの業界別グループと、戦略・会計・人事組織・SCMなどのソリューション別グループと大きく区分けされます。各領域の専門コンサルタントが必要に応じ協業し、プロジェクトのフェーズごとに参加するメンバーを変え、クライアントの変革をサポートします。
各専門コンサルタントが一貫したサポートを提供することは、クライアントのみならず、コンサルタントにとってもスキルアップを計るのに相応しい場として、大きな魅力と捉えられているようです。
ビック4(デロイト・PwC・KPMG・EY)と呼ばれるアメリカの会計事務所から派生したファームはグループ内に会計事務所、監査法人、法務、ファイナンシャルアドバイザリーなどの企業を抱えているため、連携しグローバルサービスを提供しています。
採用について
20代~30代前半の若年層の転職については、職歴や経験よりも有名大学出身者中心にポテンシャル採用する傾向が見られます。高い英語力を求められるようになってきています。
主な総合系コンサルティングファーム平均年収※
・アクセンチュア 854万円
(世代別最高年収 20代 年収1284万円 / 30代 年収11620万円 / 40代 年収3180万円)
・デロイトトーマツコンサルティング 812万円
(世代別最高年収 20代 年収1200万円 / 30代 年収1480万円 / 40代 年収2004万円)
・アビームコンサルティング 710万円
(世代別最高年収 20代 年収1100万円 / 30代 年収1456万円 / 40代 年収1464万円)
IT系コンサルティング業界
ITコンサルティングは、IT戦略のプランニング、システム開発、ERPと言う基幹系情報システムやCRMなどシステム導入をサポート、運用のメンテナンスなどが主な業務です。
クライアントとなる顧客層は中堅~大企業まで幅広く、数十億規模のプロジェクトを手掛けることがあります。
ITコンサルティングファームの中にはITだけでなく、ベンチャー企業への投資事業や、コンサルティングとは別の事業を経営をしたり、オリジナルソリューションの研究開発・導入支援など、独自の特色を活かした取り組みを行うファームも登場しています。
また、「AI・RPA」と言った昨今話題になっている技術を活用したプロジェクトの案件も急増していることから、今後のトレンドとなる技術を経験できるのも、この業界の魅力と言えます。
採用について
全体的に活発な採用が行われています。出身大学よりも業務経験が重視され、IT関連の業務経験がある方を採用する傾向が強くあります。近年のAI・RPAの普及により、業務コンサル、ITコンサル
SE経験者には新たなキャリア獲得のチャンスが得られるようになるでしょう。
主なIT系コンサルティングファーム平均年収※
・フューチャーアーキテクト 643万円
(世代別最高年収 20代 年収862万円 / 30代 年収1216万円 / 40代 年収772万円)
・ウルシステムズ 746万円
(世代別最高年収 20代 年収572万円 / 30代 年収849万円 / 40代 年収870万円)
シンクタンク系コンサルティング業界
シンクタンクを直訳すると、頭脳集団という意味があり、多種多様な領域の専門家が集まり、調査研究・分析・提言・システム開発を行う組織を指します。
シンクタンクは、政府系シンクタンクと、野村総研・日本総研などの民間シンクタンクの2つに分けることができ、業務内容は大きく分けて以下のような内容になります。
1、経済動向のリサーチ
2、官公庁の政策決定のための調査・提言
3、民間企業に対してのコンサルティング
主な目的は経済調査になりますが、現在は調査・分析と言った研究活動のみならず企業経営全般のコンサルティングも大きな役割になっています。
政治家が新しい法律や条例を決める際の、調査・提言も行っていることから、私達の生活により影響を及ぼす可能性のあるコンサルティングファームと言えるでしょう。
代表的な会社としては、野村総研、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(旧:UFJ総研)、日本総研、NTTデータ経営研究所などがあります。
採用について
