【人材派遣の導入を検討中の企業必見】仕組みとメリットをやさしく解説
深刻化する人手不足に加え、働き方の多様化が急速に進みつつあるいま、人材獲得に頭を悩ませる企業は少なくありません。最初の関門となるのが、採用方法の選定でしょう。良い人材を効率よく確保するにはどの方法が最適か。——解決策の一つとなり得るのが人材派遣の利用です。
ただ、人材派遣は「ちょっと複雑そうで分かりにくい」と思われがちな一面も。それは「仕組み」に大きな特徴があるからなのかもしれません。
今回は、その「仕組み」をクローズアップ。仕組みがすっきり分かれば人材派遣の骨格が鮮明になり、自ずとメリットも見えてくるはずです。
比較して深める!人材派遣の仕組み
ここでは、「人材派遣の仕組み」とともに、人材派遣と混同されやすい「人材紹介」と「請負」の仕組みについても紹介します。違いを見比べながら、理解を深めていきましょう。
人材派遣の仕組みについて
人材派遣の仕組みを解説する前に、まずは雇用契約の種類について簡単に説明します。というのも、人材派遣の仕組みを理解するには押さえておきたいポイントであり、理解への近道でもあるからです。
では、さっそく見ていきましょう。雇用契約は「正規雇用」と「非正規雇用」の2つに分類され、そこからさらに「直接雇用」と「間接雇用」に分けられます(※1)。「直接雇用」は、労働者と使用者との間に直接的な雇用関係がある働き方で、その代表的な例が正社員や契約社員、アルバイトです。一方、「間接雇用」は、労働者と使用者との間に直接的な雇用関係がありません。雇用主と指揮命令を行う使用者が異なるのです。その最たる例が、派遣社員——ここまで理解できれば、人材派遣の仕組みについて9割方手中に収めたといっても過言ではありません。それでは、いよいよ本題に入ります。
人材派遣の仕組みを端的にいえば、次のようになります。
派遣会社で雇用している社員を、企業(以下、派遣先企業)に派遣し、派遣先企業の指揮命令下で仕事に従事してもらう。
前述の「間接雇用」でも触れましたが、人材派遣には、雇用主(派遣会社)と指揮命令を行う使用者(派遣先企業)の2つの企業が登場します。それが、人材派遣最大の特徴であり、分かりにくさの要因でもあるのです。たしかに、一見すると複雑な仕組みですが、派遣先企業・派遣会社・派遣社員の三者それぞれの立場で関係性を見ていくと、意外にシンプルなことが分かります。
イラストにあるように、派遣先企業を軸としてみると、派遣社員とは雇用関係が成立していないため、給与の支払いなどがありません。この関係性からだけでも、企業にとって人材派遣を利用するメリットの一端が見えるのではないでしょうか。
人材派遣についての法律上の定義を紹介しますのでご参照ください。
労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。(労働者派遣法第2条第1項)
※1 法律上の明確な定義があるわけではないので、直接雇用や間接雇用については「雇用形態の一つ」と説明している場合も多く見受けられます。ただ、「雇用形態」は一般的には正社員や派遣社員、アルバイトなど「働き方の種類」のことを指すため、ここでは「雇用契約」を用いています。
※2 派遣会社にスタッフ登録した段階では雇用契約はまだ結ばれません。雇用契約は、派遣先企業が決まり、仕事が始まる時点で発生し、派遣期間満了とともに終了します。
混同されやすい「人材紹介」の仕組み
人材紹介とは、人材採用を検討している企業から依頼を受けて、候補者(求職者)を紹介するサービスのことです。「企業と労働者をマッチングさせる」という点で、人材派遣とよく似ていますから、間違われることがしばしばあります。大きく違うのは労働者が雇用契約を結ぶ相手方。
人材派遣の場合、労働者が雇用契約を結ぶのは派遣会社ですが、人材紹介の場合は、紹介先の企業と直接雇用契約を結びます。料金システムも、人材派遣とはずいぶん異なります。多くの人材紹介会社は成功報酬型を採用。基本的には初期費用がかからないため、気軽に利用できるというメリットがあります。
混同されやすい「請負」の仕組み
請負とは、企業が業務を外部委託(アウトソーシング)する際の契約形態の一つです。発注主の企業が請負会社と請負契約を結び、請負会社から成果物を納品してもらうという仕組み。民法では次のように定義しています。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法第632条)
