人材派遣サービスの中で、派遣された企業にやがて就職するという前提のサービスがあります。それは人材派遣サービスの中でも、「紹介予定派遣」と呼ばれる派遣方式です。
紹介予定派遣というカテゴリーは、派遣社員にとってひとつの働き方の選択肢となります。企業としても正社員として採用する前に、企業風土との相性や人材力を見極められるのがメリットです。
今回の記事では採用担当者のみなさんに向けて、紹介予定派遣と一般派遣との違いやメリットなどについてわかりやすく解説しましょう。
そもそも紹介予定派遣とは何か
紹介予定派遣は、派遣先の企業にいずれ直接雇用されることを前提とした派遣案件のことを指します。ただし、紹介予定派遣で派遣されたからといっても、企業側と派遣社員側のいずれも、絶対に直接契約しなければならないわけではありません。
派遣期間の間に、受入企業と派遣社員のそれぞれが本契約を結ぶかどうかを検討し、お互いが納得できる場合にのみ直接契約を結びます。
派遣期間が試用期間となり、双方のミスマッチを避けられるメリットもあります。
採用する側の企業は、社員に短期間ですぐに辞められると、多大な採用コストのロスになりますよね。紹介予定派遣はそういうリスクを最小限に減らす意味で、企業側にとっても重宝する派遣方法だと言えるでしょう。
紹介予定派遣と一般派遣の違い
一般派遣と紹介予定派遣は、派遣会社を通じて派遣先で働くという形式は同じですが、募集の条件や派遣期間やルールなどにさまざまな違いが存在します。
詳しく見ていきましょう。
派遣先の直接雇用が前提であることを明示する義務がある
紹介予定派遣の場合は、派遣会社は派遣先との直接雇用を前提にしていることを、当の派遣社員にあらかじめ伝えておく必要があります。そして派遣社員側も、それに同意したうえで派遣先に赴任しなくてはなりません。
一方、一般派遣においては決められた派遣期間があり、その後更新がなければその企業への派遣は終了します。もちろん、人材派遣会社は派遣社員に、あらかじめその旨を伝えておかなければなりません。
6ヶ月の派遣期間を経て直接雇用が協議される
一般派遣の派遣期間は最長で3年であるのに対し、紹介予定派遣では最長で6ヶ月です。その期間を経て、直接雇用についての双方が協議に移ります。
なお、いずれ雇用することが前提であるとはいえ、派遣期間中の業務はあくまでも派遣契約で定められた範囲内の業務内容を逸脱させてはいけません。
合意があれば派遣期間中に直接雇用に移行できる
一般派遣では、派遣契約の期間中での直接雇用は契約違反となります。しかし、いずれ雇用する流れを前提としている紹介予定派遣においては、双方の合意があれば、契約期間の途中でも直接雇用に移行することが可能です。
派遣先による事前審査が認められている
派遣先の企業と派遣社員が将来的に雇用契約を結ぶわけではない一般派遣では、就業前の書類選考や面接が禁じられています。
一方、雇用につながる可能性がある紹介予定派遣においては、派遣先があらかじめ書類選考や面接などの事前審査を行うことが認められています。場合によっては、その事前審査の段階で断られる場合もあります。
紹介予定派遣を受け入れる派遣先企業のメリット
受入企業にとって紹介予定派遣を受け入れるメリットは、以下のような点があります。
- 採用コストを削減できる
- 直接雇用が前提で決裁権はある
- 直接雇用の契約時に条件の仕切り直しができる
- 雇用形態は正社員に限定されず企業都合で決められる
- 自社と人材のミスマッチを減らせる
個別に見ていきましょう。
採用コストを削減できる
紹介予定派遣を受け入れる企業側のメリットとしては、特に採用コストの削減が大きい項目と言えるでしょう。
採用のためには、通常なら求人の広告費や選考試験を行うコストなどが大きくかかります。それだけでなく、採用担当者が問い合わせへの対応や選考試験に携わることなどに費やす時間や労力などがあります。
紹介予定派遣からの採用であれば、人材派遣会社に支払う紹介料以外の採用コストが不要なので、採用コストが削減できます。
直接雇用が前提でも決裁権はある
前提は直接雇用で、また派遣社員と受入企業の双方による協議があり、最終的な決裁権は受入企業にあることはメリットです。
つまり、派遣期間の仕事ぶりなどを評価した上で、共に働くことが望ましくないと判断した場合は、派遣社員が望んだとしても企業側は拒否できます。それによって、ミスマッチ採用は十分避けることができます。
直接雇用の契約時に条件の仕切り直しができる
直接雇用に移行することになった場合でも、細かな条件については派遣の時の条件が横滑りするわけではありません。あらたな契約として、適切な状態に仕切り直しができます。
自社の状況や人材の適性から、かならずしも正社員でなく契約社員やパートタイマーとして雇用する選択肢もとれ、給与等の待遇面でもあらためて適切な提案が可能です。
雇用形態は正社員に限定されず企業都合で決められる
直接雇用をする場合に、必ずしも正社員として契約する義務はありません。さまざまな事情を考慮した上で契約社員やパートタイムなどを企業が望む場合は、そういう契約も可能です。
自社と人材のミスマッチを減らせる
なによりも受入企業にとって紹介予定派遣を活用する最大のメリットは、本契約の前にお互いのことを理解して判断する期間があるのでミスマッチを避けやすい点です。
紹介予定派遣では、受入企業は最長で6ヶ月の勤務状態を見てから契約するかどうかを判断できます。面接や試験ではわからなかった「人となり」や勤労意欲、勤務態度、環境へ順応力などの把握から、ミスマッチを未然に防ぎやすくなります。
また、公募の採用では求めるニーズに合った人材が来るかどうかわからないですが、狙いすましたピンポイントの人材を派遣会社にリクエストできるという効率の良さもメリットになります。
紹介予定派遣と一般派遣、どちらを選ぶべき?
人材派遣サービスを利用する企業としては、紹介予定派遣か一般派遣か、どちらの方式を選ぶべきか迷うことも多いでしょう。
ここでは受入企業として、どちらを選ぶのが賢明かを判断する基準について、見ていきましょう。
紹介予定派遣が適している場合
受入企業が、専門性が高い人材を望んでいる場合や、長くその業務に従事できる人材を求めている場合は紹介予定派遣が適しています。
専門性が必要な場合には能力の見極め、長く従事してもらいたい場合は企業風土との相性やその人材の意欲やモチベーションの高さなどを見極めて判断できるからです。
具体的な業務の例としては「営業」「企画・開発」「マーケティング」「社内SE」などです。
一般派遣が適している場合
受入企業が人材の補充を必要としている業務が永続的ではなく、ある程度で役目がなくなる場合は、期間が限られる一般派遣が適しています。
また、業務自体の難易度が低いルーティーンのような業務も、向き不向きが少ないので一般派遣が適しているでしょう。
具体的な業務の例としては「店頭スタッフ」「新店舗オープン時のスタッフ」「イベントの応援スタッフ」「簡単なデータ入力」「簡単な事務作業」などです。
まとめ
紹介予定派遣は、企業に本当に貢献できる人材を確保したい場合に、有効な派遣の方式だと言えるでしょう。事前審査もできるので、できるだけミスマッチを避けつつ、お互いに得るものがありそうな人材を確保できる可能性が高まります。
本契約の際も適切な契約内容や雇用形態で交渉できるので、さまざまな観点から受入企業のメリットが考えられます。これといったデメリットもないので、採用担当者のみなさんは検討しましょう。
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