派遣という働き方に興味はあるものの、不安の方が先に立ってしまうという人も少なくありません。アルバイトや契約社員、正社員として働いた経験があれば、なお、そう感じてしまうかもしれません。そんな不安の根底にあるものは、おそらく「派遣スタッフは部外者」という感覚でしょう。間接雇用であるため、そのような感覚を抱いてしまうのも無理はありません。けれど、派遣会社には「営業担当」という心強い味方がいるのです。今回は、営業担当と理想的な関係を築き、安心して働けるヒントをご紹介します。
営業担当についての基礎知識
営業担当とは?
営業担当とは、一言でいうならば、「各派遣先企業を担当し、派遣スタッフをサポートする者」。営業担当は、通常、派遣先企業1社につき1人という体制です。しかし、1社に多くの派遣スタッフが就業しているような場合には、複数人で担当することもあります。
では、具体的にどのようなサポートをするのでしょうか。それを理解するためにも、まず、派遣スタッフが就業するまでの大まかな流れを見ていきます。営業担当との関わりが視覚的に捉えやすくなり、サポート内容がよくわかるはずです。
派遣スタッフが登録してから就業するまでの流れ
上記のように、ざっくり7つの工程があり、営業担当の関わる工程が、⑤派遣先企業との顔合わせ(紹介予定派遣の場合は面接)と⑦派遣先企業にて就業です。
もしかすると、⑤は意外な感じがするかもしれません。一般的に面接は1人で受けに行くものですが、派遣の場合は、顔合わせや面接に営業担当が同行します。
採用が決まれば、いよいよ派遣先企業で働くことになるわけですが、このとき、派遣会社と派遣先企業の間では「労働者派遣契約」、派遣会社と派遣スタッフの間では「雇用契約」が結ばれます。この契約の締結も営業担当の仕事です。
それだけではありません。たとえば、働くなかで「仕事が合わない」「人間関係のトラブルに巻き込まれた」といった事態が起きてしまったときには、まず営業担当に話してみましょう。派遣先企業を定期的に訪れ、派遣スタッフが仕事で困っていることや相談したいこと(時給の交渉など)を丁寧に聞くのも、営業担当の仕事なのです。ここまで説明した内容を含め、以下に営業担当の主な業務4点を列挙します。
顔合わせや面接への同行
顔合わせとは、いわば会社見学です。派遣会社によっては「面談」と呼ぶこともあります。
労働者派遣法では、直接雇用を前提とした紹介予定派遣を除き、面接を禁止しています。ただし、派遣スタッフが仕事を受けるかどうかの判断や、疑問点などを解消するために派遣先企業との間で行われる顔合わせまでは禁止されていません。そこで、派遣スタッフが仕事内容や労働環境をしっかりと把握するために顔合わせが行われるのです。この顔合わせや面接には営業担当が同行します。
派遣スタッフのサポート
派遣スタッフの働きやすい環境をつくるのは、営業担当の重要な仕事です。現場に出向いて相談にのるだけではなく、多くの派遣会社では電話やメールで連絡のとれる体制を整えています。
企業への営業活動
そもそも派遣先企業がなければ、派遣スタッフは就業できません。新規開拓も営業担当の仕事です。人材を求めている企業あるいは派遣の導入を検討している企業などへ赴き、派遣スタッフの新規受け入れを提案します。
事務作業
先述のとおり、労働者派遣契約や雇用契約の締結は営業担当の仕事です。そのほか、営業担当の業務にまつわる各種事務作業も、もちろん行います。
営業担当と混同されがちなコーディネーターとは?
