【ウェビナーレポート】コスト削減とエンジニア転職潜在層の採用を実現するLinkedInの効果的な
運用方法
コロナウイルス感染拡大により、私たちの仕事や生活のIT化は著しく進みました。
実際、リモートワークでビデオ会議やメッセンジャーツールを積極的に活用するようになったビジネスパーソンも数多くいらっしゃるでしょう。
このような時代の流れもあり、IT人材に対する需要は高まるばかりです。即戦力となる優秀なエンジニアは各社で取り合いとなり、採用のハードルも上がり続けています。
企業に欠かせないエンジニアを採用するにはどうすればいいのかー。
そこで鍵を握るのが、転職潜在層へのアプローチです。転職を意識する前から自社へのエンゲージメントを高め、キャリアチェンジを検討する段階でいち早くアプローチできるようにする。
優秀なエンジニアを採用するには、このような施策が欠かせないのではないでしょうか。
タリスマンでは、SAPジャパン株式会社 タレントアクイジションマネージャー 前田陽佑氏とLinkedIn ジャパン株式会社 アカウントエグゼクティブ Ray, Chuan-Ling Yang氏をお招きし、「コスト削減とエンジニア転職潜在層の採用を実現するLinkedInの効果的な運用方法」を開催しました。今回はそのウェビナーのハイライトをレポートいたします。
パネリスト:SAPジャパン株式会社 タレントアクイジションマネージャー 前田 陽佑氏
2010年、某外資系人材リサーチ企業にコンサルタントとして入社し、主としてIT企業のお客様の採用支援に従事。2015年より人事採用担当にキャリアチェンジ、別業種も含め数社を経験し2019年よりSAPジャパンにてエンジニア、導入コンサルタント、PM、戦略コンサルタント、製品開発などの職種の採用を担当し現在に至る。
パネリスト:LinkedIn ジャパン株式会社 担当者 アカウントエグゼクティブ Ray, Chuan-Ling Yang氏
台湾出身。日系メーカーの海外支社の営業部門を経て、新卒ソフトウェアエンジニアの採用に従事。年間120人の採用を5人チームで計画、実行。現在はリンクトインのデータ、ソリューション活用を提案するかたわら、学校・学生向けに新しいキャリア、働き方を紹介している。
MC:タリスマン株式会社 代表取締役 盛内文雄
2004 年、某外資系人材サーチ企業の成長期にコ ンサルタントとして入社し、その後支店立ち上げや日本のリージョナルディレクターとして、ビジネス拡大に貢献した経験を持つ。2012 年にタリスマンを設立し、マネージングディレクターに就任。 現在、国内3拠点、海外1拠点にて人材サービスを展開。 スタートアップアクセラレータープログラムのメンターも務める。
採用の効率化は、候補者の母集団作成が第一歩
盛内:まず前田さんがどのようにLinkedInを活用しているか教えてください。
前田:活用方法は大きく分けて2つあります。
1つは「直近の採用」につなげることです。
2020年は、コロナウイルス感染拡大の影響でヘッドカウントが減少しましたが、現時点で若手のエンジニアを2名 LinkedIn 経由で採用しています。
そして、もう1つが中長期の採用を見据えた「母集団形成」です。
LinkedInに登録している方は、全員が転職活動を行っているわけではありません。いわゆる「転職潜在層」にあたる方も数多くいらっしゃいます。
そこで、その方々が将来的に転職活動を行った際にお声がけできるよう、あらかじめLinkedIn上に転職潜在層を集めた母集団である「タレントプール」を作ります。
タレントプールに対して定期的に情報発信をして、当社とのエンゲージメントが高まるようナーチャリングする。このような活動もLinkedInで実施しています。
特に、エンジニアは各社と取り合いになるため、タレントプールの形成が不可欠です。
盛内:中長期的な採用を見据えて、社内でどのような連携を進めていますか。
前田:当社ではAPAC全体で「タレントインテリジェンス」というチームを持っています。そちらのチームと日本の人事、グローバルの採用部門の3チームで連携をとっています。
タレントインテリジェンスは、すぐに採用が必要な方をサーチするのではなく、中長期的にSAPで必要となる人材のナーチャリングが専門です。実際には、各現場部門とディスカッションして、LinkedInなどを活用しながらタレントプールを作っていきます。
LinkedInの「タレントインサイト」で候補者サーチ工数を削減する
盛内:他にどのようにLinkedInを活用していますか。
