タリスマンの転職コンサルタントが執筆する、転職お役立ちコラム。今回は少し視点を変えただけで転職活動が好転した転職希望者様のお話しです。
経歴の良し悪しでなくニーズフィット
転職マーケットにおいて新人のリクルーターや転職希望者様が陥る考え方の一つに、潜在的に能力があっても、それまでの経歴と応募企業の社格などを比べ「受かりそうでなければ応募しない」と考えてしまうパターンがあります。「企業が求めている優秀な経歴とは違うから」このような一面的で近視眼的な考えをもとに応募をためらう方は多く、機会損失をされているケースをしばしば見かけます。
「優秀な経歴」って何なのでしょう? 製造業のエンジニアで言えば有名な大学を卒業して英語も話せて大手の企業に就職し、若くして出世して… といったところでしょうか?
しかし転職マーケットにおいて、こういったキャリアが絶対にマッチするとは言えず、日系大手の経験が逆に外資でアジャストできるかどうか疑問符が付き、お見送りになるケースもございます。
要は採用現場のニーズにどれだけフィットするか? これが一番大切な要素なのです。
自分のキャリアと能力を客観視するのは難しい
『大卒じゃないですけど需要ありますかね?』初めて面談した日に、そんな風におっしゃられた、ある半導体エンジニアさんがいました。
- 34歳(当時)工業高校卒
- 半導体装置メーカーの特定派遣 年収450万
- 目標は正社員として半導体装置メーカーに入って年収を上げること
この方は当時三重の四日市にお住まいで、半導体業界には知見のある転職希望者様ですが、どうも学歴がネックになって特定派遣から卒業できないと悩んでおられました。
話してみると現場での経験も長くコミュニケーション能力も高い、何よりトラブルがあった時の対処法というか、とっさの判断力に長けていて間違いなく現場向きの性格でした。お話を聞いているうちに私はある企業様から特別に頂いている案件を紹介しようと思いました。
「現場に強い人が欲しいんですよね…」
ある企業様の人事よりこのようなリクエストを頂いておりました。九州の某所にある外資系のお客様の現場は、とっさの機転や故障個所がどこなのかを特定する嗅覚のようなセンス、また他社のエンジニアとのコミュニケーションや、周りがしっかり見れる方じゃないと務まらないようで、国立大学卒の優秀なエンジニアが2人続けて退職にされてしまい悩んでおられました。お話を聞くと、退職した2名とも半導体エンジニアとしては優秀なのですが、職人的な動きは苦手みたいでマッチしなかったようです。
そこで四日市の転職希望者様にこの案件をお伝えしたですが、九州に引っ越すことがネガティブで、あまり乗り気ではありませんでした。
ただせっかくのチャンスなので、面接は受けてみます。とおっしゃって頂き、予想通り内定は取れました。
企業が求める人物像というのは、ジグソーパズルのピースのように類似形ではあるものの千差万別です。ご自身のキャリアや能力を客観視することはなかなか難しく、このような微妙なニーズへのフィットに気付けないものです。そのために我々のようなコンサルタントの介在価値もあるのですが。
大きな決断がチャンスを手繰り寄せる
内定後にお話をしましたところ、面接の中で自分がとても評価されているのが伝わり、今まで受けた企業のどこより今回自分が行けば間違いなく現場で輝けるのではないかと確信が持てるようになり、唯一残ったリロケーションという課題に悩まれておりました。
それから数日後、思い切って九州で結果を出してきます、と吹っ切れたような声で電話がかかってきました。
独身の方でしたが三重生まれ三重育ちで九州に引っ越すのは本当に大きな決断だったようです。
まさかの展開に大きなキャリアアップ
入社後、期待通りのご活躍をされ客先はもちろんのこと社内での評価も大変高く4年目には課長職に昇進されました。
また九州で現地の方と結婚もされ順風満帆だったある日、三重で大きなプロジェクトが発足し、そのメンバーに抜擢され出戻りで三重に転勤になりました。その転勤のパッケージの手当てがかなり手厚く、年収はトータルで特定派遣時代の2.5倍程度に膨れ上がっていました。
現在は三重でお子様も生まれ家も購入し、さらに出世されておりますが、あの時九州に移住という大きな決断をされたことが結果的にキャリアを大きく好転させ、気づけば三重に帰ってきて、あのまま留まっていたら決してたどり着けなかったキャリアを歩まれているのを見ると不思議な気持ちになります。
それでは次回も宜しくお願い申し上げます。
この記事を執筆した転職コンサルタント
- Akihiro Sakamoto
専門商社での営業、半導体部品メーカーの営業を経て外資系人材紹介会社に転職。同社製造業界部門の関西の立ち上げメンバーとして前職の経験とコネクションを活かし半導体業界、産業機器業界でのコンサルティング活動に従事。 2018年にはAsia Top Biller for Manufacturing & Operations 2018を獲得しアジア圏NO1の成約実績を達成、その後2019年よりTalisman Corporationに移籍。
現在は、コンサルタント業務以外に社内トレーナーをはじめ企業のHRに対する中途採用アドバイザーやLinkedInでの執筆活動を行っており、人材業界を多方面より経験したノウハウを惜しみなく伝える為、Talismanのコーポレートサイトにてコラムの掲載をスタート。