営業担当と混同されがちなコーディネーターは、派遣会社の内勤スタッフで、主な業務は次の3点です。
- 登録の受付・面談
- 登録スタッフへの仕事紹介
- 登録スタッフと企業とのマッチング
前項の<派遣スタッフが登録してから就業するまでの流れ>でいうと、①派遣会社に派遣スタッフとして登録、②仕事の紹介、③求人へのエントリー(応募)、④社内での書類選考に関わります。派遣スタッフから見ると、コーディネーターは登録から仕事紹介まで、営業担当は顔合わせから就業までをサポートする人という感じでしょうか。
営業担当とコーディネーターは、職種として異なることが一般的ですが、派遣会社によっては、営業担当がコーディネーターの役割を担ったり、その逆のパターンだったりすることもあります。
営業担当との理想的な関係を築くコツ
派遣スタッフから慕われる営業担当には、共通して次のような特徴があります。
- 現場へ頻繁に顔を出してくれる
- 相談するとすぐに対応してくれる
- 話をじっくり聞いてくれる
とにかく、マメなのです。基本的に人と関わることが好きで、話し上手、聞き上手な営業担当も多いため、つい何でも頼りたくなってしまうのですが、やはり一方的に求めるだけでは良好な関係は築けません。自分を律することも大切です。というと、なんだか小難しく感じてしまうかもしれませんが、なにも肩肘を張るようなことではありません。いつも頭の片隅に置いておきたい、ちょっとしたコツを3つご紹介します。
営業担当の仕事の大変さを理解する
たとえば、相談したいことがあるのに、なかなか電話がつながらなければ、ヤキモキしてしまうのは当然かもしれません。けれど、そんなときこそ一呼吸置いてこんなふうに考えてみましょう。「自分にもしてくれたように、今、ひょっとすると誰かの顔合わせに付き添っているのかもしれない」。
前章で紹介したように、営業担当の仕事は多岐にわたります。そして、その仕事柄、常に誰かと会っている可能性が高く、すぐに連絡がつくことのほうが、じつは奇跡的です。いつも対応が早い営業担当であればあるほど、すぐにつながるのが当たり前になってしまいがちですが、それは決して当たり前ではないことを、肝に銘じておきたいところです。
営業担当にあいさつをしっかりする
えっ、そんなこと?と思われるかもしれませんが、残念ながら、あいさつができない人がいるのも事実です。初めて会ったときにあいさつは済ませたし、今日は相談ごともないからいいか……ではなく、営業担当が現場に顔を出してくれたときは、その都度あいさつはしっかりするようにしましょう。営業担当も人ですから、明るくあいさつをされると気持ちよく働けるものです。
前向きに仕事に取り組む
派遣の仕事は業務内容が限定されています。データ入力など、いわゆるルーティンワークが少なくないため、慣れてくると飽きがくることもしばしばです。すると、だんだん仕事が雑になったり、営業担当に会えば愚痴ばかりこぼしたり……。けれど、そんな態度では、いくら親身な営業担当でも、派遣スタッフに対しての気遣いや、応援したいという気持ちがだんだん薄れてしまうでしょう。それどころか、派遣先企業からの評価を下げ、ひいては、派遣会社の評判まで落としかねないのです。どんな仕事でも、前向きな姿勢で取り組むことが大切です。
営業担当に不満を感じるとき
派遣スタッフから慕われる営業担当がいる一方で、頼りになりならないと思われてしまう営業担当もたしかにいます。ただ、よくよく話を聞いてみると、営業担当だけの問題ではないことも、往々にしてあるものです。
では、どうして頼りにならないと感じてしまうのか? 不満を感じやすい2つのパターンを具体的に見ながら、それらの対処法も紹介していきます。派遣スタッフの意識を少し変えてみるだけで、驚くほど改善することがあるのです。
営業担当と連絡がつかない
前章で紹介したとおり、営業担当は多忙を極め、また、その仕事柄、常に誰かと会っている可能性が高いです。そのため、電話に出たくても出られない、電話をかけたくてもかけられないという状況が生じやすくなってしまいます。営業担当と連絡がつかないせいで、なかなか予定が立てられないという場合もあるでしょう。そんなときこそ、一呼吸おいて冷静に。営業担当の状況を想像してみると、「さすがに急すぎるお願いだったかも」「予定までには時間があるから、もう少し待ってみよう」と、落ち着いて折り返しの連絡を待てそうです。
