派遣社員として働いていると、派遣先から直接雇用の話があるかもしれません。直接雇用の話を受けるか否かの前に、「派遣の引き抜きは違法ではないのか?」「違約金を払わないといけない?」などの不安を感じる人もいるでしょう。
さらに「直接雇用に切り替えたほうが得か」「給料は上がるのか」などの疑問が浮かび、判断に迷うことがあります。この記事では、派遣社員の引き抜きの違法性について、また直接雇用のメリットとデメリット、切り替え時に確認すべき注意事項について解説します。
派遣社員の引き抜きは違法?
派遣社員の引き抜きは違法なのでしょうか。違約金は発生するのかなど、具体的に解説します。
派遣の引き抜きは違法ではない
労働者派遣法33条では、派遣労働者が契約終了後に派遣先に雇用されることを禁止する契約を締結してはいけないと定められています。そのため、派遣会社との契約後に派遣社員を正社員として引き抜くことは違法ではありません。
では、派遣会社との契約期間が満了していない時点での派遣社員の引き抜きはどうでしょうか。その場合、派遣先の企業が派遣会社に違約金を支払う場合があります。違約金の相場は派遣先と派遣会社の契約内容によって異なりますが、一般的には派遣社員の年収の2割程度と言われています。派遣社員の年収が400万円の場合、80万円程度の違約金を支払うことになるでしょう。
派遣社員が違約金を払う必要はない
結論から言って、どのような形で引き抜かれるにしても派遣社員が派遣会社に違約金を支払う必要はありません。労働者には職業選択の自由があり、派遣社員にもその権利は認められています。そのため、派遣会社との契約が満了した時点、または契約が満了していない時点で直接雇用に切り替えたとしても違約金を支払う必要はありません。
違法ではないが、バレたら気まずい雰囲気になる可能性あり
派遣会社からすると、派遣社員の引き抜きは人材の流失、紹介手数料の減少、売り上げの低下につながります。そのため、派遣社員の引き抜きは違法ではありませんが、場合によっては派遣会社と気まずい雰囲気になる可能性があります。そのため、直接雇用に切り替える場合は、できる限りスムーズに事を進めるのが無難です。
【派遣社員から直接雇用】引き抜きされる人の特徴
派遣先の企業から引き抜かれる人には、企業がその人の働きを高く評価しているという特徴があります。例えば、遅刻がない、仕事に勤勉に取り組んでいる、企業のルールをしっかりと守っている、などが挙げられます。さらに、コミュニケーションスキルが高い、自社で活用できるスキルや資格を持っている、などの要素も重要なポイントです。
派遣から直接雇用への切り替えがおすすめな人
派遣社員から直接雇用に切り替わると、働き方や将来のキャリアプランにも変化が生じる可能性があります。直接雇用への切り替えには、「責任のあるポジションで働きたい」「雇用を安定させたい」「一つの職場でしっかりとスキルを磨きたい」などの希望を持っている人がおすすめです。
派遣から直接雇用になるメリット
この章では直接雇用に切り替えるメリットを解説します。
雇用が安定する
派遣社員の場合、同じ職場で継続して勤務できる期間は原則3年と定められています。契約期間が満了すると、また新しい職場を探さなければいけません。新しい仕事を覚えて、人間関係に慣れるには時間がかかり、ストレスになることもあります。
直接雇用になれば、契約期間が定められていないので、定年まで働ける可能性があります。「いつまで契約してもらえるのだろうか…」と不安を覚えながら仕事をする必要がなく、腰を据えて仕事に専念できるでしょう。
収入が安定する
派遣社員の場合、派遣先の給与体系に従うため、勤務先が変わるごとに給与額も変動する可能性があります。また、基本的に派遣社員には賞与やボーナスは支払われず、臨時収入は期待できません。一方、直接雇用になると、勤務先が変わることはなく月々の収入が安定します。また、会社によっては賞与やボーナスの支給も期待できます。
責任のある仕事を任せてもらえる
