【アウトソーシングとBPO】委託したいのはタスク? それともプロセス?
近年、業務の効率化や生産性の向上などを目的に、「BPO」サービスを導入する企業が増えています。それに伴い、ビジネスの場では、BPOという言葉が浸透してきた感がありますが、改めてその意味を問われるとどうでしょうか。また、「アウトソーシング」との違いを自信を持って答えられるでしょうか?
今回は、「アウトソーシング」と「BPO」について、その違いをはじめ、メリットやデメリットなど最低限押さえておきたいポイントを解説します。2つのサービスの違いがすっきり理解できれば、どちらが自社にとってふさわしいのかが自ずと見えてくるはずです。
やさしく解説! アウトソーシング・BPOの基礎知識
アウトソーシングとBPOは、自社の業務を外部に委託するという点で共通しています。おおまかにいえば2つは仲間同士。アウトソーシングの一形態がBPOなのです。では、何が違うのか——。さっそく、両者の違いを探っていきましょう。
そもそも、アウトソーシングとは? BPOとは?
まずは、アウトソーシングとBPOの意味を確認するところから始めましょう。
●アウトソーシング
アウトソーシングとは、外部(out)から調達(sourcing)するという意味で、自社の業務を外部の会社に委託する経営手法のことをいいます。
●BPO
BPOとは、Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の略称で、企業活動における業務プロセスを一括して外部に委託するアウトソーシングの一形態のことです。
ここで着目したいのが、BPOのP(=Process)の文字。この「プロセス」というのが、両者の違いを決定づけるものです。
「業務のプロセス」も対象になるのがBPO
外部リソースを利用するのは、業務の効率化や生産性向上のためといったさまざまな目的がありますが、通常のアウトソーシングは、人手不足を補うという側面が強くあります。そのため、「業務の遂行」がメインとなり、委託期間が一時的であることも少なくありません。
一方、BPOは、業務の遂行はもとより、業務プロセスの構築・設計、効果分析なども行います。「業務のプロセス」が対象なのです。そのため、BPOでは業務改善が重要なミッションであり、企業とはパートナーとして長期・継続的な関係が結ばれます。
以上の内容を端的にまとめると、次のようになります。
BPO:課題解決につながるような、業務の改善策の提案などもしてほしい!
深掘り解説! 〜アウトソーシング編〜
いままでの説明でアウトソーシングの輪郭を捉えられたのではないでしょうか。ここからは、もう少し掘り下げてアウトソーシングについて解説します。
アウトソーシングを活用するメリット
アウトソーシングを活用するメリットはさまざまありますが、主なものとして次の3点があげられます。BPOも含めたアウトソーシング全般に共通するメリットでもあるので、しっかりと押さえておきましょう。
メリット1:人手不足の解消
業種、企業の規模を問わず、人手不足が深刻化しているいま、高度な判断を伴わないような定型業務に人的リソースを割くことが難しくなっています。アウトソーシングを活用すれば、人手不足の補完ができ、限られた人員でも適材適所の配置が可能となるのです。
メリット2:コストの削減
人件費やオフィス賃料、水道光熱費、システム利用料などの固定費を、委託費用として変動費化することができるため、コストの削減につながります。
メリット3:業務の品質向上
アウトソーシングサービスを提供する業者の多くは、専門的なノウハウや最新の知識を持ち合わせています。そのため、業務の処理速度や正確性の向上が期待できるのです。
アウトソーシングのデメリット(注意点)
次に、アウトソーシングのデメリットを確認しておきましょう。主なものは、次の3点。といっても、対策を施せばデメリットとはいえないものばかりです。その対策も併せて紹介しますので、注意点として参考にしてみてください。
ノウハウが社内に溜まりにくい
アウトソーシングを導入すれば、自社の社員がその業務を担当することがなくなります。そのため、経験値が高められないという状況が生じやすくなるのです。
対策
定期的な運用報告を受けるなど、委託先と密にコミュニケーションを取るようにしましょう。
情報漏洩のリスク
委託する業務によっては、社員の個人情報や顧客情報といった機密情報を共有することになりますから、その分セキュリティ上のリスクは高まります。
対策
委託する企業のセキュリティレベルを予め確認し、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)やプライバシーマークを持っている企業を選定するようにしましょう。また、契約時はSLA(サービス品質保証)を締結し、情報の取り扱いに関して明確なルールを取り決めておくことも大切です。
社員のモチベーション低下
頻度としては少ないものの、社内の中核となる業務をアウトソーシングしたために、担当していた社員をはじめ部署全体のモチベーションが下がってしまったというケースが見受けられます。モチベーションの低下により業務の効率化や生産性の向上が妨げられてしまっては本末転倒です。
対策
社員のモチベーションにも配慮しながら、どの業務をアウトソーシングするべきかを見極めなければなりません。そのためには、社内でしっかりと意思疎通を図るようにしましょう。
深掘り解説!〜BPO編〜
BPOも広義にはアウトソーシングですから、前章で解説したことはすべてBPOにも当てはまります。なので、ここではBPOの活用事例を見ながら、その強みなどを紹介していきます。
BPOの対象業務と活用事例
BPOが得意とする業務領域は、「コンタクトセンター」「IT関連業務」「バックオフィス」などです。ここではバックオフィス業務の中でも活用される機会の多い「経理」を例にアウトソーシングとBPOの違いを説明します。
