アウトソーシングと外注どう違う?紛らわしい2つの違いを明快に解説
ともすれば同じように使われることがある2つの言葉として、『アウトソーシング』と『外注』があります。もちろん違いはあるのですが、それをスッキリ説明できる人は少ないのではないでしょうか。実際に使い分けができていない人も、珍しくありません。
今回の記事では、アウトソーシングと外注の違いをさまざまな切り口から解説します。
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アウトソーシングと外注の違い
アウトソーシングと外注という一見紛らわしい2つの言葉を、ここでは以下の3点から違いを浮き彫りにします。
●定義の違い
●目的の違い
●戦略性の違い
それぞれの角度から見ていきましょう。
定義の違い
まずは定義上の違いから説明します。
アウトソーシングの定義
アウトソーシングを定義づけると、「企業が業務の一部を切り出して外部企業に委託すること」です。ただし単に任せるだけではなく、コストの最適化や利益に直結する重要な業務(コア業務)に社内の人材が取り組めるようにするためのものです。
一般的には、必要だが重要性が低い業務(ノンコア業務)を外部企業に任せることを指します。
経済産業省が発表した、オフィシャルな定義づけも見ておきましょう。
それによれば「広義」の定義は、以下の4つがあります。
1:人材派遣を活用した補助業務
2:業務の運営に限定された代行業務
3:業務の企画を任せるコンサルティング業務
4:業務の企画から運営までを任せる業務
一般的に受託形態が1から4に進むほどにスケールが大きくなり、その分リスクも高くなっていきます。狭義のアウトソーシングは4を指し、ある程度の単位の業務を一貫して任せることです。
また、一般的なアウトソーシングは主に「業務委託」と「業務請負」の形態に分けられます。
業務委託のほうは「委任・準委任契約」と「請負契約」があります。前者は契約で取り決めた業務の遂行事態が支払要件となるのに対し、後者は成果物の納品が支払い要件です。
両者とも発注者の指示に沿って業務を遂行しますが、違いは成果物の完成に責任を負うか否かです。
次に業務請負では成果物の完成の責任を負うのは同じですが、成果物を完成される方法についても一任されます。請負契約と言葉が似ていて混同されがちなので、注意してください。
業務請負では成果物を完成させる方法についても一任されるので、どんなプロセスかは問われません。
外注の定義
外注は略称で正しくは「外部注文」であり、「自社の製品もしくは製品の製造に使用する部品の製作を外部企業に発注すること」を意味します。
業務そのものを切り出して任せるアウトソーシングとは異なり、外注は特定の成果物の製造をこなす、限定的な意味合いを持っています。
目的と戦略の違い
両者は発注する企業の目的と戦略が違います。
外注は社内で手が回らない部分をカバーするため、あるいはコストを抑えるためかのどちらかもしくは両方が目的です。
一方アウトソーシングはコスト削減をしながら、同時に企業力の向上を目的にしています。つまり外部リソースを有効に活用して、よりクオリティを高めることを視野に入れているのです。
外注先企業には決められた予算で、一定水準のクオリティの確保だけが求められます。それに対してアウトソーサー(受託企業)には機械的、マニュアル的な作業ではなく、委託企業の成長につながるクリエイティブな仕事が求められるのです。
ハイスキルなスペシャリストにアウトソーシングする場合には、費用面で単なる外注よりも高額になることがあります。そうなったとしても企業の成長が期待できるのなら、選択肢にする意味があるでしょう。
さらにこれは、戦略面でも違いがみられます。
外注という表現は、そもそも以前から製造業で使用されることが多く、例えば自動車や家電などの機械メーカーは工程の一部を外部業者に委託していたので、現在でも外部業者による業務代行の意味合いが強くなります。
しかしながら業務代行とはいえ、対象は物品の製造であり、依頼された成果物の納品というニュアンスが強くなるため、外注を使った上での企業戦略性という意味においては乏しいでしょう。
一方アウトソーシングは、活用による企業の成長に重きを置いています。そういう意味からアウトソーシングは経営手法のひとつであり、戦略的に活用することが前提となります。この戦略性の違いが両者の違いを表す大きな要素です。
外注向けの業務とアウトソーシング向けの業務を解説
業務には外注向けの業務とアウトソーシング向けの業務が存在します。それぞれの特徴を挙げてみましょう。
外注向けの業務
まず外注向けの業務とは、一般的に以下に挙げるような「置き換えが利く」業務が主な対象業務を指します。
●専門性が低い製造業務
●専門性が高くても、一定の技術水準がある企業なら品質をキープできる製造業務
●マニュアルがあれば誰が行っても同様の仕事ができる簡単な作業工程
それらに共通しているのは、業務プロセスに一定のパターンが存在しており、個々の担当者の判断を必要としないことです。こういった業務を外注にすれば、コストダウンと社内リソースの有効活用につながります。
アウトソーシング向けの業務