人材派遣としばしば混同されるのは、請負にも「発注企業」と「請負会社」という2つの企業が登場するからです。とはいえ、似て非なるもの。いちばん大きく違うところは報酬の対象で、人材派遣は「労働力」、請負は「成果物」に対して支払われます。また、請負の場合、労働者は「雇用契約」を結ぶのも「業務の指示」を受けるのも請負会社。この点も人材派遣とは大きく違うところです。
企業が人材派遣サービスを導入するメリット
人材派遣を導入するメリットを確認しましょう。まず、人材派遣の仕組みからだけでも、次の2つのメリットが見えてきます。
- 募集・採用に関わるコストの削減(自社で採用活動を行う必要がないため)
- 給与支払いなど労務費コストの削減(派遣会社が行うため)
また、派遣会社が「業務遂行能力がある」と自信をもって推せる人材が派遣されてくるわけですから、即戦力が期待できます。
人材派遣の種類別に見るメリット
人材派遣は、その種類ごとに異なるメリットがあります。ここでは、人材派遣の3つの種類「登録型派遣」「常用型派遣」「紹介予定派遣」について説明するとともに、各々のメリットを紹介します。
登録型派遣
登録型派遣は、一般的にイメージされる派遣のことで、通常「派遣」という場合は、この登録型を指すことが多いようです。派遣期間が設定されており満了した際に更新されなければ、派遣会社との雇用関係も終了します。
企業にとってのメリット
●必要なときに、必要なスキルを持つ人材を確保できる
急きょ人材を確保しなければならなくなったときや短期集中で人手が欲しいときなど、フレキシブルに利用できるのが魅力です。
常用型派遣
常用型派遣は、無期限で派遣会社と雇用契約を結ぶ形態の派遣です。一言でいうならば派遣会社の社員。そのため、登録型派遣とは違い、採用試験があります。
企業にとってのメリット
●優秀な人材を確保できる
常用型の派遣社員は、派遣会社の採用試験を通った高い専門性やスキルを持つ優れた人材が多いので、そのような人材と巡り会える可能性が高まります。
紹介予定派遣
紹介予定派遣は、派遣期間が満了した後に、派遣先企業と直接雇用契約を結ぶことを前提にした派遣のことです。それを鑑みると、紹介予定派遣での派遣される期間は「試用期間」という捉え方の方が実態に即しています。
紹介予定派遣についてはこちらの記事で詳しく紹介されています。
https://talisman-corporation.com/ja/dp_temp-to-perm/
企業にとってのメリット
●希望する人材とのミスマッチの回避
派遣期間中に実際の働きぶりや人となりを見て、直接雇用の可否を判断できるため、ミスマッチが起こりにくいといわれています。
人材派遣を利用する際の注意点
人材派遣は、自社のニーズに合う人材を見つけるための有効な手段になり得ますが、利用する際には注意が必要な場面も出てきます。たとえば、派遣社員受け入れ時の派遣先責任者の選任。
派遣先責任者とは、派遣先企業の最終責任者であり、派遣社員が円滑に仕事を進められる環境を整える調整役です。人材派遣を利用するとき、派遣先企業は派遣先責任者を選任しなければなりません。これは労働者派遣法第41条に定められ、怠った場合、30万円以下の罰金に処せられることも。
このように人材派遣を利用する際には、労働者派遣法など法律に則して決めなければならないこともあり、慎重に進めなければなりません。
派遣先責任者については、こちらの記事で詳しく解説しています。参考にしてみてください。
https://talisman-corporation.com/ja/dp_responsible%EF%BC%BFperson/
人材派遣の仕組みを制すれば新たな道が拓ける
人材派遣が「イマイチよく分からない…」と感じてしまう大きな要因に、「仕組み」の複雑さがあります。というのも、人材派遣の雇用・指揮命令関係は、一般的にイメージされる正社員と企業のように明快な関係性ではないからです。
人材派遣は、派遣社員・派遣会社・派遣先企業の三者間で成り立っています。そこを丁寧にたどってみると、じつは「意外とシンプルだ」ということに気づくでしょう。そうなると、しめたもの。人材派遣の全体像が鮮明になり、自ずとメリットも見えてくるはずです。
また、人材派遣と混同されがちな「人材紹介」「請負」と見比べてみることで、新たな視点も得られるでしょう。採用方法の幅が広がれば、適材適所の人員配置を実現できるかもしれません。