人材派遣と人材紹介の違いとは? 仕組みから利用方法までを徹底解説
求人を考えたとき、その方法をどうするかで頭を悩ませてしまう採用担当の方も少なくないですよね。ハローワークや求人広告、自社Webサイト、人材派遣、人材紹介、採用代行(RPO)等々、採用方法が多様化している現代は、選択肢を考えるだけでも大変です。そもそも、イマイチ違いが分かりにくい採用方法もあります。なかでも紛らわしいのが、人材派遣と人材紹介です。違いを把握しているでしょうか。果たして自社に合うのはどちらなのでしょうか。
今回は、人材派遣と人材紹介について、その仕組み、企業にとってのメリット、利用方法までを解説します。それぞれの違いや強みを知ることで、新たな活用方法が見えてくるかもしれません。
1. 人材派遣とは
人材派遣の大きな特徴は、労働者が「雇用契約を結ぶ会社」と「実際に働く会社」が異なること。つまり、労働者と実際に働く会社との間には雇用関係が存在しません。正社員やパート従業員、契約社員などは企業と直接雇用契約を結んで働きますが、派遣社員は派遣会社(以下、派遣元企業)と雇用契約を結び、ほかの会社(以下、派遣先企業)で働くことになります。
このように、人材派遣は、派遣社員・派遣元企業(雇用主)・派遣先企業(就労先)という3者から成り立っているので、一見すると関係性が複雑そうですが、派遣社員の視点で考えてみると、意外とシンプルなのです。それでは、仕組みについて具体的に見ていきましょう。
1.1. 人材派遣の仕組み
まず、派遣社員と派遣元企業の関係ですが、前述の通り両者の間にあるのは雇用関係です。雇用契約を結び、雇用主である派遣元企業から給与の支払いや福利厚生の提供を受けます。次に、派遣先企業との関係です。派遣社員は派遣先企業の指揮命令下に置かれるので、業務の指示や服務指導等を受け、労働を提供します。
このように、派遣社員の立場で見てみると、「雇用関係」と「使用関係」が分離しているのがよく分かります。
他方、派遣元企業と派遣先企業の関係はどうでしょう。両者は労働者派遣契約を結び、それに基づき、派遣先企業が派遣元企業に派遣料(労働者派遣の対価として)を支払います。
以上が、人材派遣の仕組みです。さらに、人材派遣の種類についても見てみましょう。「一般派遣」と「紹介予定派遣」の2種類があります。
一般派遣
一般的に「派遣」と呼ばれているのがこの形態です。派遣社員は派遣先企業で一定期間就業しますが、同じ事業所の同じ部署で働けるのは最長で3年です。
紹介予定派遣
仕組みの大枠は一般派遣と変わらないのですが、派遣期間や派遣前後のルールが少し違って、こちらは派遣先企業に直接雇用(正社員・契約社員)されることを前提としています。派遣期間(最大6カ月)終了後、派遣社員と派遣先企業の双方が合意すれば、直接雇用に切り替わります。
1.2. 企業にとってのメリット
「時給換算すると派遣社員は正社員よりも割高になる」という話を聞いたことがあるかもしれません。デメリットに感じる話ですが、確かにそのような側面があります。にもかかわらず、人材派遣が利用されるのは、次の2点が大きいからです。
1.業務の効率化
人材派遣を利用するとフレキシブルに人材配置を行えるため、業務の効率化が図れます。たとえば、システムエンジニアや財務のプロフェッショナルといった専門性の高い人材を、必要な時期に即戦力として迎え入れたり、あるいは、自社の社員がコア業務に専念できるよう、定型業務を担える人材を増やしたり、といった具合に。いずれの場合も、各々が然るべき業務に集中できるので、生産性も高まります。
2.コストの削減
「正社員を雇用するよりも割高になるのでは? それなのにコストが削減できるのか?」と、矛盾しているように感じるかもしれません。どういうことかというと——。
人件費は、すべての企業において発生する費用であり、最も大きな費用構成を占めるものです。正社員を雇用すれば、給与以外に労働保険料や社会保険料、教育研修費などが必要になりますが、人材派遣の場合はその必要がありません。なぜなら保険料関連は派遣元企業の負担だからです。
また、採用過程で発生する人件費(採用担当者)も抑えられますし、求人を告知するための広告費やパンフレット類の製作費といった外部コストの削減にもなります。
さらに紹介予定派遣の場合は、こんなメリットも。派遣期間はいわば「試用期間」。実際の仕事ぶりを見て、直接雇用の可否を判断することができます。これは入社後のギャップを減らし、安定した雇用関係を築くことにもつながります。
1.3. 人材派遣を利用するには
まずは派遣会社の選定です。扱っている職種や実績、拠点などのほかに、フォロー体制がどうなっているかも確認しながら進めてみましょう。