アウトソーシング向けの業務は、例えば高い専門性が必要であっても必要期間が限られている業務です。また、社内で扱う必要性が低い業務で、社員をほかの重要な業務に当たらせたい場合もアウトソーシングが適しています。
また、企業機密に関連がある業務は社外に出すことにセキュリティ上のリスクがあるので、慎重に検討しなければなりません。
以下の記事でもアウトソーシングの業務について詳しく解説していますので、参考にしてください。
https://talisman-corporation.com/ja/os_dispatch_different/
アウトソーシング活用のメリットとデメリット
企業がアウトソーシングを活用して得られる主なメリットは、生産性の向上、コストの最適化、高度な戦力の獲得が挙げられるでしょう。
一方でアウトソーシングを活用する際にはデメリットとして、セキュリティリスクが伴う、ナレッジの共有やノウハウの蓄積は不可能、ガバナンスの脆弱化リスクなどが考えられます。
これらのアウトソーシングの活用に伴うメリットとデメリットに関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、そちらを御覧ください。
https://talisman-corporation.com/ja/os_dispatch_different/
アウトソーサーを選ぶ3つのポイント
アウトソーサーを選定する際には、以下の3つのポイントに留意しなければなりません。
●戦略重視かコスト重視か
●単なる代行かBPOか
●多角化と加速化に寄与するか
個々のポイントについて詳しく見ていきましょう。
戦略重視かコスト重視か
まずアウトソーシングを検討するに際して、戦略重視かコスト重視なのかは業者選定の大きな分かれ目になります。
本来アウトソーシングは、ひとつの経営手法であり戦略です。自社の課題を洗い出して解決し、さらなる成長につなげられるように、各分野のスペシャリストが業務を遂行します。
その対象は、営業や広告宣伝などの企画性、戦略性が欠かせない部門から、経理事務や採用業務、労務や人事関連業務などの定型業務が多い後方支援部門までほぼ全領域にわたります。
だからこそ戦略重視で依頼する場合のアウトソーサーには、対象業務のコンサルティングスキルが確実にある業者を選ばなければなりません。
一方、戦略性よりもコスト削減がメインのアウトソーシングの対象は、受付やコールセンターなどのパターン化されている対応業務、データ入力などです。
その場合はその類の定型業務を得意とし、価格体系もコストダウンに貢献できるようなアウトソーサーが適しています。
単なる代行かBPOか
アウトソーサーを選ぶ際に、それが単なる代行業者か、もしくはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)企業かどうかも重要なポイントです。
BPO企業は請け負う業務に関しての専門性の高さやクオリティレベルにおいての満足度をアピールするので、比較的高額になりますが費用対効果が期待できます。
代行業者はクオリティレベルを強くアピールすることはなく、コストや納期などの利便性をアピールしています。そういう意味では、外注寄りの感覚といえるでしょう。
このため、業務を切り出して外部に委託する際の業者の選定は、候補となる各社のアピールしている強みを慎重に比較することが大切です。
代行業者とBPOでは目指すところが異なるため、あくまでその事案のニーズを満たすことができるサービスレベルの業者かどうかがポイントとなります。
選ぶ際の目安のひとつとして、取り扱い業務として標榜しているのが「〇〇業務代行」と言う表現の場合は、あくまで業務代行と認識して問題ないでしょう。
一方で、社名にコンサルティングやソリューションと入っていたり、在籍スタッフにコンサルティングファーム出身者がいたりする場合は、BPOタイプのアウトソーシングに適した企業と考えられます。
BPO企業は、経営コンサルティング全般や、営業・財務など特定の分野にフォーカスした生産性向上や成長戦略に長けている場合があります。対象業務に応じた強みを比較しながら、選定作業を進めましょう。
多角化と加速化に寄与するか
アウトソーサーは、経営の多角化と加速化に寄与できる企業を選びましょう。そのためには、アウトソーサーにその部分を丸投げするのではなく、イニシアチブはしっかりと依頼企業がキープしつつ、緊密なコミュニケーションを重ねられる企業であるかどうかが大切です。
依頼されたからといって独断専行で遂行するのではなく、情報を共有しながら勧めてくれる企業かどうかを見極めることが重要となります。
そこを見誤ると、思うような展開には至らずに経営の多角化や加速化に寄与しないおそれがありますので、慎重に検討してください。
まとめ
アウトソーシングと外注は似て非なるものです。外注は主に成果物の製造と納品が要件で、コストダウンを狙って活用します。アウトソーシングはコスト面だけでなく、クオリティの向上や企業の成長につながる戦略的要素を持ちます。
また、アウトソーサーのなかでも、コストや利便性重視の代行業者と、取り組みに戦略性やコンサルティング要素が色濃く含まれるBPO企業を見極めた上で活用しましょう。