上記のように、タスクの一部が対象となるアウトソーシングに対して、BPOは経理業務の全プロセスを一括して委託することができるわけです。さながら、BPOサービスが自社の一部門といったところでしょうか。その分、社員はコア業務に専念できますから、競争優位性も高められます。また、専門性の高いBPOサービス業者に、経理業務をまるごと任せるわけですから、いままで以上にムリ・ムダ・ムラを省き、効率のよい業務プロセスを構築できるはずです。
BPOを活用するメリット
前項で見たように、コア業務に専念できるというのが、BPOならではのメリットといえるでしょう。また、制度変更やグローバル化への柔軟な対応もBPOの強みです。とくに会計分野では法律や規制が頻繁に変わり、年々複雑化していますが、BPOサービス業者の持つ専門的なスキルがあれば難なく乗り越えられるのです。
デメリットに関しては、アウトソーシング全般にいえることと共通しているので、前章の「アウトソーシングのデメリット(注意点)」を参照してください。
アウトソーシングやBPOを活用できる業務・できない業務
自社ではできないから外部に依頼しよう!と思っても、アウトソーシングやBPOを活用できない業務もあるので、注意が必要です。
【アウトソーシングやBPOを活用できる業務】
- コールセンターなどの電話業務
- 経理・会計業務
- 人事・労務業務
- 工場や製造工程の在庫管理
- 店舗や工場の運営 など
以上のように、一定の型が決まっているノンコア業務・ルーティンワークが該当します。おおまかに、直接は利益を生まないけれど、どの企業にも不可欠な業務はアウトソースできると覚えておくとよいでしょう。
【アウトソーシングやBPOを活用できない業務】
- 企画立案(経営戦略・組織改革など)
- 企業の利益に直結する判断業務
- コア業務
- 現金を扱う業務
- 士業などの独占業務
- 期間限定業務
- 1名体制の業務
以上のように、企業の利益や価値の創造に関わること、また、弁護士・税理士など資格が必要な業務や補償リスクが高い業務などが該当します。
企業の根幹を成すコア業務と、資格のない者が携わることが禁じられている独占業務はアウトソースできないと心得ましょう。
ここで、たしか企画立案はやってもらえるはず……と思った人がいるかもしれませんが、アウトソーシングで行える企画・提案は、あくまで実務視点からのもの。「企業が求めている範囲内で、いかに効率よく業務を行えるか」という提案に止まります。全社を巻き込むような企画立案は、コンサルティングサービスの領域になります。
また、3カ月など短期・一時的に業務を依頼したい場合は人材派遣やアルバイトなどのほうが適しているでしょう。
人材派遣に関してはこちらの記事でご紹介しています。
https://talisman-corporation.com/ja/dp_consideration
BPOを導入するプロセス
BPOによって自社の課題を解決したいとお考えの方は、BPOを導入するプロセスを確認しておきましょう。
BPO導入前の検討からBPOサービス業者の選定まで
BPOを導入するとき、事前に検討しておくべきことからBPOサービス業者を選定するまでの過程を説明します。
プロセス1:現状を分析する
まず、自社の現状を把握しなければいけません。どの業務が人手不足なのか、どの業務が経営を圧迫しているのか、どの業務の品質を改善するべきなのか——。そもそもBPOの導入で解決するのか否かを見極めるために、現状を分析して、問題点を洗い出しましょう。
プロセス2:業務範囲と成果を明確にする
BPOを導入したほうがよいと判断したら、次はBPOサービス業者に委託する業務範囲を明確にしましょう。具体的にどの業務を任せて、どのような成果を期待しているのかをはっきりさせて、社内で共有しておきます。
プロセス3:BPOサービス業者を選定する
最後のプロセスでは、BPOサービス業者を選定します。プロセス(1)(2)を踏まえるて、よりふさわしいBPOサービス業者を選び、成果が期待できる業務委託契約を結びます。このとき、次項にまとめた選定ポイントをチェックしましょう。
BPOサービス業者の選定ポイント
BPOサービス業者の選定ポイントはさまざまありますが、次の3点は必ず押さえておきたいところです。アウトソーシングにも当てはまるので、しっかり読み込みましょう。
業務に関する専門性・実績
BPOサービス業者によって、専門領域や得意な業務は異なります。たとえば、「コンタクトセンター」領域といっても、インバウンドかアウトバンドかでオペレーターに求められるスキルは変わってくるわけです。なので、何を得意とするサービス業者なのか、自社が求めている業務に合っているかをしっかり見定めましょう。
セキュリティに対する意識
BPOでは機密情報を取り扱うこともあるため、セキュリティ体制は非常に重要です。ISMS認証、プライバシーマークを取得しているかをポイントにしてみましょう(前章「アウトソーシングのデメリット(注意点)」の(2)情報漏洩のリスクを参照)。
価格
同じサービスでも、内容や品質、業務体制により価格が異なることがあります。1社に絞らず、複数のサービス業者から見積もりを取るようにしましょう。
BPOの導入前に自社の現状をよく知ること
広義にはBPOもアウトソーシングですから、自社の業務を外部に委託するという点で両者は共通しています。ですが、サービス内容は大きく異なるため、導入を検討しているならば違いをしっかり理解していなければなりません。違いがあやふやなままでは、適切なサービスを受けられなくなってしまう恐れがあるからです。
おおまかにいうならばアウトソーシングは単純なオペレーションのため、BPOは経営戦略の一環として活用されます。ですから、この作業をしてほしい!のか、それとも、業務改善や業務の見直しも必要!なのか、まずは自社の目的を明確にすることが先決です。それが明確になれば、自ずと自社にふさわしいサービスが見えてくるでしょう。