一般的に派遣社員の業務内容は、雇用契約で定められている範囲に限定されます。そのため会社や部門全体を統括する業務を任されることは少ないでしょう。また、派遣社員には契約期間が定められているので、チームリーダーや責任者、マネジメント業務などのポジションが与えられることはあまりありません。しかし、直接雇用になれば、派遣社員よりも責任のあるポジションで働くことが可能です。人をまとめたり、自分のスキルをさらに活かせる環境で働けたりする可能性があります。
キャリアアップの可能性がある
派遣社員の場合、決められたポジションや待遇で働きますが、直接雇用になって働きが認められると昇進や昇格の可能性があります。人事評価で昇進が決まると、賞与やボーナスなどの待遇もアップするでしょう。経済的な余裕が生まれるだけでなく、会社から働きが認められているという満足感は仕事のやりがいにつながります。
派遣から直接雇用になるデメリット
次に直接雇用に切り替えるデメリットについて解説します。
仕事の責任が増える
直接雇用になると自分の仕事に今まで以上に責任を持つ必要があります。ミスをすると注意を受け、なぜこのようなミスが発生したのかなどを上司または経営陣に説明する必要があるかもしれません。「言われたことだけしていればよい」という働き方ではなく、会社の売上に貢献する働きが求められます。人によっては仕事上の責任感や緊張感にストレスを感じる人もいるでしょう。
給与が下がることがある
直接雇用になったからと言って必ず給与が上がるわけではありません。例えば、直接雇用になると厚生年金や労働組合費、共済費などが給与から引かれ、時給で働いていた派遣社員のときよりも給与が下がる可能性があります。
残業や休日出勤が求められることがある
基本的に派遣社員は決められた就業時間内で働くので、仕事が忙しくても「残業はせずに、残りは正社員に任せておく」というスタンスの働き方が可能です。しかし、直接雇用になると急な残業を求められ、断りにくい雰囲気を感じることもあるでしょう。また、休日に出勤して残った仕事の整理を任される可能性もあります。
休暇が取りにくくなる
会社によっては、休暇を取るタイミングが難しい場合があります。忙しい時や人手が不足しているときに、長期休暇を取ることにためらいを感じるかもしれません。ゴールデンウイークや年末年始など、会社が休みの時以外に旅行に行きたい、などの希望を持つ人にとっては、休暇が取りにくいというのはデメリットになるでしょう。
いろいろな職場で働けなくなる
直接雇用になると腰を据えて働くことになるので、派遣社員のように様々な職場で働くことが難しくなります。いろいろな職場を経験したい人、様々な分野の人と人間関係を築きたい人にとっては、職場が固定されることはデメリットになるでしょう。
引き抜きの話があったときに確認すべき注意点
引き抜きの話があったとき、確認を怠ると後で後悔するかもしれません。直接雇用に切り替える前に確認すべき注意事項について解説します。
雇用形態
「直接雇用=正社員」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが実際は違います。直接雇用になっても「契約社員」として雇用されるケースもあります。当然ながら、正社員と契約社員では給与や待遇、保険などの条件が異なります。どのような雇用形態で働くのか、しっかりと確認しましょう。
給与や賞与
「直接雇用になったら派遣社員よりも給与が上がる」と一方的に思い込むのではなく、しっかりと確認しましょう。同時に通勤手当や社会保険、有給休暇、賞与、その他の手当てが支給されるのかも確かめます。お金に関することなので質問しにくいと感じるかもしれませんが、契約した後で後悔しないためには事前の確認が必要です。
仕事内容
直接雇用になったタイミングで業務内容が変わる場合があります。さらに、出勤時間や勤務時間なども変わるのか、残業はどの程度発生するのか、なども確認しておきましょう。また、業務内容は変わらないとしても、どの程度の責任を委ねられるのか、時間外のミーティングへの出席や出張などが発生するのかなどを確認することが重要です。
希望に合わないときは断る
直接雇用の条件を確認したものの、希望の条件に合わなかった場合はしっかりと断りましょう。「断りにくかったから…。」という理由だけで、直接雇用に切り替えてしまうと「こんなはずじゃなかった」と後悔する可能性があります。具体的な断り方については、後の章で解説します。