派遣会社を決めたあとの大まかな流れは、〈依頼〉→〈ヒアリング〉→〈契約締結〉です。ヒアリングでは、業務内容・就業条件・必要なスキルなどを詳細に伝えることで、よりニーズに合った人材を派遣してもらえる確率が高まります。ヒアリング実施後は、「労働者派遣基本契約書」を取り交わし、契約を締結。派遣料金や相互の義務、損害賠償等、商取引上の重要な取り決めを基本契約とすることが多く、必要な商慣習になっています。派遣会社による人選・マッチングを経て、候補者が決定すると次は個別契約の締結です。個別契約は派遣先企業が人材派遣を受け入れるごとに締結するもの。「労働者派遣個別契約書」を取り交わすのですが、これは派遣法により義務付けられた法定記載事項を主とした書面で、具体的な労働条件などが記載されます。
もし、限られた期間内で即戦力を求めるならば、やはり人材派遣はおすすめです。長期雇用を慎重に考えている場合は、紹介予定派遣を試してみる価値はあります。
2. 人材紹介とは
読んで字のごとく、人材を求めている企業(以下、企業)から依頼を受けて、条件に適合する候補者を有料で紹介するサービスです。人材紹介サービスとも呼ばれており、このような事業を行っている「人材紹介会社」は、厚生労働大臣から許可を受けた「有料職業紹介事業者」のことを指します。
人材派遣との最も大きな違いは、雇用関係にあります。人材紹介では、雇用契約を結ぶのは企業と候補者。人材紹介会社はあくまで企業の採用活動をサポートするという位置付けです。それを踏まえて、まずは仕組みを見ていきましょう。
2.1. 人材紹介の仕組み
人材紹介会社が、求人の依頼を受けた企業に対して、条件に合った候補者を紹介する、という非常に分かりやすいシステムです。人材紹介会社は人材を紹介するだけでなく、面接の日程調整や求職者への合否連絡など、採用活動に関わるさまざまな業務を代行するのも大きな特徴のひとつ。代行するのは「キャリアアドバイザー」や「キャリアコンサルタント」と呼ばれる業界に精通したプロたちです。
また、料金体系も特徴的で、ほとんどの人材紹介会社が成功報酬型を取り入れています。
この2つは特徴と同時にメリットでもあるので、次項「企業にとってのメリット」で少し掘り下げて解説します。
2.2. 企業にとってのメリット
前述の通り、専任の担当者がいること、および成功報酬型の料金体系が大きなメリットといえます。なぜかというと、それぞれが次の2点につながるからです。
1.効率的な採用活動が可能
専任担当者が採用活動に関わるさまざまな業務を代行するため、企業の採用担当者は人材の選考のみに注力できます。工数の削減は、業務負荷の軽減にもなるはずです。
2.費用を気にせず、納得いくまで探せる
たとえ何人紹介されても、面接を実施したとしても、採用が決まるまでは費用がかかりません(※)。そのため、納得のいく人材をじっくりと探すことができるのです。
(※)一部着手金が必要なケースもあります。
2.3. 人材紹介を利用するには
人材派遣と同様に、まずは人材紹介会社の選定です。なかなか候補を絞れない場合は、複数の人材紹介会社に依頼するという方法も。前項「企業にとってのメリット」②で解説したように、初期費用がかからないため、コスト面での心配がないからです。
選定後は、〈依頼〉→〈ヒアリング〉→〈契約締結〉という流れ。企業と人材紹介会社が取り交わす「人材紹介基本契約書」には、委託業務の内容や報酬の算定方法、返還金などの規定が盛り込まれおり、内容に問題がなければ合意、契約成立となります。
正社員を募集したいけれど採用活動にかかるコストや時間に制約があり、なかなか前に進めない……という場合、一度人材紹介を検討してもよいでしょう。コスト面でリスクを低減できるのは、メリットが大きいはずです。
3. 人材派遣と人材紹介を上手に活用するためには
人材派遣とは、企業の求める人材を派遣会社が手配してくれること。即戦力が欲しいときや「試用期間」を経て採用を考えたいときに活用したいサービスです。一方、人材紹介とは、人材紹介会社が面接までのお膳立てをしてくれること。採用活動にかかるコストや時間を気にせず、じっくりと正社員の選考を行いたいときに適しています。
大まかにまとめると、「特定の業務を任せたい」「一定期間だけ人手が欲しい」という場合は人材派遣、「コア業務を任せたい」「会社の将来を担う人材が欲しい」という場合は人材紹介を検討してみましょう。
両者は似て非なるものですが、どちらも頼りになる存在です。仕組みやどのようなメリットがあるのかを理解したうえで、上手に活用したいもの。そのためには、まずは自社が求めている人材や任せたい業務について明確にしておく必要があります。
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