前田:求人掲載はLinkedInでも行っています。自社で利用しているATS(ApplicantTracking System)とLinkedInがAPIで連携しており、ATSで求人を出すと自動でLinkedInに内容が反映されます。
Ray:国内だけなくグローバルで候補者をトラッキングする際は、LinkedInと連携できるようになっています。
またLinkedInの特徴で、求人情報の文章と登録者のプロフィールを文字マッチングするようになっています。そのため、求人要件に沿った登録者にメールなどの情報が届きやすくなるのです。
さらに、会社ページを見た方や「いいね」を押した登録者にも、プッシュが届くようになっています。
盛内:中長期の採用という観点では、LinkedInの「タレントインサイト」の活用も効果的かもしれません。
Ray:はい。タレントインサイトは2年ほど前に提供を始めた機能で、ある職種に該当する登録者がどれくらいいるかサーチできます。
例えば、「データサイエンティスト」と検索窓に打ち込むことで、データサイエンティストとして登録している人の情報が一覧で見れます。
これにより、転職市場に採用したいポジションの登録者が何人いるか把握でき、登録者へのアプローチもより正確にスピーディーに行えます。さらに、レポート作成・共有機能もあるので社内の情報共有も円滑に進むでしょう。
前田:これは役立ちそうですね。特に、当社のような会社ではデータに対する要求が高い。タレントインサイトのレポート作成機能を使えば社内報告もしやすいですね。
タレントインサイトを使う前は、採用したいポジションにどれくらい人材がいるか手作業で調べなければなりませんし、自社の社員が何人くらいLinkedInに登録しているか調べて、全社員あたりの登録率を割り出す。そして、ポジション別の登録率までマニュアルで算出していました。
これらの情報をもとに、他社の登録者情報を調べて、どのポジションに何人くらい社員がいるか推測することを、競合他社1社ごとにやってきたわけですが、タレントインサイトならこのような工程はほぼ不要になりましたね。
全員、転職潜在層だと思ってスカウトメールを送る
盛内:LinkedInでスカウトメールを転職潜在層へ送る際、気をつけているポイントはありますか。
前田:まず大前提として、スカウトメールをお送りする方々は全員、転職潜在層のつもりで接するようにします。
なので、できるだけ私たちとコンタクトするハードルを下げるため「電話で10分くらい情報交換をしませんか?」という一文を入れるようにしています。
実際、お会いすると話しが10分で終わることはほとんどありません。30〜60分くらいは会話して、アプローチした人の現状など把握することができます。
またスカウトメールは、職種やポジションによって書き分けています。もちろん定型文はあるのですが、少しでもコンタクトしたいと思ってもらうために工夫は欠かせません。
盛内:実際にコンタクトを取った方々のうち、転職潜在層と実際に転職を検討している人はどれくらいの比率ですか。
前田:正確なデータはありませんが、肌感としては1:1くらいではないでしょうか。
ここで大切なのは、転職活動していない人もタレントプールとして情報を入力することです。こうすることで、セミナーなどの情報提供も定期的に実施できます。
また転職するのに前向きな方は、実際に私と話したりするだけでなく、担当部門の社員との交流の場を設けます。部門によっては、いきなり面談というケースもありますが、そういう時はCVなど共有いただけるか予め打診します。
盛内:転職潜在層から実際に転職した方もいらしたと思いますが、入社まで最長でどれくらいかかりましたか。
前田:24ヶ月です。これくらい時間をかけて入社される方もいらっしゃいますので、タレントプールを作り、ナーチャリングする手間を惜しんではいけません。
LinkedInで「ナーチャリング」が効率的にできる理由
盛内:ナーチャリングについてLinkedInでできることがありましたら、Rayさんから共有いただけますか。
Ray:ナーチャリングは、LinkedInのリクルーターアカウントをお持ちでしたら、企業がアプローチしたい有望な人材をプロジェクトに保存することで、トラッキングが簡単に行えます。
例えば、転職潜在層の方が転職希望を「ON」に切り替えたら、すぐに通知が発信され、定期的な挨拶やエンジニアの方々へミートアップなどのイベント情報が送れるようになります。