新卒は大学院卒の採用が多いと言われるシンクタンクですが、中途採用に関しては大学院卒か否かは問われません。部門ごとの採用になるので、学歴よりも該当部門と職務経験の関連性が重視される傾向にあります。
シンクタンク系コンサルティングファーム平均年収※
・野村総研 763万円
(世代別最高年収 20代 年収1172万円 / 30代 年収1406万円 / 40代 年収1780万円)
・日本総研 632万円
(世代別最高年収 20代 年収922万円 / 30代 年収1206万円 / 40代 年収1134万円)
医療・ヘルスケア系コンサルティング業界
医療・ヘルスケア系のコンサルティングファームは、大学病院、民間病院、介護施設、医薬品・医療品メーカー、バイオベンチャー、臨床・非臨床試験受託企業などのヘルスケア領域の事業のコンサルティングを行っています。前記のような医療機関に対して総合的に経営基盤を強化するためのコンサルティングを提供しています。これまで、研究や治療へ労力を費やし、経営面に関しては他業界に比べ遅れをとっていた感のある領域ですが、経営不振に陥っている医療機関に対し再生支援を行う場合もあります。再生支援を行う場合もあります。
採用について
医療関連業務経験者や医療系コンサルティングファームの出身者を採用する傾向にあります。海外の案件が増えてきていることから、読み書きに支障のない程度の英語力は求められるようになっています。また、病院統合の案件も増えており、会計士や財務経理経験者も採用ニーズが高まっています。
医療・ヘルス系コンサルティングファーム平均年収※
・エムスリー 634万円
(世代別最高年収 20代 年収650万円 / 30代 年収780万円 / 40代 年収720万円)
組織人事/チェンジマネジメント系コンサルティング業界
組織人事コンサルティングファームは、企業の組織ビジョンに適した人事戦略のプランニング、人事制度の導入により企業を改革するコンサルティングを手掛けています。具体的には、経営者の報酬制度、給与や評価制度の調査・設計、人材能力開発、組織文化や風土の改革、退職給付金など、クライアントの人事に関するさまざまな問題に対応しサービスを提供しているのです。
人事問題は、社内だけではなかなか解決が難しい側面があり、第三者の介入が必要とされるため、組織人事コンサルティングファームへの需要が高まっています。
また、近年ではチェンジマネイジメント系コンサルティングと呼ばれる新しい分野が生まれ、戦略を提案しても現場の社員が実行しないと言ったクライアントに対して、社員の意識・行動改革にアプローチし業績に結び付けるサービスを提供しています。
組織人事コンサルティングの代表的なファームには、プラウドフットジャパン、ジェネックスパートナーズ、日立コンサルティング(企業再生コンサルタントチーム)などがあります。
採用について
組織人事系コンサル、人事経験者の他、大規模なプロジェクトに対応するため、戦略コンサルやM&A経験者にも採用が広がっています。
日系企業の海外展開に伴う案件も増えていることから、英語力が重視されるようになっています。
組織人事/チェンジマネジメント系コンサルティングファーム平均年収※
・ジェネックスパートナーズ 656万円
(世代別最高年収 20代 — / 30代 年収832万円 / 40代 –)
・日立コンサルティング 640万円
(世代別最高年収 20代 年収815万円 / 30代 年収1080万円 / 40代 年収1296万円)
財務アドバイザリー系コンサルティング業界
財務アドバイザリーコンサルティングファームは、財務関連したコンサルティングを提供しています。具体的には、M&A支援、企業価値評価、企業再生、係争分析の領域が挙げられます。
財務コンサルティングファームは、BIG4と呼ばれる大手会計事務所が強い存在であることから、会計士資格を持っている人ばかりが在籍しているイメージがありますが、金融機関や他ジャンルのコンサルティングファーム出身者も多数活躍しています。
採用について
会計士やUSCPA、税理士資格保持者の他、投資銀行やM&A会社の出身者、証券会社でのリテール人材も案件獲得担当者として採用が広がっています。また、近年はクロスボーダーなM&A案件が増えているため、英語力を必要とするファームも増加傾向にあります。