営業担当とうまくコミュニケーションがとれない
営業担当は、基本的に人好きで話し上手、聞き上手であることが多いのですが、すべての営業担当に当てはまるというわけではありません。なかには口下手な人もいますし、ちょっと威圧感があって話しにくいと感じる人もいるでしょう。もし、親しく話せないという意味で「うまくコミュニケーションがとれない……」と思っているのだとしたら、一度これまでのやり取りを冷静に振り返ってみることをおすすめします。口下手でも誠実に話してくれた、あるいは、話しにくいと思っていたけど熱心に耳を傾けてくれたなど、じつはちゃんとコミュニケーションがとれていませんでしたか。ひょっとすると、自分が思い描く営業担当像とは違うために、うまくコミュニケーションがとれていないと思い込んでいるだけなのかもしれないのです。
また、そもそも自分はいわゆる報連相(報告・連絡・相談)ができているでしょうか。「営業担当ならわかっているでしょう」「わざわざ電話するのは億劫だし、次に会ったときに報告しよう」というふうに、自らコミュニケーションをとることを怠ってはいけません。
営業担当に問題があるときには
前章では、派遣スタッフの意識を少し変えてみることで改善できることがあると、お伝えしました。しかし、もちろんそれだけでは対処できない問題もあります。たとえば、「連絡すると約束したのに連絡をよこさない」「相談や質問しても忘れてしまう」「必要事項すら伝えてくれない」などは、口下手の範疇ではなく、ただの怠慢です。また、「言葉づかいが悪く、暴言を浴びせる」「横柄な態度で接してくる」などは、ちょっと威圧感があるのではなく、パワハラです。そんな営業担当にあたってしまったときはどうしたらいいのか——。対策を2つ紹介します。
派遣会社に報告する
まずは、派遣会社に困っている事実を伝えるべきです。営業担当のどのような言動によって、仕事に支障が出ているのかを理路整然と話すようにしましょう。不快な思いをしていると感情論で話してしまうと、ただのクレームと捉えられかねないので注意が必要です。
相談する相手は営業担当の上司が適任ですが、仕事を紹介してくれたコーディネーターに連絡してみてもかまいません。派遣会社に相談窓口が設置されているならば、そちらを利用してもよいでしょう。
派遣会社を変える
派遣会社に相談することで、かえって事態が悪化すると判断したときは、派遣会社を変えることを検討しましょう。これは、あくまでも最終手段です。ただ、派遣で働く場合、複数の派遣会社に登録している人が少なくありません。派遣会社を変えないまでも、別の派遣会社に登録してみるだけで、気分がスッキリして新しい展開が望めそうです。
派遣会社を選ぶときに押さえておきたいこと
派遣スタッフにとって、営業担当の存在はやはり重要です。派遣会社を選ぶとき、営業担当やコーディネーターの評判をチェックしてみましょう。
また、派遣会社の特徴を知ることも大事です。保有する求人数や求人内容は言うまでもなく、仕事紹介の頻度や就業までのスピードは異なります。「IT業界に強い」「医療業界に特化している」「業界を問わず事務職の求人が多い」というように、得意分野も違います。
派遣で働くためには、営業担当やコーディネーター、そして派遣会社そのものについて、よく知るべきなのです。
派遣会社「営業担当者」との理想的な関係の築き方のまとめ
ライフスタイルに合わせて仕事を選べたり、さまざまな職場で経験を積めたりと、派遣という働き方に大きな魅力を感じつつ、不安が先に立ちなかなか踏み出せないという人も少なくありません。おそらく、その不安の根底にあるものは、「派遣スタッフは部外者」という感覚です。というのも、派遣スタッフは雇用主と就業先が異なる間接雇用だから。就業先で部外者のように感じてしまうのも無理はないのです。
でも、派遣スタッフには心強い味方がいます。それが、派遣会社の営業担当。
派遣先企業との仲立ちから、就業後のサポートまでを担当してくれます。
だからこそ、良好な関係を築き、その関係を末長く保てるのが理想です。そのためには、「営業担当の仕事の大変さを理解する」「営業担当にあいさつをしっかりする」「前向きに仕事に取り組む」の3つのコツを心がけましょう。営業担当と理想の関係を築ければ、派遣で働くことの不安が和らぎ、安心して仕事に打ち込めるはずです。