さらに、プロジェクトのデータをリスト化して、ハイアリングマネージャーに共有することも可能です。これにより、社内にナーチャリングの進捗情報共有もスムーズになります。
企業によっては、これらのプロセスをExcelやCRMで管理したり、カレンダーに1つずつToDoとして入力しているケースもあると思います。しかし、LinkedInなら1つのシステムで完結します。
前田:プロジェクトはいいですよね。特にタレントプールのデータと、そこに対するアクションがハイアリングマネージャーに明示できるのがいい。
2020年はコロナ禍でヘッドカウントが凍結された時がありました。その際に「何やっているの?」とハイアリングマネージャーに聞かれても、LinkedInのプロジェクトのデータを見せれば業務に対する理解も得られます。
ダイレクトリクルーティングで、採用コストを劇的に改善
盛内:前田さんがこれまでLinkedInを活用して「採用コストの削減」に成功したエピソードを教えてください。
前田:LinkedInの使い方は会社によって異なりますが、以前勤務していた会社でダイレクトリクルーティングのチームを持っていた時は、約半年間ひたすらダイレクトリクルーティングの業務だけ集中した時期がありました。
人事も採用以外の雑務に忙殺されて、候補者と話せない、ハイアリングマネージャーと打ち合わせができないことが多々あるかと思いますが、この半年間はその雑務が一切免除されたのです。
ひたすらスカウントメールを送り、候補者と話しをする。ここに徹底フォーカスしました。
ダイレクトリクルーティングに徹していた時期は私1人で20名を直採用して、およそ6,000万円ほどのコストメリットが出ました。
また当時の勤務先の、もう1人の人事担当者も同じくらいのパフォーマンスを出し、LinkedInなどの当時使用していたダイレクトリクルーティングサービスへお支払いするフィーを差し引いても約1億円のコスト削減に成功したと思います。
盛内:ダイレクトリクルーティングでLinkedInを活用するメリットを教えてください。
前田:なんと言っても、コストが安いことです。
ただし、LinkedInを使い込むにはそれなりの工数がかかります。これまで転職媒体がやってくれた求人の掲載などの業務を内製化するので、社内の体制づくりとリソース確保は欠かせません。
どうしても確保できない場合は、タリスマンのRPOのようなサービスも検討した方がよいでしょう。
Ray:ダイレクトリクルーティングのメリットは、自社に採用のノウハウを蓄積できることです。
一方で前田さんが指摘したとおり、転職媒体がやっていた面倒な作業も全て内製化することになるので、ダイレクトリクルーティング専属のメンバーを1名つけるなどリソースの確保は必要です。
あとコストメリットについては、やはりダイレクトリクルーティングに成功した企業は明確に出ています。
データが示す、ダイレクトリクルーティングのコスト削減効果
Ray:LinkedInでは、契約更新時にクライアント様とデータに基づいて振り返りをします。
今回は参考のために、ダイレクトリクルーティングでコスト削減に成功した企業と残念な結果に終わってしまった企業の事例を1つずつ用意しました。
こちらは残念な結果に終わってしまった企業の例です。
LinkedInへの投資金額は約300万円。この企業へは、1年間でLinkedInの登録者が14人転職しました。
そして、実はうち半分が会社ページを読んで興味を持っていたと思われます。
しかし、実際に直採用できたのはこのうちのわずか2名でした。興味を持っていたはずなのに、結果的にはエージェントなどを経由して入社に至っています。
これにより、直採用の単価が1名あたり123万円となっています。
一方、こちらはコスト削減に成功した企業です。
LinkedInへの投資額は、先ほどの企業と同じく300万円。1年間でLinkedInの登録者は24人入社しています。
このうち会社ページを見て、興味を持ったと思われる人が16人。そしてこのうち6人が直採用となっています。
直採用の単価は1人あたり41万円。先ほどの企業の1/3ほどです。
この差は何かと考えると、やはりダイレクトリクルーティングにどれだけ注力したかに尽きます。
会社ページを見た方にどれくらいスカウトメールを送り、何人の候補者と話したか。その結果が如実に現れているといえるでしょう。
ダイレクトリクルーティングは、社内の体制づくりやリソースの確保が大変かもしれません。
しかし、手間をかければそれだけ結果が出る。これはデータからも明らかです。