財務アドバイザリー系コンサルティングファーム平均年収※
・PwCアドバイザリー 647万円
(世代別最高年収 20代 年収600万円 / 30代 年収1200万円 / 40代 –)
日系/国内独立系コンサルティング業界
主なクライアントは、中小企業を対象にしており、若くても直接クライアント企業の社長と話すチャンスを与えられたり、提案から解決策実行のサポートまで現場に入り込んでサポートすることが多いのが特徴です。現場でより実践的なコンサルティングを行うことから、将来独立を目指す人にとって良い経験が積める環境と言えるでしょう。
また、外資系ファームは「UP or OUT」(昇進するか辞めるか)と言った文化が浸透し、短期に集中して経験を積み、数年で転職する傾向が見られるのに対し、日系ファームは離職率が低く特定の分野に強いベテランが長く勤めやすい傾向が見られます。
日系コンサルティングの代表的なファームには、船井総合研究所、タナベ経営、オーディーエスなどが挙げられます。
日系/国内独立系コンサルティングファーム平均年収※
・船井総合研究所 483万円
(世代別最高年収 20代 年収780万円 / 30代 年収1996万円 / 40代 年収780万円)
・タナベ経営 536万円
(世代別最高年収 20代 年収507万円 / 30代 年収922万円 / 40代 –)
業務・業界特化系コンサルティング業界
業務・業界特化系コンサルティングファームは、年々多様化する業種のニーズに対応すべく、特定の業種や業界に特化し専門的なサービスを行う、プロフェッショナルファームのことを指します。
例えば、ハイテク業界特化、製造業特化、エネルギー業界特化などの業界に特化したファームや、
法律規制や国際的な認証取得などの知的資本領域に特化したファームなど先端テーマを手掛けるファームも登場しています。
近年では、社会問題の解決や事業・産業立ち上げをサポートするサービスを提供するファームも登場し注目されており、今後も時代やクライアントのニーズに合わせ新しい業種のファームが活躍するようになってくるでしょう。
採用について
全体的に20代の有名大学卒業者、経営企画、マーケティング、M&A経験者を中心にポテンシャル採用が行われていますが、領域により求められる人材が異なります。
業務業界特化系コンサルティングファーム平均年収※
参考資料なし
監査法人系コンサルティング 業界
監査法人は、財務書類の監査または証明を組織的に行うことを目的とし、会計士法により、公認会計士が共同して設立した法人のことを指します。また監査のみならず、4大監査法人と呼ばれる「トーマツ」「あずさ」「新日本」「あらた」を中心に、経営、IT、財務、年金・保険、システムなどの非監査業務に関するアドバイスも手掛けています。
近年はグローバル化が進み、国際的な監査が必要になっていることから、4大監査法人は母体となる大手総合系コンサルティングファームのコンサルタントと連携し、上場企業の監査の大半を担っています。
監査法人系コンサルティングファーム平均年収※
・監査法人トーマツ 747万円
(世代別最高年収 20代 年収1242万円 / 30代 年収1384万円 / 40代 年収1348万円)
・あらた監査法人 693万円
(世代別最高年収 20代 年収1071万円 / 30代 年収1668万円 / 40代 年収1140万円)
企業再生・事業再生系コンサルティング 業界
事業再生系コンサルティングファームは、さまざまな背景から業績不振に陥り経営破綻を来したり、資金不足に悩むなど危機的状況にある企業に対し、立て直しを図るコンサルティングを提供しています。
対象企業の現状を把握し、再生のための事業計画を作成する他、大半のファームが企業内部まで入り込み、新たな資金調達や債権者との交渉なCどの支援にも関わっています。
採用について
財務・税務関連のコンサルティングも多いことから会計士出身者や、戦略・マネジメントコンサルティング出身者を歓迎するファームが多いです。
企業再生/事業再生系コンサルティングファーム平均年収※
・山田ビジネスコンサルティング 601万円
(世代別最高年収 20代 年収764万円 / 30代 年収726万円 / 40代 –)
※平均年収は、キャリコネから引用