派遣社員から直接雇用へ切り替える流れ
直接雇用に切り替える場合、どのような流れで手続きが進むのでしょうか。見ていきましょう。
派遣先の担当者との面談
派遣先の会社によっては、派遣社員を直接雇用に切り替える際に面談を実施することがあります。直接雇用に切り替えた後の現場の責任者や経営陣が同席する場合があり、会社の一員として働くための心得などを確認します。顔馴染みのメンバーが同席するかもしれませんが、面談の際には最低限の言葉使いやマナーに注意しましょう。
勤務条件等を書面で確認する
給与や賞与、福利厚生などの条件の確認は口約束ではなく、必ず書面で受け取るようにします。口約束だけの場合、勤務開始後に「条件が違う」などの理由でトラブルになることも考えられます。雇用契約書または労働条件通知書を確認して、問題がなければ直接雇用の契約を結びます。
派遣会社との契約を解消する
派遣先と直接雇用を結ぶ場合、派遣会社にもその旨を知らせなければいけません。派遣期間の満了を迎えるタイミングであれば、派遣会社との契約を継続しないことを伝えます。派遣期間の満了前であれば、派遣会社の担当者と連絡を取り、契約解消の手続きを進めます。派遣会社は別の人材を探す必要があるので、契約解消の申し出は希望日の1ヶ月程度前に伝えるのが一般です。
社会保険や雇用保険を切り替える
直接雇用に切り替わると社会保険や雇用保険も切り替わります。派遣社員のときに使用していた健康保険証は派遣会社に返却します。新しい健康保険や雇用保険などは、必要書類を提出すると新しい勤務先が用意してくれます。
派遣の引き抜きの話を断る場合の対処法
引き抜きの話をもらったけど、派遣社員のままで働きたい場合もあります。その場合、どのように対応するとよいのでしょうか。3つの方法をご紹介します。
角の立たない断り方をして、同じ職場で働き続ける
「プライベートを充実させたい」「自由な立場で仕事を続けたい」という理由から、直接雇用の話は断りたいものの、同じ職場で働き続けたいという人もいます。その場合、正直に理由を伝え、直接雇用のお誘いを断るのがベターでしょう。派遣社員のままで働き続けたい理由などを伝えることで、派遣先が代替案を提示してくれる可能性もあります。以下のように丁寧に説明して、自分の意向を伝えることをおすすめします。
「素晴らしい機会をいただき、大変うれしく思っております。いろいろ検討させていただいたのですが、現在の働き方にとても満足しており、今の環境で引き続きお仕事をさせていただきたいと考えております。ご期待に沿えず申し訳ございません。何卒宜しくお願い致します。」
派遣先を切り替えてもらう
「直接雇用を断った結果、派遣先との関係が悪くなった」という場合は、派遣会社の担当者に相談してみましょう。派遣会社が派遣スタッフに変わって、派遣先企業と話をしてくれるケースがあります。それでも問題が解決しないときには、事情を説明して、別の派遣先を紹介してもらうとよいでしょう。
別の派遣会社を利用する
派遣される会社の業種や給与、勤務条件などは利用する派遣会社によって異なります。一つの派遣会社で働き続けるのもよいですが、別の派遣会社を利用すると新しいスキルを身に着けたり、自分の可能性を広げたりするきっかけとなります。
タリスマン株式会社では、幅広い職種・業種のお仕事を用意しています。プライベートを充実できる仕事、高額給与が期待できる業種、スキルを活かせる仕事など、あなたにピッタリのお仕事を紹介させていただきます。「派遣社員として働いてみたい」「今の派遣会社を変えてみたい」という方はぜひタリスマン株式会社まで、お気軽にお問い合わせください。
まとめ:派遣の引き抜きの話は慎重に考えよう
派遣社員を引き抜くことは違法ではありません。派遣先との契約期間満了前に直接雇用に切り替える場合でも、派遣社員が派遣会社に違約金を支払う必要もありません。しかし、派遣社員から直接雇用に切り替えることにはメリットとデメリットがあります。どちらの働き方が自分に合っているのかしっかりと検討しましょう。また、直接雇用の話があった場合、後で後悔しないように、雇用形態や給与、業務内容などをきちんと確認します。
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